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機械設計業務を外注する際の企業選定ポイントとアプローチ方法

目次
はじめに
製造業の現場は、近年の急激なグローバル競争や人材不足、技術の多様化など、かつてない変革期に突入しています。
特に機械設計においては、業務負荷の平準化やコア業務への集中を目的に「外注」を活用する企業が増加しています。
しかし一方で、最適な外注先を見極める難しさや、プロジェクト失敗のリスクも同時に孕んでいます。
本記事では、製造業の第一線で長年培ってきた現場目線から、機械設計業務を外注する際の企業選定ポイントと、実践的なアプローチ方法を徹底解説します。
なぜ今、機械設計の外注が重要なのか
人手不足と社内リソースの限界
多くの製造業企業が深刻な技術者不足に直面しています。
若手の設計者がなかなか育たず、ベテラン技術者も定年を迎えるなど、専門知識の継承と業務遂行の両立が難しくなってきました。
このため、ピーク時の業務負荷を外部リソースでカバーしたり、生産量や案件規模が変動する中でも柔軟に体制を変えられる「外注」が戦略的な選択肢として広がっています。
技術の高度化と多様化への対応
IoT、AI、ロボティクスなど、製造設備や製品に必要な技術はますます高度化・多様化しています。
自前主義だけではノウハウが追いつかず、新しい技術や業種横断の知見を持つ外部パートナーとの協業が現実的な選択になりつつあります。
機械設計業務の外注範囲と実態
どこまでを外注すべきか
外注できる業務は多岐にわたりますが、典型的には以下の2パターンに大別されます。
- 設計の部分的な外注(図面作成や部品設計、CAE解析など)
- 設計プロジェクト一式の外注(要件定義、基本設計、詳細設計、試作管理までを一括依頼)
導入初期にはノンコア領域、たとえば2D/3D CADトレース化、中間図面作成、構造解析などから委託し、徐々に信頼関係が築けた企業に対してプロジェクト一括発注にスコープを広げていくケースが多いです。
外注のメリットとデメリット
メリット
- コスト構造の最適化、設計費用の変動費化
- 人件費・福利厚生費などの間接コスト圧縮
- 技術力やアイデアの多様化(自社では得られない気付きの獲得)
デメリット
- 機密情報漏洩リスクの増加
- コミュニケーションコストの発生(意思疎通、情報展開、仕様確認の手間)
- 納期遅延リスク、品質トラブル時の対応工数増大
企業選定の重要ポイント
1. 技術力・実績の客観的評価
最優先すべきポイントは、外注先が自社の要求品質と同等以上の設計レベルを満たしているか、です。
単に「設計会社」と名乗っていても、得意分野や主軸となる業界は千差万別。
社内で要求仕様を明確にし、候補先の過去の納品実績や設計事例を必ず確認しましょう。
設計の成果物(図面、BOM、CAEレポートなど)の品質、さらには解析精度や製図のクセまで深く掘り下げて見極めることが大切です。
2. コスト構造と価格の透明性
「安かろう悪かろう」は設計外注でも起こり得ます。
単純労務費ではなく、技術力と価格のバランスを評価する必要があります。
また見積もりの内訳がきちんと開示され、追加費用や仕様変更時のコスト体系が分かりやすい企業は信頼度が高いです。
成果物単価、工数単価、プロジェクト一括価格など、見積もり手法も比較ポイントです。
3. 納期遵守力・プロジェクト遂行力
部品設計や装置設計など、工程が複雑で後戻りできない分野ほど納期遅延リスクは大きな問題となります。
スケジュール変更時の対応力、途中経過報告の頻度や質、緊急時のリカバリー経験など、危機対応力の裏付けがある企業を優先すべきです。
プロジェクトマネジメント体制や、PM(プロジェクトマネージャー)が控えているかも確認しましょう。
4. コミュニケーション能力と対応の柔軟性
設計外注は「コミュニケーション産業」と言い換えても過言ではありません。
初回打ち合わせから納品後のアフターサポートまで、迅速かつ丁寧なレスポンスが得られるか、日本人(もしくは日本語ネイティブ)の窓口担当者がついているか、顧客対応に積極性があるかなども大きな評価ポイントになります。
