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投稿日:2026年5月13日

Evaluation of automobile ride comfort and its application to seat development and design

自動車の乗り心地評価は、ISO 2631(JIS B 7760-2)に基づく全身振動の客観計測と、官能評価による主観スコアの両軸で成立する。シート開発においては「静的座り心地」「動的乗り心地」「長時間疲労」の3ステージを分離して設計指針を立てることが、調達仕様書の精度を高める最短ルートとなる。本稿では評価手法の実務的な読み解き方と、サプライヤーとの仕様すり合わせに活かせるシート開発の要点を整理する。

自動車乗り心地評価の全体像:振動・騒音・ハーシュネスの三軸で捉える

自動車の乗り心地を語るとき、まず整理しておくべきなのが「NVH(Noise・Vibration・Harshness)」という概念の三層構造だ。
NVH(騒音・振動・ハーシュネス)は自動車の快適性を推し量る基準であり、騒音はロードノイズや風切り音などの外部からの侵入音、振動はエンジンや駆動系のアンバランスから生じる継続的な揺れ、ハーシュネスは路面凹凸による突き上げやがたつき感を指す。

この三要素は相互に干渉するため、単独で対策しても総合評価が上がらないケースが多い。製造業の調達購買現場で累計200社以上のシートサプライヤーやNVH部品メーカーと折衝してきた経験から言えば、「騒音だけ低減してもシートの振動伝達特性が悪ければ乗り心地は改善されない」という設計上のジレンマは珍しくない。発注仕様にNVHの3軸すべての評価指標を盛り込まなければ、サプライヤーが「担当範囲外」として最適化を回避する場面が典型的に起こる。

自動車の開発では騒音・振動・ハーシュネス(NVH)の低さが快適性の指標とされ、乗り心地については主に振動とハーシュネスに主眼が置かれる。乗員に感じられる振動は、路面からの入力がタイヤ、サスペンション、車体、シートやカーペット、ステアリングホイールなどを通じて人体へと伝えられる。

つまり振動の伝達経路は「路面→タイヤ→サスペンション→車体→シート→人体」という連鎖であり、シートはその最終段に位置する。後段のシートがいかに優れていても、サスペンション特性が悪ければ入力振動の振幅が大きすぎてシートで減衰しきれない。逆に言えば、シート側の減衰設計にはサスペンション特性を前提にした「残留振動吸収」という役割分担が必要になる。
シート設計はサスペンションを除いて単独に行うものではなく、車両全体の特性で総合的に決められるものである。

ISO 2631 / JIS B 7760-2:乗り心地評価の国際規格を読み解く

乗り心地の客観評価を実務に乗せるための基盤が ISO 2631(JIS B 7760-2:2004)だ。
国際標準化機構(ISO)では西ドイツの基準を参考に1974年にISO 2631として「全身振動の評価法」という国際基準を定め、1985年にpart 1からpart 4の評価対象振動ごとの規格にまとめられ、1997年の改定によってISO 2631-1は大きく改変されている。
[1]

JIS B 7760-2:2004はISO 2631-1:1997を翻訳して作成した日本産業規格であり、周期的・不規則的または過渡的な全身振動の測定方法を規定する。健康・快適性・振動知覚・乗物酔い発生に関する振動評価の指針を附属書に規定している。
[2]

ISO 2631-1において振動を評価する際には、人体を基準に振動の向きを定めており、立っているときも座っているときも身体の前後方向がX軸、左右方向がY軸、上下方向(頭と尻または足を結ぶ線)がZ軸となる。
これが調達仕様の「座席面振動加速度RMS」という指標の前提になる座標系だ。[1]

さらに測定手法の実務では、
実車の走行試験で乗り心地評価を行う際にはシートやカーペットに振動加速度を計測するセンサーを取り付けて実施する。これによって得られるデータは人体の振動特性を反映したものとなるため被験者の個体差が大きく、同一被験者でも姿勢や緊張状態によって結果が変化することから、複数の被験者に実験を繰り返して平均値をとる必要がある。
[1]

英国規格 BS 6841 の評価方法についても参照されることがある。
BS 6841においてはフロア並進3軸・シートクッション並進3軸および回転3軸・バックレスト並進3軸の合計12軸の振動を計測して、周波数の重みづけを行うウェイティングカーブと軸間係数を定義している。シートクッションの上下振動に関しては、5〜16ヘルツにおいてもっとも敏感であるとされている。
[1]

