月間83,046名の
製造業ご担当者様が閲覧しています*

*2025年5月31日現在のGoogle Analyticsのデータより

投稿日:2025年6月8日

ゴム材料の基礎と環境劣化対策寿命予測法および応用例

はじめに:ゴム材料の重要性と現場課題

製造業の現場において、ゴム材料は機械の部品や密封部、緩衝材など、さまざまな用途で使われています。

利便性とコストパフォーマンスに優れる一方、環境劣化や経年変化によるトラブルが後を絶ちません。

現場では「なぜこんなに早く劣化するのか」「寿命予測が立てにくい」「トラブルが起こるまで気づけない」といった悩みが常に付きまとっています。

本記事では、ゴム材料の基礎、なぜ劣化するのか、どんな予測手法が実務で有効なのか、そして業界現場での具体的な応用例まで、現場感覚を重視しながら、最新動向も踏まえてわかりやすく解説します。

ゴム材料の基礎知識

主なゴム材料の種類

ゴム材料は大きく天然ゴムと合成ゴムに分けられます。

代表的なものは以下のとおりです。

・天然ゴム(NR):弾力性・耐摩耗に優れるが、耐熱・耐オゾン性は低め

・ニトリルゴム(NBR):耐油性に優れ、自動車部品・ガスケット・Oリングに多用

・エチレンプロピレンゴム(EPDM):耐候・耐オゾン・耐薬品性が高く、屋外・電気部品に適用

・フッ素ゴム(FKM):高温・化学薬品に強いハイグレードなゴム

・シリコーンゴム(Q, VMQ):耐熱・耐寒性に優れ、食品分野やメディカルにも多用

材料の選定を誤ると本来の性能が発揮できず、不良発生や短寿命の原因になります。

各材料の特長や弱点を押さえ、アプリケーションに応じて最適な選択を行うことが大前提です。

ゴムの構造と加硫反応

ゴムは本来ソフトな樹脂ですが、加硫という工程によって「しなやかさ」と「弾力性」の両立が可能になります。

加硫とは硫黄などで橋かけ(架橋)をつくる工程です。

この架橋度が高すぎても低すぎても性能が発揮できません。

昭和時代から伝統的に守られてきた職人の加硫管理も、今日では品質の安定化と効率化のため自動化が進みつつあります。

ゴムの環境劣化現象/現場での実感

代表的な劣化パターン

ゴムの劣化要因は主に以下の通りです。

・熱劣化:高温雰囲気下で架橋が切れたり、逆に過度な架橋が進むことで性質が変化

・紫外線・オゾン劣化:屋外にさらされることで分子結合が切断され、ひび割れの原因に

・酸化劣化:空気中の酸素と反応し、チェーンが切断(柔軟性ダウン)

・油・溶剤:一部材質では侵されて膨潤・脆化

・物理的疲労:繰り返し圧縮・伸縮でミクロクラック発生

現場では、特に「パッキンがいつのまにか固くなって漏れた」「ローラーカバーがひび割れて生産ストップ」など、劣化による突発トラブルが多く見られます。

目視点検や感触だけでは判断できないことも多く、計画的な交換時期の見極めが課題です。

昭和の”勘と経験”とデジタル時代のギャップ

昔ながらの現場では「劣化しやすい場所は定期的に交換」「ベテランが目で見て判断」といった昭和的管理が幅をきかせてきました。

高度成長期の現場力は日本製造業の強さの源でしたが、人材の高齢化や働き方改革、生産のグローバル化が進む中、属人的な技と勘頼みではムリがあります。

下請、サプライヤー、海外工場を含め標準化や自動化、見える化が求められています。

現場の感覚だけを頼みにせず、科学的な根拠や数値をもとにした寿命管理が新たなスタンダードとなっています。

ゴムの寿命予測と環境劣化対策

寿命予測の考え方基礎

ゴムの寿命は「破断」「亀裂」「機能劣化」など、用途によって何をもって「寿命」とするか定義が必要です。

一般的には「初期特性(物性値)が一定割合(例:80%)以下に低下した時点」を寿命と見なします。

理論的には、加速劣化試験(高温高湿・高オゾン濃度など)のデータをもとに、Arrhenius則やWLF則といった物理法則から現場の想定使用環境に外挿して予測します。

実務的な寿命予測法

現場実務での主な手法は以下の通りです。

・加速耐久試験(加熱・高オゾンなど負荷をかける)

・天然曝露試験(実際の環境で長期間放置)

・物性試験(引張強さ、圧縮永久歪み、伸び、硬度試験)

