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CAEの効果的な活用法と設計実務に活かすためのポイント

目次
はじめに―CAEの重要性と導入の現実
近年、ものづくりの現場ではデジタル化や自動化など、急速な技術革新が進んでいます。
そのなかでCAD(設計支援)と並び、設計品質や効率を大きく左右するのがCAE(Computer Aided Engineering)です。
ところが、昭和時代のアナログな習慣や現場主義が今も根強く残り、理論と現実のギャップに悩む企業も少なくありません。
「ソフトは入れてみたが使いこなせていない」「現場と設計で温度差がある」「解析結果と実物の差異に戸惑う」といった声は、決して珍しくない実情です。
本記事では、大手製造業での現場経験を踏まえ、CAEを単なる道具から“設計品質向上の武器”へと昇華させる実践的活用法と、CAEを使う際に意識したい現場目線のポイントを解説します。
CAEとは何か?製造業の現場で期待される役割
CAEの基礎と導入の広がり
CAEは直訳すると「コンピュータ支援工学」ですが、主に製品設計段階でコンピュータを用いて構造解析、流体解析、熱解析、振動解析などのシミュレーションを行う技術群を指します。
かつては自動車や航空宇宙など高度な開発現場に限定されていましたが、現在では家電・産業機器・半導体・食品製造装置まで多岐にわたる業種で活用されています。
現場で期待されるCAEの役割
CAEの導入で期待される主な効果は次の3点です。
– 試作・量産までの期間短縮とコスト削減
– 不具合・手戻りの事前防止、品質向上
– 仕様検討やアイデア創出での自由度向上
つまりCAEは「早く・安く・確実に」製品を開発するための最強ツールなのですが、机上の空論で終わるケースも少なくありません。
その理由は、システム導入だけで変革が起きるわけではなく、“現場目線”で運用・定着させる地道な工夫が必要だからです。
なぜCAEの活用が現場で進みにくいか
アナログ業界に根強い“経験への依存”
多くのベテラン技術者が「図面と現物の差」を肌身で体感しています。
そのため「シミュレーションの数字より、現場での五感や経験を優先したい」という心理が根強いのも事実です。
具体的には以下のような現象がみられます。
– 解析値と実測値の差が説明できないと信用されない
– ノウハウの伝承や属人化に偏りやすい
– “ぶっつけ本番”や手戻りのコストを許容しがち
課題抽出:マンパワーとスキル面の制約
設計部門においても「CAE担当が1人しかおらずブラックボックス化」「忙しさからきちんと結果の妥当性検証ができない」といった悩みが顕在化しています。
リソース不足・教育不足・運用ルールの欠如、そして意思決定層の「とりあえず導入」的発想も課題です。
現場で成果を出すためのCAE活用ステップ
1. 目的と活用範囲の“明確化”
最初に重要なのは「何のためにCAEを使うのか」を明確にすることです。
構造強度の不安払拭か、流体ノイズの低減か、工程STEP短縮か、想定する効果や成果指標は違います。
関連部署とゴールの共通認識を持ち、「現物/解析値/測定データ」の橋渡し役としてのスタンスを保ちましょう。
2. シンプルから始め、確実な“バリデーション”を繰り返す
いきなり複雑な条件やハイエンドソフトに頼るのではなく、まずはシンプルなモデルから始めて「現物との答え合わせ」を繰り返します。
実験や測定と解析結果を比較し、差異を分析することでノウハウが蓄積されます。
たとえ解析値と実測値に差があっても、“差が生じるメカニズム”を言語化、共有化するプロセスそのものが設計品質を高める第一歩となります。
3. “設計フェーズ”に組み込むことで真価を発揮
CAEが設計の終盤、いわば「答え合わせ」や「エラー探し」的な役割に留まると、コスト削減にもスピードアップにも直結しません。
構想段階や仕様検討フェーズからCAEの知見を盛り込むことで、「できない理由」ではなく「どう作り込めばスペックを最短で達成できるか」という思考転換が生まれます。
4. 属人化から“チーム共有化”へ
