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改善成果をグラフ化できず伝わらないコンサルの失敗談

目次
はじめに:なぜ改善成果は「伝わらない」のか
製造業の現場では、カイゼン(改善)活動が日常的に行われています。
コスト削減、品質向上、生産効率の向上など、目的は様々です。
しかし、コンサルタントや外部支援者による提案や活動を通じて、「肝心の改善成果がうまく伝わらない」という声を多く耳にします。
なぜ現場で確かに変化が起こったはずなのに、上層部や関係者にその価値が伝わらないのか。
本記事では、私が20年以上の製造業実務と工場管理職として経験した失敗談を交えつつ、改善成果を「伝える」ための本質や、失敗・成功の分かれ目をラテラルシンキングで掘り下げていきます。
コンサルタント導入の現場—見えない成果と現場のジレンマ
コンサル現場あるある:「グラフ化できない成果」はなぜ生まれるのか
コンサルタントが関与するプロジェクトで、改善活動の前後を「数字で示せ」と言われるのは日常茶飯事です。
しかし、現場のオペレーターが「最近雰囲気が良くなった」「工程間のコミュニケーションが増えた」と感じていても、定量的なグラフには表れません。
また、例えば設備トラブル件数の減少や生産リードタイムの短縮といった数字も、日ごとのばらつきや異常値の影響ですぐには「劇的な改善」としてグラフには現れません。
「体感ではラクになったが、データとしては有意差が出ていない」といったギャップが発生しやすいのが、コンサル導入直後の現場です。
グラフ化ありきの落とし穴—昭和体質が生む誤解
日本の多くの工場では、今も「データ・数字第一主義」が根強く残っています。
その背景には、過去のISO監査やQC活動で「客観的データで報告せよ」と管理職やバイヤーに叩き込まれてきた風土があります。
そのため、現場で小さな改善が積み重なっても「グラフ化して見せろ」「キーメトリクスで効果を示せ」と言われます。
この結果、「定量的な成果発表=コンサルの価値」と誤解され、本来のプロセス改善の本質、現場の士気の向上といった定性的な成功が埋もれてしまうのです。
私の失敗談:成果グラフ一辺倒で信頼を失った現場
「数値にしないとダメだ!」が生んだ現場の反発
かつて私が工場長として外部コンサルを導入した際、成果を全部グラフ化しようとしました。
「改善前後のデータを出せ」「リードタイムは何%短縮されたのか」など、とにかく数字にこだわったのです。
一方、オペレーターからは「作業がしやすくなった」「同じ失敗を繰り返さなくなった」といった声が出ていましたが、それらはグラフに反映されませんでした。
その結果、「せっかく現場がよくなったのに、成果にならない。発表会のための改善じゃないのに」と逆風が生まれ、コンサルタントの話も現場に届かなくなりました。
「見える化」で取り違えた本質
当時の私は、「見える化=グラフ化だ」と思い込んでいました。
しかし本来の見える化は、現場の小さな変化や前向きな行動、ノンバーバルな雰囲気の変化をも捉えるべきものでした。
製造業の現場力は、しばしば「目に見えない部分」に宿っています。
私自身が、その「現場の変化」を伝えきれなかったことが最大の失敗だったのです。
なぜ“改善の伝え方”が重要なのか—バイヤー&サプライヤー目線も考える
「バイヤーは成果をどう判断しているか」
購買部門やバイヤーの多くは、サプライヤーから「納期短縮に成功」「不良率低減」といった成果報告を求めます。
これは、価格交渉や評価基準に数字が使われるためです。
ですが本質的には、バイヤーも「数字の裏側にある現場改革」への関心を強く持っています。
例えば、「現場改善活動でチームの意識が変わった」「トラブル時の対処スピードが早くなった」など、数字には見えにくい文化的変化も重視しているのです。
サプライヤー目線:どうすれば“伝わる”報告ができるか
