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接着の基礎と異材接着への応用

目次
接着の基礎と異材接着への応用
はじめに ― 製造現場から見る接着技術の重要性
製造業の現場では、多様な部材や工程が混在しています。
「モノとモノをつなぐ」基本技術として溶接やボルト締結がよく使われますが、近年、その中で接着技術の重要性が一層高まっています。
とくにクルマや家電、精密機器などの領域では、異なる素材同士(異材)を接合し、最適な製品設計を実現する必要から、接着の役割がますます複雑かつ高度になっています。
一方で、現場がアナログ的な体制から抜け出せないケースも多く、十分な知識や経験がないまま“慣例”に頼って材料の選定や工法を決めてしまう例もしばしば見受けられます。
本記事では、接着の基礎をあらためて整理しつつ、現場目線で異材接着にどのように応用できるかを具体的に解説します。
接着の基礎知識 ― なぜ「くっつく」のか?
接着の原理を理解する
接着とは、異なる2つ以上の部材(基材)を、接着剤を使って一体化(接合)する工法です。
接着が成立する基本原理は下記の2つに分けられます。
1. 化学的結合
分子レベルで材料と接着剤が化学反応することで、強固な結合が生まれます。
例:エポキシ接着剤や瞬間接着剤など
2. 物理的結合
材料表面の凹凸や微細な孔に、接着剤が物理的に入り込み「アンカー効果」で固定されます。
例:木工用ボンドやホットメルトなど
また、実際の接着接合では、これらが複合しながら働くケースがほとんどです。
接着剤の種類 ― 用途に応じた選定がカギ
接着剤には多くの種類がありますが、主なものは下記の通りです。
– 溶剤型(接着剤内の溶剤が蒸発して固まる)
– 反応硬化型(二つの成分を混ぜて化学反応で硬化)
– ホットメルト型(加熱して溶かし、冷えて固まる)
– UV硬化型(紫外線で硬化)
実際には、材料の種類、接着面の形状、必要な接合強度、作業環境、コストなどを総合的に考慮して、最適な接着剤を選択します。
異材接着の難しさ ― 昭和の現場と最新技術のはざまで
異材接着の現場課題
今も昭和的なものづくりマインドが根強く残る現場では、鉄・アルミ・樹脂・ゴム・セラミックといった「異なる素材」を接合する際に、以下のような現象に悩まされがちです。
– 接着強度が思うように出ない
– 長期間使用で界面が剥離する
– コスト・工数の増大
– トラブル対応が属人化してノウハウが蓄積しない
特に異材接着は、単一素材の接着に比べて「材料ごとの物性(熱膨張・吸水性・表面エネルギーなど)の違い」や、「表面処理の最適化」、「界面設計」など、より深い知識と技術が求められます。
現場のバイヤーとサプライヤーの意識ギャップ
バイヤー(調達担当)は「汎用接着剤やコスト重視」の調達を指示することが多い一方で、現場のサプライヤーや品証部門は「不良のリスク」を現実的に恐れます。
「とりあえず使ってみる」「不具合が出たらやりなおし」の発想からは脱却し、設計段階から調達・生産・品証が一丸となり「なぜくっつくのか/剥がれるのか」を科学的に裏づけていく必要があります。
この意識改革こそが、成熟した製造大国・日本が次世代ものづくりに進化するための、実は重要な土台と言えるでしょう。
異材接着の実践 ― 現場で役立つ応用テクニック
1. 表面処理で接着性を最大化
異材同士の接着で最も重要なのは、「界面」の作り方です。
表面に油分やほこりが付着していれば、どんな高級な接着剤も本来の性能を発揮できません。
そのための基本は「洗浄」「脱脂」「粗面化(サンディング)」です。
金属材料には酸洗いやブラスト、化学的なエッチングを実施します。
樹脂やゴムでは、プラズマ照射やコロナ処理、プライマー塗布が有力。
これらの前処理工程を手抜きなく実施することが強度向上と長寿命化の基本です。
2. 接着剤選びに科学的根拠を
たとえば「アルミと樹脂をくっつけたい」場合、アルミ側には酸化被膜が形成され、樹脂側は分子構造によっては接着剤とのなじみが悪くなります。
このようなケースでは、「どの成分の接着剤がどちらの素材と相性が良いか?」を接着剤メーカーの技術情報や信頼できる文献、現場テストで必ず検証しましょう。
また、熱膨張率が異なる材料で接着部を設計する場合、「使用温度範囲」「繰り返し応力(熱サイクル)」への耐久性テストも不可欠です。
3. JIS規格・ISO規格を有効活用
接着強度や信頼性評価には、JIS・ISOなど業界標準の試験方法が豊富に整備されています。
たとえば「接着引張せん断強さ試験」「熱衝撃試験」「耐湿(耐水)試験」などです。
サプライチェーン全体でこれらの試験結果を共有し、ブラックボックス化せず客観的に評価することで、バイヤーとサプライヤー双方の安心感と信頼性が得られます。
4. 異材接着で生きる「ラテラルシンキング」的工夫
異材接着は直線的な発想だけでは対応できません。
「相性の悪いもの同士をつなげる」発想こそ、新しい価値を生みます。
一例をあげると「金属と樹脂の異材接着」で、「はんだコーティング+エポキシ接着」「中間層にシランカップリング剤を併用」「多孔質部材をわざと使いアンカー効果を増大」など、「異なる原理を複合させる」「中間層を活用する」などの工夫こそ、現場の熟練知見です。
今後の展望 ― アナログな現場×デジタル技術が切り拓く未来
デジタル化が接着の現場にも進行中
IoTやAIによるデータ解析が、生産ラインの中で「接着不良の未然検知」や「最適レシピ探索」に使われ始めています。
例えば、接着剤塗布量のリアルタイムモニタリング、画像検査による界面状態の可視化、プロセスデータの蓄積による作業者の属人化排除、などです。
従来の「勘と経験」に頼る現場から、客観データに基づく工程設計や品質保証へと舵を切ることで、異材接着のさらなる安定・高機能化が期待されています。
日本の強みを生かした異材接着技術の向上
世界的にも日本のものづくりは「細部まで徹底する現場力」「技術の蓄積」「多様な材料・プロセスの細やかな対応力」に強みがあります。
異材接着はまさにその真骨頂を発揮できる領域です。
サプライヤーは積極的に新素材や最新接着剤を自社試験し、フィードバックを蓄積しましょう。
バイヤーは、コスト・調達性だけではなく「接着トラブル未然防止への投資」の視点を設計初期から意識しましょう。
まとめ ― 総合力で製造業の次世代を拓く
接着は、単なる“部品のくっつけ作業”ではありません。
異材接着の現場には、素材科学・化学・生産技術・現場の工夫力すべてが求められます。
また、そのノウハウをサプライチェーン全体で「見える化」「標準化」することも、今後ますます重要になるでしょう。
従来のアナログな現場力に、デジタル&科学的アプローチを組み合わせ、新しい異材接着技術を現場発で生み出していく。
その現場知見の積み重ねこそが、日本の製造業の競争力強化に直結するはずです。
“接着の基礎と異材接着への応用”を、ぜひ日々のものづくり現場で活かしてください。
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