CAEを運用する技術者が一人だけでは、退職や異動とともにノウハウが失われやすいリスクがあります。
解析条件、モデリング工夫、過去案件のナレッジなど、チーム内で標準化しドキュメント化しましょう。
また「解析担当者=彩り役」ではなく、設計担当・生産技術担当・品質保証担当とのクロスファンクショナルな議論を推進することが肝要です。
設計実務に活かすための“現場目線”のポイント
本質は“良い議論”を生むための道具
CAE結果を正解や正義と捉えるのではなく、現場・設計者・生産技術者の多様な視点と議論の入り口にしましょう。
「この部分のひずみが高いけど、実際の加工プロセスではどうなのか?」
「流体解析ではこの条件がベストだが、現場での温度変動要素は十分再現できているか?」
こうした問いが、実用性の高い設計アイデアにつながります。
現物との“継続的すり合わせ”を徹底する
解析を一度行って終わりではなく、実現場でのフィードバックによる修正ループを繰り返しましょう。
試作ラインや量産現場で得たデータをCAEモデルへ反映し、精度や適応範囲を徐々に広げていく運用が大切です。
「ダメ出し」ではなく「強み活用」の発想を持つ
解析結果が実物と異なる時「ダメ」「使えない」と切り捨てるのではなく、「どの範囲で再現性が高いか」「どんな時に有効か」を明確にし、ルール化します。
得意レンジ・不得意レンジの切り分けが、設計の現場力を底上げします。
昭和アナログ思考が根付く業界の“裏表”を活かす知恵
経験とデジタルの“協調”による効果倍増
「昔は〇〇だった」というベテランの知見も、実はCAEパラメータの設定に活きる貴重な資産です。
たとえば「鍛造品の経験則的な割れやすさ」や「板金曲げの限界値」は、実験値が乏しい新素材や新工法のシミュレーション時に、補正値や安全率の設定指針となります。
一方、若手技術者や外部バイヤーが現場経験を持たない場合でも、“CAEBasedなモノの見方”が定着すれば「経験値の属人化」によるリスクや非効率を緩和できます。
外部バイヤー視点:調達先選定や交渉への応用
調達購買担当者(バイヤー)は、サプライヤー選定やコスト交渉でCAE解析を積極活用できます。
たとえば「このサプライヤーは、CAEで最適値設計~現場での再現具合までPDCAを明確に回せているか?」という観点で評価することで、表面的なカタログや見積金額だけに頼らない、技術力や改善スピードの裏付けが可能です。
逆に、サプライヤー側は「当社はCAE導入による工程短縮で品質安定とリードタイム短縮を実現しています」といったアピールポイントに繋げやすくなります。
製造業における持続的なCAE活用体制のつくり方
教育・OJT型ナレッジ共有のすすめ
解析ソフトの使い方だけでなく、“どのような状況・目的でどこまで活かせるか”という現場ナレッジの伝承が重要です。
社内セミナー・ハンズオン・現場実証などを通じ、若手・中堅・ベテランが垣根なく課題解決のディスカッションをできる土壌を作りましょう。
“失敗データ”こそ活きる資産
「この条件では予測が外れた」「この工法では相関が低い」など、“失敗”や“曖昧な点”も正直に残すことで、現場でぶつかるリアルな壁に次なる世代も対応しやすくなります。
まとめ―CAEの進化と現場力で未来を切り拓く
CAEは製造業におけるデジタル武装化の要です。
しかし、最新技術が設計現場の現実課題と噛み合って初めて、真の価値が生まれます。
昭和流の“現場主義”と令和流の“デジタルシミュレーション”は、決して対立するものではなく、「実体験」と「仮想検証」の相乗効果であるべきです。
実践現場での答え合わせ、知識や失敗も含めたナレッジ共有、部門や世代を超えた議論。
この三位一体でCAEを味方につけ、「設計品質」「開発スピード」「現場力」すべてを底上げする製造現場を、共に実現していきたいと考えます。
読者の皆さん一人ひとりが、明日からのモノづくり現場で“自社流のCAE活用文化”を根付かせ、日本のものづくりの未来をリードしていくことを心から願っています。
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