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投稿日:2025年6月11日

ロバスト設計の基礎と効果的活用法

はじめに:ロバスト設計とは何か

ロバスト設計という言葉を耳にする機会が増えてきましたが、実際にどのような設計手法なのか、現場でどのように活用されているかを理解されている方は意外と少ないかもしれません。
ロバスト設計とは、製品やプロセスが様々な外的・内的変動要因に強く、安定した品質や性能を発揮できるように設計する手法のことです。
従来の設計が「平均値通りに作れること」を重視するのに対し、ロバスト設計では「バラツキがあっても許容範囲内で安定すること」に着目します。
不良の流出や品質トラブルを未然に防ぎ、リコール等の大きな損失を防ぐためにも今や必要不可欠な設計思想となっています。

ロバスト設計が重視される背景

製造業を取り巻く変化と顧客要求の高度化

かつての製造業は、とにかく「作れば売れる」時代でした。
昭和の大量生産・大量消費の時代には、多少のバラツキや不具合があっても出荷し、クレームで気付き対応するという流れも珍しくありませんでした。
しかし、現在の市場はグローバル化が進み、品質保証に対する要求は飛躍的に高まっています。
また顧客ニーズの多様化・短納期化もあり、生産現場では「早く、安く、確実に」高品質なものづくりが求められます。
このなかで、ロバスト設計はトラブルの芽を事前に摘むための有力なアプローチとして改めて注目されています。

アナログ文化からの脱却と現場の実践力

一方、多くの製造企業では「昔ながらのやり方」に固執しがちで、デジタルトランスフォーメーションや標準化の推進が思うように進まないケースも多々見受けられます。
ロバスト設計も新たなツールだけでなく、「なぜそのバラツキが起こるのか?」「現場で何が起きているのか?」を現実の現場作業に基づいて深掘りすることが不可欠です。
机上の空論・理論倒れとせず、実務で効果が発揮されるには「現場目線」での運用と継続がカギとなります。

ロバスト設計の基本原則

システム思考で“変動”を捉える

ロバスト設計では「変動(バラツキ)」を徹底的に分析します。
ここでいう変動とは、材料ロット差・組立時の作業者差・設備の経年変化・温度や湿度の環境要因、さらにはサプライヤー由来の誤差など、社内外の様々な要因を指します。
これらの変動が製品・工程に及ぼす影響を捉え、その影響度合いを最小化する設計がロバスト設計の基本です。

「ノイズ」と「シグナル」を分けて考える

変動のなかでも、「ノイズ(制御できない外乱)」と「シグナル(意図的に変えるパラメータ)」を分けて考えることがロバスト設計では重要です。
ノイズの影響を最小化しながら、シグナルには敏感に応答できる設計(SN比を最大化)が理想です。
これにより製品・工程の安定性を高め、不良やリコールのリスクを飛躍的に抑えることができます。

ロバスト設計の具体的な進め方

パラメータ設計(田口メソッド)の活用

ロバスト設計で最も有名なのが田口玄一博士が提唱した「パラメータ設計」です。
対象とする製品・プロセスを構成する要素(パラメータ)を抽出し、制御パラメータ(調整できる設計値)とノイズパラメータ(主に環境変動など制御困難な要因)に分類します。
直交表を用いた実験計画法により、最もロバストな組み合わせを短期間かつ効率よく導き出すのが特長です。
現場での設計変更や新製品立上げ時、寸法公差の設定、主要工程のチェックポイント決定など、様々な場面で威力を発揮します。

現場との連携が不可欠

設計・開発部門が一方的にロバスト設計を進めた場合、机上のシミュレーションや理想論に陥りがちです。
工程管理、品質管理、調達購買、製造現場など多職種が一体となり、「どのノイズが実際に現場で頻発していて、どれが見逃されがちか」などナマの現場情報を吸い上げてこそ、ロバスト設計は真価を発揮します。
協働体制を作ることで、お互いの視座を広げ、精度の高い改善や設計変更が実現出来ます。

効果的なロバスト設計の活用場面

新規サプライヤー選定・量産立上げ

調達・購買部門にとっては、新規サプライヤーの品質安定化や、調達先変更時の品質変動の見極めこそが最大の課題です。
ロバスト設計の考え方を導入することで、材料バラツキ・工程差異・寸法公差などの「想定外」を事前にシミュレーションし、設計面や工程設計面から“柔軟性のあるモノづくり”を実現できます。
審査や監査の際も、「ロバスト性を考慮した設計・工程管理がなされているか?」という視点で評価を行うことで、より安定したサプライチェーン構築が可能となります。

サプライヤーとしての防御力強化

受託側であるサプライヤーも、バイヤーが「どこを気にしているか」を知っていると優位に立てます。
例えば、工程内に潜むノイズ要因を分析し、出荷品質の統計的な安定性を説明・証明できれば、顧客からの信頼度アップや、価格交渉時に主導権を握ることが可能です。
また、不良原因の曖昧さを排除できるので、現場トラブル時のスピーディな原因究明や対応力も高まります。

現場でロバスト設計を根付かせるためのポイント

アナログ的経験知と論理的設計手法の融合

熟練作業者やベテラン管理職の“勘と経験”を全面否定する必要はありません。
むしろこうした経験知こそ、多くの現場課題に直面し、現実的な落としどころを見つけてきた「暗黙知の宝庫」です。
ロバスト設計を推進する際は、これらアナログな知恵を抽出し、科学的手法と掛け合わせることで、より現実的かつ効果的な対策が見つかるケースが多いです。
昭和時代の良き伝統を活かしつつ、データ分析や標準化も取り入れ、「使えるロバスト設計」に仕立て直すのが最も賢明な策です。

デジタルツール・IoTとの組み合わせ

近年はセンサーやIoT機器の普及で、現場データのリアルタイム取得が容易になりました。
設備パラメータや製品検査結果などを日々収集・蓄積し、それを設計や工程管理にフィードバックすることで、“常に現場状況が見える化される”時代が到来しています。
デジタルテクノロジーとロバスト設計思想が融合することで、品質変動の予知保全や、設計段階での早期是正が可能となり、製造現場はより進化します。

ロバスト設計で発展する未来の製造現場

ロバスト設計は単なる設計手法だけに留まらず、企業文化を変革する推進力にもなり得ます。
部門間を横断した協働や、現場知の活用、グローバル品質基準への適応力強化など、新時代のものづくりに必要な“基盤”となるのです。
国内外の厳しい競争や顧客要求の高度化、バリューチェーンの複雑化が加速する今こそ、ロバスト設計の真価が問われています。

まとめ:ロバスト設計は現場を強くする“攻め”の品質戦略

製造業に携わるすべての方、特にバイヤーやサプライヤーにとってロバスト設計は、単なる設計手法を超えた経営戦略の一部です。
現場目線で変動を捉え、本質的な安定化を図ることで、多品種・変量生産の時代にも生き残る力を養うことができます。
従来のアナログに頼った場当たり的な改善から一歩先へ。
現場知+ロバスト設計+デジタル手法の“三位一体”で、次世代の強い生産現場づくりを目指しましょう。

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