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投稿日:2026年10月16日

ポリエチレン HDPE・LDPE の選び方——JIS K 6922 の密度区分と呼び方、容器・フィルム・管での指定

この記事のポイント(結論先出し)

ポリエチレン(PE)の HDPE・LDPE は密度の区分で、JIS K 6922-1 では 925 kg/m³ 以下(911 を超える範囲)が低密度(PE-LD・PE-LLD)、940 kg/m³ を超えると高密度(PE-HD)になる[1]。境目は文献によって少しずれるので、「HDPE」と書くより、JIS の呼び方で記号・用途の区分・密度・MFR(溶けたときの流れやすさ)まで書くほうが確かである[1]。ただし同じ呼び方の材料が同じ性能とは限らないと規格自身が書いているので、重要な部品・容器はメーカーとグレードで固定する[1]。HDPE の容器に洗剤やアルコールを入れるなら、環境応力亀裂(液に触れた状態で応力がかかって割れる現象)を確かめる。試験ではアルコール中の HDPE が短時間で割れ、LDPE では割れが見られなかった報告がある[5]。フィルムは JIS Z 1702、水を通す管は JIS K 6761 と、形によって指定の物差しが変わる[3][4]。

HDPE と LDPE は、密度の区分で呼び分けている

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この記事は、工業部品・容器・フィルムの材料としてポリエチレンを指定するときの話である。プラスチックごみの分別の話には触れない。

ポリエチレンの成形用・押出用材料の呼び方は、JIS K 6922-1(2018 年 6 月 20 日改正、ISO 17855-1:2014 を基にした規格)が決めている。この規格は、ポリエチレンを密度と MFR(メルトマスフローレイト)の水準、用途・加工方法、重要な性質、添加剤、着色剤、充填材などの情報で区分する[1]。超高分子量ポリエチレン(PE-UHMW)とマスターバッチ類、EPM ゴムには適用しない[1]。超高分子量ポリエチレンを使う摺動部品なら、超高分子量ポリエチレン(JIS K 6936)の選び方を読む。

密度の区分は、規格の表 3 で次のように決まっている[1]。

記号(JIS K 6922-1) 23 ℃での密度の範囲 密度のコード 包装材料の解説での区分(参考)
PE-VLD(超低密度) 911 kg/m³ 以下 00・03・08 —
PE-LD(低密度)・PE-LLD(直鎖状低密度) 911 を超え 925 kg/m³ 以下 13・18・23 LDPE 0.910〜0.925 g/cm³
PE-MD(中密度) 925 を超え 940 kg/m³ 以下 27・33・38 MDPE 0.926〜0.940 g/cm³
PE-HD(高密度) 940 kg/m³ を超える 44・50・57・62 HDPE 0.941〜0.965 g/cm³

右の列は、色材協会誌の包装容器の講座(2007 年)がポリエチレンを密度で区分したときの値である[6]。中身はほぼ同じだが、境目の書き方と上限の有無が JIS と違う。仕入先と「HDPE」の意味がずれる余地があるので、発注では JIS の記号と密度のコードで書くほうが確かである。

表を見ると分かるとおり、PE-LD と PE-LLD は同じ密度の範囲に入っている[1]。前述の講座は、エチレンとα-オレフィンを共重合して作った低密度ポリエチレンを直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と呼ぶ、と説明している[6]。密度だけでは LD と LLD を区別できないので、記号まで書く。

密度は製品から測るのではなく、メルトインデクサから 190 ℃で押し出したストランドを沸騰水で 30 分処理してから測る、と規格は決めている。着色剤や充填材を含む材料は、ベースのポリエチレンの密度で呼ぶのがよい、とされている[1]。受け取った成形品の密度を測って区分を言い当てようとすると、測り方が違うので一致しないことがある。

