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回転機械における振動(ロータダイナミクス)の基礎と設計・診断技術およびトラブル解決への活用法

目次
はじめに~回転機械に必ず付きまとう「振動」のリアル~
回転機械と聞けば、製造業の現場において避けて通れない存在です。
ポンプ、ファン、タービンから工作機械、モーターまで、多様な生産設備の最前線で活躍しています。
それらに必ず付きまとうのが「振動」。
振動は機械の老朽化、誤作動、重大なトラブルの兆候であるだけでなく、その程度やモードによっては故障や生産停止、事故の引き金にもなります。
しかし、現場では「いつものこと」「このくらいなら大丈夫」と軽視されることも少なくありません。
そのため、大きな設備損失や品質不良、工程遅延に発展することも往々にしてあります。
本記事では、現場で20年以上携わってきた経験をもとに、回転機械における振動(ロータダイナミクス)の基礎と、設計・診断・トラブル解決への実践的な活用法について詳しく解説します。
回転機械における「振動」とは何か?
振動のしくみとロータダイナミクスの基礎
回転機械の振動とは、回転体(ロータ)が回転する際に発生する周期的な機械的動きです。
これは軸受部分、ケーシング、あるいは取り付け部など、あらゆる場所で現れます。
特にロータダイナミクスという観点では、「重心と回転軸がずれる」「アンバランスが生じる」「構造体自体の剛性が不足する」など、さまざまな要因が複合的に絡み合って発生します。
現象としては、
– 軸の曲がりやたわみ、
– 異常な音(うなり、ガタガタ、ゴロゴロ音)、
– 熱の発生、
– 振幅増大
などが挙げられます。
その結果、最終的には軸受損傷、シール不良、部品の破損、最悪の場合はシャットダウンや事故につながります。
製造業の現場で今も根強い「振動」問題の本質
昭和の時代から、ベテラン技術者が「耳で聞いてわかる」「機械に手を当てて感じる」と言ってきた現場力は、決して蔑ろにできません。
実際、その感覚は異音・異常の初期段階をかなり早く発見できる武器でもあります。
一方で現代、設備の高精度化・高速化が進む中、微細な変化や定量的な異常検知には、やはり定量的な診断やIoTセンサーによるモニタリングが不可欠です。
現場のカンとテクノロジーをいかに融合させるかが、今後の回転機械メンテナンスの新しい課題となっています。
なぜ振動監視・診断が重要なのか?―トラブル防止・製造コスト低減への道筋
振動と故障の関連性
回転機械で発生する微妙な振動は、必ずしも即トラブルや故障につながるとは限りません。
しかし、放置しておくと
– 軸受の摩耗促進
– グリースや潤滑油の劣化
– ケーシングの疲労
– 共振周波数到達による異常増幅
といった「負の連鎖」を発生させ、トラブルは雪だるま式に膨らんでいきます。
突然の設備停止による生産ロス、修理費用、酷いケースでは事故や人的被害へと展開するおそれもあります。
DXとロータダイナミクス、業界動向の最前線
現在、多くの企業が設備の「見える化」「状態監視(Condition Monitoring)」に力を入れています。
振動診断用のセンサー設置、IoTによるデータ収集・遠隔モニタリング、AIによる異常検知など、デジタル技術を活用したアプローチが主流です。
一方、費用対効果や実装の容易さ、現場スタッフのスキル習得など、まだまだ課題は山積しています。
しかし現場目線で見ると「もしものトラブル」で被る損失に比べれば、投資効果は高く、バイヤー目線でも導入提案の武器となります。
振動対策の設計手法―現場で培われたリアルな知見
設計初期から施すべき社内スタンダード
回転機械の設計段階にこそ、振動トラブルを未然にふせぐ重要なポイントが詰まっています。
– 質量バランスのとれた設計(アンバランス対策)
– 剛性および固有振動数の解析
– 軸受や支持部材の選定と配置
– 減衰(制振)処理の導入
– 回転速度管理と共振領域の回避
こうした検討は、設計エンジニアと生産現場担当者が早期から擦り合せし、現場フィードバックや過去の失敗事例を仕様に落とし込むことが大切です。
