月間83,046名の
製造業ご担当者様が閲覧しています*

*2025年5月31日現在のGoogle Analyticsのデータより

投稿日:2025年6月8日

車載電子製品の信頼性確保と品質向上策

はじめに―変革期を迎える車載電子製品の品質課題

車載電子製品の役割は年々高度化し、安全性・快適性・環境対応といった観点から、その信頼性確保と品質向上は、かつてないほどの注目を集めています。

特に自動運転やコネクテッドカーの台頭により、従来のアナログ的な“モノづくり”だけでは要求を満たせなくなっています。

一方で、製造現場は昭和的な管理手法や、QC7つ道具などの古典的アプローチが今も色濃く残るなど、アナログとデジタルが混在した環境です。

この記事では、現場目線での実践的な信頼性・品質確保策とともに、最新動向・業界課題も交え、ラテラルシンキングで新たな気づきを提供します。

車載電子製品に求められる“信頼性”の本質

人命を預かる車両用電子機器の使命

車載電子製品は、単なる“便利デバイス”ではありません。

エンジン制御やブレーキシステム、エアバッグやADAS(先進運転支援システム)といった重要な安全機能を支える基盤となっています。

そのため、外観検査や性能チェックだけでは不十分であり、「偶発的な故障(ランダムフォールト)」や「経年劣化」、「ソフトウェアバグ」までも視野に入れた品質保証が不可欠です。

信頼性とは何か?

信頼性とは、所定の機能が、定められた期間・条件下で、どれだけ確実に発揮され続けるか…の指標です。

具体的には、「初期不良率の低減」「使用中の予期せぬ停止ゼロ化」「応答遅延や誤動作の撲滅」など、組み込み機器が“失策しうるすべてのパターン”を未然に防ぐことが求められます。

この考え方は、半導体や基板だけでなく、その周辺部品・配線・接合・組付け・ソフトウェアまですべての構成要素に及びます。

品質確保のための現場実践策

アナログの知恵とデジタルの応用の融合

最新のAI検査装置やIoTによる設備監視など省力・省人化が進む一方で、ベテラン作業者の「五感」やデータ以外の“現場感覚”も、いまだに重要なファクターです。

たとえば、はんだ付け不良やクラックの微かな兆候、微細なリーク電流、異音・異臭の初期段階など、数値化できない“違和感”をいかに拾い上げるかは、現場の経験値に依存しています。

そのため、デジタル化の最中こそ「ヒヤリハットの共有」や「WHY分析会」など、現場力を引き上げる仕組みの再構築が不可欠です。

FMEA/FTAの徹底活用

故障モード影響解析(FMEA)や故障の木解析(FTA)は、今や設計・生産・調達のすべての段階で活用されています。

重要なのは、「マニュアルどおり」形式的にやるのではなく、定量・定性的リスクの具体的な可視化につなげること。

調達サイドでは、サプライヤーにFMEAの実施要求をするにとどまらず、現場同行や相互レビューにより、工程内ばらつきやロット起因リスクの顕在化を現場主導で進めていくべきです。

初期流動管理の徹底

量産立ち上げ期の初期流動管理(ISIR、PPAPの活用)は、Japanese Qualityの真骨頂のひとつです。

車載電子製品では“わずかな条件差”が後々クレームリスクにつながるため、初期サンプル100%全数検査、逐次フィードバック、工程能力指数による再現性チェックなどを徹底します。

また、現場が「初期トラブル隠し」をしない文化を醸成し、トラブルが顕在化した際には、事実ベースで迅速にエスカレーション・解析・フィードバックできる仕組みが不可欠です。

サプライチェーンリスクと品質マネジメント

グローバル化による新たなリスク

原材料・電子部品の海外調達化が進み、サプライヤーの多重化・複雑化が避けられない現在、サプライチェーン全体の“情報断絶”が品質問題の原因となっています。

特に、アジア圏を中心としたEMS(電子製造サービス)の進出により、部品ロット管理やトレーサビリティの難易度が一気に上昇しました。

購買部門はサプライヤー選定時に“見かけの価格”や“慣れ親しんだ関係”に頼らず、「品質の造り込み実態」「市場不良・工程不良の率直な開示姿勢」「工程レベルのリアルな現場力」まで確認する審美眼が求められます。

