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人間特性に基づいた使いやすさ設計の進め方と評価法および製品例

目次
はじめに:なぜ「人間特性」は製造業に不可欠なのか
製造業では高精度なものづくりや工程効率の追求が重視されがちですが、本当に現場で役に立つモノづくりを実現するには、「使う人間」の視点が不可欠です。
実際、昭和の高度成長期から令和のいまに至るまで、日本の大手製造業でも「人にやさしい設計」や「ヒューマンファクタ」の重要性が徐々に認識されてきました。
「高機能=使いやすい」とは限りません。
人間特性――つまり人間が本能的・生理的に持つ行動傾向や知覚特性――を正しく理解し、設計に反映すること。
これが現場作業者の安全性の確保や、非効率な作業ミスの低減、メーカーとしての競争力強化につながるのです。
本記事では、人間特性に基づいた「使いやすさ設計」のすすめ方と具体的評価方法、事例までを現場経験をふまえて具体的に解説します。
使いやすさ設計の基礎知識:人間特性とは何か
人間特性とは、「人が生物学的に本来持つ感覚、認知能力、行動傾向」と言い換えられます。
設計における応用は、下記のような観点が基本となります。
視覚・聴覚・触覚の限界
人間の目は、特定の色や明るさには敏感でも、似たような色彩や暗いところでは識別しにくいという特徴があります。
また、機械の稼働音やアラーム音も、騒音下では聞き分けが難しくなります。
よくある例として、「操作ボタンの色が微妙な違いしかなくて押し間違えた」「複数の警告ブザーが重なって何が重要かわからなかった」といったヒューマンエラーが挙げられます。
記憶の容量と注意力
人間が一度に記憶できる情報量には上限があります。
たとえば、複雑な手順を一度に覚えて作業するのは不可能です。
また、注意は長時間ずっと持続できません。集中力は時間とともに低下しやすく、作業切り替え時の「うっかりミス」が頻発します。
身体的負荷・心理的ストレス
高さや重さ、繰り返しの動作負荷、不安や緊張による判断ミスも人間特性に由来します。
たとえば、作業台の高さが合わず腰を痛める、重すぎる製品で手を滑らせやすい、工程切り替え時に混乱してエラーにつながるなど、現場ではよく起こり得ます。
現場でよくみる”昭和型”設計の弊害
長年の工場現場を見回してみると、使う人の立場が置き去りにされた「作り手都合の設計」が依然多いと感じます。
「現場は工夫して使え。」「マニュアル読めば分かるだろう。」
そうした発想の蓄積が、ヒヤリハットや品質事故、熟練者のみしか扱えない人依存工程などの温床になってきました。
本当の意味での「ヒューマンファクター=人ありき」の設計思想が、ようやく徐々に広がりつつあるのが現状です。
使いやすさ設計の実践ステップ
では、具体的にどのような段階で「人間特性に基づく使いやすさ設計」を進めていくべきでしょうか。
長年の現場・調達経験を踏まえ、次のようなフローを推奨します。
1. 現場観察とペルソナ設定
まずは「製品や設備を実際に使う現場」を詳細に観察します。
重要なのは「机上の仕様書」ではなく、「どう使われているか」「どこでつまずいているか」「作業環境やユーザーの属性」を把握することです。
作業者の年齢、性別、作業頻度や熟練度、時間帯なども観察すると、ヒントが隠れています。
そこから「典型的なユーザー像(ペルソナ)」を設定しましょう。
2. 人間工学・ヒューマンファクタの活用
ペルソナ設定が済んだら、次は「人間工学」の知見を応用。
たとえば、ボタンサイズは指2本で自然に押せるか、スイッチの間隔は混乱しないか、操作画面の文字は40代以上でも見やすいサイズか――など、細かな基準があります。
この段階で「設計レビュー」を実施し、気になる点を洗い出すのが有効です。
3. プロトタイプによる実機評価
紙やCGでの設計レビューで終えず、必ず「現物(またはモックアップ・3Dプリント)を使った実機検証」が重要です。
設計者ではなく、実際の現場作業者や初見の事務員など幅広い層に触れてもらい、「使ってみてどうか」をフィードバックしてもらいます。
不満やミス・やりにくさを「声」として収集し、次の改善に生かします。
4. 継続的な見直しとリデザイン
導入後も、使い勝手の声や安全上のヒヤリハット事例を定期的に収集し、「進化する設計」を目指します。