また、モーターやポンプなどの量産部品を使う場合は、「カタログデータ」だけでなく実運用条件とのギャップをしっかり見極め、シミュレーションや試運転評価も丁寧に実施するべきです。
これが設計QCD(品質・コスト・納期)最適化の重要な一歩となります。
現場改善・メンテナンスで重視すべきポイント
製品納入後には、必ず「予知保全」「状態基準保全(CBM)」が重要となります。
1. ベースとなる「正常時」の振動値データ取得(ベンチマーク化)
2. 定期的な計測・トレンド観察(履歴管理)
3. 異常値発生時の早期対応(ライン停止の判断基準支援)
4. 振動原因の分析と恒久対策の立案(FMEAやなぜなぜ分析)
こうしたPDCAサイクルこそが、製造現場の生産性およびコストダウンの両立に直結します。
異常の「初動」に現場がどう対応するかで、その後の被害規模が大きく変わります。
実践トラブル事例とその解決プロセス~昭和の現場力も活きる!~
事例1:突発的な振動増大でライン停止に―ファン軸受のアンバランス不良
複数ラインの中央排気ファンのうち1基で、突如振動値が急増。
現場は「ベアリング破損か?」と直感しましたが、実際にはファン内部に大量の埃が付着・偏ったことでバランスが崩れていました。
清掃と再調整後、振動値は大きく低減。
「何か違和感がある」と感じた現場スタッフのリーダーシップが、大事故寸前での回避につながった好例です。
事例2:振動解析と共振による繰返しトラブル防止
某生産装置の軸に、周期的な激しい共振が発生。
振動スペクトル解析を実施したところ、モーター回転数と装置固有振動数が一致し「共振現象」が発覚。
回転数の微調整と部材補強で大幅に改善できました。
このケースでは診断ツールとデータ解析が企画担当から現場へ確実に「使える知恵」として落とし込まれた点がポイントであり、「人と技術」の融合が功を奏した好例です。
サプライヤー・バイヤー・現場を繋ぐ振動管理の目線
バイヤー・仕入れ担当が知るべき視点
現在の購買・調達現場では、「価格」や「納期」だけではなく、アフターサービスや保守観点での付加価値が重要視されています。
回転機械においては「振動に強い設計・製品」「異常発見・診断サービス」「エビデンスに基づいたメンテナンス履歴の提出」などが差別化のポイントです。
これらを盛り込んだRFQ/仕様書作成が、サプライヤー選定の鍵となります。
サプライヤーがバイヤーの要求をどう読み取るか
サプライヤーは、顧客が求めているのは「単なる新品供給」ではなく、ライフサイクル全体の安心・安定稼働であることを意識すべきです。
製品開発の段階から「どのような現場でどんなトラブルが多いか」をマーケットインで把握し、提案段階で「診断・保全まで含めた包括的なソリューション」を提示できるかが、受注拡大への突破口になります。
加えて、納入後に「振動データ報告」「遠隔モニタリングサポート」などを実現できれば、現場の信頼やリピート発注にもつながります。
現場担当者が明日からできること
現場で振動トラブルを未然防止・早期対応するには、
– 「普段と違う振動・音・熱」に気づく感性の磨き
– 異常時はすぐ上司や保全部門に連絡、計測データを記録
– 日々の点検・清掃・給油など基本動作の徹底
– 振動傾向グラフや記録ノートを可視化し、情報共有
が有効です。
また最新のIoT振動センサーを使った定量管理も、手間をかけずに「これまで気づけなかった小さな異常」の発見につながり、現場力の底上げとなります。
まとめ~ロータダイナミクスの「目利き」こそ現場を救う~
回転機械の振動(ロータダイナミクス)は、一見すると専門的で難しそうに見えますが、本質は「小さな気づき」をいかに早く・正確に捉えるかにあります。
設備の寿命や品質が問われる今こそ、現場スタッフの経験知と最新技術の両輪を活かした管理スタイルが求められます。
バイヤーとサプライヤーの間でも、価格競争だけではなくこうした「設計・診断・トラブル解決」の付加価値をいかに提案できるかが重要です。
昭和から令和、アナログとデジタル、現場とエンジニアリングの壁を越えて「振動」を制する者が、これからの製造現場の未来を切り拓いていくでしょう。
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