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*2025年6月30日現在のGoogle Analyticsのデータより

投稿日:2025年5月10日

電解加工の基礎と新技術による高精度加工への応用

電解加工とは何か

電解加工はElectro Chemical Machining、略してECMとも呼ばれ、工作物と工具電極を電解液中で対向させ、金属を電気化学的に溶解して形状を得る非接触加工です。
放電加工(EDM)の兄弟分のように誤解されがちですが、発熱や溶融による除去ではなく、アノード溶解という腐食現象を極限まで制御したプロセスだと理解すると本質に近づきます。

電解加工の原理

アノード溶解という自然現象を制御する

加工物(ワーク)を正極、工具電極を負極に接続し、食塩水や硝酸ナトリウム水溶液などの電解液を高圧ポンプで流します。
直流電源を印加するとワーク表面で金属イオンが生じ、電解液に溶け出します。
その間、工具側は化学的にほとんど損耗しません。

形状精度を決める要素

1. 電極形状
2. 電解間隙(通常0.1〜0.3mm)
3. 電流密度と通電時間
4. 電解液の流速と温度

これらを同時に最適化することで、サブミクロンレベルの面粗さや複雑形状を実現できます。

メリットとデメリット

メリット

・非接触なのでバリが出ない、工具摩耗がほぼゼロ。
・硬度や靭性に関係なく同一条件で加工可能。
・複雑流路やアンダーカット形状を一発成形できる。
・応力が残らず、疲労強度を損ねにくい。

デメリット

・専用電源、耐腐食仕様の装置が高価。
・電解液管理が必須で環境負荷、排水処理コストが発生。
・形状検証が難しく、試作フェーズの調整サイクルが長い。
・絶縁膜や被膜を持つ材質では前処理が必要。

昭和の大量生産時代にはコストと環境対応の壁で普及が限定的でしたが、SDGs要請と高精度化ニーズが拍車をかけ再評価されています。

最新技術動向

パルス電解加工(PECM)

従来の直流では拡散層が厚くなりエッジが丸まる課題がありました。
これを数十μsの高周波パルスで電流を断続させ、電解間隙の拡散層を薄く保つことで±5µmの輪郭精度を達成します。
航空機ブレードや燃料噴射ノズルで採用が加速しています。

ミクロ・ナノ電解加工

MEMSや医療器具向けに、10µm以下の微細穴や溝を加工する技術です。
ガルバノスキャナと組み合わせた走査型ミクロECMや、3Dプリンタのように工具を積層移動させる自由曲面形成が研究段階を超え量産化へ移行しています。

ハイブリッド電解研削(ELID/ECG)

砥石外周に電気を流し、砥粒先端だけを突き出させることで砥石の自生作用を促進。
鏡面加工と高除去率を両立し、セラミック基板やSiCウエハ加工に用いられています。

調達・バイヤー視点でのポイント

1. コスト構造の分解が肝

電解加工の見積には、①装置の減価償却、②治工具電極の製作費、③電解液管理費、④加工サイクルタイムが主なウエイトを占めます。
装置保有の有無で1ロットあたりの原価が桁違いに変動するため、サプライヤーの設備保有状況を把握することが第一歩です。

2. 電極内製能力の有無

電極を外注している場合、リードタイムが延びるうえ二重マージンが乗ります。
電極設計と同時に3Dプリンタや5軸加工で自社内製化しているサプライヤーはコスト競争力が高い傾向にあります。

3. 環境認証と排水処理ライン

ISO14001やRoHS対応の排水処理証跡を確認しましょう。
グリーン調達ガイドラインが厳格化する中、排水中の金属イオン濃度をppmレベルでモニタリングする体制がない企業は、将来のESGリスクになります。

4. 予防保全・稼働率データの提示

非接触加工とはいえポンプや電源の故障で不良率が急増します。
IoTセンサで流量・温度・伝導率を見える化し、OEE指標を定量提示できるかをRFI段階で要求すると、品質トラブルを未然に防げます。

サプライヤーが押さえるべき差別化ポイント

工程設計力の可視化

図面レビューと同時に、CAEによる電流密度分布解析を提案書に添付するとバイヤーの信頼を得やすくなります。
解析結果と実サンプルの相関データを提示することで、加工公差を事前に定量化できます。

ワンストップ化と混載生産

昭和型の専用ラインは稼働率が落ちる方向にあります。
PECM、EDM、5軸切削を並列配置し、ロボットで工程を切り替えるセル生産に移行することで、試作から量産までシームレスに対応可能です。

デジタルツインと遠隔監査

コロナ禍以降、オンラインで工場監査を完結させたいバイヤーが増加。
装置パラメータをクラウド同期し、VRカメラで遠隔立会い検査を実施できる体制は新規取引の武器になります。

昭和から抜け出せない工場の処方箋

1. 職人の勘に頼る電流調整を廃し、AIで電流波形を最適化。
2. 混合電解液をバーコード管理し、トレーサビリティを確立。
3. オフラインティーチングとデジタルパネルで属人化を排除。
4. 排水処理を外部委託せず、ゼロエミッション化を目指す。

これらは初期投資こそ必要ですが、補助金や税制優遇が拡充されています。
中小企業こそチャンスが大きい段階です。

事例紹介:航空機用チタンブレード

A社ではPECMを導入し、従来EDMで4時間掛かっていたブレード溝加工を25分に短縮しました。
加工硬化が消失し、後工程のショットピーニングも不要に。
結果、リードタイム40%短縮、コスト25%削減を達成。
バイヤー側は在庫圧縮しつつ、品質一括保証契約を結ぶことでサプライチェーン全体のCash-to-Cashサイクルを改善しました。

まとめ

電解加工は「バリが出ない」「硬い材料でも楽に削れる」だけでなく、パルス化やミクロ化によって高精度・高能率領域へと進化しています。
バイヤーは装置保有状況、環境対応、電極内製能力を軸にサプライヤーを選定することで、ESGとコストを両立できます。
サプライヤーはCAE解析やデジタルツインを武器に“設計から量産まで”を提案できれば、価格競争から価値競争へステージを引き上げられます。

アナログな昭和体質を脱却し、IoTとAIで電解加工を再定義すること。
これが次世代モノづくりの競争力を決定づけるキーファクターになります。

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