- お役立ち記事
- 地方企業が製品開発を通じて社内に「マーケティング意識」を根付かせる方法
地方企業が製品開発を通じて社内に「マーケティング意識」を根付かせる方法

目次
はじめに
地方の製造業において、長年にわたり「作れば売れる」という時代の延長で事業運営を行っている企業は少なくありません。
特に、昭和から続くアナログな経営スタイルが色濃く残る地域企業では、マーケティングという言葉そのものに違和感や抵抗感を持つ方も多いのが実情です。
実は、製品開発を進めるなかで「マーケティング意識」を社内に根付かせることは、地方企業がこれからも日本の製造業の現場で生き残っていくための大きな武器になります。
この記事では、現場目線の実践的な内容や、実際の体験を交えつつ、地方企業がどのようにして社内に「マーケティング意識」を根付かせていくかについて詳しくご紹介します。
地方製造業の現状と課題
マーケティングなき製造業の実態
地方の製造現場では、「良いものを真面目に作る」ことそのものが最大の武器と考えられてきました。
しかし、近年のグローバル化や取引環境の変化により、ただ良いものを作るだけでは生き残れなくなっています。
社内には「開発」「生産」「品質」「調達」など明確な役割分担があり、マーケティングは都市部本社や営業部門任せ、現場は送り出す製品への品質や納期順守が最重要とされてきました。
こうした環境では現場が「誰のために、何を、なぜ作るのか」を意識しにくく、外の世界との断絶が起きやすくなっています。
なぜこれまでマーケティングが根付かなかったのか
地方企業にマーケティングが根付かなかった要因は複数ありますが、特に大きいのが「現場と市場との距離」です。
営業はたしかにお客様と日常的に接しますが、設計や生産、品質管理部門は市場の変化や顧客ニーズを直接知る機会に恵まれていません。
さらに、「失敗できない文化」も根付いており、外の情報を取り入れてリスクを取りながら新たな発想を生み出す行動は二の次にされがちでした。
製品開発の現場から見たマーケティングの必要性
売れる製品=マーケティング発想の賜物
ものづくりの原点は、「社会や顧客の困りごとを解決し、価値を提供する」ことです。
しかし、今なお多くのメーカーで「自社の設備やスキルに合ったもの」「今までの延長線上で作れるもの」に注力しがちです。
実際のところ、現場で「この新製品はなぜ生まれたのか?どういうお客様に、どんな用途で、どう使っていただくのか?」という視点が浸透すれば、設計・生産・品質現場のモチベーションも大きく変わることを、私自身工場長時代に痛感しました。
サプライヤーとしての立場から見えるバイヤーの意識
大手メーカーの調達担当や商社バイヤーとやり取りをしていると、「なぜこの機能が必要なのか?」「なぜこのスペックを要求するのか?」といった核心部分のコミュニケーションが非常に重要であることに気づかされます。
要求仕様の本当の背景や市場トレンドを、現場にどれだけ伝えられるかが、付加価値の高い提案や継続的な取引の鍵となります。
ですから、サプライヤーの皆さんも「バイヤーは何を考え、この選定基準を作っているのか?」というマーケティング的視点を持つことで、顧客との深い信頼関係を築くことができるのです。
マーケティング意識を社内に根付かせるための実践的アプローチ
1. 関係者全員を巻き込む課題発見型プロジェクトの推進
地方の工場でマーケティング意識を醸成するには、開発や営業のみならず、製造や品質、調達部門など、あらゆる部署を最初から巻き込んだ「課題発見型」の活動が効果的です。
例えば、「今期の主力商品のプロセス改善」というテーマでも、設計・生産・品質・営業が一堂に会して、実際のお客様の苦労、社内で感じている課題、今後の市場ニーズをテーブルに乗せて意見交換を行います。
ひとつの事例ですが、私の勤めていた工場で「設計・製造部門主導」で行った製品改良プロジェクトがありました。
