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投稿日:2025年6月4日

プラスチック熱溶着・接合技術の基礎と強度評価・異材接合への応用

プラスチック熱溶着・接合技術とは何か

プラスチック熱溶着や接合技術は、射出成形などで成型された樹脂部品同士を熱エネルギーによって一体化させるプロセスです。

接着剤やねじ止め、リベット結合などの従来手法と異なり、材料そのものを部分的に溶かして一体化させるため、気密性や強度に優れるという特徴があります。

自動車部品から家電、医療、日用品に至るまで多くの分野で使われており、量産現場では生産性向上・コストダウンの切り札とも言える技術です。

では、なぜ今改めてプラスチック熱溶着・接合が注目されているのでしょうか。

それは、サステナブル化や部品一体化の流れ、軽量化需要の拡大など、昭和時代にはなかった現代の課題に対し、アナログ現場の手法と最新技術を組み合わせる必要性が生じているからです。

熱溶着技術の主要な種類

超音波溶着

樹脂同士の境界面に超音波振動を加え、摩擦によって発生した熱で局所的に融着させます。

短時間で確実に接合できるため、電子部品のハウジングや自動車のインパネ結合などで主流です。

治具精度や振動伝達による設計ノウハウが求められ、樹脂の材質・形状によっては課題も残ります。

熱板溶着

ヒーターで加熱した金属板を途中に挟んで樹脂端面を溶かし、その後圧着して接合します。

大寸法の部品や厚肉成形品など、均一な加熱が必要な場合に適します。

冷却工程やサイクル短縮の工夫が生産管理上のポイントです。

振動溶着・スピン溶着

振動溶着は部材を高周波で一方的に振動させて摩擦熱で溶かし、スピン溶着は円筒状部品を回転させて摩擦熱で接合する方法です。

シンプルかつ汎用性が高い一方、位置合わせや加工対象部品の形状制約も意識する必要があります。

レーザー・赤外線溶着など新技術

レーザーや赤外線溶着は、特定波長の光で短時間に加熱できる最新技術です。

透明〜黒色部品のマルチマテリアル結合など、制約の多かった従来法を補完する役割も持ち始めています。

材料調達〜量産までの一貫プロセスを意識する現場目線では、これら新旧技術の使い分けが競争力の源泉となります。

接合強度評価〜現場で失敗しないポイント

熱溶着したプラスチック接合部の強度確認は、安全性や品質保証の上で極めて重要です。

適切な評価・検証をしなければ、組立後や使用中に「剥がれ・割れ・漏れ」といった重大な不具合が発生し、ラインストップやリコールといったリスクにも直結します。

現場で頻繁に使われる強度評価の代表例を紹介します。

引張り試験・せん断試験

専用試験機で溶着部に力を加え、どの荷重で破断するかを測定します。

管理職やバイヤーが部品の承認を行う際、試験データと不具合品分析を突き合わせて判断することが肝要です。

気密性・液漏れ検査

ガスや液体を注入し、気密性の有無を確認する方法です。

漏れ試験は自動車や医療機器、電子デバイス分野で特に重要です。

昭和時代から続く「水槽につけて泡を見る」という目視確認も根強く残っていますが、最新の自動検査設備や画像解析技術などを現場に導入することで、生産性と検出率を大幅に向上させることができます。

実際の不具合事例に学ぶ

熱溶着・接合不良による現場トラブルは後を絶ちません。

溶着面の異物混入、加熱ムラ、圧着不足、金型設計ミス、材料の物性差・・・など、要因は多岐に渡ります。

失敗事例から横展開できる現場管理ノウハウは、デジタルだけでなく、アナログな目視点検や3S活動とも融合してこそ最大の効果を生みます。

また、現場では予算・納期・品質の三要素バランスが欠かせません。

運用時の適正なサイクルタイム設定やロス削減、歩留まり管理、現場ワーカーの教育など、単なる接合技術だけでなく周囲の取り組みも含めて考えることが重要です。

異材接合への応用〜昭和アナログから抜け出すヒント

近年の製造業トレンドとして、複合材料(異材)の接合が盛んになっています。

従来プラ×プラ(同種樹脂)の熱溶着だったものから、プラ×金属、プラ×エンプラ、CFRP×樹脂など、多様な組み合わせで一体化や軽量化が求められています。

ここでも昭和や平成の発想だけでは立ち行かなくなっています。

新しい異材接合法の現状と課題

例えば、
・レーザー直接溶着技術
・マイクロ波加熱技術
・プラズマ前処理+接合
など、アナログ現場でも少しずつ取り入れられてきているのが現状です。

それぞれのプロセスには、新しい設備投資や材料の選定、工程設計の難易度向上、評価手法の確立など、現場管理としてクリアすべき課題が山積みです。

「なんとなく使える溶着方法」で現場が回っていた時代から、世界水準の品質競争・コスト競争の中で「なぜこの方法でなければならないのか」を議論し、現場・設計・購買・品質保証が一丸となってプロジェクトを牽引することが、今後の買われるサプライヤー/強いメーカーの条件と言えます。

デジタルトランスフォーメーション(DX)との融合

2024年現在、製造現場にもデジタルツインやIoT、AI外観検査などの新技術導入が進んでいます。

熱溶着・異材接合においても、
・溶着条件のレシピ管理
・トレーサビリティ記録
・リアルタイム強度モニタリング
など、「現物現場力」にデジタルを掛け合わせた生産革新がカギとなります。

昭和アナログ時代から抜け出すには、すでに持っている現場ノウハウ、暗黙知・経験則を構造化し、デジタル人材とのコラボレーションを加速させることが成功への近道です。

バイヤー目線・サプライヤー目線の違いと連携術

調達・購買バイヤーと現場製造サプライヤーは、立場やKPIが異なります。

バイヤーとしては
「品質」
「コスト」
「納期」
「リスク回避」
が最大の関心事です。

一方でサプライヤー現場では
「現場の安全」
「設備負荷」
「クレーム対応」
「技能伝承」
など、より現場の声が重視されがちです。

この溝を埋めるには、定量的なデータ×現場目線の「なぜ?」を双方が相互理解できる場を持つことが不可欠です。

例えば、
・実機によるサンプル評価の立会い
・不具合発生時の即時情報共有
・コスト見積の透明化
・“ワークショップ型”の改善提案会
など、境界を越えたチームアップこそが、昭和世代も令和世代も納得のいくものづくりを生み出します。

また、海外サプライヤーとの異文化コミュニケーションにおいても、共通言語となる強度データや評価仕様を「ものさし」として活用することで、ミスマッチやトラブルリスクを最小化することができます。

まとめ〜プラスチック熱溶着・接合技術の未来へ

プラスチックの熱溶着・接合技術は、昭和期に生まれたアナログな現場ノウハウから始まり、今やデジタル技術・材料技術と融合した“進化型ものづくり”の中核になっています。

「とりあえず貼る」「とりあえずくっつける」「現場合わせでやる」といった従来の発想から脱却し、工程設計~購買~生産管理~品質保証まで一体となったマネジメントが不可欠です。

買い手(バイヤー)も売り手(サプライヤー)も、お互いの現場目線や課題、想いを共有する中で、新しいアイデアや改善点が生まれ、製造業全体の競争力が底上げされていきます。

そして、現場で培った知恵や失敗を次世代へバトンタッチし続けることが、私たち製造業従事者・管理職の大切な使命だと考えます。

これから熱溶着・接合技術に取り組む方、より深く実践的に学びたい方、調達購買の立場で現場管理者と協働したい方にとって、本記事が新たな発見や気付きとなれば幸いです。

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