- お役立ち記事
- 異物におけるIR分析およびスペクトル解析技術と原因究明法とそのノウハウ
月間83,046名の
製造業ご担当者様が閲覧しています*
*2025年5月31日現在のGoogle Analyticsのデータより

異物におけるIR分析およびスペクトル解析技術と原因究明法とそのノウハウ

目次
はじめに:製造業における異物問題の重要性
製造業の現場では、「異物混入」は重大なトラブル要因の一つです。
特に食品、医薬品、精密機器、自動車部品などクリーンな製品品質が求められる業界においては、異物混入は顧客信頼の喪失や大規模なリコールへ直結する場合もあります。
現代の日本製造業は、高度な自動化や作業標準化が進められている一方、現場レベルでは未だに「異物混入0」は難しい課題です。
また、サプライチェーンの複雑化やグローバル化が進んだことで、異物原因の特定や対策が年々難しくなっています。
このような状況を打破するため、迅速かつ正確に異物の正体や発生源を解析する技術が求められています。
その中でも「IR分析(赤外分光分析)」および「スペクトル解析」は、異物解析のスタンダードになりつつあります。
本記事では、IR分析およびスペクトル解析の技術概要から、実際の現場トラブル事例を交えながら原因究明のノウハウまでを、現場目線で解説します。
IR分析・スペクトル解析とは何か?その概要と現場での役割
IR分析(赤外分光分析)の基礎
IR分析とは、検体に赤外線を照射し、その波長ごとの吸収特性(スペクトル)を測定して物質の化学構造を推定する技術です。
主に有機化合物の官能基や結合状態を特定することができ、「この物質は何でできている?」を調べたいケースに強みを発揮します。
製造工場では、例えば次のような異物分析にIR分析が用いられています。
– 製品中に混入した黒色の粒子
– 成形品表面に付着した白い粉末
– 異常臭や不良外観部位
とくに、プラスチック樹脂、ゴム、有機フィルム、紙、塗料カスなどはIR分析との相性が抜群です。
スペクトル解析の流れ
スペクトル解析では、まず得られたスペクトルカーブを既知物質のデータベースと照合し、物質の同定を試みます。
ピークの位置やその強度パターンから、「ポリプロピレン(PP)」や「ポリエチレンテレフタレート(PET)」などの樹脂名、塗料・接着剤の主要成分、油分由来か有機ゴミか、など大きな分類が可能です。
現場ではこの一次解析をもとに、以下のような判断軸に役立てています。
– 混入物が工程内由来か、外部サプライヤー由来か
– ロット内で他品にもリスクが波及していないか
– 混入原因特定のため、サンプルの経時変化や周辺条件も考慮する
製造業現場での異物トラブル発生事例とアナログ業界における現実
典型的な異物混入トラブルの現場例
長年、工場現場を見てきた経験から、実際によく発生している異物トラブルをご紹介します。
1. 成形工程における黒点異物
2. 包装ラインでの透明フィルム付着
3. 冷間鍛造部品に混入した繊維片
4. 塗装工程での粉状異物(クリーニング不良)
これら多くのケースで、異物サンプルはごく微量かつ「未知物質」です。
外見や手触りでの判断では誤った対策に繋がりやすく、「見た目が似ているから同じ」とする昭和的アプローチは今や失敗のもとです。
アナログ業界の暗黙知とその課題
長らく職人技で異物解析や対策をしてきた製造業は、未だに「勘と経験」に頼る傾向が強く残っています。
ベテランの目利きは貴重な一方で、その判断根拠を数値化・データ化しなければ再発リスクの管理や水平展開が困難です。
また、異物混入を「現場の恥」とみなして隠蔽しがちな風土が根付いた現場もあり、
– 根本原因究明の遅れ
– 問題のすり替えや、曖昧な対策で終わる
という悪循環が今でも起きています。
このようなアナログ文化に対し、IR分析・スペクトル解析は「事実に基づいた原因究明」の新たな地平線を切り開くツールとなります。
IR分析・スペクトル解析技術の具体的なプロセスとポイント
サンプリングと前処理の勘どころ
異物解析の最初の関門は、適切なサンプリングと前処理です。
異物が微小である場合、ピンセットや顕微鏡下で丁寧にサンプルを採取し、付着している異物以外の不要なコンタミ(例:油分、埃など)を最低限に抑える工夫が必要です。
特にフィルムや繊維状物質は、サンプルが小さいとスペクトルが取りにくくなります。
現場と分析室が密に連携し、「分析しやすい形」で異物を渡すことも、成功要因の一つです。
データベース検索と比較による物質同定
