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軸受部材の潤滑不良が異音を招く理由

目次
はじめに
軸受部材において潤滑は、その機能を最大限に発揮するための極めて重要な要素です。
しかし実際の製造現場では潤滑不良が原因で異音が発生し、不良品や設備停止といったトラブルに直結するケースが珍しくありません。
この記事では、軸受部材の潤滑不良がなぜ異音を招くのか、そのメカニズムや現場での実例、さらに昭和から続くアナログ的な管理体制と最新トレンドの交錯について、経験に基づきながら分かりやすく解説します。
バイヤー、サプライヤー双方にとっての本質的な課題や解決策にも言及し、製造業をより強くしなやかな体質に変えるヒントを提示していきます。
軸受部材とは何か―現場での役割の再確認
軸受部材の構造と目的
軸受部材は、回転体や移動体を支え、摩擦抵抗を低減するための機械部品です。
その典型は「ベアリング」であり、産業機械から自動車、家電、医療機器まで、さまざまな分野で生活や産業を支えています。
ベアリングの主な役割は、回転軸をしっかりと支持しながらスムーズに可動させること。
そのために金属球(玉)やローラーが内輪・外輪の溝の間で回転し、回転運動を滑らかに行わせます。
潤滑の基本的な役割
軸受部材の潤滑は、摩擦や摩耗の抑制、発熱防止、錆腐食防止といった役目を持っています。
潤滑状態が正常であれば、摩擦が大きく低減し、軸受の寿命が大幅に延長します。
逆に潤滑が不十分だと、金属同士が直接接触し続け、異音や焼き付き・損傷を短期間で招きます。
潤滑不良が異音を生むメカニズム
メーカー現場でよくある典型ケース
私自身、長年の現場経験で数多く遭遇したのは「グリース不足」や「潤滑油の劣化」「グリースの偏在」といった潤滑不良パターンです。
とくに組立工程やメンテナンス作業で見落とされがちなのが、この潤滑剤の塗布量や再注入のタイミング。
これが不十分だと、軸受内部で金属球とレース間に直接的な接触が起き、ガリガリ・ゴロゴロといった異音が生じます。
この異音こそが、異常摩耗や損傷の“警告音”だと言えます。
なぜ異音になるのか?科学的な視点
本来、ベアリングは内部の金属玉やレースの表面に潤滑膜が形成されていて、摩擦が極力小さく済むよう設計されています。
しかし、潤滑が途切れると、この油膜が瞬時に消滅します。
これにより、金属表面の微細な凹凸同士が剥き出しでぶつかるようになり、これが振動や波動となって「異音」として聞こえるのです。
また、潤滑不足のまま運転を続けると、摩耗粉(摩耗した金属粒子)や異物が軸受内部に蓄積され、さらなる異音や温度上昇、それが元で部品破損や設備停止につながる悪循環が発生します。
アナログ管理が陥りやすい潤滑不良の原因
チェックシート&目視依存体制の限界
昭和の時代から、工場現場では「定期点検」「グリースアップは○ヶ月ごと」といった一律的な維持管理手法が主流でした。
多くの工場で、チェックシートへの記入や、ベテラン作業者の経験値・勘に頼った潤滑管理が今日でも残されています。
もちろん現場スタッフの技術は貴重ですが、設備や稼働条件が多様化するなか、一律管理や目視確認だけでは潤滑不良の初期兆候をつかみきれないことが多々あります。
結果として、異音が発生し、突発的なトラブルとなって初めて問題が表面化することになるのです。
ヒューマンエラー、作業負荷、情報伝達ミス
現場でよく見かけるのは、「誰がどこまで潤滑作業をしたのか記録が曖昧」「忙しさのあまり潤滑作業が後回し」「人の入れ替わりで潤滑作業の重要性が共有されていない」といったヒューマンエラーや情報伝達ミスです。
こうした“昭和的”運用は、安定稼働を求められる現代のものづくり現場には大きな足かせとなりつつあります。
サプライヤー側から見る潤滑管理の課題
バイヤーの視点―コストだけでは見えてこない品質リスク
バイヤー(調達購買担当者)は、軸受をはじめとした部材の調達コストを抑えつつ、高い品質や安定納入を追求します。
