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FTAETA手法基礎と潜在故障摘出事故要因解析を行う実践講座

目次
FTAETA手法基礎と潜在故障摘出事故要因解析を行う実践講座
はじめに:ものづくりに不可欠なリスクマネジメント
製造業の現場では、さまざまなトラブルの芽が日々潜んでいます。
それらを未然に摘み取り、安全で高品質なものづくりを実現するためには、事故や故障の要因を徹底的に分析・把握する手法が不可欠です。
そんな現場力強化の土台となるのが、「FTA(Fault Tree Analysis:故障の木解析)」および「ETA(Event Tree Analysis:事象の木解析)」です。
特に昭和的なアナログ思考が色濃く残るものづくりの現場では、このようなシステマティックなリスク評価手法の導入・活用こそが、次世代の競争力を生むカギとなっています。
本記事では、実践経験をもとに、FTA及びETA手法の基礎と、現場での活用方法、事故要因の本質的な抽出・分析・未然防止につながる実践ノウハウを、現場目線・管理職目線の双方から解説します。
また、サプライヤーやバイヤーとしての視点でも、これらの手法がサプライチェーン全体の価値向上につながることを具体的に示していきます。
FTA(故障の木解析)基礎:故障から遡り“根因”を暴く
FTAの基本構造と使うメリット
FTAは、トップダウン型の事故・不具合の解析手法です。
現場で「この装置が止まった」「この製品で不良が発生した」という事象が起きたとき、その直接原因や背景にある複数の要因を“木構造”で遡っていきます。
目的は、表面的な原因だけでなく「本当の根っこ=潜在故障・潜在リスク」を明らかにすることです。
たとえば、ある生産設備で「停止」が発生した場合、それに至るまでの
– 部品の寿命切れ
– 定期メンテナンスのミス
– オペレーターの操作ミス
– 設計上の想定漏れ
– 購入部品の品質不良
といった原因を階層的に分解していきます。
FTAの最大のメリットは、思い込みや属人的判断による「見落とし」を大幅に減らし、組織的に本質的な課題抽出ができることです。
現場の経験知とロジックを融合させてこそ、本当の強い現場が生まれるのです。
FTA導入の現場あるあるとその乗り越え方
実際の現場では、
– 「こんな細かい分析必要?」
– 「現場の勘と経験のほうが速い」
– 「毎回資料づくりが大変」
といった声が根強く聞かれます。
特に昭和的アナログ業界では、暗黙知や属人的な判断が幅を利かせていることが少なくありません。
しかし、FTAは決して現場経験を否定するものではありません。
むしろ熟練者の頭の中にある「事象のつながり」を見える化し、若手や異動者にも共有できる“現場知の資産化”を実現します。
私の経験では、「いつ誰が担当しても同じ再発防止策が取れる仕組み」を評価する声も徐々に増え、結果的に働き方改革や多能工化推進にも寄与しました。
FTAを組織に根付かせるコツ
1. 小さな失敗例からスタートし、「書いてみる・描いてみる」文化を導入
2. ベテランと若手でクロスレビュー(現場知の共有を加速)
3. 成果(未然防止・再発ゼロ)をみんなで“見える化”し実感
このサイクルを地道に回せば、「なんとなく大丈夫」を「論理的に大丈夫」に変えられるのです。
ETA(事象の木解析)基礎:事故発生後の“波及と分岐”を徹底追跡
ETAとは何か、その効果
ETAは、FTAとは逆に、事故やトリガー事象(たとえばヒューマンエラー、機械故障など)が実際に起こってしまった後、「その後、現場やシステムはどのように反応し、どこまで事故が波及・分岐するのか」を整理し、未然対策や軽減策を検討する手法です。
たとえば、「加熱炉の制御不能」というイベント発生を起点として、
– 非常停止ボタンは作動したか?
– 温度センサーの異常検知は働いたか?
– 製品への直接被害は及んだか?
