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衝撃応力の基礎・解析と強度設計への応用

目次
はじめに:現場目線で考える「衝撃応力」
製造業の現場にいると、毎日数多くの部品や製品に触れることになります。
日々の業務の中でよく耳にする「応力」という言葉ですが、とりわけ「衝撃応力」は故障や不具合、クレームの根本原因になりやすい非常に重要な要素です。
衝撃応力は単なる力の強さだけでなく、速度や分布、材料の特性、そして設計者や現場担当者の“気づき”によって捉え方・対策が大きく変わります。
本記事では、衝撃応力の基礎から解析の考え方、そして現場力を生かした強度設計への応用まで、豊富な実体験も交えて解説します。
衝撃応力とは何か?基礎の再確認
「衝撃」と「静的荷重」の違い
衝撃応力とは、対象物に瞬間的で急激な力が加わったときに発生する内部応力のことです。
静的荷重―例えば、棚の上にずっと置いてある重い箱―はゆっくりと物体に加わるものですが、衝撃荷重は落下物やハンマーでの打撃、道路の段差を超えるトラックの車軸など、極めて短時間に大きな力が加わる点が特徴です。
この「短時間」「急激」という特性が、設計や品質保証の現場で悩みの種となります。
静的強度だけに着目していると、実際の使われ方で思わぬ破損やクレームが発生する…そんなケースは少なくありません。
身の回りの衝撃応力:具体例からイメージする
製造現場では、以下のような場面で衝撃応力への備えが求められます。
・部品搬送中の落下(半導体や精密部品の取り扱い)
・自動車や建設機械のシャーシへの衝突や振動
・粉体やボルトの打ち込み作業
・検査工程での衝撃機や引張試験
私はある工場の品質管理責任者時代、搬送中に落下した製品で微細なクラックが発生し、見逃されて後工程でトラブルとなったことがあります。
こうした一見“うっかり”な事故も、衝撃応力という観点でしっかり対策していくことが不可欠です。
衝撃応力の理論と解析の要点
力学的視点:衝撃応力の発生と解析式
衝撃応力は、「運動エネルギーがどのように瞬時に物体へ伝わるか」を考えることで理解できます。
物体Aが質量m、速度vで物体Bに衝突したとしましょう。
Aの運動エネルギーは1/2mv2。
この運動エネルギーが短時間で物体Bへ伝達され、Bの内部には瞬時に「応力波」が発生します。
一般に、衝撃荷重P0がバネ定数kのスプリングに落下して加わった場合の最大応力σmaxは、単純にP0の2倍にも達します。
つまり、「衝撃係数2倍の法則」とも言える重要なポイントがあります。
衝撃応力σimpact ≒ 2×(静的応力σstatic)
ここに材料のヤング率や降伏点、樹脂の粘弾性といった特性を加味しつつ、実際の運用条件で余裕を持った設計が必須です。
現場で使える:簡易的な衝撃応力の見積もり方法
現場で衝撃荷重の数値解析までできるエンジニアは、多くありません。
そこで私が推奨するのは、下記の簡易算定法です。
1. 静的にかかった場合の応力を計算する
2. 衝撃を加味して、最低でも2倍の安全係数を掛けて計算する
3. 過去の破損事例や、類似製品の実績値を参考にする
4. 簡易衝撃試験(落下高さ指定・打撃テストなど)で実測する
この4ステップを徹底すれば、「予想外の破断やクラック」のリスクは大きく低減できます。
昭和から抜け出せない?製造業のアナログな現状
図面上の「指示」だけでは不十分な理由
現在も日本の多くの製造現場では、設計図面や仕様書に「最大荷重」や「最大応力」として記入されている値が静的荷重だけ、というケースが多く見受けられます。
現場担当者が図面や設計部署から渡された仕様に従い製品製造する一方、すべての過酷な運用条件―たとえば段ボールごとの製品落下、設備側からの打撃力、検査・組立時の力加減など―は設計要件から抜け落ちがちです。
ここで重要なのは、「現場のリアルに即した設計・解析フローをいかに構築するか」という視点です。
強度設計:現場・設計・調達バイヤーの連携が不可欠
調達購買・バイヤーの観点でも、サプライヤー(下請け・協力会社)と設計担当のコミュニケーション不足は、古くからの日本製造業の課題として残っています。
静的設計基準でOKを出したが、いざ現場の運用―例えば搬送/組付/保管時の誤操作やヒューマンエラー―でトラブルが続発、突き詰めていくと「衝撃応力を加味していなかった」ことが原因だった、というパターンも多々あります。
これを打破するには、現場でのヒヤリハット情報や過去トラブルの情報を設計段階で積極的に反映させる体制づくりが欠かせません。
衝撃応力の強度設計への応用:現場目線のポイント
安全率の設定と材料選定
設計で強度計算をする際、「静的計算値×衝撃係数(安全率)」の考え方は必須です。
一般的には、安全率を1.5~2.5程度に設定することが多いですが、以下の点に注意しましょう。
・衝撃荷重が頻繁にかかる部位:安全率2.0以上で設計
・異素材(樹脂×金属など)は、エネルギー吸収性に注目
・応力集中が生じやすい箇所には、フィレットや補強設計を入れる
・過去の破損ロット・現品確認のフィードバックを重視
例えば射出成形品(プラスチック成形品)においては、クランプ時や落下試験での応力集中が設計値よりも高くなりがちです。
材料選定段階から「衝撃吸収性のある樹脂(ABSやポリカーボネート)」を選ぶ、金属であれば韌性・衝撃値の高い材質を採用する、などの工夫が有効です。
工程設計や設備投資の工夫
製造・生産現場では「そもそも衝撃荷重をかけない工程設計にする」という抜本的な対策も大切です。
・自動搬送・ロボット導入により、落下や打撃のヒューマンエラーを低減
・クッション材、ガイドレールの設置、緩衝パッド追加などの工程改善
・不良発生時の「現物確認」「発生原因の見える化」体制づくり
この領域こそ、日本ならではの現場改善力―カイゼン活動、5S、QCサークルの実践など―が大きな役割を果たします。
現場発:リスク検証とフィードバックの循環
衝撃応力対策の根本は、「再発防止」と「設計への反映」サイクルです。
現場のヒヤリハット報告、工程内チェックシートへの記入、サプライヤーからの“違和感情報”をチームで共有し、製品設計に反映させるルーチンを推進しましょう。
バイヤーや調達担当であれば、「サプライヤーの加工・検査工程で衝撃リスクがないか?」という視点で現場監査・仕様打合せを行いましょう。
サプライヤー側も、自社のリスク検証結果や、幸運にも未然に防げた事例を積極的に開示・提案する姿勢が重要です。
まとめ:衝撃応力対策が強みとなる製造業像を目指して
衝撃応力への対応は、「設計基準の強化」「材料・工程の最適化」「現場の気づきの反映」といった多面的な取り組みが必要です。
静的力学だけでなく、現場の“リアル”を踏まえた設計・評価・調達が、今後の日本製造業において大きな競争力の源泉となります。
令和の時代、アナログな業界構造やコミュニケーションギャップを逆手にとって、「現場力」を最大化することが、持続可能な成長とよりよい品質・安全につながるのです。
あなたの工場・現場でも、ぜひ「衝撃応力」の視点をもう一度見直し、強度設計と現場改善のサイクルを高めていきましょう。
それこそが、次世代をリードする製造業の“新しい常識”となるはずです。
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