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仕掛品と在庫品の違い

目次
仕掛品と在庫品の基本概念
仕掛品と在庫品は製造業において非常に重要な概念です。
これらは企業の生産活動やコスト管理に密接に関連しており、それぞれの違いを理解することが効率的な生産運営に寄与します。
仕掛品とは、製造工程の途中にある未完成の製品・半製品を指す会計・在庫管理上の概念です。一方在庫品は出荷・販売が可能な完成品の在庫を指します。両者の区分は原価計算・財務諸表の正確性に直結する重要な管理項目です。
仕掛品とは何か
仕掛品とは、製造プロセスの途中にある、まだ完成していない製品を指します。
これは、材料や部品が加工され、一部完成した状態のままでいる製品を指します。
仕掛品の管理は製造プロセスの効率化に直結し、工程中の製品がどの段階にあるのかを正確に把握することが求められます。
在庫品とは何か
在庫品は、最終製品となり、販売や出荷を待っている状態の製品を指します。
在庫管理は生産効率の向上やコストの削減に大きく関わります。
余剰在庫は資産として企業のバランスシートに影響を与え、一方で在庫が不足すると生産遅延や販売チャンスの喪失といった問題が発生します。
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仕掛品と在庫品の違い
製造業の現場では、仕掛品と在庫品の扱い方が異なります。
その違いを明確に理解することは工場運営の効率化に不可欠です。
プロセスの位置づけ
仕掛品は製造工程のプロセス中に存在します。
この階層にある製品はまだ完成しておらず、追加の工程が必要です。
一方、在庫品はすべての製造工程が終了しており、顧客に供給できる状態です。
この違いにより、生産計画や工場内の配置にも影響を与えます。
会計上の扱い
会計においても仕掛品と在庫品は異なる扱いがされます。
仕掛品は製造原価として資産計上され、完成品になるまで資本を拘束します。
対して在庫品は完成品として資産に計上され、販売された段階で売上原価として出庫されます。
この点が財務における管理方法に影響を与えます。
仕掛品 vs 在庫品 徹底比較
| 観点 | 仕掛品 | 在庫品 |
|---|---|---|
| 定義 | ◎ 製造途中の未完成品 | ◎ 出荷可能な完成品 |
| 計上タイミング | ○ 工程投入時から完成まで | ◎ 製造完了・検査合格後 |
| 会計処理 | △ 原価計算が複雑 | ◎ 比較的シンプル |
| 管理目的 | ○ 工程進捗・原価管理 | ◎ 需給調整・欠品防止 |
| 流動性 | △ 即時販売不可 | ◎ 即時販売・出荷可能 |
| リスク | △ 工程停止で滞留リスク | ○ 過剰在庫・陳腐化リスク |
「在庫品」は、仕掛品と並ぶ会計の言葉ではない
この記事では、出荷を待つ完成品を「在庫品」と呼んで仕掛品と比べてきました。現場ではこの使い分けで通じますが、決算の言葉では仕掛品も在庫の一部です。企業会計基準は、棚卸資産を「商品、製品、半製品、原材料、仕掛品等の資産」としています[1]。仕掛品は在庫品の反対語ではなく、在庫(棚卸資産)の中の一つの区分です。「仕掛在庫」という言い方があるのもそのためです。
この違いが効いてくるのは、在庫の金額や削減目標を話すときです。営業や購買が「在庫」と言うときに完成品と原材料だけを思い浮かべていると、仕掛品まで含めて数える経理の数字と合わなくなります。同じ「在庫を 2 割減らす」でも、どの区分を含めた数字かで対象が変わります。税務での区分と評価方法の選び方は棚卸資産とはでまとめています。
仕掛品と在庫品の管理の重要性
仕掛品と在庫品の管理は、製造業の競争力を維持するために不可欠な要素です。
効果的な管理を行わない場合、コストの増加や納期遅延といった問題が発生する可能性があります。
効率的な生産管理
仕掛品の管理が効率的であれば、製造工程のボトルネックを排除し、生産リードタイムを短縮することができます。
これは、最終製品の納期を守るためにも重要で、顧客満足度の向上につながります。
在庫コストの最適化
在庫品の管理は、過剰在庫を防ぐために重要です。
過剰在庫は保管費用や維持費用を引き上げるため、在庫品の適正な量を保つことがコスト削減につながります。
また、在庫が不足した場合には、顧客へ商品が供給できず販売機会を逃す可能性があるため、バランスが非常に重要です。
調達バイヤーが押さえるポイント