調達現場で押さえるポイント

シートサプライヤーからの検収試験仕様を確認する際、「振動加速度RMSの測定軸数」と「周波数重みづけ特性(Wk / Wd)」の記載有無を必ず確認すること。これらの記載がない仕様書は、ISO 2631準拠を謳っていても実態が不明確であり、受け入れ判定の根拠として使えない。製造業の調達購買10年以上の経験から、この2点を確認するだけで仕様書の品質が格段に変わる。

官能評価と客観評価の使い分け:現場で機能させるための判断軸

乗り心地評価には客観計測と官能評価(主観評価)の2系統がある。どちらか一方では開発指標として機能しない、という現実を先に整理しておく。

走行に伴う自動車の振動は路面形状や自動車の種類・速度を考えると振動入力が様々であり、振動乗り心地評価では不快度のみでなく「フワフワ」「ブルブル」といった細かい感覚の違いを多次元的に定量化する必要があり、各現象ごとに周波数帯を細分化して解析を実施しているのが現状である。
[3]

官能評価が「人が感じる乗り心地の言語化」なら、客観計測は「何Hzの何軸振動が何m/s²で乗員に届いているか」の計量だ。両者を結びつける「物理量と主観評価の対応付け」こそが、シート設計指針を標準化するための核心となる。
人体とシートの相互作用に着目した評価法開発では、静的な座り心地ではシートを16個にセグメント分けして体圧分布とシートたわみから新指標「シートコンプライアンス」を導出し、動的乗り心地では体圧分布の移動速度や人体各部の加速度を指標とし、長時間着座疲労では筋電図やストレスホルモン等の生理量を指標として、多面的な評価を行い総合的にバランスの取れたシート設計指針に役立てている。
[4]

官能評価の定量化については、
車両の変位値からだけではなく身体の姿勢・動きからも乗り心地の評価基準を検討できることが注目されており、日本の自動車メーカーにおいて官能評価に加えて計測技術・計測機器の発展に伴う新しい評価手法が模索されている。

金属加工・樹脂成形・化学・電気電子・組立完成品の5ジャンル横断でサプライヤー開発に関与してきた立場から見ると、官能評価を設計標準に組み込む際に最も失敗しやすいのが「評価者の固定化」だ。熟練エンジニア1名の主観スコアを基準にしてしまうと、担当変更の瞬間に設計品質が断絶する。複数被験者による分散評価と、物理量による追認プロセスをセットで仕様書に明記することが、実効性のある品質管理につながる。

乗り心地評価の3ステージとシート開発設計への落とし込み

シートの乗り心地開発で押さえるべき評価は「静的座り心地」「動的乗り心地」「長時間着座疲労」の3ステージに分かれており、それぞれ評価手法も設計対象も異なる。この3ステージを混同したまま仕様書を書くと、サプライヤー側が「静的座り心地」だけ対応して動的評価を見落とす、という典型的な品質トラブルが起きる。

ステージ1:静的座り心地

シートに着座した直後の「柔らかさ」「体へのフィット感」を扱うステージだ。評価の中心は体圧分布とシートコンプライアンス(たわみ特性)となる。
自動車シートの構造の中でもシート形状を形成して人体を支持するパッドは「座り心地」に大きな影響を及ぼすと考えられるが、表皮布やパッド性能の決定はデザイナーやシート設計の専門家の経験や感性に依存しているのが現状である。自動車シートは一般にワディング付き表皮布(A層)、パッド(B層)およびフレーム(C層)の3層で構成される。
[5]

パッド材質については、
シートの乗り心地性能にウレタンフォーム特性を効果的に使うために、パッド裏面形状を工夫することが発案されており、ウレタンフォーム内部応力とシート乗り心地性能との関係が実機測定とCAE解析によって考察されている。
[6]

また座面形状については、
坐骨部を8mmくぼませ、大腿支持部を24°前傾させた座面、水平から75°起こし腰部を15mm前に出した背もたれ形状が快適性に適しており、座面の傾斜開始点は変形しやすく圧迫感度が鈍い臀溝付近が好まれる。
[7]

ステージ2:動的乗り心地

走行中の振動伝達特性を扱うステージ。ここでシートはサスペンションシステムと一体で評価される。
シート上の人間への加振刺激は3〜4Hz領域で大きく、垂直方向の振動中の着座姿勢における胃の振動特性にも同様な性質があることが報告されており、複合振動に対する感受特性を考慮した評価基準の研究が行われている。
[8]

