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客先のFMEA要求が形だけになりがちな実態

目次
はじめに:FMEAが「形だけ」になってしまう現場のリアル
FMEA(Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析)は、製造業で品質保証やリスク管理の要として世界的に重視されているツールです。
客先(顧客)からFMEAの導入や提出が強く求められるこのご時世、皆様の会社でも間違いなく話題に上がっているのではないでしょうか。
しかし、多くの現場では「FMEA要求が形だけ」「本質的なリスク低減につながっていない」という声もまだまだ根強く聞かれます。
なぜFMEAが形骸化してしまうのか。
その背景には、アナログな業界特有の風土や、実務上のハードルが複雑に絡み合っています。
この記事では、20年以上現場で経験を積んできた筆者が、「なぜFMEAが現場で形だけに終わりがちなのか」という実態と、今こそ現場目線でのFMEAの在り方について深堀りしていきます。
FMEAとは何か? 基本の再確認
FMEAは「何が壊れるか、どう壊れるか、その時どんな問題(影響)があるのか」を系統的に洗い出し、優先度の高いリスクから対策していく手法です。
製品設計、工程設計、サプライチェーンのどの段階でも活用可能です。
大手自動車OEM(完成車メーカー)をはじめ、サプライヤーにも要求が拡大。
IATF16949(自動車産業の品質マネジメント規格)やISO9001でも採用が進んでいます。
FMEAが機能すると、「未然防止」「予測的な品質保証」「リスクの見える化」「顧客・サプライヤー間のコミュニケーション強化」といったメリットがもたらされます。
「予防」をキーワードに、失敗・損失・クレームのコストを低減することが本来の目的です。
客先のFMEA要求が生み出す業界の課題と現場のジレンマ
1. なぜ「FMEA=書類作成作業」に堕してしまうのか
現場サイドでは、FMEAの本質を掴み取り、活用しきれていないことが多々あります。
背景には、
・顧客から「FMEA様式の提出」を求められるが、内容まで深く評価されない
・部署や担当者ごとに手法や解釈がバラバラ
・短納期、繁忙期などで「作ること」が目的化 といった要因が挙げられます。
特に一次・二次サプライヤーの現場では、
「要求されるから、雛形に当てはめて埋める」、「過去事例の流用」、
「合議の場を設ける時間もなく、担当者がひとりでさばく」
といった「消化試合」的なFMEA運用が横行しがちです。
2. 「やれば良い」精神と昭和的職人気質の継続
製造業の根強いアナログ文化、「経験則」「勘とコツ」への依存は、今なお大きな壁です。
設備担当や熟練オペレーターは、
「FMEAなんてやらなくても、長年の経験で大体分かる」
「(帳尻を合わせるために)紙の上だけ形にすれば良い」
という心理的ハードルを感じがちです。
多忙極まる現場では、FMEAを本質的に議論する時間も心の余裕も削られてしまいます。
3. 形式的なFMEAがもたらすリスク
形だけのFMEAは、下記のような問題を孕んでいます。
・重大なリスクが見逃される
・未然防止策が「想定止まり」で実装されない
・現場での実効性、フィードバックループが構築されない
・顧客監査で「実態と整合しないリスク評価体系」となる
結局は、不良発生やクレーム再発→「またFMEA見直し・作り直し」という悪循環に陥りやすくなります。
顧客の真意を読み解く:バイヤー(顧客)のFMEA要求の裏側
サプライヤーから見れば、「何のためのFMEA?」と感じてしまう要求も少なくありません。
しかし、バイヤー(顧客)がFMEAを求めるのには明確な理由があります。
1. バイヤー側の本音とは
・自社(顧客)のリスク管理責任の一環
・安全基準や法令遵守、訴訟回避
・グローバル調達、サプライチェーン全体の弱体化リスクへの対応
・ISOなど外部認証維持のための書類整備
サプライヤーの「技術力」「改善意欲」「開発・生産体制」を可視化したいというリクエストに他なりません。
2. バイヤーとサプライヤーのコミュニケーションの乖離
バイヤーからのFMEAフィードバックは、往々にして「形式的な査察」で終わりがちです。
内容の深掘りや問題提起の機会が極めて少ないのが実情です。
