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フィードバックフィードフォワード制御で外乱除去を強化する設計術

目次
はじめに
製造業では、安定した品質と生産性向上が企業価値を高める上で重要な要素です。
中でも「外乱」——生産プロセスや制御対象へ不規則に影響する予測困難な要素の排除は、多くの現場で解決が求められる課題となっています。
近年、「フィードバック制御」と「フィードフォワード制御」を組み合わせて外乱除去性能を飛躍的に高めるアプローチが注目を集めています。
この記事では、工場長や調達・購買経験を持つ筆者が、現場目線でフィードバックフィードフォワード制御の設計術を掘り下げながら、昭和から続くアナログ文化の中でも受け入れやすい工夫や最新業界動向も踏まえて実践的に解説します。
外乱の本質とは何か?現場目線で考える
外乱が品質や生産性に及ぼす影響
製造現場においての「外乱」とは、温度、湿度の変化、電源電圧のフラつき、材料品質のムラ、機械部品の摩耗や個体差など、狙い通りにプロセスを進めたくても思い通りにならない原因全般を指します。
ラインが止まる大きなトラブルのみならず、数パーセントの調整ミスやムラは積み重なることで最終製品の性能や品質に現れます。
結果として歩留まりやコストに跳ね返り、クレームや返品リスク増にもつながります。
アナログ時代から「熟練の技」や「現場勘」に頼ってきた部分も、今やヒューマンリソースの減少や技術継承の難しさの前では抜本的なデジタル活用が不可欠になっています。
現場が感じる“外乱=現場負荷”の正体
外乱の多い工程を抱える現場の負担は大きく、
「なぜ品質にバラツキが出るのか分からない」
「どのタイミングで手動調整すればよいか判断できない」
という声が絶えません。
購買やサプライヤー側から見ても、「安定的な供給ができていない」「不良品率が下がらない」といった苦情がバイヤーから挙がります。
まさに“外乱”の管理は現場とサプライヤー、バイヤーすべての悩みの種なのです。
フィードバック制御の基本と限界
フィードバック制御の仕組み
フィードバック制御は、制御対象から常時取り出すセンサー信号(例えば温度や位置、圧力など)を基にして、設定値との差を打ち消すように制御量を調整する手法です。
例えば、エアコンの温度制御は室温のフィードバック値を見て設定温度とズレていれば出力を増減し、一定温度に近づくように動作します。
「いま現在のズレ」を補正していくため、非常に汎用性が高く多くの自動制御システムに適用されています。
フィードバック制御の持つ課題
しかし現場でフィードバック制御に依存する際、以下のような場面で限界を感じざるを得ません。
– 外乱の変化が早い場合、補正に遅れ(遅延)が発生する
– センサーやアクチュエータの応答速度の限界で完全追従できない
– ズレの発生→補正の繰り返しで安定立ち上げや高精度化に壁
要するに「起きてしまったズレ・異常」に後追いで対応するため、イタチごっこ状態になりやすいという問題です。
フィードフォワード制御で“未然防止”を図る
フィードフォワード制御とは何か
対照的にフィードフォワード制御は、起こるべき外乱や材料特性の変化を「前もって予測・検知」し、その影響が到来するよりも先に最適な補正動作を実施します。
分かりやすい例では、設置場所の外気温や供給エア圧に応じて機械の設定値を前もって自動調整したり、投入される材料の寸法や粘度を生産開始前に測定して補正値を更新することが挙げられます。
フィードフォワード制御は「狙い通りの状態を保つために、外乱によるズレが生じる前から打ち手を打つ」という積極的なアプローチです。
フィードバックとフィードフォワードの連携で最高効果
現場の実力派エンジニアは以下のように考えます。
「予測可能な外乱(例えば材料温度や湿度変化)はフィードフォワードで先回り。イレギュラーな異常やセンサー検知できるズレはフィードバックで迅速補正。この二刀流で外乱耐性の高い制御を実現する」
この“ハイブリッド制御”こそ、現代製造業における品質安定・生産効率向上の新たな地平線です。
システム設計に必要な観点とステップ
1. 外乱源の徹底洗い出しとデータ化
まず欠かせないのが、自工程・サプライヤー両面から「外乱要因」を可能な限り整理・分類しておくことです。
– 生産ラインで発生し得る変動要素(温湿度・供給圧・原料ばらつきなど)
– シフトごとの人員・技能差や段取り替え時の調整量
– サプライヤー供給品質やPB品目特有の傾向