また、
上下振動と前後振動の発生比率を種々に変化させてそのときの人間の快不快感を調べた結果、複合振動に対する感度の重み付け度合いが明らかとなり、人間は種々の複合した振動状況により乗り心地を評価していることがわかる。
[8]

ステージ3:長時間着座疲労

2〜3時間以上の連続走行後に顕在化する腰痛・疲労感を扱うステージだ。短時間の試乗評価では検出しにくく、シートサプライヤーが最も軽視しがちな評価項目でもある。筋電図(EMG)やコルチゾール(ストレスホルモン)の計測が評価手段として用いられており、
長時間着座疲労では筋電図やストレスホルモン等の生理量を指標とし、従来の官能評価を定量化するためこれらの物理量や生理量との対応付けが行われている。
[4]

数値比較表:乗り心地評価手法の主要指標と実務的な使い方

評価項目 評価ステージ 主な計測手段 主要規格・基準 サプライヤー仕様書への反映ポイント
振動加速度RMS(上下方向) 動的乗り心地 加速度センサー(シートクッション上面) ISO 2631-1 / JIS B 7760-2 Wk重みづけ付きRMS値の上限値を明記する
振動伝達率(SEAT値) 動的乗り心地 フロア加速度 vs シート上加速度の比 ISO 10326-1 SEAT値≦1.0を基準とし、用途別上限を設定する
体圧分布(シートコンプライアンス) 静的座り心地 体圧マット(16分割計測) 社内規格・研究ベース指標 最大ピーク圧と圧力分布の偏り係数を評価条件に入れる
パッド硬度(ILD / 圧縮荷重) 静的座り心地 圧縮試験機(25%・65%ILD測定) JIS K 6400-2 硬度レンジ(例:190〜270N)と密度をセット指定
官能評価スコア(7段階尺度) 全ステージ共通 SD法による多項目主観評価 社内評価基準 被験者人数(最低5名以上)と評価語リストを仕様に明記
ロードノイズ(室内騒音レベル) NVH(騒音) マイクロフォン(耳元・フロア) ISO 5128 dB(A)の評価周波数帯(63Hz〜4kHz)と路面条件を指定
筋電図(EMG)による疲労評価 長時間着座疲労 表面電極(腰背部・大腿四頭筋) 研究ベース指標 2時間以上の連続着座後の筋活動量変化率を評価条件に設定
ストレスホルモン(コルチゾール) 長時間着座疲労 唾液採取(着座前後) 研究ベース指標 高付加価値シートの差別化指標として採用検討が増えている
座面角度と腰椎支持形状 静的座り心地・長時間疲労 3D形状測定 / SAE Hポイント JIS D 4607 / JIS D 0024 ルンバーサポート突出量と腰椎自然湾曲との適合度を仕様化
CAEシミュレーション精度検証 設計前段(開発効率化) 有限要素法(FEM)モデル vs 実測値 社内精度基準 試作前のCAE誤差率(±15%以内等)を発注条件に盛り込む
振動周波数感覚(ヒョコヒョコ/ゴツゴツ等) 動的乗り心地(現象別評価) 周波数帯別加速度スペクトル解析 BS 6841 / ISO 2631-1 現象ごとの周波数帯(例:1〜4Hz=フワフワ)を仕様書に明示

シートサプライヤーへの発注仕様で見落とされやすい3つの落とし穴

シート調達の場面でサプライヤーとの技術折衝に入ると、仕様書の「乗り心地評価基準」が機能していないケースに繰り返し遭遇する。中国・東南アジアのサプライヤー網で典型的に見られるのは、「ISO 2631準拠」と記載しながら実際は静的硬度試験のみで済ませる、という問題だ。以下に実務上よく発生する3つの落とし穴を整理する。

落とし穴①:評価条件(路面・速度)が未定義

自動車の中の振動環境は走行路面の状態と車速に依存して変化するので、乗り心地の改良に当たっては対象とする市場の道路状況と交通状況を考慮しながら振動レベルをバランス良く低減する必要がある。
[1] 発注仕様に「ISO 2631準拠」とだけ書いて路面種別(例:ISO砂利路、石畳、高速舗装路)と走行速度を指定しないと、サプライヤーは最も評価が通りやすい路面条件で試験を実施する。「欧州市場向け」「東南アジア未舗装路向け」「国内高速中心」では要求される振動減衰特性が根本的に異なるため、仕様書には必ず評価路面プロフィールと速度域を記載すること。

