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投稿日:2025年6月9日

トライボロジーの基礎と潤滑設計および潤滑管理技術による長寿命化への応用

はじめに:トライボロジーの意義と現場での重要性

トライボロジーという言葉は、製造業界をはじめ機械工学分野において欠かすことのできない概念です。
トライボロジーとは、摩擦、摩耗、潤滑に関する科学と技術の総称であり、現場の設備や生産ラインの効率・信頼性を大きく左右します。
製造現場では、設備稼働率向上やダウンタイム削減、長期的なコスト削減に直結する重要な分野であり、古き良き昭和の職人技術と最新デジタル技術が融合しつつある今、より一層その重要性が高まっています。

本記事では、製造業の現場で20年以上働き、調達購買や生産管理、品質、安全、工場の自動化など多面的な経験を積んできた視点から、トライボロジーの基礎知識と、潤滑設計・潤滑管理技術による長寿命化の現場応用について、徹底的に解説します。
現場で働く方、バイヤーを目指す方、そしてサプライヤーとしてバイヤーの思考を知りたい方に向け、即実践に役立つ内容にまとめてまいります。

トライボロジーの基礎:摩擦、摩耗、潤滑とは

摩擦のメカニズムと製造現場への影響

摩擦とは、接触面同士の相対運動を妨げる力のことを指します。
製造現場の装置や部品は必ず摩擦が発生しますが、摩擦が大きすぎるとエネルギーロスや発熱、異音発生、装置の性能低下など多くのトラブルを引き起こします。
適正な摩擦は必要ですが、不必要な摩擦は極力抑えることが製造現場での品質と稼働率向上の鍵となります。

摩耗の種類とリスク

摩耗は、摩擦によって部品や材料表面が徐々に損耗・消失する現象です。
代表的な摩耗の種類には、アブレージョン摩耗(擦り減り)、アドへージョン摩耗(かじり)、腐食摩耗、疲労摩耗などがあります。
一部の摩耗は緩やかで定常的なものですが、放置すると突発的な焼付きや装置故障に直結します。
いわゆる「昭和的な感覚」頼みの目視・経験値ベースでは管理しきれない時代に、的確な対策が求められています。

潤滑の役割と原理

潤滑は、摩擦と摩耗を抑制し、部品の寿命を延ばすための技術です。
潤滑油やグリースのフィルムが“潤滑層”として金属表面同士の直接接触を防ぎ、熱の発散や異物混入リスク低減にも寄与します。
潤滑が効いているか否かは、部品寿命や稼働効率に直結するため、バイヤーや現場管理者にとっても適切な潤滑管理は極めて重要な判断要素となります。

潤滑設計の最適化:最新技術と現場目線の融合

設計段階で考慮すべきポイント

設備や新製品の設計担当が見落としがちなのが「潤滑設計」の重要性です。
設計初期段階から「どうやって潤滑油を供給し、どう回収循環するか」「グリース管理のしやすさをどう確保するか」といった配慮は、製品ライフサイクル全体にわたるコストと効率に大きく影響します。
また、隙間の設計ひとつで適正な油膜が形成されるかどうかが左右されるため、CADシステムやシミュレーション解析(CAE)も積極的に活用しましょう。

潤滑材料の選定と最適化

ひとくちに潤滑油・グリースといっても、粘度、基油、添加剤、耐熱・耐水性能など多種多様です。
現場でよく見かけるのが、「昔からの指定品に何となく従っている」「コスト最優先で検討する」といったアプローチですが、これは長期的には逆にコスト増やトラブルを招くリスクがあります。
摩擦条件・荷重・速度・環境(温湿度、粉塵、水、薬品)まで総合的に考慮し、“最適な一滴”を選別することが設計・調達担当の腕の見せどころです。

昭和型アナログ管理からの脱却:デジタル潤滑管理の現代事情

昭和時代の製造現場では「毎朝決まった時間に注油」「ランダムにグリースアップ」など属人的な管理が主流でした。
しかし今やIoTセンサーや自動給油装置が普及しつつあり、“潤滑管理のデジタル化”が現実的となっています。
油量・温度・圧力の遠隔監視やAI異常予知の導入で、設備のトラブル発生リスクを劇的に低減させる現場が増えています。
これからの現場力には、「データに裏打ちされた潤滑管理」が必須項目です。

