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投稿日:2025年6月11日

ネットシェイプ鍛造の基礎と最新加工事例

ネットシェイプ鍛造とは何か―基礎からわかりやすく解説

ネットシェイプ鍛造とは、素材を最終製品の形状に限りなく近い状態まで鍛造で成形する加工法です。
その特徴は、追加の切削加工や仕上げを最小限に抑えることができる点にあります。

従来のアナログな鍛造では、ミスマッチと言えるほど過剰な寸法余裕を設けて切削・研削を施していました。
そのため、材料ロスが多く、工数も必然的に増えていました。

ネットシェイプ鍛造はこの部分を一変させます。
バリや仕上げしろを極力減らし、鍛造品を「ネット」(=Net、ほぼ最終形状)に近づけるため、素材歩留まりや生産性の向上、加工コストの削減に直結する画期的な工法なのです。

また、ネットシェイプは単なる鍛造技術の進化ではなく、製造現場における発想や生産体制にも影響を与えています。
中長期的には、QCD(品質・コスト・納期)の総合最適化に寄与するため、今後ますます普及が期待されています。

従来工法とネットシェイプ鍛造の違い

従来の鍛造による課題

「昭和型」ともいえるこれまでの鍛造工程では、以下のような工程が一般的でした。

– 素材選定及び切断
– 加熱・圧延による素形材成形
– 荒鍛造
– 仕上げ鍛造
– トリミング、バリ取り
– 機械加工(旋盤、フライスなどによる仕上げ)

この流れは、「工程を確実にするため寸法余裕を大きく取る」という現場主義の名残です。
実際に、バイヤーの購買パーソンも「加工工程が多い=失敗リスクを個別吸収できる」と考える傾向が強く、工程削減を渋るケースも珍しくありません。
しかし、このままではグローバル競争においてコスト競争力が確保できず、現代の生産現場に適した方法とは言い難いです。

ネットシェイプ鍛造の工程改革

これに対し、ネットシェイプ鍛造は以下のようなシンプルな工程に集約されます。

– 高精度金型設計
– 温間・冷間・熱間いずれかの最適な温度域で鍛造
– 最小限のトリミング、あるいは不要
– 追加工を極小化

ここで重要なのは、金型精度とプロセス設計が格段に高度化している点です。
変形解析(CAE)の発展や、超硬金型・コーティング金型などの素材技術、ロボットやIoTによる工程デジタル化も寄与し、人では成しえない精度をネットシェイプ技術は実現します。

ネットシェイプ鍛造の最新加工事例

自動車産業―EV化で広がるギヤ・シャフト類の高精度化

自動車の電動化が進むにつれ、「小型・軽量・高剛性」が必須となるパワートレイン部品。
一例として、EV用減速機ギヤやe-Axle部品でネットシェイプ鍛造の活用が急速に進んでいます。

従来は旋盤+ギヤ加工+熱処理+研削という多段工程でしたが、ネットシェイプ鍛造ではローリング圧延やクロス・ウェッジ・ロール法を駆使し、歯形やキー溝、刻印まで鍛造段階で実現することが可能です。
その結果、部品コスト10~30%減、リードタイム40%削減といった実績も報告されています。

同時に、鍛造時のひずみ制御や摩耗低減対策も進化しており、PCD(ダイヤモンド)コーティング金型など、工具寿命の目覚ましい延長事例も現場で多く聞かれます。

航空・宇宙産業―難削材バルブや構造材のネット化

航空機エンジンや構造部材で使われるインコネルやチタン合金等の難削材でもネットシェイプ鍛造が注目されています。
これらの材料は切削性が悪く、従来は大きなブロックから大量の切粉を出して仕上げていました。

しかし、加熱条件や高精度金型、そして多段鍛造プロセスの工夫で、最終製品形状に極めて近い「ニアネットシェイプ」部品が製造可能です。
特にジェットエンジンのタービンディスクやブラケット部品などでは、材料ロス激減により高額な素材の有効活用が実現されています。

また、サプライヤー視点では、「高精度な鍛造による納入」により、バイヤーからの高評価・収益確保のポイントとする企業も増えています。

医療分野―患者一人ひとりに最適化した人工関節部品のネットシェイプ鍛造

3D設計やシミュレーションと連動し、患者の骨格データをもとに、ほぼ最終形状まで鍛造成形するケースもあります。
仕上げ工数を抑え、品質検査やトレーサビリティも容易です。
多品種少量、変種変量生産への対応力という観点からも、医療分野への拡大が期待されています。

導入における成功ポイントと現場での課題

ネットシェイプ鍛造の成功のカギ

1. 金型技術と設計力の高度化
金型の精度向上こそが要です。
3次元CAD/CAMを駆使し、CAEシミュレーションで事前検証を徹底しましょう。

2. 工程全体最適化
個別最適ではなく、調達~生産~最終検査まで全体設計を変える発想が求められます。
場合によっては「工程統合」や「協力工場連携」も要検討です。

3. 品質リスク管理
形状精度・寸法安定性は大幅に向上しますが、一方で「一撃失敗リスク(工程分割不可)」もあります。
全数測定やAI画像検査の導入・工程内品質保証体制の構築も重要です。

現場で直面する課題と克服のヒント

– 「従来通り」の発想からの脱却
工程短縮=品質リスク・生産性不安と感じる現場は多いです。
導入時にはパイロット生産や、信頼性実証データを活用して段階的に推進するのが現実的です。

– コストセンターからプロフィットセンターへの転換
バイヤーの立場では、「鍛造コスト上昇」への反発も。
しかし、仕上げ工数や検査手間、材料歩留まり等トータルでコスト分析し、「全体最適QCD」を基軸に提案・交渉するスキルが重要です。

– デジタル化推進と人材育成
金型設計力やIoT活用、変形メカニズム解析など、DX(デジタル・トランスフォーメーション)人材育成も不可欠です。

ネットシェイプ鍛造の今後の発展と製造バリューチェーンへのインパクト

ネットシェイプ鍛造は単なる製造技術ではなく、日本のものづくり現場全体に大きな変革をもたらしています。
SDGsや省資源・カーボンニュートラルといった社会的要請とも合致し、工程短縮・省エネルギー・材料ムダの削減が求められる今、調達・生産管理・品質管理・生産技術の各部門が一体となって取り組むテーマです。

また、AIやIoT、3Dプリンティング技術との融合で「ネットシェイプ+自由形状」という新たな地平も見えてきました。
たとえば金型の一部を積層造形で作る「ハイブリッド鍛造」「デジタルモールド」など、今後数年で主流に成長する可能性も含んでいます。

調達・バイヤーの立場では、「ネットシェイプ対応型サプライヤー」はこれからの交渉カードとなり、仕入先選定・コスト交渉・サプライチェーン構築で付加価値を出せるポイントとなるでしょう。

まとめ―ネットシェイプ鍛造を現場発で推進するために

ネットシェイプ鍛造は工場現場での改革精神が生んだ、日本発の世界標準技術です。
現場の熟練工や生産技術者だけでなく、調達や購買のバイヤー、製品企画、サプライヤーを目指す方にも大きな知見とチャンスをもたらします。

従来の常識や過去の慣習だけにとらわれず、全体のQCD最適化、自工程完結、SDGs時代のものづくりを強く意識したネットシェイプ鍛造の推進が、現場力の底上げと製造業日本の競争力強化につながります。

現場発の実践的なネットシェイプ導入事例やトラブル克服談を、ぜひ「ラテラルシンキング」で深く掘り下げ、明日のものづくり現場に活かしてください。

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