落とし穴②:サスペンション特性を前提に置かないシート単体評価

シート設計はサスペンションを除いて単独に行うものではなく、車両全体の特性で総合的に決められるものであり、振動成分は路面を走行する車両からの入力信号で構成され、サスペンションとシート動特性が受け持つことになる。
[4] 「シート単体のISO 2631評価」は参考データにはなるが、最終的な乗り心地はシート×サスペンションの複合特性で決まる。サプライヤーにシート単体での試験データだけを求めても、実車搭載後の乗り心地が仕様を満たすかどうかは別問題となる。実車またはベンチ試験(シャシーダイナモ)での連成評価の提出を条件とすることが実務上有効だ。

落とし穴③:試作段階のCAE精度を要求しない

現代においてはコンピューター上にタイヤ、サスペンション、車体、シート、ステアリングなどの乗り心地に影響する部品のモデルを構築し、想定する路面からの入力を与えて結果的な振動を計算で求めることができるようになっており、実走試験とおおむね一致する結果が得られるようになった。
[1] 裏を返せば、CAEモデルの精度が低いサプライヤーは実走試験前の設計段階で問題を検出できず、試作後の手戻りが多発する。発注条件にCAEと実測の相関係数・誤差率の基準値を盛り込むことで、サプライヤーの設計能力を間接的に評価することができる。

シート素材・構造の選択と調達コストの関係

乗り心地性能を左右するシートの素材・構造選択は、同時にコスト構造にも直結する。開発段階で「性能と原価のバランス」を合理的に判断するためには、素材ごとの特性と適用場面を整理しておく必要がある。

パッド材料の主流はモールドウレタンフォームだ。
同一の反発弾性率(70%)および密度(69kg/m³)で硬度のみを変化させた5種類(190、210、230、250、270N)の座部パッドを用いた研究において、硬度が座り心地と着座姿勢に与える影響が検討されている。
[5] この数値が示すように、ウレタン硬度は190〜270Nの範囲でも官能評価スコアに有意差が生まれる。発注仕様で「ウレタンフォーム」とだけ書いて硬度レンジを指定しないケースが散見されるが、これは品質のばらつきを許容する仕様書と同義だ。

また、
シートに要求される消費性能が「外観」と着座快適感である「座り心地」であり、両性能を同時に満足するためには多数のシートを試作してそれらを人間が繰り返し評価することが必要になる。現在においてもシートの「座り心地」設計は設計者の経験やカンに依存し定量化する段階には至っていない。
[9]

この「定量化の壁」は調達側にとっても重要な示唆を含む。定量化が難しいということは、仕様書に数値基準を明記するほど、サプライヤー側の逃げ場が少なくなり品質管理が機能しやすくなるということでもある。実体験として、座り心地に関して「ユーザーが満足できること」という抽象的な仕様しか設定しなかったケースでは、受け入れ検査での合否判断がサプライヤー側に委ねられてしまい、トラブルが繰り返された。

調達現場で押さえるポイント

シート調達の原価査定において「表皮布の違い」でコスト差が大きく見えることがある。しかし乗り心地性能に直結するのはパッド層(B層)のウレタン仕様であり、表皮布のアップグレードは体圧分布の改善にほぼ寄与しない。コスト交渉時はA層(表皮)とB層(パッド)を分離して原価を把握し、乗り心地改善の投資効果が高いB層に予算を集中させる判断が合理的だ。

EV・自動運転時代のNVH設計:調達仕様が変わる理由

電動化の進展はシート開発の前提条件を根底から変えつつある。
電動化・コネクテッド化・ソフトウェア化が進む中、EVはエンジン音が消えるため路面騒音・風切り音・冷却システムの作動音・ドライブトレインの共振・車体の微細な振動が今まで以上に目立つようになる。

従来のガソリン車ではエンジン音がマスキングとして機能し、ロードノイズや微細な振動を隠す効果があった。EVではそのマスキング効果が失われるため、シートの振動遮断性能に要求される水準が上がる。
車両の電動化に伴う駆動系の回転慣性・剛性の変化により、サスペンション・タイヤと駆動系の連成を考慮した乗り心地設計の必要性が高まりつつある。
[10]