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呼び方で書ける項目と、書いても決まらないこと

JIS K 6922-1 の呼び方は、規格番号のあとに五つのデータブロックを並べる。データブロック 1 が記号(PE-LD・PE-HD など)、2 が充填材・強化材とその含有率、3 が用途・加工方法と重要な性質・添加剤、4 が密度と MFR のコード、5 が追加の要求である[1]。規格の例では、ブロー成形用(B)で密度 952 kg/m³、MFR(190 ℃・21.6 kg)0.5 g/10 min の高密度ポリエチレンを「JIS K 6922 (ISO 17855)-PE-HD,, B, 50-G006」と書く[1]。

用途・加工方法のコードには、ブロー成形用(B)、パイプ・異形品・シートの押出成形用(E)、フィルム押出用(F)、射出成形用(M)、回転成形用(R)などがある[1]。性質のコードには、耐光または耐候処方(L)、帯電防止処方(Z)、特殊燃焼性処方(F)などがある[1]。屋外で使う部品なら耐候処方、電子部品の梱包材なら帯電防止処方の有無を、記号で書き分けられる。

MFR は、条件の記号と一緒に読む

MFR は、溶かした樹脂が決まった条件で 10 分間に押し出される質量で、成形のしやすさの目安になる。JIS K 6922-1 は測定条件を 190 ℃で荷重 2.16 kg(D)、5.00 kg(T)、21.6 kg(G)の 3 通りとし、D で 0.1 g/10 min 未満の材料だけ T を、T でも 0.1 g/10 min 未満なら G を使う、と決めている[1]。

同じ「MFR 0.5」でも、条件 D と条件 G では別の材料である。仕入先やデータシートの MFR を比べるときは、条件の記号がそろっているかを先に見る。

同じ呼び方でも、同じ性能とは限らない

規格は注記で、この規格で同じ呼び方をする材料が必ずしも同一の性能を示すとは限らず、特定の用途や成形方法に必要なデータを提供するものではない、と書いている[1]。呼び方は「何の種類の材料か」を誤解なく伝える道具で、性能の保証ではない。容器や重要な部品は、メーカーとグレードで固定し、変更を承認の対象にする。手順は樹脂のグレード指定と代替グレードの承認にまとめた。

HDPE の容器は、液に触れた状態での割れを確かめる

ポリエチレンで起きやすい不具合に、環境応力亀裂がある。液体に触れた状態で応力がかかると、液がない場合より低い応力・短い時間で割れる現象である。

JIS K 6922-2(2018 年 6 月 20 日改正)は、ポリエチレン材料に特有な特性の一つとして環境応力亀裂を挙げ、ASTM D1693 の方法で 50 % の試験片が壊れるまでの時間(F50)を求め、密度 0.925 以下は条件 A、それを超えると条件 B で試験すると決めている[2]。あわせて、この試験は特に押出用のポリエチレンで相対比較の値が得られ、良い指標とはなるが、用途に対する適否は材料の性能試験の全評価で判断する必要がある、と注記している[2]。

滋賀県立大学などの徳満らの研究(成形加工 29 巻、2017 年)は、HDPE と LDPE を曲げた試験片をアルコール(エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール)に浸して比べ、HDPE では短時間で環境応力亀裂が顕著に起きた一方、LDPE では起きなかった、と報告している[5]。硬くて丈夫だから HDPE、という選び方が、液と応力の組み合わせでは逆に働くことがある。

規格の側にも、この現象を重く見た経緯がある。水を通す一般用ポリエチレン管の JIS K 6761 は、ISO 規格にない環境応力亀裂の試験方法を附属書で追加しており、その理由を、過去に環境応力亀裂による事故が発生したため、と説明している[4]。

洗剤・アルコール・油を入れる容器、ねじで締めて応力のかかるキャップや継手を HDPE で作るなら、入れる液と温度を仕入先に伝え、環境応力亀裂のデータ(試験条件つき)を出してもらうか、実際の液で試す。試験の値は相対比較なので、同じ条件で測った値どうしで比べる[2]。

