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投稿日:2025年7月7日

表面処理と接着剤選定で異種材接着の耐久性を高める方法

はじめに:異種材接着の耐久性向上の重要性

製造業の現場で今、異種材同士を接着するニーズが高まっています。

省人化や多機能化、軽量化を求める声が高まる中、従来用いられてきた溶接やねじ止めだけでは対応しきれない製品設計が増えています。

特に異種材接合は、金属と樹脂、樹脂とセラミックなど、さまざまな異なる素材の長所を掛け合わせられる魅力があります。

しかし、多様な材料をしっかり接合し、その耐久性を保つことは簡単ではありません。

「部品がはがれてしまう」「経年劣化でクレームが多発した」など、現場の悩みは依然として根深いです。

今回は、製造現場の経験をもとに、異種材接着の耐久性を高めるために不可欠な表面処理と接着剤の選定ノウハウについて、実践的なポイントと業界最新動向も交えてご紹介します。

何が異種材料接合を難しくするのか

異種材料接合の難しさの本質は、「異なる物性」の壁をどうクリアするかにあります。

金属と樹脂、金属とガラス…それぞれの表面エネルギーや熱膨張係数、湿度・薬品への耐性が大きく異なります。

従来の感覚や経験則が通用しないため、「やってみたらうまくつかなかった」「思ったよりも簡単にはがれてしまう」といった声が後を絶ちません。

特に昭和世代のベテラン技術者が多い職場では「昔ながらの方法で十分」と思いがちですが、市場は確実に次のフェーズに進んでいます。

AIやロボット導入が進み、設計段階から異種接合が前提となるケースも増加。

今こそ、ラテラルシンキング的発想で、新たな接合技術やノウハウを現場へインストールする時です。

表面処理の重要性:接着の8割は「前処理」で決まる

どんなに高性能な接着剤や最新設備を導入しても、材料表面の状態が悪ければ耐久性は一気に低下します。

「接着は前処理が8割」と言われるほど、表面処理は成功のカギを握っています。

主要な表面処理方法と目的

表面処理とは、接着する材料表面の汚染物(油分、ゴミ、酸化物など)を除去し、接着剤との「なじみ」を良くするための事前作業です。

主な方法は以下の通りです。

– 脱脂:有機溶剤やアルカリ溶液で油・グリースを除去
– 研磨:サンドペーパーやバフで粗面化し、界面積を増やす
– 化学処理:酸洗い・アルカリ洗浄による酸化物除去や表面活性化
– プラズマ処理、コロナ放電:分子レベルで表面の親水性向上
– サンドブラスト:微細な凹凸を作り、機械的なアンカー効果を得る

このような前処理を実施することで、接着剤が「面」でしっかり食いつき、剥離やせん断に強くなります。

「面倒だから徹底しない」「適当に拭くだけで済ませる」現場は、クレーム予備軍です。

材料ごとの処理方法のコツ

アルミや銅など金属素材では、酸化被膜が最大の敵。

サンドペーパーやケミカル洗浄で酸化物を落とした後、即接着するのが鉄則です。

樹脂では、離型剤や添加剤の残留が接着性能を大幅に落とします。

ここは中性洗剤やアルコールで徹底的に洗浄し、樹脂ごとに適したプライマー処理を検討します。

異種材接合の場合、それぞれの材料特有の弱点にも気を払う必要があります。

例えば、金属-樹脂なら、金属側の粗面化+樹脂側のプライマー処理が必須です。

現場目線だと「手間が増える」と感じますが、結果的に歩留り向上・クレーム減で大きなコストメリットを生みます。

昭和的発想から脱却するポイント

「パーツクリーナーでふくだけで十分」「サンドペーパーは磨き残しがあってもOK」という昭和スタイルは、今後通用しなくなります。

検査基準を定め、簡単な現場教育キットをつくって処理残しをなくす。

各現場で表面処理マニュアルを整備し、誰がやっても一定レベルの精度が出る仕組みが重要です。

また、表面活性を可視化する「接触角測定機」や「表面エネルギーテスタ」など、DX時代のツール活用で品質安定を目指しましょう。

接着剤選定のプロセス:材料/用途/工程から最適解を探す

異種材接着の成否は、「接着剤選定」にも大きく依存します。

巷には多くの「万能接着剤」が存在しますが、実際には用途・材料ごとにピンポイントな選択が求められます。

接着剤の分類と特徴

– エポキシ系
 高強度で耐環境性に優れる。金属同士や複合材の接着に多用される。
– アクリル系
 取り扱いやすく、ガラス・樹脂と金属の異種接合によく使われる。
– ウレタン系
 柔軟性があり、弾性体接合や振動対策に有効。
– シリコーン系
 耐熱・耐薬品性に優れる。無機材料や難接着材にも対応。
– ホットメルト系
 工程短縮が可能。大量生産・自動化ラインに適す。