しかし潤滑不良がもたらすトラブルは、単純な価格比較だけでは浮かび上がってきません。
例えば、「同じ型番だが、一方はグリース品質や塗布量が安定」「もう一方は品質や管理体制が不明確」といった事例は珍しくありません。
短期的なコストダウンを重視しすぎて潤滑管理に手を抜いた部材を選んでしまうと、トータルでは高額な損失につながります。
取引時の品質監査や現場ヒアリング、サンプル評価など、実際の潤滑管理体制までを見極める目を養うことが、バイヤーとしての責任となります。
サプライヤーの視点―管理体制強化とPRの必要性
サプライヤーにとっては、単に「軸受を納入する」だけでなく、「安定した潤滑管理体制」を持っていること自体が大きなアピールポイントとなります。
顧客に対して、自社工場での潤滑グリースの管理基準や、出荷前検査の厳格性、実績数値の提示ができるサプライヤーほど信用されやすいものです。
逆に「コスト優先」「グリースは汎用品でよい」といった姿勢でいると、重大なクレームや取引停止のリスクも高まります。
現場目線で「なぜ潤滑不良が起きるのか」「どこにどんな管理ポイントがあるのか」を明確にし、それを客先と積極的に共有することがサプライヤーの大きな差別化要素となります。
最新トレンドで異音・潤滑不良を未然に防ぐには
IoT・センサによるリアルタイム監視の進化
近年は、軸受部材の摩耗状態や温度・振動・音(ノイズ)などをリアルタイムで検知し警告を出すIoTセンサやAI診断技術の導入が進みつつあります。
これにより、潤滑不良初期段階から「いつ・どこで・どの程度の異音がしているか」をデータで把握し、計画的なメンテナンスや予防措置に活かすことができます。
既に自動車や半導体生産設備、工作機械メーカーでは導入が進んでいて、「潤滑不良由来の異音トラブルゼロ」を目指す取り組みが拡大しています。
潤滑剤の高性能化と定量塗布技術の進化
潤滑剤自体も進化しており、温度変化や荷重変動にも対応できる高耐久グリースや、自動給脂装置との組み合わせによる定量・自動塗布システムが採用されています。
これまでベテラン作業員の勘や目分量に頼っていた塗布作業が、自動で確実・均一に管理できる体制へのシフトが進んでいます。
現場でできる! 異音と潤滑不良の早期発見・再発防止策
日常点検とデータ記録の習慣化
現場担当者が毎日の点検で「異音」や「温度上昇」「油漏れ」「グリースの変色」などを見逃さない習慣が重要です。
さらに点検結果は“ノートやシートへの手書きから、デジタルデータへの移行”を意識しましょう。
異音発生時の作動条件、時間帯、メンテ履歴などを蓄積し、兆候のパターンを早期に把握できる体制を作るのが理想です。
現場と技術部門・仕入先の連携強化
潤滑不良/異音事案が発生した場合、現場だけで対応を閉じず、必ず技術部門や仕入先サプライヤーと情報を共有しましょう。
どのような工程でどんな潤滑不備があったか、納入部材側の管理体制に弱点がないか、双方でチェックリストを作成し体系的に対策を進めることで、同じトラブルの再発を防げます。
まとめ―“聴く力”と“管理力”が未来のものづくりを変える
製造現場で軸受部材に異音が生じたとき、それは多くの場合「潤滑不良」という根本原因から派生しています。
異音はそのまま現場の“危機のサイン”であり、速やかな対応が求められます。
昭和的なアナログ管理の良い面・悪い面を再点検しつつ、IoTや高性能潤滑剤の技術革新も活かしながら、現場・設計・バイヤー・サプライヤーが一体となって管理体制の高度化に取り組むことが今後の課題です。
異音と潤滑不良は「よくあるトラブル」ではなく、「未来の製造品質を底上げするチャンス」と捉えてください。
“現場で異音を聴き取る力”と、“徹底した管理・共有力”の両立こそが、製造業の真の競争力につながると確信しています。
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