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*2025年5月31日現在のGoogle Analyticsのデータより

投稿日:2025年6月4日

排熱の有効利用技術の基礎と産業への活用とその応用例

排熱の有効利用技術の基礎

排熱とは何か

製造業の現場では、多くのエネルギーが熱として消費されます。
しかし、実際に製品づくりに活用される熱はわずかであり、残りの多くが「排熱」として廃棄されています。
この排熱は、工場のボイラーやファーネス、発電設備、プロセス工程などから発生し、たとえば水蒸気や排気ガス、温水として無駄にされています。
一見すると「捨てるしかないもの」と思われがちですが、この排熱もエネルギー資源の一つとして着目できます。

なぜ排熱の有効利用が重要か

近年、製造業の現場ではESGやSDGsの観点から、エネルギー効率化によるコストダウンとCO2排出削減が大きな課題となっています。
そこで脚光を浴びているのが、これまでムダとしていた排熱エネルギーの回収と有効利用です。
国内外を問わず、排熱の有効利用は工場の競争力向上に不可欠な要素となっています。

さらに、電気料金や燃料費の高騰、人手不足による省力化という、昭和から続く日本の製造業全体の課題とも密接にリンクしています。
新たなエネルギーを生み出すよりも、既に現場で吐き出されている熱を活かすほうが、コストパフォーマンスや即効性の面で非常に優れているのです。

排熱の分類と特徴

排熱には主に「高温排熱」「中温排熱」「低温排熱」の3つが存在します。
高温排熱(200℃以上)は主に製鉄所やガラス工場、大型ボイラーから。
中温排熱(100〜200℃)は食品加工や薬品工場、低温排熱(100℃以下)は空調設備や冷却水、データセンターなど多様な産業現場で発生します。

それぞれに適した回収・利用技術が求められるため、排熱の温度帯と発生源を正確に把握することが、最適な有効利用への第一歩になります。

排熱の有効利用技術の種類

熱交換器による回収利用

最も基本的かつ普及しているのが「熱交換器」を活用した排熱回収です。
例えば排気ダクトや排水管の途中に熱交換器を設置し、捨てられるはずの熱を水や空気に伝えて回収します。
これにより給湯や暖房、プロセスの予熱、冷暖房の効率化など多岐に応用がききます。

ダブルチューブ、プレート、シェル&チューブ型など多彩なタイプがあり、現場の設置スペースや排熱の性質に応じて選択が可能です。

ヒートポンプによる有効利用

低温排熱の活用先として「ヒートポンプ技術」への注目が高まっています。
ヒートポンプは、外部から少しの電力を加えることで、環境中・プロセス中の低温の熱をより高温側に移動させる仕組みです。
たとえば30℃程度の温排水から85℃の給湯を得ることができるため、食品、製薬、化学、半導体など省エネ意識の高い産業で急速に普及しています。

コージェネレーション(熱電併給)システム

エンジンやタービンを動かして電気を発電する「コージェネレーション(熱電併給)」も有効な排熱利用法です。
発電時に発生する排熱を工場の暖房や給湯、冷房へと再利用します。
エネルギーのトータル効率が飛躍的に高まり、エネルギーコストの大幅な削減につながります。
特に地域熱供給や大規模事業所での導入が進んでいます。

熱利用に連動する省人化・自動化

最新の現場管理では、排熱利用システムにIoT・AIを連携させた自動制御も一般化しつつあります。
例えばプロセス自動監視でリアルタイムに温度変化を把握し、回収経路や使用先のバルブやポンプを自律制御。
人手による運用から「スマート工場」的な省力化、自動運転へと進化しています。

排熱の産業への具体的活用例

工場内空調・暖房への利用

多くの工場では、吸気や排気、温水が日常的に生じます。
その熱を回収し、冬場の工場空調や、事務所、休憩所の暖房として再利用する事例が増加しています。
従業員の快適性向上と同時に、ボイラー用燃料や寒冷地の電気ヒーター稼働の削減を実現します。

