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組込ソフト開発におけるテスト設計手法の効果的な改善策と品質向上策

目次
はじめに:組込ソフト開発におけるテスト設計の重要性
組込ソフトウェアは、家電製品から自動車、産業用ロボットなど、多様な製品に搭載されており、製品全体の品質や安全性を大きく左右します。
特に、日本の製造業に根付く「モノづくり」の現場においては、「動けば良い」では済まされない厳格な品質基準が求められています。
しかし、現実の工場現場では、アナログな手法や「昭和」のやり方が根強く残っているケースも多く、テスト設計が軽視されたり、属人的なスキルや経験に頼り切ってしまう場面が後を絶ちません。
この記事では、私の20年以上の現場経験をもとに、組込ソフトのテスト設計手法をどのように改善し、品質向上へと繋げるかを実践的かつラテラルに掘り下げて解説します。
バイヤーを目指す方、サプライヤー側でバイヤーの考えを知りたい方、現場の設計・品質部門の方まで、ぜひ参考にしてください。
現状分析:組込ソフトのテスト設計の現場課題とは?
属人化と暗黙知に頼る現場文化
多くの製造現場では「ベテラン○○さんがいれば大丈夫」という属人化体質が強く残っています。
ソフト設計・テストも例外ではなく、一部の経験者しか分からない「現場流のテストノウハウ」や「昔からのやり方」が主流となることが珍しくありません。
このような状況では、設計品質がバラつき、異動や退職時にノウハウの継承や標準化ができないため、重大な手戻りや不具合流出のリスクが高まります。
アナログテスト設計の限界
Excelで仕様管理、手作業のテストケース作成、紙ベースの検証記録など、デジタル化や自動化が遅れている現場では、ヒューマンエラーや形式的なテストだけで本質的な不具合が抜け落ちる可能性が高くなります。
また、組込ならではのリアルタイム性・ハードウェアとの密接な連携という課題は、表層的・形式的なテスト設計だけではカバーできません。
プロジェクト横断での品質課題の共有不足
開発、品証、生産技術といった部門間の情報連携や、不具合・品質課題の“見える化”が弱いことも要因です。
その結果、「同じミスの焼き直し」や「業界動向・世の中の変化に盲目的に乗り遅れる」といった問題が発生し続けています。
テスト設計手法の効果的な改善策
標準化による設計レビューとフィードバックの仕組み化
属人的なテスト設計から一歩抜け出すためには、まず標準化です。
具体的には、以下のステップをおすすめします。
– テスト設計書(仕様書)のフォーマット統一
– テスト観点チェックリストの全社化
– 開発中の品証部門・他部門巻き込み型レビューの定着
– テスト工数や進捗を定量的なKPIで管理
「Excel文化」から「レビュー文化」へ、“誰がやっても一定品質”を実現できる仕組みづくりが重要です。
ゴールデンサイクルの早期導入
テスト設計を開発終盤の「追い込み」でなく、要求仕様・設計初期から着手することが大切です。
– 要求段階で品質要求・安全認証要件を明文化
– 設計レビューでテストしやすさ(テスタビリティ)を事前確認
– 仕様変更の都度、テスト観点も即座に見直すサイクルの定着
初期段階での「想定外」を潰し、高品質かつトータルコストの最小化を実現します。
自動化・ツール活用による効率化と信頼性向上
テストケースの自動生成・カバレッジ計測は、今や世界標準です。
国内でもオープンソース(例:C言語ならCeedling、Pythonならpytest、統合的にはJenkinsなどCIツール)や商用ツールの導入が進んでいます。
レガシーなC言語・アセンブラ系でも、バイナリ比較や差分検出の自動化、Simulinkモデルベース設計と連携した静的解析、自動データ比較システムなど、現状のアナログ手法から脱却しやすい仕組みの導入がおすすめです。
また、自動テストの「チケット化」や「日次夜間バッチ検証」なども、工場現場の“カイゼン精神”が活きるポイントです。
場当たり的なテストから、「リスク起点・事業起点」のシナリオ発想へ
昭和のアナログ手法にありがちな「(暗黙)全機能目視」「念のため全数テスト」から脱却しましょう。
ICチップやモーターなど組込特有の故障モード、顧客クレームで多いケース(例:電源投入直後の暴走・通信断トラブル等)など、“リスクベース”でテスト優先度付け・シナリオ分岐を設計します。
またバイヤー視点では、「不具合流出によるリコールコスト」「取引先への説明責任」など、サプライチェーン全体を意識した本質的な検証観点が重視される傾向が高まっています。
品質向上に直結する現場定着のポイント
PDCA徹底とフィードバックループの仕組み化
高品質な組込ソフト開発には、「不具合発生→ふりかえり→再発防止」のサイクルが欠かせません。
現場では「忙しいから終わったら反省会なし」「動くからヨシ!」になりがちです。
ですが、下記のような定型化が重要です。
– 不具合の「なぜなぜ分析シート」標準運用
– 品証部門・設計部門・現場の壁を越えた合同ふりかえりの定例化
– 設計変更・テスト設計改善要望のトラッキング体制
「人のせい・運用のせい」にしない、仕組みで再発防止し続ける風土づくりが、品質文化の定着には不可欠です。
社内表彰・教育体系に「テスト設計」を昇格させる
どうしてもトラブルが起きないと「テストは裏方」「バグは製造現場の責任」と位置付けられがちです。
新入社員教育、ベテランの技能伝承、公的な資格認定(JSTQB等)の社内推奨を進め、「テスト設計も顧客価値の出発点」という意識づけが大切です。
現場から現場へ、若手主導の勉強会や社内表彰も牽引役となります。
サプライチェーン全体での品質・テスト情報のオープン化
バイヤー・発注担当の立場でも、テスト設計思想・実績の“見える化”や、不具合・品質インシデントのリアルタイム共有が極めて重要です。
– テストカバレッジ・不具合対策書の提出義務
– 品質会議資料の定期共有
– サプライヤー単位でのテスト成績・品質KPIランキング化
現場の隠蔽体質や「とりあえず隠してOK」意識を正し、コンプライアンスにつながる品質文化を浸透させましょう。
ラテラルシンキングから学ぶ新しい地平線:未来の組込ソフトテストへ
製造業の現場は、「今ある課題をカイゼンする」だけではグローバル競争に生き残れません。
組込ソフト開発・テスト設計も、ラテラルシンキング=「そもそも今のやり方が最適か?」を問い続ける姿勢が重要です。
たとえば、
– AIを活用した不具合パターン自動抽出
– IoTデータを活かしたフィールド品質のリアルタイムフィードバック
– 「試験不正」「安全認証偽装」など過去の事件を基にしたコンプライアンス起点の設計観点
– 海外サプライヤーとの情報連携自動化(API・EDI化)
さらに、
– 「自動車×家電」「ロボット×医療」など業界横断でのベストプラクティス共有
– クラウド連携による遠隔テスト/検証・テストデータPaaS化
こうした柔軟な発想と新技術の組み合わせこそ、今後の日本のモノづくり現場に求められます。
まとめ:全員が「品質のプロ」となる現場文化を築こう
組込ソフトのテスト設計は、単なる裏方業務ではありません。
現場の品質・安全性、ひいては企業の信頼と競争力を背負う“戦略的なコア活動”です。
標準化・自動化・リスク起点・情報開示・教育といった様々な施策を組み合わせ、「現場」のアナログ文化と「未来志向」のデジタル品質を、高次元で融合させていくことが重要です。
一人ひとりが“品質のプロ”として現場改善をリードし、製造業の新しい地平線を切り拓きましょう。
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