・FT-IRやTGAによる化学組成変化測定

・アレニウスプロットを用いた温度依存の寿命予測

近年はデジタル技術を活用した「IoTセンサによる使用履歴・振動・応力のモニタリング」や「AIによる異常兆候検出」といった新たな技術も登場しています。

しかし、中小現場や一次下請けレベルでは導入ハードルが高いため、「紙とノートで管理」「目視点検+手帳記録」が根強く残る現実もあります。

「最先端と現場の実力差」をどう埋めるかが業界横断的な課題です。

寿命延長のための現場対策

劣化要因を押さえたうえで、以下のような実践的対策が重要です。

・耐候性UP:必要に応じて耐候ゴム(EPDM・フッ素など)へ選定変更

・シール・ガスケット類はカバーを設置、直射日光・雨水・化学薬品曝露を減らす

・保管は冷暗所・密封・加圧しない

・現場用途ごとに「最大寿命」ではなく「経済的な最適交換時期(故障前交換)」を設ける

・サプライヤーと協業し、現地現物での加速試験や実証データを積み上げる

「材料メーカー任せ」にせず、自社現場の使われ方データを取り、材料ベンダーと一次情報を共有するのが実効性ある現場対策のコツです。

応用例:現場でのゴム劣化・寿命管理事例

自動車工場の搬送ローラーのケース

搬送ラインのローラーに使用されるゴムカバーは、摩耗と紫外線、潤滑油など多様な劣化要因が重なります。

最適な材料(例えばEPDMやNBR、両者のハイブリッドなど)を選び、加速摩耗試験と実ラインでの摩耗サンプル採取を平行実施。

「交換タイミング=最大寿命」ではなく、「歩留まりや生産安定のコスト効果も踏まえて定期交換サイクル(例:生産3万台ごと)」を定めトラブル未然防止につなげた例があります。

食品工場のパッキン異常低減事例

衛生規格の厳しい食品工場では、パッキンの一部材質をNBRからシリコーン系に切替え。

シリコーンは若干コストアップとなるも、交換周期が従来の約2.5倍に延長。

さらに生産中断リスクや異物混入リスクも減少し、トータル生産性が向上した成功事例です。

製品単価だけを見るのではなく、現場トータルコストやリスク低減の視点で材料最適化を進めることの重要性を示しています。

バイヤー視点でのゴムサプライヤー選定ポイント

価格だけでなく、サプライヤーが実環境データに基づく劣化データ、加速試験結果、サンプル対応力を持っているかどうかは重要です。

昭和からの長い付き合いに頼みすぎず、必要時には複数材料メーカー・加工業者からの比較検証も推奨します。

「大手の指定品」「安い海外品」だけでなく、「現場目線での総合評価」が今後一層求められるでしょう。

今後の動向と製造業現場へのメッセージ

ゴム材料分野の新潮流

AIやIoT技術の進展により、「寿命予測」「異常検知」などの分野で画期的なサービスやソリューションが登場しています。

耐劣化性に優れた新材料の開発も活発になっており、循環型社会を志向した「バイオ由来・リサイクル材料」も市場投入が進んでいます。

一方、依然昭和的な管理手法や古いトラブル対応文化も現場には根強く残ります。

バイヤーもサプライヤーも、旧来の「縦割りの壁・情報非開示」から、現場課題を共有し「実際の使われ方・データをオープンにする」ことが持続的な競争力につながります。

現場・バイヤー・サプライヤーに伝えたいこと

現場でゴム部品を扱う皆様には、材料の選択・保管・使い方だけでなく、「寿命を科学的に考える」習慣をぜひ持っていただきたいです。

バイヤーや調達担当者にも、「一番安いものを買う」のではなく、材料サプライヤとともに自社の使い方・リスク・将来像も含め共同でベストを探る姿勢がより重要となります。

また、サプライヤーには単なる価格競争から脱し、「使われる現場の事情まで深く知り、情報・知見を共有する」姿勢が未来の信頼・取引拡大へとつながっていきます。

まとめ

ゴム材料は便利で不可欠な素材ですが、環境による経年劣化や材料選定のミスマッチでトラブル原因になりやすい側面を持っています。

古き良き昭和の現場感覚にくわえ、科学的な寿命予測や新技術活用も取り入れていくことが競争力強化の鍵になります。

本記事が、現場でのお困りごとの解決や新しい取り組みの一助になれば幸いです。

今後も技術動向や実践事例のアップデートを続けて参ります。

資料ダウンロード

QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。

ユーザー登録

受発注業務の効率化だけでなく、システムを導入することで、コスト削減や製品・資材のステータス可視化のほか、属人化していた受発注情報の共有化による内部不正防止や統制にも役立ちます。

NEWJI DX

製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。

製造業ニュース解説

製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。

お問い合わせ

コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)

You cannot copy content of this page