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塗装工程における乾燥設備メンテナンスの効率化と選定基準

目次
はじめに
塗装工程において乾燥設備の維持管理は、製品品質の安定確保や生産効率を左右する重要な要素です。
自動車、家電、産業機械などあらゆる業界の現場では、乾燥工程のトラブルが納期遅延やコストアップの要因となっています。
また、生産現場では依然として昭和のアナログ発想が根強く残っており、設備のメンテナンスも「とりあえず使えれば良い」「あとでまとめて直そう」と後回しになってしまう場合も少なくありません。
しかし、時代は変化し、技能伝承や人手不足、IoTの登場といった新しい流れが着実に訪れています。
この記事では、塗装工程の乾燥設備に焦点を当て、「効率的なメンテナンス」をどのように実現すべきか、また、乾燥設備を選定・導入する際のポイントについても現場目線で具体的に解説します。
サプライヤーやバイヤーの方、将来の製造現場リーダーを目指す方にも役立つ内容となるようまとめました。
乾燥設備の役割と現場での重要性
製品品質を左右する乾燥工程
塗装工程において乾燥設備が果たす役割は非常に大きいです。
適切な温度・湿度・風量で製品を乾燥させることにより、塗膜の硬度・密着性・外観品質などが均一に仕上がります。
逆に、乾燥工程に不具合があると、以下のような問題を引き起こします。
・塗装面の縮みやクラック
・ダストや異物混入の増加
・色ムラや艶ムラの発生
・未硬化による後工程での剥がれ
現場でこうした品質トラブルが発生すると、ラインの停止、再塗装、部品の廃棄といった二次的な損失が拡大します。
乾燥設備は間接的に生産効率、現場の士気、クレーム発生率にも影響を与える存在なのです。
なぜメンテナンスが疎かにされがちなのか
多くの製造現場では、乾燥設備のメンテナンスが「生産現場におけるその他大勢」のように扱われがちです。
その理由として、
・設備の稼働が停止できない(メンテナンスの隙間がない)
・管理責任者が曖昧、または属人的
・目立った異常が発生しないと手を付けない雰囲気
・“昔からこうやってきた”式の保守体制
などが挙げられます。
特に、昭和期から続く工場文化では、現場の「経験と勘」頼みに陥りやすく、効果的なメンテナンス計画が立案・実行されにくいという課題があるのです。
乾燥設備メンテナンス効率化の現実解
現場目線の課題抽出
まず、効率的なメンテナンス体制を構築するために“どこで”滞り、“何が”無駄になっているのか現場目線で把握することが肝心です。
実際に私が工場長を務めた際、下記のような現場課題が浮かび上がりました。
・毎回異なる人がだましだまし修理している(履歴が残らない)
・予備部品の在庫が常にギリギリ
・点検すべき箇所が増え、リソースが足りない
・トラブルが起きてからメンテナンスに着手している
このような現場の“あるある”を解消せずにIoTやDX化を拙速に導入しても、かえって混乱を招くケースもあります。
「記録・見える化」こそファーストステップ
乾燥設備のメンテナンス効率化の第一歩は、「情報の見える化」と「記録の整備」に尽きます。
具体的には、
・各設備ごとの点検項目リスト化
・設備ごとの履歴管理(異音・異臭発生時の記録、部品交換履歴など)
・トラブル発生時の初動対応フロー作成
・メンテナンス担当者の“点検ノウハウ”の可視化
これらを最低限、紙でもExcelでもよいので整理します。
昭和的な現場でも「紙で書けば済む」精神は依然強いですが、これを「分かりやすい共有、誰でも参画できる」形に工夫することで、属人化からの脱却および再現性アップにつながります。
設備メーカーやサプライヤーとの連携活用
乾燥設備の選定やメンテナンスに関して、メーカーやサプライヤーと「密な連携」を図ることも不可欠です。
・点検マニュアルや注目すべき部位のノウハウ共有
・点検時の動線や安全性に配慮したアドバイス
・部品供給や修理対応のレスポンス改善
サプライヤーからすれば、エンドユーザーの実使用状況やメンテナンスの課題をフィードバックしてもらえれば、より良いサービス開発や製品改善にフィードバックできます。
双方にとって「ウィンウィン」となるコミュニケーションを日常的に築くことが重要です。
リスクベースでのメンテナンス優先順位付け
全ての点検項目を毎回実施するのは非現実的です。
現場目線では
・頻繁な故障の実績がある部位
・交換期限や劣化傾向が明確な部品
・一旦停止すると復旧に時間・コストがかかる設備
