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FMEAの基礎と効果的・効率的な進め方およびデザインレビューにおける有効な活用法

目次
FMEAとは何か ― 製造業現場の基礎知識
FMEA(Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析)は、製品や工程の設計段階で潜在的な不具合要因を洗い出し、その影響やリスクを評価したうえで、事前に対策を講じる手法です。
今日、多くの自動車業界や電子機器メーカーなどを中心に、グローバルスタンダードとして導入されています。
なぜFMEAがこれほど重視されているのでしょうか。その理由は、不具合が実際に発生してからの損失やブランド毀損、追加コストが計り知れないからです。
現場では、「なぜこんな初歩的な不具合が出てしまったのか」「もっと早くリスクに気付く方法はなかったか」と後悔した経験を持つ方も多いでしょう。
FMEAはその“後悔”を未然に防ぐための、まさに未来への保険なのです。
FMEAの基本ステップと現場のリアルな活用フロー
1. チーム編成とキックオフ
FMEAは座学で学んでも、現場で本質的な価値を見出すのが難しい手法です。
理由はひとつ。紙の上では、机上論でいくらでもリスクが洗い出せるからです。
しかし、実際の現場では、それだけでは不十分です。
そこで最も重要なのが「経験値と現場目線を持つメンバー」が主導することです。
例えば、工程設計をしている設計者だけでなく、保全員やオペレーター、品質担当者、さらにサプライヤーからも知見を集めることが重要です。
キックオフ時点で工場長や課長クラスが「このFMEAチームには現場の誰が必要か」を熟考し、最適なメンバー構成を目指しましょう。
2. 分析対象の明確化
FMEAにはDFMEA(設計段階)、PFMEA(工程段階)などがあります。
どの段階の何をFMEAで分析するのか、その範囲を明確にしてから着手しましょう。
製品全体か、特定部位か、製造工程全体か、局所工程か。
範囲が広すぎると議論が発散し、狭すぎると部分最適で終わるリスクがありますので、最適なスコープ設定を心がけます。
3. 潜在的な故障モードの洗い出し
ここがFMEAの根幹であり、最も現場力が問われるセクションです。
現場でありがちな過ちは「過去の不具合リスト」を流用しただけで満足してしまうことです。
本来重要なのは“まだ起きていない未知のトラブル”をどれだけ想像できるかです。
例えば、段取り替えのタイミング、不慣れなサプライヤー品変更時、大量生産開始時の急な成形変動など、「ヒヤリ・ハットの経験」が宝の山です。
OJTや朝礼での情報も可能なかぎり拾い、可能な限り具体的な工程フローから逆算しながらリスクを網羅します。
4. 故障モードごとの評価 ― S・O・D
FMEAでは各故障モードについて「発生頻度(O:Occurrence)」「重大度(S:Severity)」「検出度(D:Detection)」の3つの観点から点数評価します。
特に昭和から引き継がれる感覚として「重大度」ばかりに目を取られがちですが、
現代では「検出度(D)」=“どれだけ早く気付くか”の管理力が製造現場の差となります。
また、最新のAIやIoTを使ったリアルタイム監視システムが導入されつつある昨今、“検出手段の進化”も考慮した点数付けが求められる時代です。
5. RPN(リスク優先数)で優先順位づけ&対策立案
S・O・Dを掛け合わせた「リスク優先数(RPN)」がFMEA最大の特徴です。
RPNの高い項目を徹底的に対策し、再評価→優先順位更新の繰り返しが、“後手”から“先手”に現場力を変えます。
ここで重要なのは「対策が無理なら工程そのものを変える」などの抜本的発想=ラテラルシンキングです。
自動化が進みつつある業界では「人に頼るより機械化」「測定→AIによる判定」など発想の枠組みを拡張しましょう。
アナログ業界でも有効!FMEA導入が生み出す現場変革