– ロットごと、季節ごとのバラつきやトレンド
これらを現場主導で収集・定量化することで“見えない外乱”を可視化できます。
2. モデル選定と試験設計
次に、「どこまでをフィードフォワードで予見補正するか」「どこから先をフィードバックで柔軟対応するか」棲み分けを設計します。
たとえば温度制御一例です。
– 室外気温や原材料温度は、数時間前からセンサー読み取りで予測可能→フィードフォワードへ
– 装置自体の温度立ち上げ遅れや、断熱材経年劣化によるズレはリアルタイム把握でフィードバック
こうした設計に基づくシミュレーションや小ロットの検証を繰り返し、現場の再現性・応答性を段階的に高めましょう。
3. 演算ロジック設定とチューニング
フィードフォワード側は
「外乱予兆(例:原料投入温度が基準より3℃高い)
→補正信号出力(例:加熱設定を2℃下げるよう補正)」
といった論理設計が求められます。
フィードバック側は
「設定値と実測値の偏差」を基に、PID制御やファジィ制御など現場スキルに応じた最適ロジックを設計します。
どちらにも共通するのは「現場の実情に応じた継続的なフィードバックループ運用」です。
データやヒヤリハット情報を蓄積し、システム側の学習やアルゴリズム改善に活かしましょう。
現場での導入事例とアナログ×デジタル融合術
実際の現場応用事例
– 成形工程の材料乾燥ムラによるショートショット発生を、原材料温湿度のリアルタイム測定とヒーター出力事前調整(フィードフォワード)+成形品重量の異常検知(フィードバック)で大幅低減。
– 塗装ラインの塗着効率変動要因(濃度・湿度)を、入荷塗料と外気データで予測補正し、塗着膜厚をオンラインで継続監視&自動調整。
– 金属加工ラインにて工具摩耗推定アルゴリズムを活用し、摩耗具合に応じ加圧量・送り速度を事前補正。
結果として突発寸法不良や機械停止の激減事例も多数報告。
昭和アナログ現場への展開ポイント
「機械やシステムは苦手」という現場にも抵抗なく根付く工夫があります。
– データ収集は手書き日報や現場観察に始まり、徐々にデジタル入力やセンサーデータへ
– 演算や設定値調整をオペレータが見やすいメニュー・表示形式にし、現場が自律的にPDCAサイクルを回せる仕組み
– 小規模なラインや工程から「ちょっとした外乱制御」成功体験を積み重ねる
これら“段階導入”が、アナログ文化根強い現場でも効果的な変革を後押ししています。
サプライヤー・バイヤー視点でのメリットと戦略
バイヤー側:品質安定とロス削減の武器
– サプライヤー各社ごとの外乱特性・傾向を事前に把握し、設計段階から対応策を組み込める
– 不良解析・原因特定精度が上がり、現場任せになりがちな調整工数や納期遅延の減少
– 厳しいQCD(品質・コスト・納期)要求にこたえ、次世代調達・購買人財へのステップアップ
サプライヤー側:提案力・信頼性の向上
– 独自の外乱データ収集やハイブリッド制御ノウハウを武器に「選ばれるサプライヤー」への進化
– ライン認証・立上げ時の「トラブル未然防止提案」で差別化
– バイヤー担当者とのコミュニケーション深化による共創型サプライチェーン構築
製造業DX時代のフィードバックフィードフォワード戦略
IoTやAI技術の成熟により、外乱データのリアルタイム取得や予測精度向上、制御最適化の裾野はますます広がります。
– クラウド経由で現場データを自動収集し、標準化・一元管理
– AIによる外乱パターン分析・最適補正予測の自動提案
– 多拠点の調達・購買現場を横断したベストプラクティス流通
フィードバックフィードフォワード制御への挑戦は、働き手不足の現場や属人的ノウハウ脱却の鍵です。
業界全体の地力強化、新たな価値創造に直結します。
まとめ:現場力 × デジタル制御で製造業の未来を拓く
外乱は避けて通れない製造業の宿命です。
ですが、「現場の知恵」「蓄積されたデータ」「効率的な制御技術」が三位一体となることで、品質と生産性の壁を乗り越えることができます。
フィードバックとフィードフォワードの融合は、アナログ現場にも溶け込む実践的な改革手法です。
現場主導の工夫とデジタルの力。
その両輪がこれからの製造業に新たな競争力を生み出す土台になるのです。
本記事をきっかけとして、調達購買担当、現場エンジニア、管理職・工場長、そしてサプライヤーの皆様がそれぞれの立場で「外乱制御」という未開拓の地平線へ歩み出し、ものづくり日本の進化に寄与していくことを心より願います。
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