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投稿日:2025年7月4日

支配方程式で損失原因を解明し低減する流体力学応用ガイド

はじめに:なぜ今、流体力学が製造業の現場で重要なのか

製造業の現場は、デジタル化や自動化の波にのまれつつも、熟練の技や現場勘に頼る風土がいまだ強く残っています。

特に、生産ラインや装置の運転管理においては、「なぜこの損失が生じているのか」「どうやって歩留まりを上げるのか」という問いに、勘や経験が幅を利かせている企業が少なくありません。

その一方で、エネルギーコストの高騰やカーボンニュートラル推進の時流を受け、今やほんの僅かな無駄や損失でも、利益構造やサプライチェーン全体に大きな影響を与える時代です。

こうした背景から、損失発生の裏にある「本質的なメカニズム」を正しく解明し、科学的に改善するために、流体力学の基礎知識や支配方程式の応用が再評価されています。

この記事では、製造業の現場で役立つ流体力学の実践的知見や、支配方程式の考え方を用いて損失原因を解明し、現場改善へつなげる方法をわかりやすく解説します。

バイヤーを志す方、現場で損失低減の任を担う方、サプライヤーの立場からバイヤー思考を理解したい方の実践的なガイドとなる内容を目指します。

流体力学の基礎:製造業現場で避けて通れない支配方程式とは

流体力学とは、液体や気体などの「流体」の運動や力学的性質を探求する物理学の一分野です。

多くの製造プロセスでは、水・油・スラリー・空気・ガスなど、何かしらの「流体」が工程や設備内で移送されています。

タンクへの充填、ポンプによる圧送、配管流れ、フィルターろ過、熱交換器での移動など、至るところで流体力学が関与しているのです。

このとき、各ポイントで生じる「損失」(圧力損失、熱損失、移動ロスなど)は、流体の運動を支配する基礎法則——すなわち「支配方程式」によって数学的に記述できます。

現場でよく使う主な支配方程式

  • ベルヌーイの定理:エネルギー保存則を基本に、圧力・速度・位置エネルギーの関係を記述
  • 連続の式:質量保存則から、流体の入口と出口の流量(断面積×流速)の関係を示す
  • ナビエ‐ストークス方程式:運動量保存則(運動方程式)を流体に適用したもの。微視的な粘性や乱流も記述可能
  • ダルシー・ワイスバッハ式:配管損失(圧力損失)算出に使われる代表式

これらの支配方程式は高度かつ抽象的ですが、現場では計算式や設計数値、現象解釈のベースとして強力な武器になります。

「支配方程式」を現場の”なぜ?”に活用する発想法

現場では、「なぜポンプ圧力がこれほど必要なのか」「なぜこの工程で詰まりやすいのか」といった疑問が日常的に発生します。

ここで支配方程式を活用すると、「ボトルネックの流速が増えたことで、圧力損失が急激に増大している」「配管径変更が全体の流量バランスを崩している」といった、因果関係を”見える化”できます。