監査と共同開発の強化

従来型の“書類主義”だけでは、本質的な品質リスクを見逃しがちです。

現場監査では、内規・規格遵守の有無だけでなく、「コア人材の保有状況」「QCサークルなど現場改善文化の定着度」「レイティストな不具合情報の巻き取り体制」に着目することが重要です。

先進の取り組みとしては、“サプライヤーと共同の設計段階レビュー”や、“日欧間の相互監査ツアー”など、よりインタラクティブな開発・品質保証体制も実践が広がっています。

工場現場での自動化への挑戦と落とし穴

IoT/AI活用の実態と課題

自動化・スマートファクトリー化が進むにつれ、画像検査機・自動搬送ロボット・AI異常予兆監視など、最新のデジタル技術を導入する企業が増えています。

一方で、現実の現場導入にはいくつもの“壁”が存在します。

たとえば、「ライン停止優先で現場変更が進まない」「IT×生産技術の連携不足」「イレギュラー対応がAIに落とし込めない」などです。

そのため、全自動化一辺倒ではなく「どの部分を人間が最後の砦として残すか」「現場作業者の直感とデータをどう合理的に融合するか」が極めて重要です。

工程内品質保証と予知保全

不良流出を“最終検査で守る”から“工程内でストップする”時代へ。

設備由来の不良や人的ミスを極小化するため、IoTセンサーでリアルタイムに変化点検知し、異常傾向に入った段階で予防的対応を取る仕組みをいち早く根付かせる必要があります。

また、“現象”だけに頼らず「なぜ・なぜ分析」「現物・現場・現実主義による現場徹底把握」で真因追及力を養成することが、昭和的な現場力の再評価にもつながります。

品質文化を根付かせるための現場改革

現場主導のPDCAサイクルと横断型コミュニケーション

現場での継続的改善には、トップダウンだけでなく、現場作業者・工程リーダーが自ら考え、問題提起・再発防止策まで一気通貫で回せる雰囲気づくりがカギです。

QCサークル活動の復活や、“見える化”の徹底(不良マップ・ヒヤリハット掲示)、改善提案の即時実践・表彰制度は、現場の自立性向上に直結します。

量産現場では、設計・製造・調達・品質保証・営業といった多部門の壁を越えたコミュニケーション促進も、問題早期発見に寄与します。

教育と人材“多能工”化

技術進化のスピードが加速する中、「一工程のみ担当」「限定的スキルセット」では、複合的な不良や突発問題への対応力が低下します。

そのため、現場リーダーが“多能工”化し、設計や品質保証とも密にやり取りできる“ハイブリッド人材”の育成が、今後の製造業に不可欠です。

OFF-JT(座学)とOJT(現場)を織り交ぜた教育体系構築、ベテランの“職人技”のデジタルでの見える化・伝承、AI教育への自発参加推奨などを戦略的に進めましょう。

まとめ―車載電子製品の未来を支える品質マインドセット

車載電子製品の品質・信頼性は、フォーマルなプロセス遵守だけでなく、現場に根付いた“ものづくり力”とデジタル活用の両輪で向上していきます。

バイヤーやサプライヤー双方にとって重要なのは、「現場で起こる“兆候”を早期に察知⇒すぐさま共有・改善できる体制」を、全員で一体となって築くというマインドセットです。

昭和的な現場の経験値も、AIやIoTと組み合わせることで、世界に誇れる日本品質・安心・安全へと進化します。

いまこそ、現場主導のラテラルシンキングを深め、新たな“品質文化”を創り出していきましょう。

資料ダウンロード

QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。

ユーザー登録

受発注業務の効率化だけでなく、システムを導入することで、コスト削減や製品・資材のステータス可視化のほか、属人化していた受発注情報の共有化による内部不正防止や統制にも役立ちます。

NEWJI DX

製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。

製造業ニュース解説

製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。

お問い合わせ

コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)

You cannot copy content of this page