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投稿日:2025年6月23日

接着の基礎と解体性および易剥離性接着粘着剤への応用

はじめに:なぜ「接着」と「解体性」に注目するのか

製造業の現場に携わる皆様にとって、「接着」はもっとも身近で、それでいて奥の深いプロセスの一つではないでしょうか。

金属・プラスチック・ゴムなど異種材料の接合や、組立工数の削減による生産性向上はもちろん、部品点数の削減によるコストダウンにも繋がるのが接着技術の大きなメリットです。

一方で、近年急速にニーズが高まっているのが「解体性」「易剥離性」といった、従来とは逆の視点を持った接着技術です。

リサイクル志向の高まり、サーキュラーエコノミー(循環型経済)への移行、アフターサービスやリユース・リビルド対応、そして生産ラインの効率化や歩留まり改善など、現場のあらゆる工程で「接着したものを必要な時にしっかりはがす・分解する」ことが求められるようになっています。

本記事では「接着」の基礎知識から、いま注目される「解体性」「易剥離性」に優れた粘着剤・接着剤の実践的な選定と活用方法まで、現場目線と最新動向の両面から解説していきます。

接着の基礎知識:接着・粘着のメカニズム

「接着」と「粘着」の違いとは

「接着」とは、被着材(材料)の表面に接着剤を介して固着し、二つ以上の材料を一体化させることです。

これに対して「粘着」は、粘着剤で一時的に貼り付け可能とする現象で、例えばテープやラベルなどがこれに当たります。

いずれも表面同士が近接し、分子レベルでの引力(ファンデルワールス力、化学結合力など)や、物理的な浸透(アンカーリング効果)、さらに拡散による結合(オートグリューション)など様々なメカニズムが重なり合って成り立っています。

接着剤の種類と特徴

接着剤はその化学的性質や硬化の仕組みによっていくつかに分類できます。

  • エポキシ系 … 高い接着強度と耐熱性を持ち、金属・樹脂など幅広く使用
  • アクリル系 … 速乾性・耐水性に優れ、透明性も高い
  • ウレタン系 … 柔軟性があり、振動や衝撃にも強い
  • シリコーン系 … 耐熱・耐寒・耐候・電気絶縁性に優れる
  • ホットメルト … 熱で溶融し、冷えると硬化するタイプ。使いやすさ重視
  • 反応型粘着剤 … 外部刺激(水、熱、光など)で粘着性や接着性が変化

これらの特性を活かして用途や要求特性に応じた選定・運用が実践現場で重要です。

接着と製造現場の親和性

昭和から令和へと時代が進む中でも、リベットやねじによる機械的な締結と並び、接着による化学的締結は依然強い存在感を持っています。

組立自動化ラインやIoT/AI導入による製造プロセス高度化にあっても、最適な接着剤の選定や塗布量管理、硬化条件の制御は人の経験とノウハウが不可欠な工程の一つです。

接着不良が生じた際の工程遡及や、不良品の解体・再利用といった点でも、分離・剥離工程を含めた全体最適視点の重要性が増しています。

解体性・易剥離性接着粘着剤へのニーズ高騰の背景

サステナブル社会への対応

近年、サステナビリティやカーボンニュートラルといった社会的要請が高まる中、製造業も「脱・一体化」へと大きく舵を切りつつあります。

製造後も「分解しやすい」「部品を再利用・リサイクルしやすい」設計を前提とするモノづくりが求められ、「DFA(組立性設計)」「DFD(解体性設計)」などの設計思想が浸透してきています。

特に、自動車や家電、情報機器分野では法規制(ELV指令、WEEE指令、RoHS指令 等)対応や、顧客・取引先からのリサイクル要求の増加により、分別解体を前提にした材料・接着剤選びが急務となっています。

多様化する生産管理・アフターフローの最適化

生産現場では、「工程内で一時仮固定したい」「必要時にだけ分解したい」「貼付位置を微調整したい」など多様なニーズが増えています。

またアフターサービスでは、修理や部品交換時の再利用や、解体時の作業簡便化・作業者負担減を重視する流れも強まっています。

これらの流れに応じて、外観性・接着力・作業性と「必要なタイミングで安全かつ確実にはがせる」「現場で材料損傷なく剥離できる」といった解体性・易剥離性が強く求められているのです。

サプライチェーン強靱化と調達購買の視点

調達購買担当やサプライヤーの立場からも、資源循環の観点やリスク分散、複数サプライヤーでの材料の共用・再利用の選択肢が増すことで、全体最適やコスト競争力の強化が可能となります。