本来であれば、「FMEAの中身を議論し、改善の種を見つけ共創する」ことがゴールのはずです。
しかし、提出/監査という事務作業で消耗し、本質的な意見交換が尻すぼみになっています。
具体的事例:「形だけFMEA」の現場エピソード
筆者が管理職時代に経験した一例を紹介します。
とある量産部品の工程で、顧客からFMEA提出を求められました。
提出期限は1週間後。
現場の生産管理担当、品質担当、設計担当を急遽集め、雛形に沿って項目を埋めます。
しかし
・「リスクの洗い出し」は前回案件のコピペ
・「対策欄」は「標準化された作業手順を守る」に留まる
・「検証頻度」「評価基準」は机上の数字合わせ
いざ提出しても、「現場で危惧していた新ラインの課題」や「工程内で実際にヒヤリ体験していたリスク」はほぼ反映されていませんでした。
結果、数か月後にそのラインでトラブルが発生。
「なぜFMEAに反映されていなかったのか?」と社内・顧客双方から責任を問われてしまいました。
形骸化させずにFMEAを「現場の武器」に変えるために
状況を打破し、FMEAを真に活用する組織体質へ変革するにはどうすればよいのでしょうか。
1. FMEAは「現場の気付き」を拾い上げる場である
FMEA作成を「管理部門だけの業務」にせず、「現場のベテランの声」「ライン担当の気付き」、
「過去にヒヤリ・ハットが起きたポイント」を必ず議論に入れましょう。
形式上の議事録でも、「この現場から出た指摘が実際にFMEAに反映された」という事例作りが効果的です。
2. 担当者の教育と意識改革
現場のカイゼン活動と同じく「自分ごと」としてFMEAを捉える意識付けが大切です。
形だけの業務ではなく、
「この工程、本当に大丈夫か?」
「現場で困っていること、抜けていないか?」
と自ら問い直せるマインドを養うことが肝です。
若手や中堅がベテランに「現場目線」を問いかける場作りも促していきましょう。
3. バイヤーも巻き込んだ「共同体験」のFMEAへ
サプライヤー単体では限界があります。
可能な限りバイヤーのエンジニアや品質担当とも共同で議論し、FMEAの内容を「双方向発信」できる関係性を築きましょう。
顧客監査の場を「一方通行のチェックリスト」ではなく、「共にカイゼンを考える作業会」と捉える転換が求められます。
DX・デジタルツール活用とFMEAの進化
昨今、工場DXやスマートファクトリー化の流れを受け、「FMEAのデジタル化」も強く推進されています。
・e-FMEAソフトによるクラウド共有・リアルタイム更新
・IoTデータ連携でのリスク自動抽出
・AIによる故障モード予測
こうした先端技術の活用は、形式的なFMEAの限界を打破する可能性があります。
特に、
・現場担当者がスマホ・タブレットで即時リスク登録
・トラブル発生時にアラート通知し、FMEAと紐づけ自動更新
といった仕組みが、正しい「継続的FMEA」の土壌を作るでしょう。
ただし、ツール導入だけで解決するものではありません。
「どういうリスクが本質的なのか」という現場目線を、アナログもデジタルも一体化して磨き上げていくことが重要なのです。
まとめ:FMEA「形だけ」から抜け出すために
FMEAの形骸化は、製造業が「昭和の慣習」「形式的な書類文化」から転換できていない象徴のひとつです。
その根底には、「忙しい」「面倒」「上からの要求だから」という“現場の本音”が存在します。
しかし、世界の製造業が脱アナログ・品質重視へと大きくシフトしている今、
日本のものづくり現場も「形だけ」から「本当に役立つFMEA」へパラダイム転換しなければ競争力を失ってしまいます。
そのためには、
・現場の知見こそFMEA最大のリソースと捉える
・バイヤーとサプライヤーの「共創FMEA」へ意識進化
・デジタルもアナログも組み合わせた運用
といった多角的なアプローチが必要不可欠です。
「FMEAが形だけになっている」と感じている皆さま、今こそ一歩踏み込んで、本質的な「未然防止」「現場主導のリスクマネジメント」を自分たちの現場から実践していきましょう。
現場を知るプロ、管理職経験者だからこそ伝えられるFMEAリデザインの重要性を、ぜひご自身の組織で再整理・アクションしてみてください。
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