形によって、指定の物差しが変わる

ポリエチレンは、ペレットの呼び方とは別に、製品の形ごとに規格がある。発注するものが何かで、読む規格を変える。

包装用のフィルム——JIS Z 1702

JIS Z 1702(包装用ポリエチレンフィルム、1994 年)は、フィルムを 4 種類に分けている。1 種 A は比較的柔軟性をもつもの、1 種 B はそれに加えて特に耐衝撃性をもつもの、2 種 A は比較的こわさをもつもの、2 種 B はこわさをもち極薄用または強化用のもの、である[3]。引張強さの下限は 1 種 A が 11.8 MPa、1 種 B が 16.7 MPa、2 種 A が 19.6 MPa、2 種 B が 29.4 MPa で、1 種 B と 2 種 B には落錘による衝撃試験がかかる[3]。厚さは呼び厚さごとに平均厚さと最大・最小の許容範囲があり、たとえば呼び厚さ 0.050 mm では平均厚さの差が ±7 %、厚さの差が ±0.009 mm である[3]。

この規格は材料について、JIS K 6748 または JIS K 6731 の 1 種を主成分とする、と書いている[3]。ただし JIS K 6748 は、日本産業標準調査会の JIS 検索で番号を引いても見つからなかった(2026 年 10 月時点)。フィルムの種類は Z 1702 で、材料の呼び方は現行の K 6922-1 で書く、と分けて考えるのが無難である。

水を通す管——JIS K 6761

JIS K 6761(一般用ポリエチレン管、2017 年改正)は、主に塩素を含まない水の輸送に使う管の規格で、管の種類を 1 種管(PE50)・2 種管(PE80)・3 種管(PE80・PE100)に分け、管に使うコンパウンドを最小要求強度(MRS)で PE50・PE80・PE100 に分けている[4]。コンパウンドには密度の下限もあり、PE50 は 0.915 g/cm³ 以上、PE80 は 0.930 g/cm³ 以上、PE100 は 0.942 g/cm³ 以上である[4]。区分の軸は密度の名前(HDPE・LDPE)ではなく、管の種類とコンパウンドの MRS である。取扱い上の注意として、この管は塩素を使わない水輸送用に設計されており、黒の管を塩素処理する水道水のような用途に使ってはならない、と書いている[4]。「HDPE の管」と頼むと、この区分が抜け落ちる。

ボトル・容器

前述の包装容器の講座は、HDPE が洗剤やシャンプー、リンスなどのボトルの材料として使われていると紹介している[6]。容器は、ブロー成形用(B)の材料を使うのが基本で、前の節の環境応力亀裂を必ず確かめる。食品に触れる容器・包材なら、食品衛生法の器具・容器包装のポジティブリスト制度(令和 2 年 6 月 1 日施行)がかかる[7]。確かめ方は食品に触れる部品・容器包装の調達で扱った。

発注するもの よりどころ 区分の物差し あわせて決めること
ペレット(材料) JIS K 6922-1 記号・密度・MFR・用途[1] メーカーとグレード
包装用フィルム JIS Z 1702 1 種 A・B/2 種 A・B と厚さの許容範囲[3] 折り径・幅、長さ
水を通す管 JIS K 6761 1〜3 種管。コンパウンドは MRS で PE50・PE80・PE100(密度にも下限)[4] 塩素を含む水かどうか
容器・成形品 材料の呼び方+図面 用途のコード(B・M など)[1] 入れる液と環境応力亀裂

発注書に書くこと(ポリエチレン)

以下は規格の要求ではなく、発注側の実務としての提案である。

1. 材料
メーカーとグレード。あわせて JIS K 6922-1 の呼び方(記号・用途のコード・密度のコード・MFR の条件と範囲)。

2. 形と、その規格
フィルムなら JIS Z 1702 の種類と呼び厚さ、管なら JIS K 6761 の管の種類(1〜3 種管)とコンパウンド(PE50・PE80・PE100)、成形品なら図面と寸法の測り方。