給湯・プロセスの予熱

洗浄や化学反応工程、ボイラー給水の加温など、工場現場では大量の給湯が欠かせません。
排熱で給水や原材料を事前加温すれば、後段の熱源使用量が減り、燃料費・CO2排出も一気に削減します。
既存釜や各プロセスの直前に熱回収装置を組み込むことが効果的です。

排熱発電の推進

高温排熱が得られる現場では、「排熱発電」が有効です。
オーガニックランキンサイクル(ORC)など特殊な小型発電装置を使い、製造ラインの廃熱で発電を行い、現場の照明や機器電力に有効活用するケースもあります。
まさに資源循環型・カーボンニュートラルを象徴する一例です。

地域社会への熱供給

大型工場や事業所では、工場内で使い切れない排熱を地域の暖房・給湯需要に活用する地域熱供給ネットワークも増えています。
これにより工場自体のイメージアップや、地域電力との共同インフラ開発への波及効果も生まれます。

業界動向とアナログからの脱却

依然強い「もったいない」の精神

日本の製造業は、世界的にも「もったいない」精神が根強く、管理職や現場リーダーが「少しでもエネルギーを無駄にせず生産性を高めたい」という意識が浸透しています。
昭和の時代から、ボイラー火力の絞り方やエア漏れ対策、手動の温度調整などでコツコツと省エネ活動が行われてきました。
一方で、デジタル技術への対応やデータ活用は遅れがちです。

デジタル&アナログのハイブリッドが要

今後の競争力強化には「現場の経験値に基づく省エネ活動」と「デジタル管理・自動化」のハイブリッド化が重要です。
現場の微妙な設備癖や季節要因、実運用時間の把握は人の知見が不可欠。
そこにIoTセンサーやAI解析を重ね合わせることで、より緻密かつ持続可能な排熱利用システムが実現できるはずです。

バイヤー・サプライヤーが持つべき視点

バイヤー(調達担当者)は、サプライヤーから単なる設備提案を受けるのではなく、
「この排熱は他の用途や地域にも価値を生み出せないか」「現場に眠っている未利用熱はないか」といった、もう一歩踏み込んだバリューチェーン全体での活用を考える力が求められます。

サプライヤー側も、機器単体の売り込みだけでなく、現場ヒアリングから経済性評価、CO2削減効果、エネルギー管理ツールとの連携など「トータルソリューション型」での提案が信頼獲得の鍵になります。

今後の展望と新たな地平線

産業×エネルギーの枠を超えて

近年、脱炭素化や再生可能エネルギー導入が加速し、電力インフラの柔軟運用が不可避となっています。
工場の排熱も、もはや「製造業の副産物」ではなく、社会インフラの一部として、脱炭素・地域活性化の担い手になりつつあります。

さらに、AIによる需要予測や設備異常の検知、蓄熱素材や先進的な熱輸送ネットワークなど、最先端技術との融合で、従来見過ごされていた「低品位熱=未利用資源」の再定義が始まっています。

現場力とデジタルが生む競争優位

排熱利用の巧拙は「現場の知恵」と「デジタルデータ活用」の双方にかかっています。
製造現場で磨かれた省エネマインド、工夫、根気があるからこそ、小さな未利用熱も活かせる。
それに最新のモニタリングや制御技術が融合すれば、真の意味での「省エネ経営」が実現します。

まとめ:今できることから、未来につなげる排熱活用へ

排熱の有効利用は、単なる省エネ活動やコストダウンの枠を超え、カーボンニュートラル社会への一歩となります。
現場主導でも、最新技術活用でも、今すぐできることは数多く存在しています。

バイヤーとしては、業界の枠や慣習にとらわれず、新しい排熱活用の可能性を模索する姿勢が不可欠です。
サプライヤーもまた、課題発掘から最適提案、運用サポートまで「現場とともに歩む」パートナーシップを意識しましょう。

アナログな現場にも、デジタルの息吹。
あなたの一歩が、明日の産業の新たな地平線を切り拓く力になるはずです。

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