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投稿日:2025年6月7日

焼結技術の基礎と応用事例

焼結技術とは何か?製造業の礎を支える基礎技術

焼結技術(シンタリング、sintering)は、粉末状の原料を高温で加熱し、固体として一体化させる重要な成形技術です。

製造業の現場では、鉄、銅、アルミニウムなど多様な金属やセラミックスの部品づくりに不可欠な技術となっています。

実は、焼結技術は自動車、OA機器、家電製品、航空宇宙、医療、エネルギー分野など幅広い産業で活用されています。

私が現場で直面してきた変化の激しい時代でさえ、焼結技術の価値は色あせることがありませんでした。

その理由と背景、基礎から最新動向、そして具体的な応用事例まで、現場目線で掘り下げてお伝えします。

焼結技術の基礎知識

焼結の原理

焼結とは、微細な粉末を金型などで成形した後、高温(通常は材料の融点よりやや低い温度)で加熱することで、粒子同士の接合が進み、強度のある固形体になる現象です。

粉末の持つ高い比表面積が、焼結による原子や分子の拡散を促進し、結合を強固なものとします。

一般的な焼結プロセスは以下のような流れです。

1. 原料粉末の準備
2. 成形(主にプレス成形が主流)
3. 焼結炉で加熱
4. 必要に応じて仕上げ加工(後加工)

この過程でバインダー(接着剤的な役割)を加えることもあります。

焼結法のバリエーション

焼結には目的や材料特性に応じて、さまざまな手法があります。

– 固相焼結:粉末同士が溶解せずに原子拡散により結合
– 液相焼結:一部が液体化し、急速に粒子を繋げる
– 熱間静水圧焼結(HIP):高温・高圧環境で緻密化
– マイクロ波焼結:マイクロ波エネルギーを利用、短時間焼結
– フィールドアシスト(SPS、放電プラズマ焼結):パルス放電を与えて急速焼結

現場で多用されるのは固相焼結と液相焼結ですが、近年はIoT時代や自動車の電動化などの流れに応じて、急速・緻密化が求められる特化技術も進化しています。

焼結技術が製造業で重宝される理由

複雑な形状・一体成形が可能

プレス成形が容易で、切削加工では困難な形状や内部構造を作りやすいのが焼結の最大の武器です。

たとえば自動車のパワートレイン構成部品、歯車、カム、フィルター類など複雑形状・多孔質構造の製品をローコストで量産できます。

材料コストと歩留まり向上

粉末を必要量だけ使用するので、切削加工で生じる大きな端材やロスがありません。

これは現場視点で言えば、「歩留まり(材料から得られる製品の割合)」が飛躍的に向上するというメリットです。

また再利用粉末も使いやすいので、SDGs時代のサステナブルな生産現場にも適応します。

特性の自在なカスタマイズ

粉末の種類や混合比率、焼結条件の工夫で、製品の強度・硬度・導電性・耐摩耗性・磁性などを細かく調整できます。

合金化や複合材料の設計自由度も高く、「材料開発力」が最大限に発揮されるフィールドです。

焼結技術の応用事例と業界動向

自動車業界

トランスミッション部品(シンクロナイザーリング、ギア、クラッチ部品)、エンジン・バルブガイド、燃料噴射系の精密パーツなど、現代の自動車1台には30kg以上の焼結部品が使われている例もあります。

特にEV化で、モーター用の磁性材料(軟磁性・永久磁石材料)や高耐久ギア部品の需要が拡大中です。

また、巨大自動車メーカーのサプライチェーンの中でも、「調達コストダウン」「材料の足回り強化」のキープレイヤーとして、焼結部品メーカーの交渉力が増しています。

OA機器・医療分野

コピー機やプリンターのハイブリッドギア、ベアリング、医療用ステンレス部品や人工関節部品など、「小型・高精度・大量生産性」が求められる用途で焼結が活躍します。

焼結ステンレスやCo-Cr合金による人工関節では、「身体との親和性」「耐摩耗・耐食性」といった高レベル要求にも応えています。

電子部品・エネルギー分野

積層セラミックコンデンサ(MLCC)、フェライトコア(電磁波ノイズ軽減)、燃料電池の電極材料や触媒など、省エネ・高機能化を加速するデバイスで焼結技術が必須となっています。

