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投稿日:2025年6月9日

永久磁石・希土類ボンド磁石の基礎と小型モータへの活かし方

はじめに:なぜ今、「磁石」が注目されているのか

製造業において、永遠の課題である「高効率化」「省エネ化」「小型軽量化」。
このすべてのキーワードに深く関わっている重要な部品のひとつが、「磁石」です。

特に電気自動車や産業用ロボット、OA機器、さらには日常使いの小型家電に至るまで、現場で求められる性能の進化に貢献しているのが「永久磁石」と「希土類(レアアース)ボンド磁石」。
これらの磁石は、現場の生産効率を左右し、製品設計の自由度に革新をもたらしています。

本記事では、昭和から続くアナログ的なモノづくりの流れを踏まえつつ、最新の業界動向も交えて、永久磁石・希土類ボンド磁石の基礎と小型モータへの生かし方を現場目線で徹底解説します。
バイヤー志望の方、サプライヤーの立場で業界を俯瞰したい方にも役立つ、実践的な内容をお届けします。

永久磁石・希土類ボンド磁石とは?-基礎知識の整理

永久磁石の定義と分類

永久磁石とは、外部から磁界を与えなくても自ら磁気を持ち続ける性質を持つ磁石です。
代表的なものに、フェライト磁石、アルニコ磁石、サマリウムコバルト磁石、そして現代の省エネ・高効率を語るうえで外せないネオジム磁石(Nd-Fe-B磁石)があります。

各磁石の特徴を簡単に整理すると以下の通りです。

・フェライト磁石:コストが安く、耐蝕性も高いですが、磁力は控え目です。
・アルニコ磁石:高温下でも磁力が安定しますが、衝撃に弱いデメリットがあります。
・サマリウムコバルト磁石:耐熱性と耐蝕性に優れ、磁力も強いですがコストが高いのが欠点です。
・ネオジム磁石:現行最強クラスの磁力を持ちますが、腐食しやすく温度特性もやや弱点です。

希土類ボンド磁石とは何か

「希土類ボンド磁石」とは、上述の希土類磁石(サマリウムコバルト、ネオジムなど)の磁性粉末と樹脂を混ぜ、成形して作る複合材料の磁石です。
焼結工程を用いず、射出成形や圧縮成形で複雑な形状や薄肉部品が容易に作れるため、軽量コンパクトな製品設計に最適です。
また、希土類由来の高磁力と、成形自由度、高加工精度、量産性の高さを両立しています。

小型モータ開発における永久磁石・希土類ボンド磁石の使いどころ

省スペース化・高効率化への寄与

製造現場にとって、小型で高トルク・高効率なモータは、産業自動化や省エネルギー、コスト低減のために不可欠です。
特に近年はEV車やロボット市場の拡大により、小型モータの需要は飛躍的に増大しています。

この際、最小寸法で最大のトルクを発揮できる永久磁石、特に希土類磁石やこれをベースにしたボンド磁石が圧倒的に有利です。
ボンド磁石をモータのロータなどに使うことで、銅線コイルや鉄心部材の削減ができ、設計自由度が高まります。
製品の小型・軽量化だけでなく、回転効率の向上や省エネルギー設計にも直結してきます。

現場レベルでの具体的な利点としては、
・省スペース化により組込みやすくなる
・モータの発熱抑制(=信頼性UP)
・高回転時の損失低減
・生産リードタイム短縮
などがあります。

巻線・組立工程の簡素化

ボンド磁石は樹脂と一体成形が可能なため、複雑な3次元形状の部品も一発で仕上げられます。
このため、従来の巻線・鉄心・マグネット部品の分割設計・多工程組立に比べて、工程数・管理点が大幅に削減されます。
アナログ志向が強かった工場現場でも、「組立工数が減る=熟練作業者への依存度低減」に気付き、少人数・短納期生産のトリガーとなっています。

部品の寸法バラツキも、ボンド磁石なら高精度成形(公差±0.03mm程度)を期待できるため、最終製品の組立歩留まりも向上します。

永久磁石・希土類ボンド磁石の調達課題とバイヤー視点

グローバル調達の現実

バイヤーにとって永久磁石、特に希土類磁石をめぐる最大の懸念は「調達リスク」です。
ご存知のように、希土類資源の大半は中国を筆頭に地政学的リスクが高い地域が多く、価格ボラティリティやサプライチェーンの不安定さは急激に高まっています。