ポイントは、「耐熱性」「柔軟性」「硬化スピード」「環境耐性(湿気・薬品・紫外線)」など、最終製品の用途に合わせてスペックを見極めることです。

異種材の組み合わせと相性

材料の組み合わせによって、適合する接着剤は大きく変わります。

金属‐樹脂:エポキシ、アクリル+プライマー処理が主流
樹脂‐ガラス:UV硬化型アクリルやシリコーン系
樹脂‐樹脂:溶剤系、またはホットメルト系が多い
用途やコスト、現場の作業性(塗布、位置決め、硬化スピード)も考慮し、サプライヤーと密に協議することが重要です。

現場ノウハウ:ロバストな接着を実現するために

いくらスペックシートが優秀でも、「現場で使いものにならない」ことは少なくありません。

ここで重要なのが、小ロットの現場テストと加速劣化試験です。

数パターンの接着剤+表面処理の組み合わせを、温湿度試験機や耐薬品性テストにかけることで、リアルな性能データが得られます。

自動化ラインではディスペンサー(自動塗布装置)の選定や、初期固着特性もチェックが必要です。

「不良になってから対策」では遅い時代です。

設計段階からサプライヤー・現場と共創体制をつくり、最適条件を作り上げるのがバイヤーや工場管理者の真価だといえます。

品質管理・トレーサビリティへの取り組み

異種材接着の品質を担保するには、「工程ごとに見える化」する意識改革が必須です。

工程内管理と記録の徹底

– 接着前の表面粗度、清浄度のロット記録
– 接着剤のロットNo./硬化時間/塗布量の管理
– 接着後の引張・せん断テストデータの蓄積

こうした実績データは、トレーサビリティのみならず、工程改善・新製品展開にも活用できます。

AIやIoTでのモニタリングも、将来のクレーム予防や自動化推進に役立ちます。

不具合品のフィードバックと改善サイクル

異種材接着は「一発で正解を出す」ことが難しい分野です。

実際に市場で不具合が出れば、現場に素早くフィードバックし、工程条件・処理方法・材料選定をアップデートする迅速なPDCAが求められます。

「ミスは現場のせい」とせず、なぜ発生したかをチーム全体で振り返る社内風土が、グローバル競争時代の品質向上に直結します。

海外トレンドと今後の展望

グローバルサプライチェーンの高度化により、日本国内工場も欧米・アジアのサプライヤーとの協業が日常化しています。

欧米市場では「軽量化・環境負荷低減」を重視し、異種材接合によるマルチマテリアル化が加速。

トヨタ自動車やボーイングなども、社内専門チームを設けて材料開発~現場適用まで総合的に取り組んでいます。

サステナブル社会の流れを受け、再生プラスチックやバイオマス系材料との異種接合の研究も進んでいます。

今後はAI設計と連動した「最適接合条件の自動提案」や、DX化による品質モニタリング、カーボンフットプリント削減に資する接着技術が主流となるでしょう。

現場で実践する人に向けた提言

– 表面処理を単なるルーティンにせず、本質を理解し標準化を目指す。
– 新しい接着剤や工法には現場主体で向き合い、テスト検証を繰り返す風土づくり。
– サプライヤーやバイヤー同士の情報共有・共創体制を強化する。
– トレーサビリティや品質データの蓄積で、現場の「見える化」を推進する。

「あたりまえ」を磨き上げる現場こそが、異種材料接合技術の競争力を高める原動力です。

昭和の知恵も活かしつつ、あえて新しい地平線へチャレンジする現場の皆さんに、心からエールを送ります。

まとめ

異種材接着の耐久性を高めるためには、表面処理の見直しと、材料・用途ごとに最適な接着剤を選定することが不可欠です。

昭和から続く「前例主義」ではなく、新技術や現場ノウハウを積極的に取り入れ、社内外の連携を図ること。

失敗や不具合から学び、情報を共有しながら業界全体で技術向上を目指しましょう。

現場経験の蓄積が、製造業の未来を切り拓く大きな力になると信じています。

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