サプライヤー側が「数字だけ」で改善を伝えると、本当の価値が相手に伝わりません。
数字を補完する現場写真やビフォー・アフターの行動変化、スタッフの声を組み合わせると、納得感が大きく向上します。
また、数値化が難しい領域こそ、現場で何が・どう変わったのかを“ストーリー”として伝えることが大切です。
「現場のオペレーターが、自発的にチェックリストを書き換えるようになった」といった行動の変化は、将来の数字改善を期待させる材料にもなります。
昭和型アナログ業界の潮目—本当に“根付く”改善報告とは
なぜ同じ失敗が繰り返されるのか—業界動向を踏まえて
筆者が働く製造業界では、未だに「上司にウケるグラフ」重視、「数値にしにくい成果は無視」といった“昭和型”文化が息づいています。
一方で、最近は「現場の知恵」「ボトムアップの取り組み」が再評価されつつあります。
特に自動車、電子部品、食品など、変化に俊敏に対応しなければならない業界ほど、現場主導の改善を“見える形”でアピールする重要性が増しています。
グラフ以外の「見せ方・伝え方」—現場発信で変わる雰囲気
デジタル化の波でQCストーリーやカイゼン報告も電子化が進みましたが、そこで「グラフで一枚、表で二枚…」の発表だけでは心が動きません。
今後は、動画や現場インタビュー、変化が見えるビジュアルボードなど、より“肌感覚”に寄り添った伝え方が注目されています。
さらに、SNSや社内ブログを活用して現場の「今」を発信する企業も増えてきました。
実際、私の経験でも「現場から写真付きで改善進捗を発信したら、離れた工場の経営層がグッと関心を持った」という事例もあります。
ラテラルシンキングで考える—真の「伝える力」とは何か
型破りな“伝達”が現場の士気を変える
これからの製造業は、「成果は数値で示すもの」という一方向の常識を越えていく必要があります。
ラテラルシンキング(水平思考)を使えば、「数字が出ない=失敗」という固定観念から抜け出し、価値ある変化を多角的に表現できるはずです。
たとえば以下のような視点を加えることで、従来の枠を超えた“伝え方”が可能になります。
・現場スタッフが選ぶ「現場がラクになったベスト改善賞」の導入
・「ムダと感じなくなった作業」ランキングを作成し、業務の質的変化を見える化
・改善活動の“Before/After”を短尺動画にし、1分で伝わるストーリーとして展開
・改善を体験したパートナー(協力会社や仕入先)のコメントを掲載し、第三者の視点を導入
これらは、従来の数値グラフでは把握できなかった「定性×定量」のハイブリッド効果を生む可能性が高いのです。
“伝える”から“伝わる”へ—バイヤー、現場、経営層と共鳴する改善活動に
ポイントは、「伝える」ではなく「伝わる」報告・発信を目指すことです。
バイヤーや経営層は、「どれだけ現場が前向きに変わったか」に投資価値を見出します。
そのエッセンスをストーリー、動画、インタビュー、現場日記など様々な方法で伝えることで、同じ業界内でも大きな差別化が生まれます。
まとめ:コンサルの失敗から学ぶ伝える力の磨き方
この記事では、改善成果を「グラフだけで示す」ことに依存しすぎた私自身の失敗談をベースに、本当の意味で成果を“伝わる形”にするための視点を紹介しました。
製造業の現場改善は、数字のみでは評価しきれない「人の変化」「空気の変化」「文化の変化」と切り離せません。
これからの時代は、現場力をきちんと“伝わる”形に翻訳し、バイヤーや経営層、さらにはサプライヤー同士が共感し合える未来志向のカイゼンを生み出すことが重要です。
今や現場・購買・サプライヤーの3者が一枚岩となって工場全体の競争力を高めていく時代です。
「グラフにできなくても素晴らしいことがある」。
その本質に気付き、“伝える力”を磨いていきましょう。
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