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ガスケットパッキン選定で漏れを防ぐシール技術の基礎

目次
はじめに:製造現場で欠かせないシール技術
ガスケットやパッキンは、製造業の現場において漏れを防ぐために不可欠な部品です。
古くから使われているシンプルな部材ですが、実は技術革新が止まらず、新素材や加工法の登場はもちろん、設計思想も大きく進化しています。
一方で、現場では今なお「昔ながらのやり方」が根強く残っているのも事実です。
昭和期のアナログ的手法から抜け出せない現場が多く、選定や管理の属人化、情報共有の不足が問題となっています。
この記事では、ガスケットパッキンの基本構造や選定のポイント、最新技術動向に至るまで、製造現場で役立つ実践的なノウハウを解説します。
現役バイヤー、バイヤー志望、サプライヤーの方いずれにも役立つ現場目線の「シール技術最前線」をお届けします。
ガスケット・パッキンの基礎知識
シール材とは?その役割を再確認
ガスケットやパッキンは、流体(液体や気体)の漏れを防ぐために2つ以上の部品間に装着される部材です。
締結面の隙間を埋めることでシール効果を発揮し、圧力変動や振動が加わる過酷環境下でも安定した性能を維持します。
逆に、これらの部材の選定や取り扱いを誤ると、漏れによる品質事故や安全問題、大きな経済損失につながる場合もあります。
主な種類と特徴
ガスケットやパッキンの大きな分類は以下の通りです。
- ソフトガスケット…非金属系で柔軟性が高く、低~中圧で広く使用される。
- メタルガスケット(リングジョイント)…金属製で高圧・高温、苛酷用途に強い。
- スパイラルワウンドガスケット…金属+非金属を螺旋状に巻き合わせた複合型。高圧高温向け。
- Oリング…断面が丸型のゴム製。機械要素部品に多用される。
- パッキン…押出し成形品や板状素材から切り出したものなど含み、多種多様。
使用環境やコスト、耐薬品性、保守性などを加味し最適な種類を選ぶことが大原則です。
現場に根付いた“アナログ文化”の壁と向き合う
属人化された選定基準
多くの製造現場では、シール材の選定がベテラン社員の経験に依存しがちです。
「とりあえずいつもの業者」「昔から使っているから大丈夫」という慣習が根強く、仕様書も曖昧なまま調達・取り付けがなされる光景をよく目にします。
現場の本音として、
- 図面に品番だけ
- 「適当な厚みで作っておいて」と口頭の指示
- メンテナンス時に現物合わせで手配
といった“昭和の一コマ”は2024年でも珍しくありません。
この属人化は、流出不良やトラブルの再発、コスト管理の不備を招きます。
デジタル化への移行は進むのか
一方、デジタル化や標準化の推進は、サプライチェーン全体を効率化する大きな潮流です。
しかしガスケット、パッキンの分野は「地味」であり、IT投資の後回しにされがちです。
設計変更や部品選定プロセスのDX(デジタルトランスフォーメーション)はまだまだ黎明期。
工程FMEAやPLMへのデータ一元管理など、できるところから順次着手する姿勢が業界発展には求められます。
適切なガスケットパッキン選定のポイント
1. 基本は「流体・温度・圧力・サイズ」
ガスケット・パッキン選定でまず押さえるのは、漏れを防ぐ対象となる流体の種類(油、水、薬液、ガスなど)、温度、圧力、そしてシールする部分の寸法です。
それぞれに適した素材・形状の目安があります。
- 流体に腐食性があるか?(耐薬品性)
- 高温高圧への耐性はどの程度必要か?(耐熱・耐圧)
- 取り付け時の締付トルクの範囲は?(圧縮性・復元性)
- 保守点検の頻度や可搬の容易さは?