受注段階から現場メンバーが同席し、「営業はこんな困りごとをよく聞く」「製造現場のこのプロセスがネックだ」「設計的にはコストダウンできそうだ」といったリアルな意見交換ができるようになりました。
この過程自体が、「どんなお客様がどんな課題を抱えていて、それに自分たちがどう貢献しているか」を自然に考えるきっかけになり、結果的に皆がマーケティング的視点を持つ習慣へとつながったのです。
2. 「ものづくり現場向けマーケティング研修」の定期開催
社外の専門家を招いたり、取引先企業のバイヤー・営業担当者に実際の市場状況を解説してもらう「現場目線のマーケティング研修」はとても有効です。
単なる机上の理論ではなく、製品仕様の決定や不具合対応のポイント、ライバルメーカーの動向、顧客ニーズの変化といった「現場が直面している現実」に焦点を当てることが大切です。
研修のあとに、現場で実際の顧客対応や製品企画にトライしてみる「アクションラーニング」をセットにすると、理解の定着化とモチベーションアップが図れます。
3. 顧客・取引先工場への現場見学、自社現場の「逆訪問」のススメ
営業や調達担当者だけでなく、設計や製造、物流に携わるスタッフも含めて、お客様や取引先の工場(さらにはその先のエンドユーザー)を訪問させる取り組みは、多大な効果をもたらします。
現場の空気感や運用課題を直接目で見て「なるほど、こうだからこの仕様が重要なのか」と実感することで、マーケティング的な着眼点が身につきます。
逆に、自社に顧客や調達先バイヤーを招待し、実際の製造プロセスや改善活動を見てもらうことも、お互いの価値観の共有に役立ちます。
昭和スタイルの現場マインドを変えるには
「現場に自由を」から始まる風土改革
マーケティング意識を根付かせる最も大きな障壁は、やはり「失敗を許さない文化」と「縦割りの壁」です。
現場のスタッフが「これをやってみたい」「こんな改善ができそうだ」というアイデアを気軽に口に出せる雰囲気づくりが必要です。
また、部署間の垣根を超えた情報共有の場を設けたり、小さな成功でもしっかり認め合うことで、徐々に風土は変わります。
「マーケティングは『お客様を想像する力』」
決して高尚な理論や難解な分析だけでマーケティングは語れるものではありません。
現場のメンバー一人ひとりが「この部品、この工程は、最終的にどんなお客様を喜ばせるために存在しているのか」と日常的に想像するだけでも、大きな一歩となります。
小さな問いかけが、組織全体の志向を「売れるものづくり」「選ばれるものづくり」へと変えていくのです。
今後の地方製造業に求められるラテラルな発想
「技術×顧客」の新たな地平を切り開く
これからの製造業は、「技術力」をベースにしつつも、「どんな社会課題を解決したいか」「お客様とどう共に成長したいか」というラテラルな思考が不可欠です。
従来の延長線だけでなく、「顧客との共同開発」「異業種との協働」「自社技術の新分野への展開」など、多面的な発想もマーケティング視点なら可能になります。
社内外の対話を加速させ、知恵と人脈を増幅させよう
地方だからこそ、顔が見える関係性や信頼の絆を強みにできます。
社内外問わず、現場同士・リーダー同士が徹底的に対話し、「この会社は現場からお客様を見ているぞ」と世間に印象づけることがイノベーションの原動力となります。
まとめ
地方企業が製品開発を通じて社内に「マーケティング意識」を根付かせるためには、まず開発・生産・品質・調達といった現場部門が「自分ごと」として顧客と市場を想像することからスタートします。
課題発見型のプロジェクト推進、現場向けマーケティング研修、取引先の現場訪問や対話促進といった多様な手法を組み合わせるなかで、徐々に風土が変わり、組織全体が「選ばれる価値」を生み出す集団へと進化できます。
ラテラルシンキングで新たな地平線を開拓する。
それこそが、これからの地方製造業にとっての生き残りと成長のキーワードになるはずです。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)