結果として、現場の定着度が高くなり、トラブルや教育コストの低減に確実につながります。
使いやすさの定量的な評価方法
使いやすさ設計において重要なのは、「どう良かったのか(または悪かったのか)」を客観的に評価することです。
以下に代表的評価法を挙げます。
操作ミス件数のカウント
現場で意図しないボタン押しや手順ミスが、導入前後でどう変化したかを定量的に評価します。
とくに重大事故やQC(品質)異常の起点になりやすいポイントを重点監視します。
作業時間・負荷の測定
一つの作業サイクル当たりの所要時間、運搬距離、持ち上げる重さ、姿勢の変化回数などを計測します。
人間工学的な作業負荷計算、ビデオ録画とモーション解析なども取り入れられます。
アンケート・インタビュー評価
作業者自身へのアンケートやインタビューも有力です。
「分かりやすいか」「やりやすいか」「エラーしにくいか」「疲れは減ったか」など、リッカートスケール(5段階評価)で点数を集め、定期的に比較します。
ストレスマーカー測定
高度な事例では、心拍変動や皮膚電流など生理学的ストレス反応をセンサで測る研究も進んでいます。
現場への即時導入は難しいですが、過度な精神的負荷や緊張が新たなエラー要因になっていないか把握することは大切です。
現場での代表的製品事例
では人間特性に基づく使いやすさ設計の代表的な実製品例をご紹介します。
現場で根強い「誤操作ゼロ」ボタン
ある大手工場では、間違えては絶対にいけない「非常停止ボタン」や「品質ロスにつながる工程切替ボタン」は、意図しない接触では押せないカバー付きスイッチに変更、押下には2手操作を要する仕組みに。
こうした「ヒューマンエラー想定済み」設計は古いようですが、現在でも大いに有効な対策です。
漢字・ピクトグラムの併記表示/ユニバーサルレイアウト
多国籍化・多世代化が進む工場現場では、日本語だけでなく簡単なピクト(図記号)や英語を併記した操作表示が定着。
たとえば「危険:HIGH VOLTAGE」と雷のピクト、「やりなおし」には丸矢印の循環図など、視覚的直感で瞬時に判断できるレイアウトが標準化されています。
自動化設備と人間の共存設計
自動倉庫やロボットラインでは、センサや非常停止装置に加え、人間が安全帯を装着しないと操作できないロック機構の導入があります。
これも「人間特性」の逆手活用で、作業者の油断や一瞬の気の緩みさえ許容しない「万全のフェイルセーフ」実装例です。
デジタル化の中にも残る「アナログの良さ」
タッチパネル全盛のいま、物理ボタンやダイヤル式操作が敢えて残る現場もあります。
手袋をしたままでも確実に押せるボタン、目を離しても指先の感覚でスイッチを判別できる形状などは、アナログ全盛時代からの叡智の継承です。
最新デジタル化とアナログ設計の「いいとこ取り」が、現代製造業の新しい使いやすさ設計手法といえるでしょう。
調達購買・バイヤーが知っておくべき視点
調達バイヤーとしては、金額や納期、スペックだけでなく、「最終現場での使いやすさ」を要求仕様の段階で意識することが、競合との差別化につながります。
要求仕様書への反映
スペックだけでなく、「現場作業員がミスせず使えること」「誤操作リスクが限りなくゼロであること」「視認性・耐久性があること」など、ヒューマンファクタ視点での要求事項を積極的に盛り込みましょう。
サプライヤーへのフィードバック
サプライヤーにも「使う人目線での提案改善余地がないか」の改善提案を求めることで、従来型の「安い・早い」だけでない価値の高い提案を引き出せる場合があります。
サプライヤーはバイヤーのそういった想いを理解することで、より現場に根付いた自社の強みを磨けます。
まとめ:人と技術が共に活きる製造業を目指して
人間特性に基づく使いやすさ設計は、単なるエルゴノミクスの話ではありません。
それは安全・品質という「現場の命」に直結し、技術・コスト競争を乗り越えて日本の製造業の新時代を切り開く源泉です。
もし使いやすさ設計が遅れれば、熟練者頼み、非効率、事故・ミス、若手離職の増加…といった「昭和の影」がつきまとい続けます。
時代は変わっても、モノを作るのは「人」です。
現場に根づく知恵と最先端のヒューマンファクタ設計で、現場の価値を「人」から最大限に引き出す。
それがこれからの製造業の持続的な発展につながると強く信じています。
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