これらの条件を数値データで明記し、根拠に基づいた選定が大切です。
自社独自の経験値とカタログスペックの両輪で判断しましょう。
2. 素材選定の具体的な進め方
ガスケット・パッキンの素材は、ゴム(NBR、EPDM、シリコンなど)、PTFE(テフロン)、アスベストフリーシート、ステンレスなど多様です。
素材ごとの特性は大まかに、
- ゴム系…柔軟で密着性に優れる反面、耐熱限界が低い。
- PTFE…耐薬品性・耐熱に秀でるが圧縮復元性に課題。
- 金属系…高温・高圧に強いが、加工や取り扱いに注意。
設計段階で、現場の声を拾い「本当に必要な機能」を取捨選択できる目利き力が求められます。
3. 加工性・在庫性・ロットサイズも現場の要
大量生産ラインと単品・多品種少量生産、いずれにもキーマンとなるのが「手配性」や「調達リードタイム」です。
短納期に強い切削加工品や、汎用在庫の豊富な成形ゴム品など、現場事情を反映したサプライヤー選定も漏れ対策の一環といえます。
一方で特殊材や規格外寸法の乱発は、現場のコストアップ・在庫負担の原因にもなるため範囲を見極めましょう。
トラブル事例と対策:現場の“あるある”を回避する
最も多いのは「取り付け不良」
パッキン本体の選定ミスだけではなく、組付け方法に由来するトラブルも多発します。
特にフランジガスケットでは、
- トルク管理の未徹底(締めすぎ/締め不足)
- 取り付け面の傷・異物混入
- 繰返し使用による経年劣化の見逃し
といった工程管理上の問題で漏れが顕在化します。
組み付け要領書、トルク管理マニュアル、現物状態の見える化など、作業標準の再構築が必須です。
ナレッジ継承の仕組み化
「誰がやっても漏れない現場」をめざすには、暗黙知となっている勘どころやトラブル発生時の即応手順を形式知として残す工夫が重要です。
現場のベテランの“裏ワザ”を動画や写真、データシートでストックし、OJTだけに頼らない教育体系の構築こそがデジタル時代の新定番となります。
シール技術の最新動向とバイヤーが注目するポイント
サステナビリティと法規制強化
2020年代に入り、アスベストの全面禁止、化学物質規制(REACH、RoHS対応など)が業界標準となりつつあります。
環境負荷の低減や安全性確保の観点から、新素材やリサイクル性の高いガスケット・パッキンが一層求められています。
バイヤーやサプライヤーは法規制対応力やトレーサビリティにも意識を向けましょう。
スマートファクトリー化との親和性
最近では、漏れ検知用のIoTセンサーと連動した「予防保全型シール管理システム」の導入や、設計段階でのCAE(コンピューター解析)による最適化が先端領域で進んでいます。
ただしコストアップとのバランスや、現場作業員との役割分担が今後の課題と言えます。
バイヤー視点の“コストだけではない付加価値”
従来は「安いものを大量に」の発想が幅をきかせていましたが、今や調達における付加価値が見直されています。
トレーサブルで短納期、カスタマイズ対応ができるパートナーを持つこと、設計時からVE(バリューエンジニアリング)提案を受け入れる柔軟さがバイヤーにとっての新しい競争力となります。
まとめ:これからのシール技術と現場の成長のために
ガスケット・パッキン選定の基礎は「基本に忠実に、急がば回れ」です。
旧態依然とした慣習をただ否定するのではなく、「なぜこうしてきたのか」、その背景にある現場の智恵を今こそ形式知として体系化し、アップデートすることが求められます。
購入品管理、生産現場、サプライヤー、バイヤーそれぞれの視点を持ち寄り、情報共有・標準化・技術開発のサイクルを強化することが、製造業全体の競争力向上に直結します。
アナログの良さとデジタルの強み、両者を掛け合わせた「令和の現場目線」にシフトチェンジし、失敗とノウハウを次代につなげる。
これが現場から始まる日本のものづくり改革の第一歩です。
シール技術の現場をアップデートし、次の時代の「漏れない現場」を共につくっていきましょう。
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