など、“何が起きて、その効果はいくつ分岐したか”をフローチャート風に展開します。
FTAが「故障がなぜ起きたか?」に強いのに対し、ETAは「故障が起きた後どうなるか?(損失最小化できるか)」の思考を育みます。
ETAの応用例と現場での改善効果
私が工場長を務めた際、ETAを用いて“ヒヤリハット”から重大事故に至る経路を細かく分岐展開し、わずかなセンサー投資で大事故を防止できた事例がありました。
たとえば、
1. ポンプの異常振動
2. 現場での気付き
3. 異常音検知システムのアラーム
4. ラインを止める判断
という分岐点で「どこか一つでも抜け落ちると重大インシデントになり得る」という分析でした。
ここで重要なのは、発生後の“対応プロセス”を抜け漏れなく洗い出し、再発防止よりも「最悪シナリオの回避」を重視する点です。
サプライヤーとしても「発生から納入先(バイヤー)までどんな波及があるか」をETAで洗い出せれば、より高品質なサービス訴求が可能になるでしょう。
FTA×ETAのシナジーで“潜在故障”をゼロに近付ける
表層的な再発防止策に終わらせないために
品質問題や設備トラブルの“再発防止活動”が、単に「分解・点検・再教育」に終始してしまう例は後を絶ちません。
しかし、本当に求められるのは「本質的なリスク源に気づき、波及・拡大メカニズムまで未然防止する」取組みです。
FTAで“なぜなぜ分析”を徹底して根因を深堀りし、ETAで“起きてしまった後”の波及シナリオまで網羅すれば、潜在リスクの「見える化」と「消し込み」が格段に進みます。
バイヤーの視点でも、サプライヤーにこれらのプロセスを求めたり、協働してフォロー体制を構築することが“強いパートナーシップ”につながるのです。
昭和アナログ現場でも定着させる現実的なヒント
– 日々の朝礼で1分だけ「FTA・ETA展開事例」共有
– 手書きでもOK、小さなホワイトボード×付箋メモでスタート
– 設備投資不要、現場のリーダーが「まずやって見せる」(率先垂範)
– 成功・失敗事例を“ネタ”に、小さな表彰や感謝で盛り上げる
これらは古き良き現場文化とも親和性が高く、“見える化の楽しさ”を実感しやすい工夫です。
バイヤーとサプライヤーの新たな関係性:FTA/ETA活用による“真のWin-Win”
バイヤーが知りたい「真のリスク」とは何か
バイヤーにとって、海外含むサプライチェーン上で「安定稼働・安心品質」は至上命題です。
そのため、表向きの検査成績や納入実績だけでなく
– 万一のリスクはどこに潜んでいるか
– 現場でどんな再発防止サイクルが動いているか
– 異常発生から納入までの波及パターンは想定されているか
といった“生きたリスク情報”への関心が強まっています。
FTAやETAを取り入れたサプライヤーの現場は、「見逃し箇所の洗い出し」「現場主導のカイゼン活動」の証明でもあります。
これをバイヤー商談時に示すことで、単なる“価格交渉”を超えたパートナーシップへ発展できる余地が生まれます。
サプライヤーもバイヤー目線で思考をアップデートしよう
サプライヤーの立場では、FTA/ETAに基づくリスク情報の“見える化”“価値化”が、
– 高品質納入の根拠提供
– バイヤーとの信頼性UP
– 新規商談や長期契約の可能性拡大
など、経営的にも大きなプラスとなります。
また、バイヤーと一緒に事故要因解析ワークショップを実施したり、異業種連携でFTA/ETAノウハウを共有したりすることで、市場全体のリスク低減・競争力強化にも寄与できます。
まとめ:FTA×ETAで“事故ゼロ”へ、昭和から令和への進化を
現場目線のFTA・ETA活用は、属人的なカン・コツが幅を利かせる昭和流アナログ現場にも、必ず“導入できる・根付く価値”があります。
日々の業務の中で
– 小さく始めて、まず見える化
– 成功しても失敗しても、事例化・言語化
– チームやサプライチェーンで知識共有
を徹底すれば、誰もが「確かな安全・安心」の担い手になれます。
バイヤーもサプライヤーも、“生きたリスク情報”でつながる新しい時代へ。
FTAとETAで、製造業の新たな地平線を一緒に切り開きましょう。
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