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化粧品ボトルの液漏れを防ぐガスケット材質と締付トルク設計

目次
はじめに:化粧品ボトルにおける液漏れの本質とは
化粧品ボトルからの液漏れは、製造業界において決して珍しい課題ではありません。
製品の外観や機能性を担うパッケージ部材としての信頼性が強く求められる中、液漏れの発生は企業イメージの損失や返品コストの増加、さらにはブランドの信頼低下に直結します。
特に、化粧品は内容液であるクリーム・エッセンス・化粧水などの組成が多種多様であるため、一般的なガスケット設計だけではすべての液漏れトラブルを未然に防ぐことが困難です。
そこで、現場目線で「ガスケット材質」と「締付トルク設計」という2つの技術的側面から、液漏れ防止策を深掘りしていきます。
液漏れを発生させる5つの原因
1. ガスケットの材質選定ミス
化粧品の内容物は水性・油性・アルコール系・シリコーン系と多岐にわたり、これらに適合しないガスケット材質の選定が液漏れの主要因です。
例えば、水分を多く含む化粧水では吸水性の有無が問題になり、油分を多く含むクリームでは耐油性が求められます。
2. 加工精度や部品設計の不具合
ボトル開口部やキャップねじ部の寸法精度が甘い、またはガスケット溝が正しく設計されていない場合、ガスケットが均一に圧縮されず隙間から漏れが発生します。
3. 締付トルクのコントロール不足
締付トルクが過大であれば、ガスケットが押しつぶされて塑性変形し、反発力を失います。
逆に緩すぎれば十分なシール圧が得られず、隙間が生じ内容液が漏れ出します。
4. 経年変化・保存環境の影響
保管中の温度変化や紫外線、内容物による化学反応でガスケットが劣化し、柔軟性や弾性が失われることで、当初は問題なくても後々液漏れが発生します。
5. 組立工程でのヒューマンエラー
自動化が進んでも、ガスケットの取り付け向きの誤りや、異物混入による密着不良など、アナログな課題も根強く残っています。
現場で生きる!ガスケット材質選定の実践ポイント
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)
耐薬品性・耐熱性に優れ、溶剤やアルコール系化粧品に最適です。
ただし、柔軟性が低いため、ねじれ応力や表面粗さへの追従性が課題となります。
ガラス質や金属素材との相性も良いですが、充填材の有無でさらに機能をカスタマイズできます。
EPDM(エチレンプロピレンゴム)
耐水性・耐候性に優れており、水性化粧品、また紫外線があたる環境に最適です。
アルコール系や油系成分との相性には注意が必要です。
シリコーンゴム
耐熱性・柔軟性が高く、広範囲な化粧品ボトルに使われます。
高温環境や繰り返し開閉されるボトルに適していますが、耐油性はEPDM等の他材質と比較して劣る場合があります。
TPE(熱可塑性エラストマー)
コストパフォーマンスに優れ、軟質・硬質の選択肢が広いのが特徴です。
食品衛生法にも適合する種類もあり、化粧品用途向けとして近年採用事例が増加しています。
メタルガスケット・ハイブリッド構造
高級化粧品や特殊仕様では、金属(アルミ等)のガスケットや、金属+エラストマーのハイブリッド型も登場しています。
高い気密性と耐久性が期待できますが、コストが大きくなる傾向があるため、ブランド戦略やターゲット層に応じての選定がポイントです。
締付トルク設計の失敗事例と成功事例
失敗例:規格トルク一律適用による液漏れ
「全ボトル同一トルクで締めればいい」という安易な作業標準化が、工程不良を増やす要因です。
たとえば、ボトルサイズや内容物粘度が異なるのに、標準トルク「2N・m」で一律締付してしまうと、たわみやシール圧が異なり、想定以上の液漏れ発生につながります。
成功例:締付トルクレンジ管理&フィードバックループ
現場では、締付トルクを0.1N・m単位で管理し、締付後のリークテスト(加圧・減圧試験)結果を次回のトルク設定に反映させるPDCA運営が効果的です。
また、季節や内容液ロット、ガスケットロットごとの微調整も重要。自動トルクレンチを導入することでヒューマンエラーも防げるため、現場自動化への投資も無視できないトレンドです。
長寿命ボトルに導く:工場内改善活動のすすめ
現場視点の“未然防止”アプローチ
製造現場では、液漏れ発生後の手直しコストが高額になりやすいのが実情です。
そのため、量産立ち上げ段階から「液封じ込みテスト」、トルクバラツキの定量的モニタリング、実用シミュレーション(落下・振動・逆さま試験)など、設計-生産-品質管理のチーム一体の活動が不可欠です。
現場の知恵を活かす“見える化”&ナレッジ蓄積
化粧品ボトルの液漏れは、現場のちょっとした気づきで未然防止ができる場合が多いです。
たとえば「ボトル着座時に微細な擦れ音が増えた」「締付トルク管理表の急な数値変動」などのアナログな兆候も活用し、データベース化・共有を行うことで、現場力が飛躍的に向上します。
アナログ文化の強い業界の中で最新トレンドを掴むには
デジタルツールの活用
今後は、IoTを活用したトルク管理やAI画像判定によるガスケット不良自動検知など、“アナログ×デジタル”の融合が液漏れ対策の鍵となります。
現場の職人技だけでなく、スマートファクトリー化への第一歩を踏み出すべきタイミングです。
サプライヤー・バイヤー連携の深化
ガスケット・ボトル・キャップ、それぞれの専門メーカーとの協働こそ、液漏れゼロ設計への近道です。
バイヤー側がサプライヤーの加工実力やQC(品質管理)ノウハウを積極的に把握し、設計段階から要件を深く共有すること。
逆に、サプライヤー側も「バイヤーは何を求めているか」「どんな課題を重視しているか」を細かくヒアリングし、技術提案力を高める風土づくりが重要です。
まとめ:バイヤー・サプライヤー・現場管理者、それぞれの視点で液漏れゼロを目指す
化粧品ボトルの液漏れ防止には、ガスケット材質選定のノウハウ、締付トルク設計の高精度化、現場の未然防止活動、そして現場力を活かした改善サイクルの継続が求められます。
さらに、昭和から引き継がれる“人に頼る工程”の強みも活かしつつ、最新のデジタル技術との融合や、部材メーカーとの密な協業体制を意識することが、中長期での競争力強化につながります。
製造現場・バイヤーや、サプライヤーのみなさんが、“液漏れゼロ”による安全・安心の製品づくりを目指すための一助になれば幸いです。
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