・現場メンバーから不安の声が集中する箇所
など、「設備停止や品質事故につながりやすい部分から重点的にメンテする」リスクベースの発想が欠かせません。
これは、近年のISO9001やIATF16949といった品質管理規格でも重視されています。
乾燥設備の選定基準とトレンド
現場に合った設備選定が肝心
乾燥設備の導入・更新を計画する際、「一番高性能な最新鋭設備」が必ずしも最善ではありません。
現場の生産量、ワークサイズ、乾燥方式、スペース、操作性、将来のライン拡張性など、「本当に現場の生産性を高める」視点で選ぶことが大切です。
具体的な基準例は以下の通りです。
・温度/湿度分布の均一性と制御性
・清掃、点検、部品交換のしやすさ(メンテナンス性)
・消耗品(フィルター、ガスバーナーなど)の寿命と交換コスト
・現場レイアウトへの融通性
・装置立ち上げ/緊急停止の柔軟性
・データ蓄積やIoT連携の容易さ
例えば「多品種少量生産」現場であれば、急速な温度変化やワーク搬送フレキシビリティが重視されます。
一方で、「量産ライン」であれば、省エネ性やダウンタイム最小化、保守パーツのサプライチェーン確保が重要です。
最新動向:IoT、予知保全、省エネ技術
近年、乾燥設備分野でもIoTを活用した“設備異常の早期把握”や、“省エネ化”ニーズが急速に高まっています。
・設備各所の温度・湿度・振動情報をセンサーで常時監視し“異常傾向”を自動アラート
・故障が起きる前に点検・部品交換を促す「予知保全」AIソリューション
・排熱の有効活用、インバーター導入による省エネ運用
こうした仕組みの導入はコストも掛かりますが、原材料高騰や人材不足の今、トータルでのメリット(省エネ、コストダウン、品質安定、技能継承)が大きいです。
ただし、現場で運用するには「使いこなせる人材の教育」もセットで考える必要があります。
現場に根差した実践的な改善例
私が実際の工場現場で経験した、乾燥設備のメンテナンス効率化に関する取り組みをご紹介します。
改善事例1:メンテナンスカレンダー運用
毎月のルーチン点検と、年次ごとの“予防保全”項目をカレンダー形式にし、設備担当・生産現場・品質管理の三者で共有しました。
「一目で誰が・いつ・どの設備を点検するか」がわかり、属人化・点検漏れを防止できました。
また、異常発見時は現場LINEグループで即共有し、状況写真や作業実績も残すようにしました。
これにより、現場の誰でもトラブルの初動対応ができるしくみとなり、ダウンタイムが半減しました。
改善事例2:乾燥炉の清掃性向上
以前は乾燥炉内部の清掃が難しく、“なんとなく不要物が溜まってきたら気づいた人が掃除する”レベルでした。
分解が必要で時間もかかるため、清掃の基準を整備し、簡単に分解・再組立ができる取っ手付きパネルに変更しました。
また、清掃マニュアルに「異物発見時の対応フロー」も追加し、作業負担を減らしつつ品質事故も激減しました。
改善事例3:予備部品のリスト化と在庫管理
“必要なときに限って部品がない”というロスを防ぐため、主要消耗品のリスト化と在庫の適正化を徹底しました。
リストには“過去の交換実績”も紐付け、交換サイクルが見えることで、予算管理も容易になりました。
管理表はExcelから始めましたが、徐々に在庫管理アプリと連携しさらなる自動化へ進めました。
サプライヤー・バイヤー双方に必要な目線
乾燥設備の選定やメンテナンス体制の強化には、サプライヤー、バイヤー、現場担当それぞれの視点が融合する必要があります。
サプライヤーは「納品後の使われ方」「現場の工夫・苦労」を知ることで提案力を高め、
バイヤーは「投資対効果」「将来トレンド(省エネやIoT)」に目を向けつつ、現場の意見も吸い上げる調整役となるべきです。
現場は「慣れたやり方」だけに頼らず、時代に即した改善や情報共有でチーム全体の生産性・品質を高めることが求められます。
まとめ:新たな地平を拓くメンテナンスのあり方
塗装工程の乾燥設備は、製品の“顔”を作る最終防衛ラインです。
昭和時代から引き継がれる現場目線の良さを活かしつつ、デジタルやリスクマネジメントの発想を積極的に採り入れることで、「飛躍的な改善」が可能となります。
メンテナンス効率化は、決して高度な技術や大型投資だけでなく、「情報の見える化」「現場の声を聞く体制」「三者連携」「省エネやIoTの柔軟な利用」など、地道な積み重ねが肝要です。
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