- お役立ち記事
- 不良を出さないプラスチック射出成形技術と設計のポイント
月間80,106名の
製造業ご担当者様が閲覧しています*
*2025年4月30日現在のGoogle Analyticsのデータより

不良を出さないプラスチック射出成形技術と設計のポイント

目次
はじめに
プラスチック射出成形は、量産性と自由度の高さから家電、自動車、医療などあらゆる産業を支えています。
しかし一方で、寸法不良、銀条、焼け、ショートショットなど多岐にわたる不良が発生しやすく、歩留まりを維持するには高度な管理が欠かせません。
本記事では、現場経験二十年以上の視点から、不良を限りなくゼロに近づけるための設計と成形技術の要点を解説します。
射出成形における不良発生のメカニズム
代表的な不良の種類と原因
射出成形の不良は大別すると外観不良、寸法不良、機能不良に分類できます。
外観不良にはフラッシュ、ウェルドライン、銀条、焼けなどがあり、寸法不良には反り、ヒケ、寸法ムラがあります。
機能不良では強度不足や内部応力によるクラックが代表的です。
いずれも「材料」「金型」「成形条件」の三要素が複雑に絡み合い発生します。
成形条件が与える影響
射出圧力、射出速度、金型温度、保圧時間、冷却時間は不良に直結する五大パラメータです。
例えば射出速度が速すぎると金型内の空気が逃げ切れず銀条や焼けが発生します。
逆に遅すぎるとウェルドラインが増え強度低下を招きます。
最適条件は材料グレード、製品肉厚、金型冷却能力によって変動するため、都度テストショットでデータを取得しファクトベースで決定します。
材料特性と水分管理
吸湿性の高いPAやPCは乾燥条件次第で不良率が一桁変わります。
未乾燥で成形すると加水分解により分子量が低下し、物性低下やシルバーが顕著になります。
近年は省エネルギー目的で低温乾燥がトレンドですが、設定を誤ると“乾燥したつもり”不良が頻発するので注意が必要です。
設計段階で不良を防ぐポイント
金型設計の勘所
金型は「熱を効率よく奪う機械」と言われます。
冷却回路の配置が甘いと成形条件で吸収しきれず、反りやヒケが常態化します。
樹脂流動と熱収支を同時に考慮し、可動側スライド裏まで水管を延伸するなど、射出後0.5秒以内に融点以下へ降下させる設計が理想です。
ゲート・ランナー設計
不良の二割はゲート起因です。
ゲート位置がウェルドライン集合点に近いと強度不足が顕在化します。
Moldflow解析で流動前線を可視化し、ウェルドラインを非重要部に逃がすレイアウトに修正するだけで歩留まりが向上します。
サブマリンゲートを安易に採用するとせん断熱で焼けが増える点も要注意です。
製品設計におけるリブ・ボス・肉厚管理
肉厚は基本2.5mmを上限とし、リブ高さは肉厚の2.5倍以内、底肉厚の0.5倍以上が経験則です。
この範囲を外れるとヒケと反りの同時発生率が急増します。
設計段階でCAEによる反りシミュレーションを行い、リブの高さや位置を微調整することで後工程の金型改造コストを劇的に削減できます。
解析ツール活用
今やMoldflow、SIGMASOFTなどの樹脂流動解析は中小企業でも導入が加速しています。
解析結果は絶対値より相対比較が重要です。
ゲート案を三案比較し既存不良の発生確率を数値で示すことで、営業や設計部門の合意形成を迅速化できます。
成形条件の最適化手法
スタートアップから安定生産へのステップ
条件出しは「充填」「保圧」「冷却」を分離して考えます。
まず充填圧と速度を変えながらキャビティ内95%充填を確認し、その後保圧と時間を段階的に増やして収縮を補正します。
最後に金型温度と冷却時間でサイクルタイムと寸法安定性のバランスを取ります。
機械設定パラメータの黄金領域
設定画面にある30以上のパラメータのうち、実際に品質へ影響するのは7項目程度です。
射出一次圧、射出一次速度、切替位置、保圧圧力、保圧時間、計量完了位置、背圧が“黄金パラメータ”です。