赤外吸収スペクトルが出たら、それを製造業向けの「スペクトルライブラリ」と比較して解析を行います。
ここで重要なのは、
– 分析担当者に現場の物性知識(例:主要原料、潤滑油種類、工程使用薬剤など)があること
– 一致率の高い候補物質だけでなく、「似ているが僅かに異なる物質」も候補として考えること
異物の60〜80%程度はデータベース照合ですぐに大枠の種類まで分かりますが、残り20〜40%は新規成分や複合汚染、工程未登録の材料などで特定が難航します。
この場合は、IR以外の分析手法(例:SEM-EDX、GC-MS、ラマン分光など)との組み合わせや、現場側からの「どの工程で何が起こり得るか?」という情報提供が重要です。
異物の経路特定と現場対策への落とし込み
分析の結果、「何の異物か?」だけで満足してはいけません。
重要なのは「なぜそこに、その異物が入ったのか?」という混入経路の仮説立案と検証です。
– 分析結果から、サプライヤー起因か社内工程起因かを切り分ける
– 混入の時間帯やライン停止履歴、使用設備の点検記録を照合
– 作業員着衣や周辺清掃記録、同ロット内の他の類似不具合の有無もチェック
現場経験則と分析結果の「両輪」を使いこなすことで、再発防止に繋がる施策が具体化されます。
バイヤー・サプライヤー視点で知っておくべき異物解析のトレンド
バイヤーが持つリスク管理意識
大手メーカーのバイヤー担当者は、「異物解析結果=仕入先評価」の重要材料とみなしています。
顧客からクレームが出た場合、IR分析などの客観的データをもとに迅速にサプライヤー・自社内の責任分界を明らかにし、「なぜ起きたか、二度と繰り返さないか」を求めてきます。
サプライヤー側では、このようなバイヤーの品質要求水準や異物解析ノウハウを理解しておくことが、長期取引や追加受注獲得のカギとなります。
サプライヤーが備えるべき異物トラブル対応力
近年、「サプライヤー自身がIR分析や解析ノウハウを内製化する」動きも加速しています。
バイヤーに言われる前に異物原因を特定し、証拠付きで対策案を提案できれば、信頼性・提案力の観点で大きな差別化になります。
また、バイヤー・サプライヤー間でスペクトル解析結果のデータ共有や、共同現場監査に発展する例も増えており、“異物対策のプロセスまでを商談価値化”できる時代が到来しています。
実践的なノウハウ:異物解析の深掘りと分析精度向上のポイント
トラブル再発を防ぐ組織的アプローチ
製造現場では、異物混入の再発リスクをゼロに近づけるため、
– 定期的な異物混入マップ(現場レイアウト・工程ごとに起きやすい異物の種類と対策履歴を視覚化)
– 異物トラブル発生時の「応急→恒久」対策フロー
– IR分析の継続的なデータベース拡充と、技能伝承の仕組化
といったラテラル思考ベースの改善が必要です。
現場任せの“属人化”から脱却し、「誰が担当しても一定水準の異物解析と原因特定ができる仕組み」を目指しましょう。
異物の多重分析とトラブル“見える化”の新潮流
高度な現場では、1つの異物サンプルに対してIR分析+SEM-EDX(元素分析)や、ラマン分光法など複数手法による解析結果を組み合わせています。
また、解析事例を蓄積し、類似異物の発生頻度グラフや混入トレンドを“見える化”することで、先手の対策や投資判断へ繋げる施策も活発です。
データと現場情報を横断的に掛け合わせ、真因へアプローチしていく力が今後ますます求められます。
まとめ:現場知と先端解析の融合で日本のモノづくりを進化させる
製造業における異物混入対策は、単に分析機器任せではなく「現場知」と「先端解析技術」との融合が不可欠です。
アナログな業界文化も活かしつつ、客観データに基づいた対策展開やバイヤー・サプライヤー連携を進めることで、日本のものづくりは更なる進化を遂げます。
IR分析・スペクトル解析は、困難な異物問題の解決だけでなく、製造プロセス全体を見直すための「気づき」としても有用です。
今後も現場目線を大切に、製造業の知の地平線を開拓していくことが、私たち全員の使命と言えるでしょう。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
ユーザー登録
受発注業務の効率化だけでなく、システムを導入することで、コスト削減や製品・資材のステータス可視化のほか、属人化していた受発注情報の共有化による内部不正防止や統制にも役立ちます。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)