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スナック菓子のパリッと感を作る油温プロファイルと脱水時間制御

目次
はじめに 〜スナック菓子に欠かせない「パリッと感」への挑戦〜
スナック菓子業界は、いまなお昭和の名残が色濃く残る世界です。
アナログな工程管理や、熟練オペレーターの勘に頼った製造方法が根強く、デジタル化、生産効率化への無理解や抵抗も見受けられます。
しかし、その一方で消費者の嗜好は日々高まっており、スナック菓子に求められるのは「味」だけではありません。
袋を開けたときの、あの「パリッ」「サクッ」とした食感——。
実は、この絶妙なパリッと感を安定的に生み出すためには、高度な油温プロファイル制御と脱水時間管理のノウハウが必要不可欠です。
本稿では、工場現場で長年培った視点から、現場でも実践可能なスナック菓子の「パリッと感」づくりのポイントと業界最新動向を、ラテラルシンキングを用いて深掘りしていきます。
なぜ「パリッと感」がスナック菓子の生命線なのか?
食感の科学と消費者評価
スナック菓子において消費者のリピート購入を左右するのは、味や香りだけではありません。
圧倒的に重視されている要素のひとつが、最初のひと口で感じる「パリッ」「サクッ」という食感、すなわち食感品質です。
これは、咀嚼時の音や歯ざわりによって脳に快感を与えるためともいわれており、商品レビューサイトでもよく「パリッと軽い」「噛みごたえがよい」といった表現が散見されます。
つまり、パリッと感の再現性が商品ブランドの根幹を成すのは間違いありません。
現場での本質的な課題
既存工場では、食感コントロールが作業標準書の通りに行われず、経験則や現場勘に頼ることが少なくありません。
そのため新入社員や若手のオペレーターでは品質が安定せず、製品返品やクレーム、果てはブランド信用の毀損といった重大な問題につながることが多々あります。
したがって、体系立てた技術的管理と、設備・工程の最適化が今こそ求められているのです。
「パリッ」とした食感を生む要素とは?
原料の前処理工程の重要性
原材料(じゃがいも、とうもろこし、小麦粉など)の水分やデンプン構造は、製造工程での食感に大きく影響します。
たとえば、生のままでは水分が多すぎて十分な脱水ができず、パリッと軽やかな食感を再現できません。
そのため、前処理としてのカットサイズやスライス厚、さらには浸漬や加熱処理などの「下ごしらえ」も妥協できない工程です。
油温プロファイル設定の核心
食材を揚げる工程において、単に「高温で一発」ではパリッとした軽快さは再現できません。
食感を決定づけるのは、以下のような油温設定とプロファイルのコントロールです。
・投入時のショック熱(初期温度設定)
・工程中の温度維持、上昇・下降のタイミング
・バッチ方式 or 連続生産ラインでの温度ムラ対策
この工程制御に失敗すると、得てして「べちゃっ」とした粘着感や、焦げ風味、逆に芯の残った仕上がりなど、品質のばらつきにつながります。
脱水時間・速度の最適制御
揚げ時間、すなわち脱水時間もパリッと感の要です。
素材の厚さ、水分量、油温条件から逆算して「食材内部の自由水をどこまで飛ばせるか」、そして「表面に微細な気孔構造を形成できるか」が勝負所となります。
長すぎる脱水は食感が硬すぎたり焦げたりしますし、短すぎれば水分が残りべたつきやすくなります。
狙った領域にピタリと制御を合わせることが、技術者/現場管理者としての腕の見せ所なのです。
昭和の勘頼りからの脱却 〜油温・脱水管理のデジタル化ステップ〜
現場に残るアナログな風習
日本の多くのスナック菓子工場では、
「油の照りがこの色に変わったらOK」
「食べてみて水っぽさが抜けてたら次を投入」
など、職人技や”刷り込み文化”が根強く、工程標準化・データロギングへの抵抗感もつきものです。
こうした現場文化を変革するには、現場への啓蒙と実体験から「納得」が不可欠です。
工程管理のデジタル化事例と成功要因
私がかつて携わった現場では、油温・脱水工程の管理にIoT温度センサーとPLCによるリアルタイム監視を導入しました。