仕掛品と在庫品の区分を正確に把握することで、サプライヤーのリードタイムとキャパシティをより正確に評価できます。サプライヤー監査の際は仕掛品の滞留状況を確認し、工程ボトルネックや品質問題の兆候を早期に察知することが重要です。在庫品の水準が異常に高い場合は需要予測のズレや品質問題のサインである可能性があります。
仕掛品の金額は、完成品との割り振りで決まる
仕掛品は数えるだけでは金額になりません。工程の途中にあるものに、それまでにかかった費用をいくら持たせるかを決める必要があります。同じ規格の製品を続けて作る工場の原価計算(総合原価計算)では、完成品の原価を「月初仕掛品原価 + 当月製造費用 − 月末仕掛品原価」で求めます[2]。月初の仕掛品原価は前月に計算済みで、当月製造費用は集計すれば出るため、残る未知数は月末の仕掛品原価だけです[2]。言い換えると、月末の仕掛品にいくら残すかを決めたとき、完成品の原価も決まります。
月末の仕掛品原価は、直接材料費と加工費に分けて計算します[2]。材料が工程の始めに完成品に必要な量だけまとめて投入される場合、仕掛品は材料については完成品と同じだけ費用を負担しています[2]。これに対して加工費は製造の進行に応じて少しずつ発生するため、月末に加工の進み具合(加工進捗度)を調べ、「月末仕掛品の数量 × 加工進捗度」で完成品に換算した量(完成品換算量)を出して割り振ります[2]。完成品と仕掛品への割り振り方には平均法や先入先出法などがあり、企業会計基準も、原価計算基準がこれらの方法を示してきたことに触れています[1]。
次の例は、月初の仕掛品がなく、当月に 1,200 個を着手して 1,000 個が完成し、200 個が工程の途中に残った工程です。材料費は 120 万円で工程の始めに全量を投入し、加工費は 110 万円かかったとします。
| 項目 | 進捗度を 50% と見た場合 | 進捗度を 80% と見た場合 |
|---|---|---|
| 仕掛品の完成品換算量(加工費) | 200 個 × 50% = 100 個 | 200 個 × 80% = 160 個 |
| 加工費の 1 個あたり | 110 万円 ÷ 1,100 個 = 1,000 円 | 110 万円 ÷ 1,160 個 ≒ 948 円 |
| 月末仕掛品原価(材料分) | 200 個 × 1,000 円 = 20 万円 | 200 個 × 1,000 円 = 20 万円 |
| 月末仕掛品原価(加工費分) | 100 個 × 1,000 円 = 10 万円 | 160 個 × 948 円 ≒ 15 万 2 千円 |
| 月末仕掛品原価(合計) | 30 万円 | 約 35 万 2 千円 |
| 完成品原価(230 万円 − 月末仕掛品原価) | 200 万円 | 約 194 万 8 千円 |
| 完成品 1 個あたり | 2,000 円 | 約 1,948 円 |
工場で使った費用は同じ 230 万円でも、進捗度の見方を 50% から 80% に変えるだけで、約 5 万 2 千円が完成品から仕掛品へ移ります。完成品がその月にすべて売れていれば、売上原価が同じ額だけ小さくなり、利益が同じ額だけ大きく見えます。進捗度は工程の途中で人が判断する数字なので、工程ごとの目安(たとえば第 2 工程まで終われば 50% と見る、など)を先に決め、毎回同じ基準で数えることが欠かせません。工程の区切り方と数え方は棚卸とは——製造業のやり方と手順でまとめています。
完成までの費用が売値を超えそうな仕掛品
仕掛品の金額は、かかった費用を積み上げたものです。しかし完成までにまだ費用がかかり、その合計が売値を上回りそうな仕掛品は、積み上げた額のままでは価値を表しません。企業会計基準は、正味売却価額を「売価から見積追加製造原価及び見積販売直接経費を控除したもの」と定め、期末の正味売却価額が取得原価を下回るときは、正味売却価額を貸借対照表の価額とするとしています[1]。
同じ基準は、正味売却価額がマイナスになる例として、売価 100、見積追加製造原価と見積販売直接経費の合計 120、仕掛品の帳簿価額 30 の場合を挙げています[1]。正味売却価額はマイナス 20 で、切り下げるべき額は 50 になりますが、帳簿価額 30 をゼロまで切り下げても残る 20 は仕掛品の評価では表せず、引当金で損失を計上することがあるとしています[1]。仕様の変更や単価を取り決めた後に追加の工程が増えた品目は、この形になっていないかを期末に確かめておきます。なお、ここで扱ったのは決算書(会計)の扱いで、税務で評価損を損金にできるかは評価方法の選び方などで変わります。税務の側は棚卸減耗損と棚卸評価損の違いで整理しています。
