投稿日:2025年10月15日

コンタクトレンズケースの密閉を保つネジピッチとOリング硬度設計

コンタクトレンズケースの密閉を保つネジピッチとOリング硬度設計

はじめに ― 目に見えない課題を解く力

コンタクトレンズケースは、ただのプラスチック容器ではありません。
レンズの保護・保存液の漏れ防止・衛生維持と、一見単純そうで実はシビアな性能要求があります。
この性能を左右するのが「密閉性」。
そして、その密閉性の肝となるのが“ネジピッチ”と“Oリング”の設計です。

筆者は20年以上製造業の現場に身を置き、購買や生産管理、工場の品質改善をリードしてきました。
特にアナログな昭和文化が香る現場で、高品質とコストダウンを両立させる難しさを目の当たりにしてきました。
本記事では、工場現場の目線から、コンタクトレンズケースの密閉に課題を感じている方、バイヤーとしてより良いケースを選びたい方、サプライヤーとしてバイヤーの選定基準を知りたい方に向けて実践的知識を共有します。

ネジピッチ設計の重要性

密閉性はネジピッチから始まる

コンタクトレンズケースのフタはねじ込み式が主流です。
この「ネジピッチ」とは、ネジ山とネジ山の間隔のことをさし、設計ミスが密閉性劣化や使い勝手の悪さを招きます。

粗いピッチなら素早く開閉できますが、摩耗やガタ付きを助長しやすいです。
逆にピッチが細かすぎると、閉める回転数が増え、ユーザーが煩わしさを感じます。
そして、緩みやすくなれば保存液が漏れるリスクも高まります。

また、実際の現場では、金型のばらつきやプラスチックの劣化・変形など“昭和的アナログ問題”も潜みます。
設計通りのピッチ再現だけでは守れません。
現物に即した「予防的な遊び=クリアランス設計」や「使い込むうちの摩耗変化も見越した冗長性」を持たせるのが、現場から生まれた知見です。

バイヤー目線で押さえるポイント

バイヤーとして評価したいのは、
・ねじ込みの回転数(2回転以内が好ましい)
・異物混入を避けるネジ設計(ダブルリード/シングルリードの選択根拠)
・繰り返し締めたり開けたりしてもネジ山がつぶれない樹脂材質
などです。

また、サプライヤー各社で微妙にネジピッチの標準が異なるため、サンプル評価やヒンジ特性の確認も不可欠です。
「このピッチなら絶対密閉できます」と言い切るサプライヤーへの過信は危険です。

Oリング硬度設計の本質

Oリング=消耗部品?それとも生命線?

Oリングは一般的に「ただのゴムパッキン」と軽視されがちですが、密閉性の大半はOリングに依存します。
硬度(ショアAスケールで評価)が高いOリングは反発力が強く、摩耗やへたりに強いですが、柔軟に相手材に密着しにくくなります。
一方、低硬度なら初期密着性は良好ですが、何度も使ううちに劣化や変形が早く進みかねません。

大事なのはOリングの機能設計を「現実の使用回数・温度・化学的耐久性」から逆算することです。
現場では、サンプル段階でショアA 50-60が指名されるケースが多いものの、“適度な柔らかさ”と“耐久性のバランス”が取れる最適解は現物評価で掴むしかありません。

バイヤーが見るべきOリング評価基準

1. 反復開閉時の密閉性能変化(繰返し試験)
2. 保存液の種類に対する耐薬品性(薬液浸漬試験)
3. 組付け作業性(はめ込みやすさ、ズレ発生率の実見)

また、意外に見落としがちなのが「内部残留応力」とゴム材質の「伸び/戻り」特性です。
環境変化(夏場の高温・冬場の低温)で密閉性能がどう変わるかも現場再現が必要です。

現場からの知恵 ― アナログ現象と向き合う

厳密な設計データと“ズレ”の現実

カタログ上やシミュレーションの設計値と、現場の量産品には必ずギャップが生じます。
たとえば射出成形による「収縮ひずみ」、金型磨耗、「バリ」発生のバラつき……。

現場では、量産前に必ず
・金型ごとにサンプリング評価(全数でなくてよいが最低n=30は必要)
・締め付けトルクを管理(トルクレンチ併用評価)
・外観/機能の両方から密閉性ロス原因を特定
することが実践的な対策です。

想定外の漏れ対策 ― 製造部門で交換成形と改善実話

過去に生産現場で「保存液用コンタクトケースのフタからごく微量の液漏れクレーム」が多発した事例がありました。
設計圧力値に従ったOリング・ネジピッチだったものの、実際にはユーザーの締め付け不足が主因でした。
この経験から、現場主導で
・フタ着座部のにわずかな「クリック感」追加
・Oリングの一部形状を台形断面に微変更
などの改善を行いました。
このような「大本営発表ではわからない、現場だから察知できる問題解決力」こそ、真の実践知です。

時代遅れから抜け出す―設計・調達・現場の三位一体改革

設計“だけ”の密閉検討は通用しない

設計部門のCADだけで「密閉性万全」と断言する姿勢は、製造現場のアナログ現象やユーザー行動のランダム性を無視しています。
必要なのは
・現場の「ヒヤリ・ハット」情報の設計部門へのフィードバック
・購買部門による複数社Oリングサンプルの同時評価
・トライ&エラーの改善文化
です。

それは「デジタル時代」だからこそ、なおさら現場の有機的な知恵と巡回観察が求められるという逆説でもあります。

サプライヤーとバイヤーの協調が鍵

バイヤーは「最適なピッチ・最高のOリング」を単にスペックで求めず、「実工程でどこがボトルネックか」「ユーザーがどこで失敗するか」をサプライヤーと率直にディスカッションする力が問われます。
サプライヤーも、「自社製品の誇張」より「他社との差別化ポイント」を明確に整理し、バイヤーの課題解決型提案が何より重要です。

まとめ ― 現場が語る“密閉性”の真実

コンタクトレンズケースの密閉性は、単なる理論設計や部品スペックだけで守られるものではありません。
ネジピッチの精緻な設計とOリング硬度の的確なバランス取り。
そして現場の知恵を活かした改善の積み重ね、バイヤーとサプライヤーの歩み寄りによってのみ、安定した品質と使い勝手は実現できます。

「なぜ液漏れしたのか」「なぜユーザーが使いにくさを感じたのか」
徹底した現場観察と数値化、そして社内外の関係者での本質的な対話が、昭和的アナログから“現代的ものづくり”への脱却を可能にします。

製造業の発展は、こうした現場実践知と異分野の知の掛け合わせから生まれます。
本記事が、バイヤーを志す方、現場で格闘している技術者やサプライヤーの皆さまの気付きと次の一歩になれば幸いです。

ノウハウ集ダウンロード

製造業の課題解決に役立つ、充実した資料集を今すぐダウンロード!
実用的なガイドや、製造業に特化した最新のノウハウを豊富にご用意しています。
あなたのビジネスを次のステージへ引き上げるための情報がここにあります。

NEWJI DX

製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。

製造業ニュース解説

製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。

お問い合わせ

コストダウンが重要だと分かっていても、 「何から手を付けるべきか分からない」「現場で止まってしまう」 そんな声を多く伺います。
貴社の調達・受発注・原価構造を整理し、 どこに改善余地があるのか、どこから着手すべきかを 一緒に整理するご相談を承っています。 まずは現状のお悩みをお聞かせください。

You cannot copy content of this page