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投稿日:2025年5月20日

新しい飲料容器の共同開発と市場導入戦略

はじめに ― 製造現場から考える飲料容器開発の最前線

飲料業界は日々進化していますが、中でも容器の開発は市場の競争力や企業ブランドに直結する重要な要素です。
新しい飲料容器の共同開発に関しては、単なるデザイン案や素材選定だけでなく、調達、購買、生産管理、品質管理などの現場からの実践的なアプローチが極めて重要です。

この記事では、20年以上大手製造業に携わった現場目線から、新しい飲料容器の共同開発と市場導入戦略について深く掘り下げていきます。

昭和のアナログな慣習に根ざした日本の製造業が、どのようにして最新の市場ニーズへ柔軟に対応し、ラテラルシンキング(水平思考)によって新しいビジネスチャンスを拓くのか。
その具体策を、バイヤー志望者とサプライヤー、現場担当者の方々に向けてお伝えします。

飲料容器共同開発の現場を俯瞰する

なぜ共同開発が求められるのか

従来のモノづくりは、ブランドオーナーが仕様を定め、それに基づいてサプライヤーが生産するという分業体制が一般的でした。
しかし、市場ニーズが多様化し、サステナビリティや機能性が問われる現代では、従来の「一社主導型」ではなく、企画段階からバイヤー(調達購買)とサプライヤー、時には顧客や流通業者までを巻き込んだ「共同開発」が主流となりつつあります。

現場で働く皆さんはご存知かもしれませんが、こうした共同開発には以下のようなメリットがあります。

・最新技術や素材、調達ルートの情報をメーカー同士が持ち寄り、相乗効果が生じる
・試作・生産初期段階で想定される課題の洗い出しが早期にできる
・責任区分を明確にしやすく、万一の品質トラブルにも迅速に連携対応ができる

このように、現場の声が意思決定にダイレクトに反映されやすくなることこそが大きな強みです。

最初の一歩は「共通目的」の明確化から

とはいえ、単に共同開発と言っても意思疎通ができていないとプロジェクトは迷走します。
私が現場で重視したのは、必ず全関係者が集まるキックオフミーティングで「この容器を市場に導入する目的」を徹底的に洗い出し、共通認識を持つことです。

なぜその形なのか、どんな顧客体験を提供したいのか、どんな素材で社会的価値を出すのか、コスト目標やリードタイムはどうなるのか。
これらを全員が腹落ちするまで議論し、紙に落とし込みます。

このプロセスは一見非効率にも見えますが、これこそが「昭和型の縦割り構造」とは決定的に異なる現代型共同開発の出発点です。

製造業の視点で考える飲料容器開発の実務ポイント

現場のノウハウを持ち寄る「逆T字型開発」

従来の「トップダウン」だけでなく、工場現場・購買・品質保証・販売・マーケティングといった各部署の専門知が横串で連動する体制が今や求められます。
これを私は「逆T字型開発」と呼んでいます。

例えば、容器の軽量化を目指す場合でも、材料メーカーの知見、成形機生産技術の限界点、流通工程での破損リスク、新しい消費者価値、コストインパクトまで、多角的な目線が必要です。
昭和の現場では「一部署だけが分かっていればいい」という風潮が強く残っていますが、これを“水平展開”し、全体最適を目指しましょう。

購買・バイヤーの本質的な役割とは?

共同開発で真のバイヤー力が問われるのは「全体調和」と「リスク最小化」です。
サプライヤー目線では、バイヤーが価格交渉や発注窓口としてしか見られがちですが、実際の現場では下記のような仕事が重要です。

・素材・部品の共通化や標準化によるコスト削減の仕組みづくり
・グローバルサプライチェーンの選定、突発リスク(輸送遅延や原材料高騰など)の管理
・廃棄物・環境負荷低減のための調達基準設定

これらを“支出管理”としてだけでなく“全体のものづくり戦略の一部”として推進できるバイヤーが、次世代で求められる存在です。

品質・生産可用性を「市場要求」と並列で捉える

最新の素材や特殊な形状は競争優位となる半面、量産現場での安定供給や歩留まり維持が難しくなるのも事実です。

私は「流通テスト」「疑似量産」で容器がどの程度耐久性を発揮するか、ラベル・印刷・包装・充填を一貫検証するステップを必ず経ることを推奨します。

また、市場から「エコ」や「軽量」「プレミアム感」など多様な要求が来ますが、製造現場の実現可能性と必ずセットで考えることが、ムダな試作コストや不良在庫リスクを減らす鍵となります。

アナログ慣習とどう向き合うか―現場のリアル

古き良き「現場の職人技」とデジタル化の融合

日本の工場ではいまだに紙の帳票や手作業の検査が根強く残り、「昔ながら」の手法にこだわる現場は多いです。
しかし、容器の共同開発や新製品量産テストでは工程管理のデジタル化やIoTデバイス活用が急務です。

私自身も当初は「新しいシステムが止まったら全工程が止まるのでは」と危惧しましたが、現実には“デジタル”と“職人スキル”の長所取りが有効でした。
例えば、検査工程の一部をAIビジョンに移しつつ、現場のベテランが最終チェックを行う、といったハイブリッド体制が現場の納得感と生産効率の両立を生みます。

根強い「忖度文化」とコミュニケーション設計

昭和に培われた“空気を読む”文化は、失敗や問題報告の遅れを招き、プロジェクト推進の足かせにもなります。

共同開発で本音の議論を促すためには、トップマネージャーやファシリテーターの「言いにくいことを言いやすくする場づくり」が不可欠です。
ヒアリングシートや匿名意見BOX、立場を越えて議論できるワークショップ型ミーティングなどが現場浸透に役立ちました。

成功事例からひもとく、差別化&市場導入戦略

実例1:サスティナブルPETボトルの共同開発

某清涼飲料ブランドはサプライヤーや材料メーカー、デザイン会社を巻き込んで、100%リサイクルPETボトルを開発しました。
本プロジェクトで重視されたのは、「生産現場で本当に安定供給できるか」という点です。

パートナー各社が週次で現場の課題共有を続け、小さな不良や製造機トラブルも即時デジタルで共有され、結果的に大手流通販路でのトライアル導入が成功しました。
このような「現場起点の連携」が、インパクトある商品展開を可能にしています。

実例2:高級志向アルミ缶の市場導入成功

もう一つの成功例は、高付加価値アルミ缶容器の共同開発です。

企画段階から外資系バイヤーや消費者モニター、デザイナーまでをプロジェクトに巻き込み、製造現場では通常の缶製造から大幅な成形条件変更が必要とされました。
現場メンバーとサプライヤーが「なぜ今この形なのか」「成形トラブル時のバックアップ策」を徹底議論し、市場投入後も定期フォローで「販路別不良傾向」を解析、数カ月で国内外大手ブランドとの販路拡大へとつなげたのです。

まとめ ― 令和時代の飲料容器共同開発に求められること

現場目線の新しい飲料容器の共同開発は、「水平思考」と「現場参画」の掛け合わせで真の価値を創出します。
意思決定の早さや多様な関係者の巻き込み、デジタルと職人技の融合、そして市場導入後の連携改善サイクルが、これからの成功要件となります。

サプライヤーの方は、バイヤーが現場にどれほど配慮しているかに気付き、能動的な提案力が差別化につながります。
バイヤー志望の方は“全体調和”を担い、昭和の慣習をうまく乗り越えたファシリテーション力を発揮しましょう。

ものづくり現場の知恵を、今こそ業界横断で社会に還元するときです。
今日から皆さんの現場に「次の一歩」の火を灯してください。

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