仕掛在庫の量は、工程の外で待つ時間で決まる
仕掛品が多いか少ないかは、作業の速さよりも、モノが加工されずに待っている時間に左右されます。原価計算の研究では、原材料を工程に投入してから製品が完成するまでの生産リードタイムを、サイクルタイム(正味作業時間と工程内の加工待ち時間)、搬送時間、在庫時間に分けて整理しています[3]。同じ研究は、多くの製造現場で在庫時間がリードタイムの中で最大の割合を占めることや、モノの側から見た正味作業時間の比率がほぼ 0.005%〜1% と推定されていることを紹介しています[3]。工程の中にある仕掛品は、ほとんどの時間を待って過ごしているということです。
このため、仕掛在庫を減らす手は、作業を速くすることより、工程と工程のあいだの待ちを短くすることにあります。同じ研究は、在庫時間の短縮は直接工の労務費を減らすものではないが、棚卸資産の圧縮を通じて資本回転率やキャッシュフローの改善につながることが多いとしています[3]。数えるときは、工程ごとの仕掛品を「加工中のもの」と「次の工程の前で待っているもの」に分けておくと、どこで滞っているかが棚卸のたびに見えるようになります。在庫の回転率をどの範囲で計算するかは在庫回転率と在庫日数の違い、仕掛品を発注量で減らそうとすると何が起きるかは在庫計画と生産計画の違いで扱っています。
外注先から戻ったものは、仕掛品か部品か
外注加工を挟む工程では、同じものが仕掛品として扱われることも、部品として扱われることもあります。原価計算の論文は、材料を無償で支給して外注先に加工させる場合について、受け入れた加工品をただちに製造現場に引き渡すときと、部品としていったん倉庫に保管するときとで、処理が分かれることを示しています[4]。前者では支給した材料と外注加工賃がそのまま仕掛品に振り替えられ、後者ではいったん部品として倉庫に入り、製造現場に引き渡した時点で仕掛品に振り替えられます[4]。最終的に仕掛品になる額は同じでも、期末にその加工品が倉庫にあれば、部品として数えるのか仕掛品として数えるのかを決めておかないと、棚卸の区分がぶれます。
発注側にとっては、取引先の工場にある仕掛品にも目を向けておく理由があります。公正取引委員会と中小企業庁のテキストは、発注側の一方的な都合で発注を取り消したり生産を打ち切ったりする場合に、仕掛品の作成費用や部品代を含めて相手に生じた費用を全額負担しなければ、不当な給付内容の変更として問題になるとしています[5]。帳簿の上では相手の在庫でも、発注を止めたときの負担は発注側に返ってきます。止めるときの手順は出した発注はどこまで変更・取消しできるかでまとめています。
最新の業界動向と先進的な技術の活用
最近の製造業では、技術の進化が進んでおり、仕掛品および在庫品の管理も変化しています。
最適な管理を実現するためには、新しい技術の導入が重要です。
IoTと自動化の活用
IoT技術を活用した工場の自動化が進行しており、リアルタイムで仕掛品と在庫品の状況をモニタリングできるシステムが普及しています。
これにより、人手による管理に比べて正確性が高まり、プロセス効率化が可能です。
AIによる需要予測
AIを用いた需要予測技術も在庫管理に革命をもたらしています。
過去の販売データや外部環境の変化などを分析し、未来の需要を予測することで、在庫の最適化が図れます。
予測の精度が上がれば、在庫コストの削減と欠品の防止を両立しやすくなります。
まとめ
仕掛品と在庫品は、製造業における生産性向上やコスト削減における鍵となります。
仕掛品は加工途中の製品であり、在庫品は完成し出荷に備える製品であることを理解することから始まり、各々の正確な管理が企業全体のパフォーマンスに大きな影響を与えます。
最新技術を活用することで、より効率的な管理が可能になり、製造業の競争力をさらに高めることができるでしょう。
仕掛品の金額は進捗度の見方で完成品とのあいだを行き来し、量は工程のあいだの待ち時間で決まります。進捗度の目安を工程ごとに固定し、待っている仕掛品を分けて数えることが、仕掛在庫を管理する出発点になります。
サプライヤーの技術差別化ポイント
仕掛品の工程別リアルタイム可視化システムを整備しているサプライヤーは、バイヤーへの進捗報告精度が高く信頼性で差別化できます。仕掛品の最小化(リーン生産方式)の実績をKPIとして提示することで、短リードタイム・高回転の競争優位を訴求できます。ERP連携による在庫・仕掛品のリアルタイム共有も、受注の場面で強みになりえます。
よくある質問(FAQ)