これらを標準作業書に数値管理し、現場作業者がタッチパネルで直接変更できないよう権限設定すると、ヒューマンエラーを90%抑制できます。
可視化ツールとIoT
近年は成形機メーカー各社がサーモグラフィや金型内圧センサを標準搭載し始めました。
成形機が自律的に保圧切替点を再計算し、条件ドリフトを補正する仕組みは、人手不足と技能継承の課題を同時に解決します。
クラウドで稼働データを集約し、歩留まりとエネルギー原単位をリアルタイム表示することで経営層の投資判断にも寄与します。
品質管理と工程内保証
QC工程表とインライン検査
昭和から続く管理帳票も、工程内保証を徹底すればDXの橋渡しになります。
QC工程表をデジタル化し、不良発見地点と原因工程を紐づけることで、次ロットの条件修正を自動提案できます。
カメラ検査はAI判定を導入すると、フラッシュや欠けの検出率が従来比15%向上し、かつ判定時間は1/5に短縮できます。
不良率のKPI設定とフィードバックループ
不良率目標は“ppm管理”がグローバル標準ですが、国内では不良率1%が黙認される企業も少なくありません。
まずは当月不良率を材料ロット別、金型別にパレート化し、上位三項目をKaizenネタとして経営レビューに上げます。
改善後は次サイクルでKPIを半減設定し、継続的改善文化を醸成します。
昭和アナログ現場がDXするためのロードマップ
手書き帳票からデジタル標準への移行
ステップ1は作業日報をスマホ入力に置き換えるだけで、実は年間600時間の転記工数を削減できます。
ステップ2で成形機と連携しショット数や稼働率を自動取得します。
ステップ3ではAI分析基盤を導入し、不良発生と条件ドリフトをリアルタイムでアラートします。
中小企業でも取り組める低コスト自動化
PLCと市販の温度ロガーを組み合わせることで、金型温度監視システムを30万円以下で構築できます。
また協働ロボットによるワーク取り出しは、従来の横走行機より設置スペースを30%削減でき、段取り替えも容易です。
バイヤー・サプライヤー間で共有すべき品質情報
量産前APQPとPPAPの活用
自動車業界ではAPQPとPPAPが標準ですが、家電や医療でも採用が進んでいます。
設計FMEA、工程FMEA、コントロールプランを共有することで、量産後の仕様変更リスクを最小化できます。
バイヤー側は“要求事項の完結性”を担保し、サプライヤー側は“工程能力の客観データ”を提供することで、Win-Winの関係を築けます。
監査と共同改善のポイント
監査を“検証”から“協働の場”に変えると、不良は劇的に減少します。
例えば監査チェックリストを事前に共有し、サプライヤーが自己診断した上で当日ディスカッションすると、改善提案件数が1.8倍に増えた事例があります。
まとめ
不良ゼロを目指す射出成形では、設計段階での未然防止と成形条件の科学的管理が両輪になります。
金型冷却、ゲート配置、材料乾燥といった原理原則を押さえたうえで、IoTや解析ツールによるデータ駆動型の改善を進めることが、昭和型の職人依存から脱却する最短ルートです。
バイヤーとサプライヤーが同じデータを見ながら改善を加速させれば、歩留まり向上のみならずエネルギー削減、納期短縮といった経営効果も期待できます。
本記事が、現場で奮闘される皆さまのヒントとなり、不良に悩まされない射出成形プロセスの構築に役立てば幸いです。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
ユーザー登録
受発注業務の効率化だけでなく、システムを導入することで、コスト削減や製品・資材のステータス可視化のほか、属人化していた受発注情報の共有化による内部不正防止や統制にも役立ちます。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)