潤滑管理のポイント:長寿命化と効率化を実現する具体策

潤滑管理のPDCAサイクル

潤滑管理は一度やって終わりではありません。
現場では以下のPDCAサイクルをしっかり回すことが大切です。

– Plan(計画): 使用機械・部品ごとに潤滑条件・周期を明確化
– Do(実行): 決められた手順で潤滑作業を実施
– Check(確認): 油量・油質・温度・摩耗状態を点検、異常兆候の早期発見
– Action(改善): 兆候からグリース変更や給油周期見直し等の改善策実施

この地道なサイクルが、トラブルゼロ・コストダウンを地に足つけて実現していくルートになります。

異常徴候の予知保全:具体的な現場ノウハウ

知識やデータも大切ですが、現場のちょっとした「気づき」も馬鹿にできません。
「いつもと違う音」「発熱部分の変化」「グリースの色やにおい」など異常は前兆で現れることが多いです。
IoT温度センサーや振動検知装置と並行して、現場の五感も掛け合わせ、早期発見・早期対応が“長寿命化”の鍵となります。
バイヤーとしても、こういった現場ノウハウがしっかり共有できるサプライヤーには大きな信頼を置きやすいものです。

部品単位での潤滑設計:事例で学ぶ長寿命化のヒント

たとえば高負荷下のギアボックスなら“極圧添加剤配合潤滑油”を、低負荷高速のモーターベアリングなら“低粘度・耐熱グリース”に切り替える、樹脂摺動部品には“潤滑性フィラー採用材料”を選択するなど、部品・条件ごとで潤滑設計に正解はひとつではありません。
最新の部品メーカー技術資料や、競合他社のベンチマークを積極的に活用し、最適解を探しましょう。
このような柔軟で主体的な潤滑設計が他社との差別化ポイントとなります。

バイヤー/サプライヤー目線でのトライボロジー管理のポイント

バイヤーが求める“安心”とは

バイヤーは単に価格だけでサプライヤーを評価しているのではありません。
長期安定供給、的確なトラブル対応、現場作業者への技術支援――これらを総合評価しています。
近年はSDGsやカーボンニュートラル動向から、潤滑剤の環境負荷低減、リサイクル可能性まで見るバイヤーも増えています。
“現場で鍛えた潤滑技術”と“会社としてのサステナビリティ”の両面を示す提案が、強い信頼獲得の近道です。

サプライヤーが知っておくべきバイヤーの思考

バイヤーは潤滑剤や保全部品の「価格」「納期」「仕様」だけでなく、
– 緊急時のサポート体制
– 現場での使い勝手・保全性(交換のしやすさ)
– 性能データの裏付け
– 取引先でのトラブル実績と改善履歴
これらを非常に重視しています。
製品カタログのスペックやコストだけでなく、現場で実際に起こった事例・効果・トラブル未然防止の体験談も添えて提案できると、他社と圧倒的な差別化が可能です。

未来を拓くラテラルシンキング:トライボロジーと工場DXの融合

これからはAI・IoT技術がますます普及し、潤滑管理を含む生産設備全体のデータ化・自動化が進みます。
例えば「油量・温度・振動・流量」など多様なデータを一元管理し、AIが“異常兆候”を自動判断、最適タイミングで潤滑剤補充やメンテナンス案内まで自動提案する未来です。
従来のノウハウ(アナログ)と、最新のエビデンス(デジタル)をラテラルシンキングで組み合わせることで、従来は見えなかった長寿命化や省エネ化の“新たな地平線”が開けるでしょう。

まとめ:現場から始まるトライボロジー革命

トライボロジーと潤滑設計・潤滑管理技術は、単なる“油さし”や“メンテナンス”ではありません。
現場工場の生産性・設備信頼性を根底から支える本質的な技術です。
最新の自動化・DXツールと積み上げてきた現場力、サプライヤー/バイヤーの目線での現場支援の姿勢――これらを融合すれば、日本のものづくり現場は限りなく発展し続けます。

ぜひ本記事を参考に、ご自身の工場や購買現場で「革新的な潤滑管理とトライボロジーの実践」にチャレンジしてみてください。
現場が強くなること――それが、ひいては日本の製造業全体の“明日”を切り拓く力となるのです。

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