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中小企業が輸出規制と原産地証明を理解して取引をスムーズに進める方法

目次
はじめに:グローバル化時代における中小企業の挑戦
グローバル化が進む現代の製造業界では、中小企業であっても国内市場だけでなく、海外市場と深く関わる機会が増えています。
そのなかで特に重要なテーマとなるのが、輸出規制の理解と原産地証明の取得です。
これらの知識がないばかりに、せっかくのビジネスチャンスを棒に振ったり、予期せぬトラブルに巻き込まれるケースも後を絶ちません。
本記事では、私自身が現場で培った経験や業界のリアルな動向を踏まえつつ、中小企業が輸出規制・原産地証明を理解し、いかに取引をスムーズに進めていくべきか、その実践的な方法を解説します。
なぜ今、輸出規制と原産地証明が重要なのか
世界情勢と日本の製造業:
かつて“モノづくり大国”と謳われた日本の製造業ですが、昨今は部材のグローバル調達や海外展開が当たり前になりました。
アジア諸国はもちろん、欧米との取引でも、コンプライアンスの観点から「輸出規制」と「原産地証明」は避けて通れません。
特に近年、米中貿易摩擦やウクライナ情勢、半導体規制の強化などを受け、取引先からの要望も増加しています。
中小企業へのインパクト:
大企業なら専門部門を設けて瞬時に対応できますが、中小企業では調達・物流・出荷担当が兼務で進行管理を余儀なくされていることも少なくありません。
しかし国際取引では、たとえ小さな部品1点でも、規制違反や不備があれば信用失墜や商談中断、大きな損失につながります。
輸出規制とは何か?現場が知るべき実務の要点
輸出規制の主な種類
輸出規制は、大まかに分けて以下のような種類があります。
– 輸出貿易管理令によるリスト規制(キャッチオール規制含む)
– 外為法関連
– 特定国・特定品目に対する制裁措置
特にIT機器や電子部品、精密機械などは「デュアルユース(民生・軍事両用)」の懸念から厳しく規制される傾向があります。
製造業の現場では、製品スペックにうるさい海外バイヤーから「この商品は規制対象ですか?」「エクセルベースの申告書を提出願います」とリクエストを受けることも増えています。
規制該当の確認フロー
現場目線で実践している主な確認フローを紹介します。
1.取扱い商品・部品のHSコードを把握
2.該当する規制リスト(日本・相手国・経由国それぞれ)の内容を確認
3.取引先と用途・最終使用者・輸出先国など運用面もヒアリング
4.必要に応じて経済産業省の相談窓口や商工会議所に問い合わせ
特に「取引先が海外子会社」「最終用途が判然としない」案件は、念入りにチェックすることが重要です。
アナログ業界こそ陥りがちな規制違反
「いつもの品物を送るだけだから」「前回も大丈夫だった」で済ませてしまうのが、昭和時代からのアナログ体質の特徴です。
しかしそれが大きな落とし穴。
規制は頻繁にアップデートされるため、“過去の実績”が通用しないのが現代です。
また、営業部門主導で無理なスケジュールで出荷し、現場が細かい確認を省略して後から問題になるケースも多発しています。
原産地証明とは?バイヤー目線で知っておきたいポイント
原産地証明書の役割と重要性
原産地証明書(Certificate of Origin)は、輸出品がどの国で生産されたものであるかを公式に証明する書類です。
なぜこれが重要かというと、
– 相手国の通関で関税が変動する
– FTA(自由貿易協定)の特恵税率適用の条件
– デュアルユース物資の流通把握
など、実務だけでなく信用維持や取引コストにも直結するためです。
実務的な作業プロセス
原産地証明の取得には、概ね次のステップを踏みます。
1.自社製品の部材がどこから調達され、どこで加工・組立されたか棚卸し
2.生産工程ごとに“原産地規則”に該当しているかを確認
3.証明様式(自己証明、商工会議所、特定機関発行など)の選択
4.必要書類(インボイス、加工記録、部材明細など)を手配
5.商工会議所・発行機関で証明書の取得
ポイントは「証明できる根拠資料を揃えること」と「どの協定・経路に基づく証明かを明確にすること」です。
バイヤーの関心は「本当に関税優遇を受けられるのか」「虚偽申告でトラブルにならないか」という点に集中します。
サプライヤー側でも、見落としやすい過去分部材の記録や、仕入先からの証明入手漏れがブラックボックス化しやすいので注意しましょう。
FTA/EPA活用は現場にこそメリットが大きい
特に近年はRCEP、日EU・日米EPAなど、多くの自由貿易協定(FTA/EPA)が活用できます。
これら協定を利用するには、正しい原産地証明の手配が不可欠です。
見積の段階で「関税優遇あり」とあらかじめ商品価格に織り込むことで、競合他社との差別化も可能です。
昭和型アナログ業界が脱皮するための実践アドバイス
現場主導の情報共有・標準化がカギ
製造業、とりわけ中小企業の現場では、個人や担当者任せで知見やノウハウが属人化しがちです。
これがリスクを高めている最大の要因といえます。
おすすめは、
– 社内勉強会やミーティングで最新情報を水平展開する
– 「出荷ルール」「証明書発行フロー」を文書化してマニュアル化
– 仕入先や外注先とも情報をオープンに共有し、エコシステムを作る
といった現場主導の“見える化”です。
「誰が見ても同じ判断ができる」「急な担当交代、人手不足でも問題が起きない」仕組みを構築することで、アナログ体質に根ざした事故やトラブルを防ぐことができます。
業界全体でデジタル化を推進する意義
今後は電子インボイスやe-CO(電子原産地証明)、サプライチェーン全体のデジタル連携が主流になっていきます。
クラウドシステムの導入や簡易的なデータベース管理から始めることで、ヒューマンエラーも大幅に削減できます。
「うちは昔ながらのやり方だから」と尻込みせず、今だからこそ現場からのボトムアップで改革を進めることが、中小企業の“しぶとさ”と“柔軟性”を最大限に生かすコツです。
よくある失敗事例とその回避策
1. 証明書類の記載ミス
証明書類の申請時、つい部品型式や名称の表記ゆれや記載ミスが起こりがちです。
これにより通関で止められ、リードタイムやコスト増加につながるため、複数人チェック体制やテンプレート活用で防止しましょう。
2. 規制リスト更新の見逃し
年2回ほど規制リストが更新されることも多く、常に最新情報をキャッチする体制が不可欠です。
業界団体やジェトロ、商工会議所のメルマガやWebを活用するのがおすすめです。
3. サプライヤーとの確認不足
下請工場任せにすると、規制や証明面で正確な情報が把握できないケースもあります。
商社・外注先含め、どこまでを社内・外部で担保するのか、契約段階で明確にしておくことが必要です。
まとめ:中小企業の新たな地平線へ
輸出規制と原産地証明は、今や海外ビジネスにおける“パスポート”とも言える存在です。
これらを「ただ面倒な手続き」と敬遠するのではなく、「自社の品質・信用を証明する最大の武器」として活用すべき時代が到来しています。
大事なことは、担当者だけに背負わせるのではなく、現場全体で情報を共有し、アナログ体質からデジタルシフトも視野に入れて日々アップデートすること。
日本の中小企業だからこそもつ“ど根性”と“現場力”が、世界を相手に勝つための最大の強みとなるはずです。
ぜひ今日から、輸出規制・原産地証明の知識武装を進め、スムーズかつ安心なグローバル取引の道を切り拓いていきましょう。
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