- お役立ち記事
- マスタデータのゆれを正して二重発注と重複品番を撲滅
マスタデータのゆれを正して二重発注と重複品番を撲滅

目次
はじめに:製造業で頻発するマスタデータの「ゆれ」とは
製造業の調達現場では、「ゆれ」という表現が良く使われます。
ここでいうゆれとは、品名や仕様表記違い、取引先コードの誤り、単位の不一致など、基礎となるマスタデータが一貫していないことで発生するズレのことを指します。
現場では「同じものを二度発注した」「よく似た品番が複数存在し、在庫管理が煩雑になった」などのトラブルが今も昔も絶えません。
この二重発注や重複品番は、昭和から令和に至るまで、アナログ文化が色濃く残る日本の製造業で根深く蔓延している“病巣”です。
なぜ現場にはびこるのでしょうか?
本記事では、20年以上にわたって製造現場でリアルに向き合ってきた立場から、現場目線で「マスタデータのゆれ」を正す重要性と、その実践ノウハウを徹底解説します。
なぜ今もマスタデータのゆれが発生するのか
経営層と現場の認識ギャップ
多くの企業でERPや生産管理システムを導入しているにもかかわらず、思うようにマスタが整わない現実があります。
なぜなら経営層は「システムさえ入れれば自動で統一される」と期待することが多く、現場の入力・運用実態を把握していないからです。
もちろんシステムは欠かせませんが、最終的には人間が入力し、管理しています。
現場が使いこなせなければ、どんなITも宝の持ち腐れです。
“抜け道文化”がもたらす現場の独自運用
たとえば「忙しい時は前回の発注書をコピーして済ませる」。
「同じ部品なのに呼び名が部署ごとに違う」。
こうした“抜け道”が常態化し、部署ごとに独自管理のエクセルや伝票が乱立。
結果、マスタデータのゆれは拡大し続けてしまいます。
アナログから抜け出せない理由
紙文化・電話文化が根強い日本の製造業では、「口頭で伝えた」「FAXで注文した」「サンプル現物を見て判断」のようなアナログ要素が、今なお数多く残っています。
この現場の“味わい”が、効率化を阻む一因になっています。
二重発注・重複品番が企業にもたらす損失
直接損失:無駄な仕入れコスト
最も分かりやすい損失は、不要な在庫増加によるキャッシュフローの悪化です。
部品や原料がダブって入荷し、長期で倉庫に眠ることに。
売上原価の帳簿には乗りませんが、実際は経営資源の無駄遣いです。
間接損失:現場作業の非効率化
品番の重複により、現場ではいちいち「正しい品番はどれか?」と調査が必要になります。
資材担当者はサプライヤーとやり取りし直し、生産現場も誤投入リスクに怯えながら工程管理。
この非効率が積み重なり、人件費やリードタイムに“見えない”損失をもたらしています。
サプライチェーン全体への影響
顧客やサプライヤーから「御社の発注内容は毎回ブレがあり不安だ」とレッテルを貼られる。
最悪の場合、サプライチェーン全体の信用失墜につながるリスクも見逃せません。
昭和から続く慣習を壊す、根本対策のポイント
1. 品番マスタの統一ルールを策定する
まず最初に行うべきは、「品番命名ルール」「取引先コード規則」「単位や品名の記載フォーマット」など、データ項目ごとに統一ガイドラインを作成することです。
これは担当者任せにせず、調達・生産・品質管理・営業の全関係部門が集まり、現場の言葉で意見を出し合い策定します。
2. システム入力の“現場洗い出し”
どのようにデータが入力されているのか、現場レベルで一つ一つ可視化・洗い出しを行います。
例えば
・なぜA課は「DELUXE」と入力し、B課は「デラックス」と表記しているのか
・なぜ古い取引先コードが温存されているのか
といった「現場の事情」を洗い直します。
3. マスタデータクリーンナップ大作戦
現存する全マスタデータを一度“棚卸し”し、重複・表記違い・無効データをピックアップして徹底的に整理します。
この作業は数万件規模になることもありますが、システム管理部門のみではなく、現場の担当者と一緒に実行します。
「現場の声を吸い上げる」ことで、ミスが減り現実的な運用ルールに落とし込めます。
4. ルール教育とマスタ定期点検の仕組み化
どんなに整理しても、現場に新旧メンバーがいる限り、また混乱は起きがちです。
そのため、年に数回の定期点検(例えば棚卸や標準化委員会の開催)を運用フローに「組み込む」ことが肝要です。
日々の現場教育にも力を入れましょう。
データ連携の自動化で実現できる新たな地平
デジタル化+現場運用の融合がカギ
近年はRPAやAI、クラウド型のデータ連携ツールが続々と登場しています。
例えば仕入先と“自動で”品番照合するシステム、入力時にルールチェックする仕組みなどを導入すれば、現場負担を劇的に減らせます。
しかし、テクノロジー任せだけでは本質的な改善とは言えません。
大切なのは現場スタッフが「なぜ統一ルールが必要なのか」「どのようにミスが起きるのか」をきちんと理解し、アナログ文化から一歩抜け出すことです。
機械と人の知恵が融合することで、昭和時代からの悪しき慣習を打ち破ることができます。
製造業バイヤー、サプライヤー、現場向けのラテラルシンキング的ヒント集
バイヤー(購買担当者)が意識すべき視点
取引先と「現場用語」でコミュニケーションを取りましょう。
また、発注内容に疑問があれば、サプライヤー任せにせず、なぜこの品番表記なのか?と社内外に積極的にヒアリングしてください。
サプライヤーがバイヤーの考えを読むコツ
バイヤー側は「現場の混乱を招かないように」と細心の注意を払っています。
できるだけ自社品番と先方品番の照合表を作成し、照合結果を提案する。
また、「御社ではこう記載するが弊社ではこう呼ぶので注意してください」と先手を打つ姿勢が信頼アップにつながります。
現場メンバー向け:小さな疑問を見逃さない
現場の「アレ、これって同じもの?」「似たコードが2個ある」などの小さな声を拾い上げ、集めた情報をデータ整備プロジェクトに必ずフィードバックしてください。
まとめ:マスタデータへの意識変革が製造業の明日を変える
マスタデータのゆれは、目に見えない部分で現場をむしばみ、巨額の損失をもたらしかねません。
とはいえ、昭和からのしがらみや現場独自運用を「一掃」することは簡単ではありません。
しかし、現場で働く私たち一人ひとりが「ちょっとおかしいな」「なぜこうなったんだろう」と疑問の芽を持つことから、必ず変革が始まります。
データ統一の旗振りを担うのはシステム担当者や管理職ではなく、現場をよく知るあなたです。
今こそ、“アナログの壁”を一つずつ壊し、新たな地平を切り拓いていきましょう。
「もう二度と、二重発注も重複品番も許さない」。
そんな次世代の製造業を、共につくり上げましょう。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)