自動運転レベルの向上も乗り心地評価の軸を変える。ドライバーが運転操作から解放されて後席への移動や読書・作業が可能になると、シートに要求される「長時間着座疲労への対応」がさらに厳しくなる。従来は30〜60分程度の高速走行を想定していた疲労評価が、2〜4時間の長時間滞在を前提とした評価基準へとシフトするだろう。この変化を先読みした調達仕様書の改定は、現在のシートサプライヤー選定に直接影響する論点だ。

シート開発における調達・設計の協業体制:なぜ購買部門が技術理解を持つべきか

シートの乗り心地開発において、調達部門が技術評価の素養を持つことは品質コスト両面で効果が大きい。「価格だけ見て発注、品質は設計部門任せ」という体制のまま複数サプライヤーを使うと、同一仕様を謳いながら実力差が数倍あるサプライヤーが混在するという状況が生まれる。

累計200社以上のサプライヤー視察で繰り返し確認してきた実態として、乗り心地評価の試験能力(特に加速度センサーによる走行試験と体圧計測の両立)を社内に持つシートサプライヤーは、そうでないサプライヤーと比べて「試作→量産移行での品質ブレ」が明らかに小さい。試験設備の保有状況を「生産能力確認」と同列の評価項目として見積依頼書(RFQ)に盛り込むことが、長期的なサプライヤー品質管理の効率化につながる。

また、
前回2006年のハンドブック改訂から10年で試験の評価方法は大きく進化し、実車試験による性能評価から各コンポーネント・部品へのカスケード化やCAEの活用により多くの領域でバーチャルテスティングが可能となった。
[11] この変化は調達側が受け入れ試験に「CAE精度証明」を加えられる環境が整ったことを意味する。「試作品の実測値だけ提出」という従来型の検収から、「設計段階のシミュレーション根拠+実測検証」という2段階確認へと移行することで、後工程の手戻りを減らせる。

まとめ:調達購買現場が乗り心地評価をどう活かすか

自動車の乗り心地評価は、ISO 2631(JIS B 7760-2)による客観計測と官能評価の組み合わせで成立し、シート開発においては「静的座り心地」「動的乗り心地」「長時間疲労」の3ステージを分離した設計指針が必要だ。

調達購買部門が現場で活かせる核心は3点に絞られる。第一に、発注仕様書に「評価路面条件・速度域・振動軸数・周波数重みづけ特性」を明記すること。第二に、シート単体評価とサスペンション連成評価を区別し、実車または試験架台での複合評価提出を要件化すること。第三に、サプライヤー選定時に試験設備保有状況(加速度計測、体圧計測、CAE設備)を評価軸に加えること。この3点を仕組みとして調達プロセスに埋め込むだけで、乗り心地に起因するトラブルの多くは事前に防止できる。

EVへの転換期にあって、乗り心地評価の基準が静かに書き換えられている今こそ、調達仕様書を見直すタイミングだ。


出典

  1. [1] 乗り心地 – Wikipedia(ISO 2631・BS 6841・NVH概要)
  2. [2] JIS B 7760-2:2004 全身振動-第2部:測定方法及び評価に関する基本的要求(kikakurui.com)
  3. [3] 騒音制御 Vol.21, No.1 「自動車振動の乗り心地」花井利通(J-STAGE)
  4. [4] トヨタ中央研究所レポート「シート評価新手法(体圧・加速度・生理量)」(tytlabs.co.jp)
  5. [5] 繊維学会誌 Vol.66, No.1「自動車シート座部パッド硬度と座り心地の関係」(J-STAGE)
  6. [6] 自動車技術会論文集「シート乗り心地とウレタンフォーム内部応力状況の関係」(J-STAGE)
  7. [7] 人間工学 Vol.43, No.4「起立と着座が容易な自動車シートの開発」(J-STAGE)
  8. [8] トヨタ中央研究所レポート「車両の快適性とヒューマンダイナミックス」(tytlabs.co.jp)
  9. [9] 感性工学研究論文集 Vol.3, No.2「自動車シートの座り心地に及ぼす座面角の影響」(J-STAGE)
  10. [10] 自動車技術会論文集「サスペンション・タイヤと駆動系慣性・剛性を考慮した乗心地解析」(J-STAGE)
  11. [11] 自動車技術会「自動車技術ハンドブック第9分冊 試験・評価(車両)編」(jsae.or.jp)

※ 出典リンクは 2025 年 05 月 13 日時点でリンク到達性を確認しています。

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