投稿日:2024年12月16日

超音波センシングの基礎と非破壊計測・材料評価・状態モニタリングへの応用

超音波センシングとは

超音波センサーは、音波の中で最も高い周波数の一種である超音波を利用して、物質や材料の状況を非接触で検出する技術です。
人間の耳には聞こえない周波数帯(一般的に20kHz以上)を使用し、さまざまな業種で応用されています。
超音波センサーの基本的な構造には、超音波を発信する発信器、そしてそれを受信して解析する受信器の二つがあります。

超音波センサーの原理は、発信器から超音波を対象物に向かって発信し、その反射波を受信器で受け取り、音波の到達時間や強度の変化を測定・解析するものです。
この手法を用いることで、対象物の距離、形状、材質、および内部構造の評価などが可能となります。

非破壊計測への応用

非破壊計測とは、その名の通り、対象物を破壊することなく、その内部や表面の情報を得る技術です。
製造業では主に品質管理や故障診断に使われ、特に重要性が高まっています。

内部欠陥の検出

金属や複合材料などの内部欠陥は、製品の強度や耐久性に影響を及ぼします。
超音波センサーを用いることで、例えば溶接部や鋳造部品の内部に潜むクラックやボイドなどを検出することが可能です。
これにより、製品の不良を未然に防ぐだけでなく、製造プロセスの改善にもつなげることができます。

表面検査

超音波は表面の微細な変化にも敏感です。
そのため、材料の微細な表面欠陥を正確に検出することができます。
この技術は、電子部品や精密機器の表面評価に特に効果的であり、その他の方法による検査が難しい場合に有用です。

材料評価への応用

超音波センシングは、材料評価にも広く使用されています。
材質や内部構造を確認することで、製造工程で使用する材料の適正評価が可能になります。

音速測定による材料特性の評価

超音波波動の伝播速度は、プラスチックや金属、セラミックなど、さまざまな材質の弾性率に関する貴重な情報を提供します。
材料中を伝わる音速を測定することで、その材料のヤング率やポアソン比といった特性を非破壊で評価することができます。

密度評価

音波の伝播速度だけでなく、材料内部での音の吸収や反射の特性から、材料の密度を見積もることも可能です。
この特性は、複合材料や高密度材料の評価に特に役立ちます。

状態モニタリングへの応用

製造施設や機器の稼働状況をリアルタイムで監視することは、安全性や効率性を向上させるために欠かせません。
超音波センサーはその能力を発揮し、状態モニタリングにおいて重要な役割を果たしています。

装置の稼働状態のモニタリング

機械装置の振動や異音は、問題の早期発見につながるため重要なパラメータです。
超音波センサーを使用することで、耳では感知できない微細な周波数変化を捉え、異常振動や摩擦音を検出することが可能です。
これにより、故障を未然に防ぎ、メンテナンス費用の削減や生産性の向上につながります。

流体の監視

超音波センサーは、液体やガスの流量や流速を測定するための優れたツールでもあります。
パイプラインやプロセス装置において、正確な流体の監視を行うことで、プロセスの最適化や安全性の確保が可能となります。

超音波センシング技術の未来

超音波センシング技術は、さまざまな分野で急速に進化を遂げています。
非接触の特性や対象物に負担をかけない特性から、医療診断や自動運転技術など、製造業を超えた広い領域でも応用されています。
今後も新しい応用分野の発見や、より高精度な計測技術の確立が期待されます。

製造業においては、超音波センサーを活用して効率的で安全な生産環境を実現しつつ、製品の品質向上や不良の早期検知、さらにはコスト削減を図ることが求められています。
超音波センシング技術を理解し、うまく活用することで、企業の競争力をさらに高めることができるでしょう。

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