ポイントは以下です。
・油温プロファイルを複数段階で自動管理
・揚げ工程ごとに記録取得して「見える化」
・AI学習による「標準パターン」生成と品質予知
これにより若手オペレーターがミスをしても、工程逸脱前に自動アラーム通知が来る仕組み作りが可能となり、製品歩留・食感品質・生産効率の3点で大幅な成果をあげました。
油質管理のポイントと「油の管理者」育成
油も消耗材ですから、劣化/酸化を放置すると油染みや異風味、焦げ付きの原因となります。
「油の管理者」を任命し、
・毎日の油交換基準
・偏差が出た時のトラブルシューティング
・油質データに基づくフィードバック
これらを標準フロー化することで、「人に依存しない製造の仕組み」が実現できます。
サプライチェーンにおけるバイヤー&サプライヤー視点からの活用法
バイヤーが重視すべき工場管理の観点
販社や商社のバイヤーとして製造元の現場視察をするときは、以下をチェックしましょう。
・現場の温度管理、脱水管理が標準化されているか
・油の交換頻度・管理記録が残されているか
・突然のトラブル時に現場が自律対応できているか
これらをチェックするだけで、実はその現場が「食感」品質にどれほどコミットしているかを見抜くことができます。
こうした地道な裏付けが、最終的に製品品質=ブランド価値へ直結します。
サプライヤーが知っておきたい「パリッと感」の価値
サプライヤーの立場では、原材料(でん粉、油脂、調味原料など)のスペックに対して“どの工程で、どんな最終食感を目指すのか”まで提案できると、大きな差別化ポイントとなります。
理想は、
・油脂の組成や融点情報をレシピ提案と合わせて提供
・でん粉や繊維量の違いによる「揚げムラ」「脱水挙動」の事例共有
・油脂の交換タイミング、管理指導のサポート
こういった「工程最適化ソリューション型」の営業提案です。
これにより、バイヤー/メーカーから「ただの納入業者」から「品質や工程を共に創造するパートナー」への昇格が期待できます。
進化する「食感」品質管理のこれからと業界トレンド
AIとビッグデータを活用した品質管理の動向
近年は、油温・揚げ時間の管理データをAIで解析し、
・最適なプロファイル条件提示
・ロットごとのばらつき予測と補正
・未然トラブルの早期警告
といった、データドリブンな品質保証システムが普及し始めています。
昭和の時代、「味は職人の舌と勘しだい」だった領域が、いよいよ客観データで語られる時代になったのです。
サステナビリティ視点での油の再生&CO2削減
食品工場にとって、油の廃棄=コスト増&環境負荷増は無視できないテーマです。
現場では、省エネフライヤーや油再生装置の導入により、
・ランニングコスト圧縮
・CO2排出削減
・フードロス低減(揚げムラ除去による歩留改善)
にもつながっています。
SDGs対応を意識するバイヤーは特に、このあたりの取組を要チェックです。
グローバル競争下の製造業として
現場レベルの食感品質向上が、国内外のパートナー企業やバイヤーとの強力な絆・競争力になります。
「たかがパリッと感、されどパリッと感」。
こうした一点突破型の技術的ブラッシュアップが、グローバルで戦える日本のものづくり力の根幹なのです。
まとめ 〜昭和の経験価値×令和のデジタル力が、「パリッと感」の未来を創る〜
スナック菓子の「パリッと感」——それは単なるレシピではなく、原材料、油温・脱水制御、熟練技能、そして最新デジタル制御が組み合わさった“現場総合力”の結晶です。
昭和のすぐれた勘や現場力をリスペクトしつつ、そこで得られた知見をデータ化し標準化することで、誰でもムラなく高品質な食感を再現できる。
これが現代製造業の新たな競争力の柱になります。
バイヤー、サプライヤー、現場担当者など、製造業に関わるすべての立場の方へ——
ぜひ本稿をヒントに、食感品質を“定性的から定量的”へ、現場技術を“属人化から再現性あるシステム”へと進化させていただければ幸いです。
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