Q. 仕掛品はどのタイミングで在庫品に変わりますか?
A. 製造工程がすべて完了し、品質検査に合格した時点で仕掛品から在庫品(製品)に振り替えられます。会計上は完成品勘定に振替仕訳を行い、在庫として計上されます。どの時点を完成とするかは社内の基準で決めるもので、検査合格を完成とする運用のほか、最終工程の作業完了で完成とする運用もあります。決めた基準は棚卸のたびに変えないことが大切です。
Q. 仕掛品が多すぎる場合の問題点は何ですか?
A. キャッシュフローの悪化・工場スペースの圧迫・品質劣化リスクが主な問題です。工程ボトルネックや需要変動への対応遅れが原因となることが多く、WIP(仕掛品)削減がリーン生産の核心課題です。
Q. 仕掛品の原価計算はどのように行いますか?
A. 各工程への投入材料費・加工費・労務費を工程別に積み上げる方法(工程別原価計算)が一般的です。完成度(仕上がり率)を考慮した按分計算を行い、期末に貸借対照表の流動資産として計上します。按分の具体的な計算は、本文の「仕掛品の金額は、完成品との割り振りで決まる」の例を参照してください。
Q. 在庫品と仕掛品を一元管理するメリットは?
A. 全体のキャッシュフロー最適化と欠品・過剰在庫の同時防止が可能になります。ERPやMESを活用したリアルタイム一元管理により、需要変動への迅速な対応と原価の見える化が実現します。
Q. 仕掛品の進捗度は、誰が決めればよいですか?
A. 工程を知っている生産管理と、金額をまとめる経理が一緒に決め、工程ごとの目安として書き残します。人によって進捗度の見方が違うと、本文の例のように完成品と仕掛品のあいだで金額が動き、月ごとの原価や利益がぶれます。工程の追加や順番の入れ替えがあったときは、目安も見直します。
Q. 「在庫を減らせ」と言われたとき、仕掛品も対象になりますか?
A. 決算の在庫(棚卸資産)には仕掛品も入るので、金額の目標なら対象になります。ただし仕掛品は、購買の発注量を絞っても減りにくく、主に効くのは工程のあいだの待ち時間の短縮と、工程への投入量の調整です。目標を受け取ったら、まずどの区分を含めた数字なのかを確かめます。
出典・参考資料
- 企業会計基準第 9 号「棚卸資産の評価に関する会計基準」(企業会計基準委員会/最終改正 2019 年 7 月 4 日)
- 原価計算 第 9 章 総合原価計算 9-1 単純総合原価計算(杉山善浩/甲南大学経営学部経営学科)
- 製造現場における改善効果測定と 2 種類の時間概念(柊紫乃・上總康行/原価計算研究 41 巻 1 号/2017 年)
- 外注加工賃に関する一考察(三浦克人/商経論叢(鹿児島県立短期大学)第 72 号/2021 年)
- 中小受託取引適正化法テキスト「下請法」から「取適法」へ(公正取引委員会・中小企業庁/令和 7 年 11 月)
仕掛品と預け在庫を、棚卸の手順に落とし込む
この記事で扱った仕掛品の区切り方と、外注先など手元にない在庫の扱いは、研修テキスト「検収・支払・棚卸」の第 4 章(棚卸のやり方と手順——仕掛品と預け在庫の扱い)で、範囲の決め方から差異の原因の分け方まで順に確かめられます。続く第 5 章は棚卸表の作り方で、区分・単位・ロケーション・所有区分の 4 項目を扱います。全 5 章・本編 57 ページで、検収書・支払通知書の様式と棚卸表・カウントシートの 2 点を付けています。目次と無料サンプルは資料のページで確かめられます。
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