現場目線で言えば、IoTセンシング用の超小型部品や、EVバッテリー系の部品内製化といった動向とリンクしています。

昭和から抜け出せない!?アナログ現場での課題

日本の多くの製造現場は、焼結でつくられた小物部品の「目視検査」や「現物合わせ」に頼る受け入れ検査フローが今なお根強いです。

全数検査・人依存作業の合理化や、「異常値の自動フィードバック」「AI判定との連携」など、焼結の一歩先を見据えた現場改善には伸びしろが大きいのが実態です。

また、焼結部品の特性・ロット毎のバラツキ制御(寸法精度・気孔率など)は、バイヤーとサプライヤーの大きな対話テーマでもあります。

バイヤー目線で押さえたい焼結技術のポイント

設計自由度とコストバランス

焼結部品は量産効果が出る一方で、弱点もあります。

たとえば複雑形状にしすぎると型費用や後加工コストが膨らみがちです。

バイヤーは図面段階から、「焼結で本当に有利な部分とそうでない部分」「歩留まり維持しつつコストダウンできるポイント」を見極める視点が求められます。

サプライヤー選定時の着眼点

– 材料調達力と粉末のグレード選定力
– 量産実績と品質安定性(寸法・表面精度)
– 異常波形や工程変化への追従性(トレーサビリティ)
– 初期流動品質(PPAP、APQPなど自動車規格への対応)

焼結を外注する際は、「ただのコスト競争」にならないように、相見積もり時の技術項目引き出し能力が差を生みます。

品質トラブルになった場合の解析力や再発防止フローも、サプライヤーの実力を測る重要な指標です。

サプライヤーから見たバイヤーの要望

サプライヤー(焼結部品メーカー)からすれば、

– 「品質基準が厳しく現場との摺合せが多い」
– 「歩留まり悪化時のリスク分担が曖昧」
– 「小ロット試作や短納期要求に振り回されがち」

こうした悩みが絶えません。

購買担当者やバイヤーが現場本位の技術知識を持った上で、

– 「必要な品質保証はどこまでか」
– 「手戻りと工数バランスの最適化」

こうした着地点を事前に対話できると、現場トラブルや無駄なコスト発生を大幅に減らせます。

これからの焼結技術―AI・自動化・脱・昭和の現場改革

今後は、焼結部品の生産現場にもAI検査、IoTトレーサビリティ、自動運搬ロボットなど「スマートファクトリー」の波が押し寄せます。

異常検知、工程連動の自動化対応が進めば、バラツキのない高品質供給や、迅速な市場クレーム対応が可能になります。

また、3Dプリンティング(AM=Additive Manufacturing)の進化によって、

– 「金型レス試作」
– 「設計自由度のさらなる拡大」

こうした次世代的な焼結技術と従来技術のハイブリッド化も加速します。

「あえてアナログ現場で焼結の本質を守りつつ、最先端も貪欲に吸収する」

―これこそが、現場で生き残るための現実解です。

まとめ:焼結技術で現場を変える力を養おう

焼結技術は昭和・平成・令和と、常に製造業の “縁の下の力持ち” でした。

今後も焼結技術の基礎を理解し、コストと品質、設計自由度のせめぎあいを現場目線で見極める知恵が必要です。

これからバイヤーを目指す方には、焼結部品の設計・調達時に「どんな現場課題が生じやすいか」「どうすればサプライヤーとの信頼関係を築けるか」を意識して取り組んでいただきたいと思います。

サプライヤーの方も、今までの常識にとらわれず、スマートな工程改善やデジタル化に積極的にチャレンジしてください。

「焼結技術を深く理解し、的確に現場へ落とし込む」

それが、これからの製造現場で付加価値を生み出し、アナログ業界から一歩抜け出すための鍵になるでしょう。

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