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スウェットの裏起毛を柔らかく仕上げる起毛機と糸選びの工夫

目次
はじめに:スウェットの裏起毛が「柔らかい」と評価される理由
スウェットは、日常着やスポーツウェアとして幅広く親しまれています。
その魅力の一つが、内側の裏起毛の柔らかさと温かさです。
製品によって「ふわふわ」「しっとり」「なめらか」と表現され、消費者から高く評価されることもあれば、逆に「ゴワつきがある」「硬い」などマイナス評価になることもあります。
では、この「柔らかい裏起毛」はどのようにして生まれるのでしょうか。
製織から染色、起毛、仕上げまで、様々な工程が関わりますが、その要のひとつが起毛機と糸選びです。
この記事では、20年以上の製造業現場経験に基づき、スウェットの裏起毛を柔らかく仕上げるための実践的なノウハウや業界動向を、現場目線で掘り下げてご紹介します。
裏起毛スウェットの基礎知識
裏起毛とは何か
裏起毛とは、生地の裏面に細かな繊維の「毛羽」を作り、ふんわりとした肌触りと断熱性を高める加工方法です。
秋冬物のスウェットやパーカー、トレーナーでよく用いられます。
織り上げられた生地(主に裏毛)に起毛機をかけ、繊維を引き出して“パイル状”あるいは“フリース状”の表情に仕上げます。
なぜ柔らかさが重要なのか
顧客がスウェットに求めるのは、第一に快適さです。
柔らかい裏起毛は「着心地の良さ」「暖かさ」「高級感」に直結します。
また、一度着用した時の印象が購入・再購入の動機につながるため、ブランド品質の根幹ともなります。
裏起毛を制するには「起毛機」と「糸選び」がカギ
裏起毛の柔らかさは、単に「起毛をかける」だけでは生み出せません。
ここでは、糸と起毛機の両側面から、その背景と具体的な工夫を解説します。
起毛機の種類と現場での使い分け
起毛機は構造や用途によっていくつかの種類があります。
最も一般的なのは「シンカー起毛機」「クロス起毛機」です。
・シンカー起毛機……ドラムにシンカー(針状・かぎ状)のワイヤーを巻き付けたもので、生地を均一に毛羽立たせるのが得意です。
・クロス起毛機……交差するワイヤーローラーを用い、より繊細な起毛が可能です。摩耗しやすいが柔らかな風合いに仕上がります。
現場では、目的の風合い・毛丈に応じて使い分けます。
例えば「ふわっとしたボリューム感」を重視したい時はクロス起毛、「コシと均一さ」を重視するならシンカー起毛などです。
起毛プロセスの最適化ポイント
長年の現場経験から、柔らかな仕上がりに必須の最適化ポイントを紹介します。
1. ワイヤーの種類・間隔・配列
粗いワイヤーは毛羽が太く長く、細目は繊細な起毛になります。ワイヤーの角度や間隔を調整し、最終的な風合いをチューニングします。
2. 起毛回数とスピード
一度で終わらせず複数回、ゆっくりと起毛するほど生地にもダメージが少なく、ソフトな仕上がりが得られます。「時間は手間を惜しまない」昭和型マインドが、今でも現場品質の支柱です。
3. 熱や湿度コントロール
乾燥しすぎて生地が硬くならないよう、適度な湿度を保った状態で起毛機をかけます。機械力だけでなく「調湿」も重要なひと手間です。
糸選びがスウェットの出来を決める
起毛前に大きく影響を及ぼすのが「糸の選び方」です。
特に要点は、「繊維長」「撚りの強さ」「原料ミックス」の3つです。
糸の繊維長と撚り
柔らかな手触りには繊維長が長いコーマ糸やコンパクト糸が適しています。
また、撚りが弱い糸(甘撚り)は膨らみや毛羽立ちが良い反面、強度が落ちるため用途・工程に応じたバランスが求められます。
原料の工夫~異素材の可能性も
現場では木綿(綿)100%糸を基本としつつも、エステル(ポリエステル)やレーヨン、バンブー混等の異素材を組み合わせることも増えています。
これにより「しっとり感」「速乾性」「ふくらみ感」など、顧客ターゲットやシーズン毎に狙った機能・質感が実現できます。
実感できる「こだわり」の製造プロセス
生産管理のリアル:歩留りと効率の狭間で
製造現場では、柔らかさを重視しすぎると歩留り(良品率)が下がったり、効率面で課題が生じがちです。
現場では、定期的な試験起毛やサンプル確認を怠らず「狙い通りの風合い」が出ているかを常にチェックします。
また、昭和時代から続く「腕のいい職人」の勘や経験も、機械制御やセンサーロボットにはまだまだ代替できません。
このアナログな技術継承が、現代でも世界に冠たる理想のスウェットを生み出す土台になっています。
品質管理の進化と顧客要求への対応
糸・生地サプライヤーとの緊密な連携を通じて、素材試験・耐久性・洗濯後の風合い変化も含めた品質検査を繰り返します。
昭和型の「現場の目」に加え、デジタル化された検反データや風合いセンサによる科学的数値化も進みつつあり、社内品質基準の強化こそが海外メーカーとの差別化ポイントとなっています。
調達バイヤー・サプライヤーの視点での対応戦略
この分野でバイヤー(調達担当)が見るべきポイントは、「スペック表でわかる性能」だけでなく、「実際に手に取って感じる風合いの一貫性」「サプライチェーンの柔軟な対応力」です。
また、サプライヤー視点では、バイヤーが求める最終製品イメージを深く理解し、起毛機や糸選び、工程提案も含めて価値提供を行う姿勢が欠かせません。
実際、現場では「想定どおりの柔らかさが出ない」というクレームも少なくありません。
こうした際、現場の生産・品質管理チームがバイヤーと直接コミュニケーションし、調整案を即時に提案できる体制整備が大きな差別化につながります。
特にアパレル向けなど厳しい要求水準を課すバイヤーに対しては、現場の改善余地や素材提案能力がそのまま取引継続の鍵を握ります。
業界動向:アナログとデジタルの「ハイブリッド」が支える未来
近年は変則的な気候変動への対応や、個性的なスウェット需要の高まりを受け、よりきめ細かな素材設計・生産対応が求められています。
同時に、AIやIoTによる生産監視、機械の自動制御、高度なデータ化も進行中です。
しかし、意外なほど「最後のひと手間」は現場の腕に頼る部分が残っており、日本らしい「ハイブリッド型ものづくり」が生き残りのカギです。
まとめ:柔らかさの追求は、現場と現場をつなぐ連携から
スウェットの裏起毛を柔らかく仕上げるには、起毛機の特性や使い方・調整、糸選びの深い配慮、さらには生産・品質管理まで一貫した対応が不可欠です。
伝統的な「現場の手の感覚」と最新のデジタル技術、さらにはバイヤー・サプライヤー間の密なコミュニケーションすべてが積み重なり、消費者に「これは違う!」と感動される製品が生まれます。
現場を知る者同士が互いの知見を活かし、新旧の知恵をかけ合わせて新たな価値を生み続けることこそ、日本のものづくりの最大の強みです。
これからこの分野を目指す方々、現場に携わる皆さんには、その現場感覚と柔らかい感性、そして学び続ける姿勢を大切にしていただきたいと心から願っています。
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