組立から解体までのライフサイクル全体で「使いきり」ではなく「循環」の発想を持つことは、これからの競争力確保にも直結すると言えるでしょう。

解体性・易剥離性接着粘着剤の種類・技術動向

はがしやすさを実現する技術の進化

「解体性」「易剥離性」を持つ接着剤・粘着剤には、以下のような技術的アプローチがあります。

  • 低粘着性両面テープ … 必要な時だけ強固な貼付後、剥がす際は糊残り・破損が起きにくい
  • 再剥離フィルム … シール材や保護フィルム、配線保護などに多用
  • 熱変化型接着剤 … 一定温度以上に加熱することで粘着力が低下し、容易に剥離可能
  • 水溶・加水分解型接着剤 … 水やアルカリ溶液で粘着剤が分解し、解体を容易化
  • 光硬化・光可逆型接着剤 … 紫外線や可視光の照射で硬化・剥離プロセスを制御
  • マイクロカプセル型 … 特殊な外部刺激でカプセル内部成分が放出され、粘着性を変化
  • ワックス型 … 溶剤や軽い加熱で軟化し、はがしやすくなる

これらは「組立後工程」「品質検査工程」「修理・リワーク工程」「最終リサイクル処理工程」など、求められる現場シナリオに応じて使い分けされています。

実務目線:選定時に考慮すべきポイント

現場で「解体性」「易剥離性」接着・粘着剤を導入する際、最も重視すべきなのは以下です。

  • 接着(粘着)力 … 組立ライン・製品輸送では十分耐える強度が必要
  • 剥離時の作業性 … 剥がす際に破損・糊残り・材料損傷を生じないか
  • 外部刺激の与えやすさ … 工程内・現場作業で熱や水・有機溶剤・光などの投入が容易か
  • 安全性と環境適合性 … 従業員と製品・環境への影響、リスクマネジメント
  • 調達コスト・安定供給性 … サプライヤー選択肢、価格変動リスク、入手性
  • 規格・法規制適合 … RoHS、REACH、ELVなど最新の規制チェック

ここに、自社だけでなくサプライチェーン全体、そしてリユース・リサイクルされる将来の工程までを視野に入れることで、「現場最適」でなく「全体最適」な導入戦略が構築できます。

業界動向とアナログ現場での実践知

昭和型アナログ現場の工夫と今後の変化

多くの工場では今も「ドライバーが入らない場所」「振動衝撃の吸収が必要」「仮止めと本締めを分けたい」といったアナログ現場ならではの悩みが多発します。

そのような場面で、機械的締結(ねじ、リベット)とのコンビネーションや、両面テープ類+液状接着剤、被着材の前処理など、「小技」による独自工夫が発展してきました。

今後は解体性・易剥離性技術を取り入れつつ、従来の現場ノウハウと組み合わせることで、より実用的な「ハイブリッド接着」も主流となるでしょう。

サプライヤーとバイヤーの共創による進化

バイヤー・サプライヤー双方には「売って終わり」「納品して終わり」ではない、継続的な技術共創の姿勢が不可欠です。

自社が最初に経験した課題点(例:剥がれやすさ、コスト、品質のバラツキなど)は、他社でも同様に起き得る共通テーマです。

積極的に現場での改善ポイントや、工程ごとの工夫・データを共有し合うことで、調達面でも新たな代替提案や最適設計が生まれます。

AI・デジタル時代の「知」の活用

AI検査、自動化ラインでのデータベース化助手など、「接着」「剥離」「再利用」データの見える化が進めば、類似事例や最適パターンの選定もスピードアップします。

昔ながらの勘・コツ・経験知こそ、これからはAIと融合することで現場全体の生産性や品質を飛躍的に高める武器となるのです。

まとめ:いまこそ必要な「接着×解体性」発想の転換

これまで、「出来るだけ強く・丈夫に接着する」ことが製造品質の最高到達点とされてきました。

しかし、サステナブル社会・多様化する生産現場においては、「必要な時にはがせる」「脱着性・再利用性もトータルで設計する」新たな視点が不可欠です。

高品質・高効率だけでなく、その先のリサイクル・再利用工程や、製品寿命管理・アフターサービスまで繋げて考えたとき、解体性・易剥離性接着粘着剤の活用が、製造業の新たな競争力となります。

現場主義の知恵と最先端の技術、サプライヤーやバイヤーといった調達購買ネットワークの連携——。

いまこそ「深く深く考える」ことで、アナログ業界に根付いた地道な現場力と、時代変化に対応する柔軟なラテラルシンキングを融合させ、製造業全体の新たな地平線を切り拓きましょう。

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