長らく「経験と勘」に依存し続けた日本のモノづくり現場。
それゆえにFMEAのような“システマティックなリスク設計”に拒否感が根強い業界も少なくありません。
特に中堅・中小・ローカルサプライヤーでは
「ウチはそこまで複雑な製品じゃないから大丈夫」「前例があるから」
と本質的なリスク洗い出しが軽んじられがちです。
しかし時代は変わりつつあります。グローバル自動車メーカーの調達バイヤーはサプライヤー選定の際、FMEAの有無や質を厳しく評価する傾向が強まっています。
実際にバイヤー経験者からは「FMEAがしっかりしている工場は、突発トラブル発生時も原因究明と再発防止のスピードがケタ違い」と高評価されるケースも多いです。
製造現場に根付くアナログ文化も、「FMEAの導入=大げさ、大変な作業」ではなく、「現場の暗黙知やノウハウを、体系立てて見える化する」ことからスタートするのが成功のコツです。
デザインレビュー(DR)× FMEA ― 不具合ゼロへの最大活用法
FMEAは単体で完結するものではありません。設計審査(デザインレビュー、DR)と掛け合わせることで、企業のリスク対策力は大きく進化します。
DRとFMEAの効果的な組み合わせ
1. DRの場面でFMEAシートを必ず添付し、根拠あるリスク評価で会議の質を上げましょう。
2. 既存設計への「仕組みレビュー」だけでなく、「想定外ケース」や「工程変更時」のFMEA再評価を標準化することで、お客様に“何がどこまで考慮されているか”を明確に伝えることができます。
3. ベテランや委託メーカーも含めて「FMEA記載内容を現場で使われる業務手順書とリンク化」し、設計→生産→保守の全ライフサイクルにわたって“生きたドキュメント”として活用しましょう。
現場目線でのFMEA活用ポイント
・手戻りや仕様変更時こそFMEAを見直し、リアルタイムでリスクを可視化
・実際の不具合発生時にも「FMEAリストと突き合わせて」抜けモレを即座に判定
・バイヤーに対し「FMEA完備」「DR通過済」の証拠を提示し、信頼獲得
この運用が、品質監査の場面や、緊急の顧客クレーム時にも、全社的な危機管理能力の高さとして評価されます。
FMEAの“本当の価値”を引き出す現場マインドセット
現場で本当に強いFMEA運用が根付いた組織は、
・小さな「ヒヤリ」に敏感
・「なぜ?」を徹底して深掘り
・職種/立場を越えてフラットに問題を共有
このような脱昭和の思考が自然と根付いています。
ラテラルシンキング――つまり、“今まで通り”を一歩踏み越えて「他業種・他部署・新技術」を含めた柔軟な発想こそ、
これからのグローバル競争時代を勝ち抜く最大の力となります。
製造業のバイヤー・サプライヤー双方に求められる“リスクみえる化”力
今やグローバルサプライチェーン全体で「FMEA完備」が当たり前の時代になりつつあります。
バイヤーを目指すなら「FMEA項目のどこに注目すべきか」「どんな工程で抜けモレが多発するか」を過去事例も含めて深く観察していきましょう。
サプライヤーとしても「現場での暗黙知」「うちの工場ならではのクセ」をきちんとFMEA上に落とし込むことが、他社との差別化ポイントになります。
「FMEAで可視化されたリスク対応力」は、取引選定や発注見積時にも間違いなく大きな武器となるのです。
まとめ
FMEAを単なる“面倒な帳票作業”で終わらせず、
現場目線・チーム全体での知見融合・ラテラルシンキングによる抜本改善にまで押し上げる。
さらに、デザインレビューとの連携で“生きた設計・工程リスク管理”を目指す。
そのためには、まずは身近なトラブルやヒヤリ・ハットを丁寧に拾い、現場の声を大切にするところから始めましょう。
激動の製造業の時代――「FMEAの真価」を理解し、あなたの現場・製品・キャリアに新しい地平線を切り拓いていきましょう。
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