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海外商談で避けるべき“遠回しな表現”と言い換え例

目次
はじめに:製造業のグローバル化と「遠回しな表現」問題
グローバル化の波が押し寄せる中、日本の製造業もますます海外展開を強化しています。
調達購買や生産管理、品質管理といった分野では、バイヤーがサプライヤーとのやりとりで海外商談に臨む機会が増えています。
しかし、そこには日本独特の“遠回しな表現”というコミュニケーションの壁が存在します。
昭和の時代から根強く残る間接的で曖昧な表現は、時に海外のビジネスパートナーに誤解や混乱を招く原因となります。
この記事では、なぜ遠回しな表現が問題になるのか、そして具体的な言い換え例を現場目線で詳しく解説します。
なぜ“遠回しな表現”が海外商談で問題になるのか
日本流「忖度」の限界とグローバル基準
日本の製造業では「空気を読む」「婉曲表現」など、相手に配慮したやり取りが美徳とされてきました。
「可能であればご検討ください」「さしあたりご一報いただければ幸いです」などがその典型です。
これらは国内では強く根付いた慣習ですが、海外パートナー、とくに欧米やアジアの他国では「何を要求しているのか分からない」「結局YESなのかNOなのか曖昧だ」と受け止められます。
海外では「ストレートに」「結論から」伝えることがビジネスの信頼構築のスタートとされるため、日本的な表現はビジネスのスピードや質を落としかねません。
昭和から令和へ:変わる商習慣と誤解のリスク
昭和の製造現場では「同じ釜の飯を食う」仲間意識や、察しあう文化が強調されていました。
しかし、グローバルサプライチェーンの中では「交渉力」「納期管理」「品質」「コスト」…全てが数値で管理され、目に見える合意が重要です。
遠回しな表現が「NO」と言っているのか「YES」と言っているのか分からない場合、海外取引先は「信用できない」と感じたり、「後になって話が違う」と言われ契約が破談になることもあります。
製造業バイヤーがやりがちな“遠回しな表現”
よくあるフレーズと本当の意味
現場では多くのバイヤーが気遣いや控えめな態度から、次のような言い回しを使いがちです。
-「できれば〜したいと思います」= 要望だが、強く依頼しているわけではないと誤解される
-「前向きに検討させていただきます」= 乗り気か断るつもりか曖昧
-「再度ご相談させてください」= 今は決められないが、事実上断っている場合も
-「難しいかもしれません」= ほぼNOだがストレートに言わず、誤解される
これらの表現は「はっきり断れない」「角を立てたくない」という心理で使いがちですが、海外パートナーには意図が伝わりません。
“昭和流”が通じない実例
例えば、ドイツの部品サプライヤーとの商談で「今回の価格を再度ご検討いただけますか」と伝えたところ、相手は「価格交渉は成立を前提にしている」と捉え、追加見積もりや条件変更に入ってきた、というケース。
日本流の控えめなオファーが、海外では強い要求や合意事項と受け取られるのです。
逆に「できれば納期を早めてほしい」と依頼した場合も、「できれば」=「どちらでも良い」という認識で対応され、結果として本当に納期短縮してほしい意図が伝わらなかった、という失敗例も多くあります。
“遠回しな表現”を避けるための3原則
1. 「何を求めているのか」を明確に伝える
相手に配慮したい気持ちは大切ですが、グローバル商談では「あなたの要望は何か」「どうしてほしいのか」を明確かつシンプルに伝えることが最も重要です。
特に価格、納期、品質などの交渉ポイントでは、具体的な数値やアクションを盛り込みます。
2. ノー(NO)ははっきり伝える
日本の商談文化ではNOをはっきり伝えることを避けますが、海外ではNOを言わないと先へ進めません。
断る場合や受け入れできない条件には、「I’m afraid we cannot accept your request due to〜(〜の理由で、今回はご希望には沿えません)」など、明確に断る意思表示が求められます。
3. 合意事項は「書面で」「シンプルに」残す
お互いの解釈違いを防ぐため、合意事項は必ず書面で、できればビジネス英語の定型表現を使い簡潔にまとめることが必須です。
曖昧な言葉や日本特有の慣用句は避け、誤解の余地がない状態にしておくことが大切です。
現場で役立つ「言い換え例」10選
実践的な言い換え&シチュエーション
ここでは、実際の商談でよく使われるフレーズの言い換え例を紹介します。
海外サプライヤーやバイヤーとやりとりする際の参考にしてください。
- 「可能であればご提案いただけますか?」
