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投稿日:2025年6月23日

疲労破壊の基礎と評価寿命予測および強度設計への活かし方

疲労破壊とは?基礎から学ぶ現場目線の重要性

疲労破壊という言葉は、製造業に携わる方であれば一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

特に金属材料の分野では、繰り返し荷重が加わった際に、見かけ上目立った変形や破壊が無くても、長期的には内部に微細な亀裂が進展し、ある日突然構造物が破壊に至る現象を指します。

製造現場における事故や不良の多くは、この「疲労破壊」を適切に予測・評価できなかったことに起因しています。

製品の安全性・信頼性向上、生産性向上やコストダウン、納期厳守という現場目線の要求を叶えるため、「疲労破壊」の正しい理解は避けては通れません。

ここでは、現場経験をふまえて、疲労破壊の基礎と評価方法、さらには寿命予測や強度設計にどう活かすべきかを解説します。

なぜ疲労破壊は起こるのか ― アナログ的要素の落とし穴

疲労破壊が発生する主な原因は、荷重の大きさだけでなく、「繰り返し」の回数や変動、その中で生じるミクロな材料内部の欠陥、ひずみ、さらには表面状態など多岐にわたります。

昭和から続く多くの日本の製造業現場では、経験と勘に頼った「職人技」や、数値化されない管理手法がいまだ根強く残っています。

しかし、これこそが疲労破壊リスクにつながりやすい落とし穴です。

具体的な例として…

  • 同じ型のネジでも生産ロットごとに疲労強度が異なる
  • 溶接部位や曲げ加工部にミクロな粒界割れが発生しやすい
  • ホコリや油などの外部要因で微細な表面傷が成長しやすい

機械設備や構造体の使用環境・取り扱いにも個体差があります。

「設計上は持つはずなのに実際の現場では…」という声は、こうした膨大なアナログ的要因が影響しているのです。

疲労破壊の基本メカニズム

1. 初期亀裂の発生

金属材料に繰り返し変動応力が加わると、材料表面や内部での欠陥部位から微細な亀裂が発生します。

この初期亀裂は、一般的な外観検査や非破壊検査では多くの場合検出できません。

2. 亀裂の進展と累積損傷

初期亀裂が成長し始めると、「亀裂先端の応力集中」によってさらに速い速度で進展します。

この段階でも、部材そのものの見た目には大きな変化がなく、発見が遅れがちです。

3. 最終的な破断(破壊)

亀裂が臨界長さに到達すると、残された断面積が急激に小さくなり、あたかも突然破壊したかのように破断に至ります。

本来この段階以前に寿命予測やメンテナンスによる予防が必要ですが、現場では「予想外の事故」と認識されがちです。

疲労寿命とは ― 製造現場での理解とその重要性

機械部品や構造材料において「疲労寿命」とは、設計時に定めた繰り返し荷重の下で、その部材が破壊せずに使用できる回数または期間を指します。

通常、試験ピースに一定の荷重を繰り返し加え、破壊までの繰り返し数(疲労限度、S-N曲線で表記)を求めます。

実際の現場では、理論値だけでなく、使用環境や組立精度、さらには外部応力のバラツキといった要素が疲労寿命に大きな影響を与えます。

製造現場の多くでは「設計寿命=安全」という認識が未だ根強いですが、本来は「設計寿命-実使用のバラツキ、安全率」という視点が不可欠です。

工場の自動化が進んでも消えない人的要素

近年、AI・IoT・ロボットによる製造現場の自動化が進んでいますが、現場には「作業者のちょっとした加工ミス」「未確認の設備振動」「不意の衝撃」などヒューマンエラーや不確定要素が残ります。

こうしたバラツキをどう考慮するか、疲労寿命予測の精度向上には現場の生きた知見が必要不可欠です。

疲労評価方法の基礎と限界

応力―寿命(S-N)曲線とは

疲労強度評価の基本は「S-N曲線」を用いた応力―繰り返し数の関係性の把握です。

異なる応力レベルでの試験データから「このレベルの応力なら何サイクルまで破壊せずに持つか」という設計指標が得られます。

ただしS-N曲線は、あくまで試験環境・規格化された条件下の結果です。

現実の工場では、材料ロット差や表面仕上げ、温湿度、応力集中部などさまざまな因子が疲労強度に影響するため、試験結果と現場実状の”乖離”を正しく把握することが求められます。

亀裂進展速度法による寿命予測

近年の電子顕微鏡や非破壊検査装置の発達により、亀裂進展速度を実測し、「フラクチャーメカニクス(破壊力学)」の理論を現場設計に応用する動きも拡大しています。

有名なパリス則や、臨界亀裂長さの考え方を採り入れることで、より高精度な寿命予測が可能となりつつあります。

ただし、これも
「実地データの蓄積」
「極小さな初期亀裂の発見」
「設計許容範囲の見極め」
を現場でどう実践に落とし込むかが課題です。

強度設計への活かし方 ― バイヤー・サプライヤー双方の視点

バイヤーに求められる「腹落ち」の視点

サプライヤーから部品や材料を調達するバイヤーにとって、疲労破壊の知識は「なぜそのスペックがコストに反映されるのか」という交渉力や判断力に直結します。

「この面取はどこまで意味があるのか」「表面処理の工程はどちらが必要か」などの細かい技術的ディテールに納得感を持って臨むことが、最終製品の信頼性を結果的に高めます。

また、サプライヤー側から提案されたコストダウン施策に対しても、「それが疲労強度や寿命にどう効いてくるか」を見抜けるバイヤーは一目置かれる存在です。

サプライヤーならではのリスク説明力

一方、サプライヤーとしては、自社の加工技術や材料管理が「疲労破壊リスクをどう最小化しているか」まで“見せる化”し、バイヤーに理解・納得してもらうことが、安値競争に終始しない長期的な信頼の構築につながります。

たとえば…

  • 疲労強度向上のための熱処理・ショットピーニング・表面硬化プロセス実施
  • ワークの残留応力測定や微細欠陥検査の定常運用
  • トレーサビリティ管理やデータベース化による工程の標準化

こうしたPDCA型の説明責任が、高度化するサプライチェーン管理ではますます重視されています。

「昭和的アナログ」から脱却するための考え方

多くの現場では「壊れるまで使い切る」「見た目がきれいなら良品」という感覚が、いまだにリアルな運用現場で生き残っています。

時代は変わり、今後は「壊れる前に交代」「リスクを定量化して予防保全する」ことがIoTやデータ活用で可能になりつつあります。

しかし最大のポイントは、「現場感覚と数値管理の融合」にあると私は考えています。

現場で得られる“異音・違和感・細かい傷”の感覚値と、蓄積されたデータを両立させていくことで、「壊れる前に変える」「リスク最小化する」設計・保守・調達につなげることができます。

まとめ ― 製造業の発展に必須な疲労破壊知識のアップデート

疲労破壊は、いわば材料の「見えない劣化」であり、発見・評価・予防が難しい現象です。

本記事で取り上げた

  • 疲労破壊の基礎と現場での課題
  • 評価・予測方法の進化とその限界
  • バイヤー・サプライヤー双方に求められる説明力・納得力

これらを理解し、「理論」と「現場感」の両輪で設備の安全・長寿命化、コスト・納期の最適化を追求することが、製造業の未来への“地平線”になるはずです。

今後、自社や個人のレベルで疲労破壊知識を深める取り組みは、確実に現場力と競争力に直結します。

現場で培った知見とIT・データを掛け合わせ、より進化した強度設計とサプライチェーン構築を目指していきましょう。

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