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購買部門が実践する日本製品調達における通関最適化の工夫

目次
はじめに:購買部門の新たなミッションとしての「通関最適化」
製造業に携わる皆さんにとって、グローバル調達は日常の一部となっています。
特に国際サプライチェーンの基盤となる「日本製品の調達」は、価格・品質・納期だけでなく、通関の最適化という隠れたハードルにも目を向けなければなりません。
昭和の時代には、書類至上主義や長年の“なぁなぁ”の人間関係に頼った調達活動が目立ちました。
しかし令和のいま、デジタルトランスフォーメーション(DX)が進み、国際社会のサステナブル調和も叫ばれる中、購買部門には「異文化理解+現場感覚+DX活用」という新たなスキルセットが不可欠となっています。
今回は、実際の工場現場や調達・生産管理での経験をもとに、購買部門が取り組むべき「日本製品調達における通関最適化」の工夫を実践例も交えながらお話しします。
これからバイヤーを目指す方、サプライヤー側からバイヤーの意図を読み解きたい方、いずれにも参考になる内容です。
通関最適化とは何か?基本を改めて抑える
そもそも通関とは何か
通関とは、貨物を国境で輸出入する際、法律や税関規則に沿って「正当に通過」させるための一連の手続きです。
申告漏れや書類誤記、税率適用の誤りは、通関遅延やコスト増を引き起こし、調達部門の評価を大きく下げてしまいます。
製造業における通関最適化の目的
製造業の場合、ただ「早く・安く」製品を輸入できれば良いというわけではありません。
納期遅延による生産ラインの停滞、計画変更による調整コスト、サプライヤーとの信頼低下など、リスク要因が複雑に絡み合います。
すなわち
・納期遵守
・コスト最小化
・コンプライアンス遵守
を両立させつつ、将来的なバリューチェーン強化にも寄与する「通関最適化」が求められています。
昭和のアナログ思考とのギャップが大きな落とし穴
例えば、関税コード(HSコード)一つでも、ベテラン担当者の“勘と経験”や、前任者からの引き継ぎノートだけに頼るのは極めて危険です。
最新法規やFTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)の知識が欠落していると、結果的に「損をする輸入」となりやすいのです。
現場発!購買部門の“通関最適化”プロセスを徹底解剖
1. 通関リスクを見える化する「共通言語化」と「現場ウォーク」
まず最初に、サプライヤー・フォワーダー・社内製造・生産管理といった関係者すべてと、通関課題を“共通言語”で整理することが重要です。
現地現物を真面目に見る「現場ウォーク」を実施し、“現物箱の大きさ/パッケージの梱包形態”まで含めて確認します。
これにより、HScode判断のヒントや、該当する証明書類を事前に揃える条件などを洗い出せます。
また、アナログ的なFAX文化や手書き書類で消耗していないか、現場実態も把握しておきましょう。
2. HSコード最適化+FTA/EPA活用で“コスト競争力”を実現
最新のFTA/EPA対応やHSコード分類は、まさにラテラルシンキングが求められる分野です。
調達予定品目が、どのFTAの優遇関税を受けられるのか、複数の分類候補がある場合に最適解を探すプロセスは、まさに“知恵比べ”です。
各国の専門家(通関士・税関コンサル)とも連携しながら、社内で「ブラックボックス化」しない戦略的な関税分類ルールを作りましょう。
FTAの適用条件(原産地証明書類など)は、現地サプライヤー教育や“理解力のある物流会社選定”とも直結しています。
昭和的な「いつもの会社だから…」の惰性発注を脱却し、“調達ネットワークの質”自体をアップデートしましょう。
3. 通関書類のデジタル化=現場の負担を軽減し透明性向上
多くの工場で、出荷証明書やインボイス、原産地証明書関連が手書きや紙ベースで管理されています。
しかし、こうしたアナログな書類管理のままでは、ヒューマンエラーや紛失、情報流出リスクが高止まりし続けます。
購買部門が旗振り役となり、サプライヤーとの間で