こうした状況下、バイヤーは単価交渉や在庫適正化のみならず、
・中国依存脱却(日本、ベトナム産などのポートフォリオ化)
・スクラップリサイクルや都市鉱山の活用(循環型モノづくり)
・規格共通化による用途転用性UP
・新材料(レアアースレス磁石など)の探索
など多方面からの調達戦略の再設計が求められています。

なお、現場での運用には「納期遵守」「品質安定」「組立適正」も強い圧力となりますので、サプライヤーとしては単なる素材納入から一歩踏み込んだ「設計支援」「現場最適化提案」が差別化の決め手になります。

品質管理・規格の壁

モータ用部品はとりわけ「寸法精度」「磁力安定度(減磁しにくさ)」が強く要求されます。
ところが希土類ボンド磁石は成形条件や材料ロットによって磁気特性や寸法バラツキが発生しやすい側面があります。
JISやISO等の規格対応は当然、それ以上に使われ方(=アセンブリ状態)を鑑みたQC工程設計が必要です。

バイヤーは単純に「納入時検査合格」で満足せず、「ライン投入後の歩留り変動」や「現場の自働化適性」まで踏み込んで判断基準を持つことが差別化となります。

昭和的な思考からの脱却と、現場主導のイノベーション

「前例踏襲」と「現場改善」のギャップ

昭和以来、日本の製造業現場では「実績と信頼」を重視する傾向が強く、磁石についても「フェライトなら安心」「アルニコで十分」といった保守的な発想が根深く残っています。

ですが、グローバル競争の加速や、コスト高・人手不足・カーボンニュートラルといった新たな要請が押し寄せる中で、現場主導のイノベーションが求められる時代です。
たとえば、ボンド磁石技術の活用でレイアウト変更や工程短縮に挑戦し、
「これまでボトルネックだった組立工数・歩留まり・総原価を一気に改善」できる可能性はけっして低くありません。

設計と調達、生産管理・品質管理が一体となる時代へ

磁石に限らず、複合材料・複合部品の調達では、全体最適の視点が必須です。
現場目線では、
・設計初期段階からの「共通化・標準化」
・バイヤーと共に「リスク分析」→短納期化・コスト安定への布石
・QC工程設計と「トレーサビリティ」の徹底
・歩留まりデータや現場でのトラブル事例の横連携
こうした横断型チームによるPDCAが、現代の高効率モノづくりの法則になります。

従来型の縦割り設計・調達・製造・品質管理から「ひとつのチームで問題を先取り、解決する」姿勢が会社全体で求められています。

未来志向のラテラルシンキング:磁石活用の新たな地平線

今後、レアアース資源の新しいリサイクル技術や、用途に応じて希土類の配合を最適化するAI設計、新規バインダー材による環境配慮型ボンド磁石の登場など、“新しい着想”が求められる時代がやってきます。

加えて、モータやアクチュエータ用途だけでなく、
・医療機器用の超小型モータ
・ウェアラブルデバイスやIoT化センサー
・高温環境下や宇宙産業向けの特殊モータ
といった、新領域でのチャレンジも加速しています。

磁石という「小さな部品」も、“現場の知見”と“革新の視点”を結びつけ、業界全体を変えていく起点になります。
今、業界で求められているのは、前例にとらわれないラテラルな思考によって、磁石の価値を再定義し、小型モータとものづくりの未来を切り拓くことに他なりません。

まとめ

永久磁石・希土類ボンド磁石は、ただモータの部品にとどまらず、製造業現場の生産効率・省エネ・DX化を支える源泉です。

調達バイヤー、エンジニア、製造現場の管理職それぞれの立場から、
・基礎知識の整理
・調達実務とリスク管理
・業界トレンドの変化
・ラテラルな発想による新しい活用
を意識することが、アナログ的な昭和的発想から現代のグローバル製造業へと飛躍する鍵となります。

磁石ひとつを極めることが、サプライチェーン全体と現場イノベーションの出発点です。
ぜひ今日から、現場の視点で磁石の新たな価値と可能性を考えてみてください。

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