投稿日:2024年6月3日

脱炭素と二酸化炭素回収・利用・貯留(CCUS)の世界動向と技術トレンド

脱炭素と二酸化炭素回収・利用・貯留(CCUS)の重要性

地球温暖化や気候変動の影響が顕著となる中、脱炭素への取り組みがますます重要視されています。
化石燃料の使用による二酸化炭素(CO2)排出が主な原因とされるため、CO2の排出削減が急務となっています。
その中で、二酸化炭素回収・利用・貯留(Carbon Capture, Utilization and Storage: CCUS)の技術が注目されています。
CCUSは、CO2を大気中から回収し、それを利用または安全に貯留する技術の総称です。

二酸化炭素回収(CC)の技術

二酸化炭素回収は主に以下の3つの方法で行われます。

ポストコンバッション(後燃焼)

ポストコンバッションは、化石燃料を燃焼させた後に生成される排ガスからCO2を分離・回収する技術です。
このプロセスでは、専用の吸収剤(アミンなど)を用いてCO2を選択的に捕捉します。
この方法は既存の火力発電所にも容易に適用できるため、広く利用されています。

プレコンバッション(前燃焼)

プレコンバッションは、燃料を燃焼させる前にCO2を回収する技術です。
例えば、天然ガスを部分酸化し、水蒸気と反応させることで合成ガス(COとH2)を生成し、そこでCO2を分離します。
この方法は高効率であり、CO2の回収率が高いのが特徴です。

オキシ燃焼(酸素燃焼)

オキシ燃焼は、酸素を使用して燃料を燃焼させる技術です。
このプロセスでは、水蒸気とCO2が主要な排ガスとなり、CO2の分離が容易になります。
また、燃焼効率が高く、窒素酸化物(NOx)の生成が抑えられる利点もあります。

二酸化炭素利用(CU)の技術

CCUS技術の中で、回収したCO2をどのように利用するかは非常に重要な課題です。
CO2の有効利用が、経済的にも環境的にも価値を高めることになります。

化学品製造

回収したCO2を原料として、化学品を製造するプロセスが注目されています。
例えば、CO2と水素を反応させてメタノールを生成する方法や、ウレタンやポリカーボネートのようなプラスチックの原料に利用する方法があります。
これにより、化石燃料の使用を減少させることができます。

燃料の製造

CO2を利用して燃料を製造する試みも進んでいます。
例えば、CO2からメタンを製造する「メタングリーン」技術や、CO2から合成ガソリンを生成する「e-fuel」が挙げられます。
これにより、再生可能エネルギーと組み合わせることで、カーボンニュートラルな燃料供給が実現可能です。

農業・食品分野

CO2は植物の光合成において不可欠な要素です。
そのため、農業分野では温室のCO2濃度を高めることで作物の生産性を向上させる技術が活用されています。
また、食品分野では、CO2を利用して飲料水の炭酸化や保存技術に利用されることもあります。

二酸化炭素貯留(CS)技術

CO2を利用するだけでなく、安全に貯留することも重要です。
貯留技術は、CO2の漏洩を防ぎつつ、長期間にわたり環境に影響を与えないようにすることが求められます。

地中貯留

地中貯留は、地下深くの岩層や廃油田・ガス田にCO2を注入し、安全に封じ込める方法です。
この技術は、数十年にわたり研究・実践されており、比較的安定した方法となっています。
地中貯留は特に、石油・ガス採掘の残存炭層を利用することが多く、資源の有効活用にも寄与します。

海洋貯留

海洋貯留は、深海にCO2を注入し、液化状態で貯留する技術です。
この方法は理論的には大量のCO2を貯留可能であり、広大な貯留能力を持ちますが、環境影響や技術的課題が多いため、実用化はまだ進んでいない段階にあります。

世界のCCUS動向と投資

CCUS技術は世界中で活発に研究・開発が進められており、多くの国や企業がプロジェクトに取り組んでいます。

欧州の取り組み

欧州はCCUS技術のリーダー的存在であり、特に北海沿岸では多数のプロジェクトが進行中です。
例えば、ノルウェー政府が主導する「ノーススパイア」プロジェクトは、大規模なCO2貯留基地を北海に設立し、産業排出量の削減を目指しています。
また、EUは「欧州グリーンディール」政策の一環として、CCUS技術の導入を加速させるための基金を設立しています。

アメリカの状況

アメリカでは、政府と民間企業が連携してCCUS技術の実用化を進めています。
特にテキサス州やルイジアナ州でのプロジェクトが多く、二酸化炭素の地中貯留に関する技術検証が行われています。
また、ファイナンシャルプログラムや税制優遇措置により、企業のCCUS投資を促進しています。

アジアの動向

アジアでは、中国や日本がCCUS技術の開発に積極的です。
中国は、国内のCO2排出削減政策「カーボンピ-ク政策」及び「カーボンニュートラル政策」の一環で、CCUSプロジェクトを推進しています。
日本も「カーボンニュートラル2050」を目指し、多数の企業がCCUS技術の研究・導入を進めています。

技術トレンドと今後の課題

CCUS技術は進化を続けており、新しい技術や方法が登場していますが、それらを実際に導入・運用する上での課題も少なくありません。

効率向上とコスト削減

CCUS技術の最大の課題は、効率の向上とコストの削減です。
現在の技術では、CO2を回収・貯留するコストが高く、商業ベースでの採算性が求められます。
そのため、効率的で低コストな回収・利用・貯留技術の開発が必要です。

規制と法的枠組み

各国でCCUS技術を導入するには、規制や法的枠組みの整備が不可欠です。
例えば、CO2の長期貯留に関する安全基準や漏洩対策への法的制約が求められます。
これらの法的枠組みが整備されることで、企業が安心してCCUS技術を導入できる環境が整います。

社会的認知と受容

一般社会においてCCUS技術の理解と受容を広げることも重要です。
技術の特性やメリット、潜在的リスク情報の透明性を確保し、市民の信頼を得ることが必要です。
また、教育や啓発活動を通じて、CCUS技術の重要性を広める取り組みも進められています。

 

脱炭素社会の実現に向けて、二酸化炭素回収・利用・貯留(CCUS)技術は重要な役割を果たします。
技術の進展とともに、効率向上やコスト削減、新しい利用方法の確立が求められます。
また、各国の政策や法的枠組みの整備、社会的認知と受容を促進することも重要です。
これらを実現することで、持続可能な未来に向けた一歩が踏み出されます。

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