例1:配管圧力損失の正体を数式で理解する

例えば、生産ラインの途中にある長い配管が慢性的に詰まりやすい。
現場では「詰まりやすい素材だから」「流量過大では?」と感覚的判断をしがちです。

ここで「ダルシー・ワイスバッハ式(圧力損失=係数×長さ/径×速度^2)」に代入して、詰まり箇所の配管長さ・内径・流速・材質(粗さ)を評価してみましょう。

計算上、流速のわずかな増加や配管径の縮小が、損失を指数関数的に増やしているケースがよく見られます。

この因果を理解すれば、清掃頻度や運転条件だけでなく、「そもそも設計時に流速が過大だった」といった根本原因にも目が向きます。

例2:ポンプ選定トラブルへの応用

新ラインの稼働時、「事前計算通りの流量・圧力が出ない」というケースがあります。

ポンプの仕様選定時に、配管の全体損失を算出するのは当然ですが、現場でよくある見落としポイントとして、「現場の継手やバルブ形状による局部損失」があります。

支配方程式を局所的に適用し、現場の配管レイアウトや機器付帯損失を反映した計算を行うことで、”カタログスペック”から大きく外れた損失原因の正体がつかめます。

流体力学活用による損失低減の具体実践ステップ

昭和時代から続く「なんとなく圧損」「たぶん清掃不足」という職人の勘に依存せず、支配方程式を根拠に”改善策”を具体化するには、次のステップが有効です。

1. 現状の「定量的な把握」から始める

現場にある圧力計・流量計・温度計を用い、各ポイントの運転データを数値で記録します。

シンプルな配管図やフロー図を描き、どこで「落差」や「変動」が発生しているか、可視化しましょう。

2. 支配方程式に”身近な数値”を当てはめる

計測データを現場のパラメータ(流速、配管径、圧力、粘度など)として、ベルヌーイの定理やダルシー・ワイスバッハ式に代入してみます。

この作業で、「ここで損失の大半が発生している」「最大要因の変数はここだ」と原因のあたりがつきます。

3. 損失要因の”感度分析”をする

支配方程式により、設計条件や運転パラメータが損失にどう影響するか(=感度)を分析します。

例えば、流速を1.5倍にすると損失は何倍になる?配管径を1割拡大したら…?という仮説シナリオを立てられます。

4. 現場の実態とすり合わせて「改善策」を立案

例えば「清掃してもすぐ詰まる」なら、流速ダウンや配管径拡大だけでなく、ポンプ選定や配管形状の見直しにまで議論が発展します。

また、コスト面での妥協点や、現場作業員の負荷とのバランスも考慮しましょう。

業界の「アナログ慣習」のなかで支配方程式を活かすには

日本の製造業では、いまだ「経験と勘」に重きを置くアナログ文化が根強く残っています。

この中で支配方程式を役立てるには、「杓子定規な数式主義」にならずに、現場目線の”納得感”を持たせる工夫がカギです。

現場のベテランへの「共感的アプローチ」

管理職やエンジニアが、「この式でこうなるから」という主張だけでは、作業員の納得を得にくいことが多々あります。

そこで「長年の現場体験」と「数式計算」をマッチングさせることが重要です。

「この区間は昔からよく詰まると言われてきたけど、計算すると流速が標準値より30%高すぎると分かった」というように、現場の歴史と支配方程式を相互に裏づけ合う説明が有効です。

「小さく始めて効果を見せる」現実的アプローチ

一気に配管全体を変えるのではなく、ボトルネック1~2箇所に絞って改善し、支配方程式で予測した効果を現場データで追います。

効果が見えれば、スモールスタートから徐々に改善範囲を拡大できます。

バイヤーやサプライヤーの立場でも役立つ流体力学的視点

原材料や部品の調達担当(バイヤー)や、設備・システムを納入するサプライヤーの立場でも、流体力学の”数理的なものの見方”は不可欠です。

バイヤー視点:「損失原因が見える」ことで真のコスト低減が可能に

例えば冷却水ラインの消費電力やポンプ設備費を見積もる際、単純なスペック比較では「同じ出力」の競合品でも、実際の現場損失を評価するとコスト差が顕著に出ます。

支配方程式に基づいて「現場形状」「運転条件」まで踏み込んだヒアリングやコンサル対応ができれば、納得性の高いコスト低減提案が可能です。

サプライヤー視点:バイヤーの細かな疑問に論理で応える

「現場でこんな不具合が…」という問い合わせに対し、単なる部品交換や仕様提示では信頼を得られません。

流体力学的な根拠をもとに現場調査・損失分析を行い、「貴社の配管形状だと圧力損失が大きくなりやすい。ベルヌーイ定理/配管損失式に従えばこう改善できる」という提案なら、バイヤーからの評価も大きく高まるはずです。

おわりに:支配方程式で現場改善の新たな地平線を

製造業の現場では「見えない損失」を放置することが、全体最適の足かせになります。

支配方程式の「数理的根拠」と現場の「経験的知見」の両輪で、「なぜ?」を科学的に解き明かし、筋道だった改善策を打ち出すこと。

これこそが、変化の速い時代にアナログ業界が生き残り、さらなる生産性・品質向上を目指すポイントだと考えます。

現場担当者も、バイヤー志望者も、サプライヤーの方も——
流体力学の支配方程式を「三種の神器」として活用し、業界発展の新たな地平線をともに創っていきましょう。

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