3. 使う環境
触れる液(洗剤・アルコール・油など)、温度、屋外かどうか、応力のかかる部分。

4. 添加剤の要否
耐候処方、帯電防止処方、着色の有無。

5. 食品に触れるかどうか
触れるなら、ポジティブリスト制度への適合の説明を出すこと。

6. 変更の連絡
材料・グレード・成形場所を変える前に承認を得ること。

受入で確かめること

初回は、注文したグレードで作られたことを材料のロットの記録で確かめる。フィルムなら規格の表示(名称、種類、寸法、製造年月、製造業者名)を見て[3]、厚さは規格の方法(切り口の 8 か所を測る)で確かめる[3]。容器なら、取り決めた液での試験の結果を初回に出してもらい、量産に入ってからは寸法と質量をロットごとに記録する。

成形品の寸法をどの状態で測るかは樹脂成形品の寸法公差の決め方で扱っている。

よくある質問

HDPE と書けば、仕入先との間で材料は決まりますか

決まらない。HDPE は密度の区分で、JIS K 6922-1 では 940 kg/m³ を超える範囲を指すが[1]、その中にブロー成形用・射出成形用など性質の違う材料が含まれる。少なくとも用途のコードと MFR、重要な部品ならメーカーとグレードまで書く。

LDPE は HDPE より割れやすいですか

一律には言えない。アルコール中で曲げた試験片では、HDPE で短時間に環境応力亀裂が起き、LDPE では起きなかった、という報告がある[5]。液と応力の条件で結果が変わるので、使う条件で確かめる。

水道用の管に、ポリエチレン管なら何でも使えますか

使えない。JIS K 6761 の管は塩素を含まない水の輸送用で、黒の管を塩素処理する水道水に使ってはならないと規格が書いている[4]。用途に合う規格の管を指定する。

まとめ

ポリエチレンの HDPE・LDPE は密度の区分で、JIS K 6922-1 の記号では PE-LD・PE-LLD(911 を超え 925 kg/m³ 以下)、PE-MD、PE-HD(940 kg/m³ を超える)に分かれる。境目の書き方は文献で少しずれ、LD と LLD は密度では区別できないので、記号・用途のコード・密度・MFR の条件まで書き、重要なものはメーカーとグレードで固定する。HDPE の容器や応力のかかる部品は、触れる液での環境応力亀裂を確かめる。フィルムは JIS Z 1702、水を通す管は JIS K 6761 と、形によって区分の物差しが変わる。

同じ束では、板材として使う樹脂を塩ビ板(硬質PVC)JIS K 6745 の発注で、ボトルやシートに使うポリエステルをPET 樹脂の選び方で扱う。

出典・参考資料

  1. JIS K 6922-1:2018 プラスチック-ポリエチレン(PE)成形用及び押出用材料-第1部:呼び方のシステム及び仕様表記の基礎(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2018 年 6 月 20 日改正)
  2. JIS K 6922-2:2018 プラスチック-ポリエチレン(PE)成形用及び押出用材料-第2部:試験片の作製方法及び特性の求め方(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2018 年 6 月 20 日改正)
  3. JIS Z 1702:1994 包装用ポリエチレンフィルム(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧)
  4. JIS K 6761:2017 一般用ポリエチレン管(日本産業標準調査会 JIS 検索で閲覧/2017 年 11 月 20 日改正)
  5. 徳満勝久ほか「ポリエチレン系材料のアルコール中における環境応力破壊に関する研究」成形加工 29 巻 8 号(プラスチック成形加工学会/2017 年)
  6. 「プラスチック包装容器の分類と使用材料」色材協会誌 80 巻 1 号(講座「プラスチック包装容器」)(色材協会/2007 年)
  7. 食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度について(2025年6月1日以降)(厚生労働省)

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