・電子インボイス
・電子原産地証明書(eCO)
・クラウド上での進捗・履歴管理
を“標準プロセス”として根付かせるべきです。
初期は現場の反発もありますが、成功事例を小さく積み重ねることで、次第に「楽で合理的」と実感されるようになります。
4. 輸送モード・倉庫戦略の柔軟な設計力
購買部門は、コストだけでなく「在庫の最適化」と「納期リスクヘッジ」の視点で、どの輸送モード・倉庫体制を選ぶべきかも見極めなければいけません。
例えば、
・緊急品はエア便+通関前倒し申請で納期短縮
・安定需要品は船便混載+AEO事業者の活用でコスト最小化
・流通加工拠点倉庫を経由し、「必要な分だけジャストインタイム納入」
など、サプライチェーン全体の合理化を見据えてプロセス設計します。
昭和時代の「一律一括発注・大量在庫抱え込み」は、現代ではもはやリスクでしかありません。
需要変動リスク・世界情勢リスクを踏まえ、通関だけでなく全体最適化の視野を持つことが重要です。
【実践例】大手製造業メーカーでの通関最適化プロジェクト紹介
ある大手自動車部品メーカーでは、日本国内からの特殊電子部品を、アジア各国の工場へ納入する際、通関遅延による生産ラインの停止が大きな問題となっていました。
従来は、
・書類作成を担当者の経験と“同じことの繰り返し”で進めていた
・複数サプライヤーとの連携不足で情報伝達ミスが多発
・倉庫管理も現場力任せ
という「昭和型モデル」でした。
そこで、購買部門主導で
・通関手順と証明書管理をすべてデジタル化
・サプライヤー教育会の定期開催
・フォワーダー選定によるAEO(特定保税管理者)の起用
・週次での通関ノウハウ共有+改善会議
といった仕組み化を断行しました。
結果、通関関連のトラブルは70%以上削減し、“調達コスト”も年間数千万円単位で圧縮、「製造現場のライン停止ゼロ」という大きな成果につながりました。
サプライヤー、物流業者に求める新たなパートナー像
バイヤーが通関最適化を進める中で、サプライヤーや物流業者にも“従来通り”ではない協力姿勢が求められます。
求められるは「意図を読み、自ら提案できる」パートナーシップ
・出荷証明や原産地証明、インボイスなどのデジタル化への柔軟な対応
・FTA/EPA関連の調査・取得・証明ノウハウの蓄積
・個社ごとのカスタマイズ要件(現場の不安点や特殊事情)を理解し、能動的に提案できる対応力
・なにより「購買部門が苦労していること・困っていること」を汲み取る配慮力
「前任者から言われた通りです」「やったことがありません」だけでは、これからの競争を勝ち抜けません。
自分ごととして考え、パートナーとして一緒に通関最適化に取り組もうという姿勢が評価される時代です。
ラテラルシンキングで切り拓く、通関最適化の未来へ
これまで当たり前だった“アナログ通関手続き”や“決められた業務範囲だけを無難にこなす”という考え方から脱却し、ラテラルシンキングで本質的な改革を進められる購買部門が、これからの製造業をリードします。
たとえば、
「デジタル証明書を活用したAIチェックによる事前リスク予知」
「FTA最適シミュレーションツールで全体最適解を一瞬で提示」
「パートナー企業とリアルタイムで履歴共有し、責任分担の明確化」
といった、ちょっと先の未来も積極的にイメージしてみましょう。
特に日本のモノづくりは、現場力×合理化思考の絶妙なバランスで“品質”と“効率化”を両立してきました。
通関最適化も、そうした日本的経営知の継承と進化の現場なのです。
まとめ:購買部門こそ「通関最適化」の旗振り役に
今や購買部門は、単なるコストダウンや発注管理の領域を超え、日本製品調達というグローバル現場を“自社の強み”に変える重要部門となりました。
通関最適化は地味に見えて、実は組織全体の競争力に直結する戦略分野です。
本記事が、現場の実践と現実的な課題に寄り添いながら、購買担当者やサプライヤーの皆さんが明日を切り拓く一助となれば幸いです。
今こそ、「昭和の常識」から踏み出し、「令和の現場力」を磨きましょう。
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