→「Please make a proposal by [date].」
([日付]までに提案書をご提出ください) - 「前向きに検討させていただきます」
→「We will review your proposal internally and get back to you by [date].」
(社内で検討し、[日付]までにご連絡します) - 「再度ご相談させてください」
→「Currently, we are not able to proceed. We will contact you if the requirements change in the future.」
(現時点では進められません。今後要件が変更した際にご連絡します) - 「難しいかもしれません」
→「Unfortunately, that is not feasible under current conditions.」
(残念ですが、現状では対応できません) - 「ご一考いただければ幸いです」
→「We would appreciate your consideration. Please let us know your decision by [date].」
(ご検討いただき、[日付]までにご判断をお知らせください) - 「念のためご連絡します」
→「This is a reminder regarding our previous discussion.」
(前回の打ち合わせに関するリマインダーです) - 「できるかぎり善処します」
→「We will do our best to accommodate your request, but cannot guarantee at this moment.」
(出来る限り対応に努めますが、現時点ではお約束できません) - 「調整が必要になります」
→「We need to make adjustments. Please propose an alternative schedule/condition.」
(調整が必要です。代替日程・条件をご提案ください) - 「社内で検討します」
→「We will discuss this internally and revert with a decision by [date].」
(社内で協議し、[日付]までに決定事項をお知らせします) - 「ご配慮いただければ」
→「We kindly ask for your cooperation in this matter.」
(本件についてご協力をお願いします)
バイヤー・サプライヤーが身につけるべき“グローバル商談力”
現場と管理職、両方の視点から
管理職として多くの商談を見てきた経験から言えることは、グローバルな現場では「遠回しな表現=誠実」ではなく、「ストレートな主張=誠実」と捉えられる現実です。
調達購買担当だけでなく、サプライヤー側もバイヤーの意図を正確に読み取るため、曖昧な表現を避けて真意を確認する姿勢が重要です。
また、翻訳ツール任せにせず、日常的にビジネス英語や商談フレーズを学び、日本語の表現をどうストレートに置き換えるか習得することも、これからの製造業で求められるスキルです。
昭和的価値観の「アップデート」は組織全体の課題
昭和流の“和を重んじる”商談文化はチームワークや長期的な信頼形成に強みがあります。
しかし、国際競争の激化、サプライチェーンの複雑化、さらにはDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の時代には、「タイムリーな意思決定」「グローバル基準の交渉力」が不可欠です。
経営層から現場まで、日本語独特の曖昧さや遠慮を組織で見直し、海外と対等に渡り合える商談スキルの習得が、製造業の未来を支えます。
まとめ:“遠回しな表現”から抜け出し、新しい製造業をつくろう
日本の製造業には、長い年月をかけて築かれた現場文化、気遣いや和を大切にする美点があります。
しかし、グローバル商談では「曖昧な表現」は誤解や信頼低下のリスクとなり、“本当はどうしたいのか”を伝えきれない弱点にもなりかねません。
バイヤーもサプライヤーも、明確なコミュニケーションをこころがけ、時には「日本人らしさ」を超えたストレートな交渉の場づくりにチャレンジしましょう。
この記事が、現場で苦労する皆さんや、これからグローバル市場に挑む製造業従事者の一助となれば幸いです。
遠回しな表現をアップデートし、新しい“ものづくりコミュニケーション”の時代へ踏み出しましょう。
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