認識齟齬や現場の意思が正確に伝わるかどうかは、長く付き合ううえで非常に大切です。
5. 機密保持と情報セキュリティ
設計業務には、極めて高度な機密情報が含まれることが日常茶飯事です。
特に新製品やキーコンポーネントの案件では、NDA(機密保持契約)が必須です。
情報管理規定、アクセス権限管理、ペーパーレス化環境など、どのような情報管理体制を敷いているかのヒアリングも必要です。
最近ではISO/IEC 27001など、情報セキュリティ認証の取得状況も安心材料となります。
実践的なアプローチ方法
1. RFI・RFPを活用する
昭和的な「口約束」「名刺交換だけ」の発注ではなく、今やグローバルで標準となったRFI(情報提供依頼書)やRFP(提案依頼書)を準備しましょう。
業者の技術力、体制、コスト等を比較検討できるだけでなく、自社内の要件や評価基準の明文化にも繋がります。
情報を整理し、公平で客観的なプロセスを経ることは、リスク低減の第一歩です。
2. 現場訪問・技術面談を実施する
現場主義の目線を忘れてはいけません。
実際に外注先のオフィス環境や設計室、設備、ITインフラを自分の目で見て、設備投資への姿勢や整理整頓の状況を確認しましょう。
また、実際に担当する設計者やエンジニアとの技術的ディスカッションを重ねることで、やり取りのリアルな品質評価ができます。
3. 試作発注やパイロット案件でスモールスタート
いきなり大規模なプロジェクトを丸投げするのはリスキーすぎます。
まずは小さな試作図面や部分設計などで発注し、「どこで認識違いが生じやすいか」「どんな情報共有フローが必要か」などお互いのクセを把握すると良いでしょう。
このパイロット案件の納品品質・対応力量をレビューし、本格発注の可否をジャッジします。
4. 継続的なコミュニケーションとフィードバックサイクル
案件単位で完結せず、中長期視点でお互いのスキルや業務改善ポイントを伝え合える関係性を築けるかも外注先選定の重要な観点です。
図面レビュー会や納品後のクレーム分析会議など、定期的なフィードバックを積み重ねるほどお互いのレベルが向上します。
5. 契約条件と成果物の明文化
抽象的な指示や口頭依頼よりも、要件書や設計仕様書といったドキュメントの徹底管理がリスク低減の鍵です。
納期、範囲、変更時の条件、検収プロセスも明文化してください。
成果物の受け入れ基準例(図面の正確性、再利用性、ドキュメント化の程度など)もしっかり設定しましょう。
昭和的アナログ体質への現場からの提言
属人的な「ツーカー」文化からの脱却
いまだに製造業では、担当者同士の信頼関係や長年の「ツーカー」的やりとりが幅を利かせています。
これは一方でトラブル時の柔軟な対応や人間味ある仕事の面白さを生みますが、反面リスクの温床にもなりがちです。
ノウハウや指示を担当者個人に寄せず、「誰もが同じレベルで業務を遂行できる標準化・文書化」を意識しましょう。
IT導入・デジタルツールの活用推進
設計外注プロセス全体においても、契約管理、図面・データのやりとり、進捗管理、レビューなど、できる部分からIT化・クラウド化を推進してください。
メールやFAX、Excelでのやり取りは極力減らし、プロジェクト管理ツールやバージョン管理システムの導入を重視すべきです。
若手世代やグローバルな人材にも開かれた業務環境を目指しましょう。
「Win-Win」の関係構築が鍵
価格交渉や納期短縮などで過度なプレッシャーを強いる発注側と、受け身で言いなりの外注側の関係では長続きしません。
適切な情報共有と利益還元による「Win-Win」体制が、技術の発展や品質・スピードの好循環を生み出します。
本当のパートナーとは、互いに困ったときほど助け合える間柄です。
まとめ
機械設計業務の外注は、単なるコストダウン策ではなく、製造業のイノベーション実現やコア技術への集中を可能にする強力な経営戦略です。
選定のポイントは、技術力、価格の透明性、納期対応力、コミュニケーション、情報セキュリティの5つ。
現場の肌感覚を活かしつつ、現代的な手法やデジタルツールを導入し、形式主義・慣習主義から抜け出すことが今後の成長のカギとなります。
これから外注化を検討するバイヤーの方、サプライヤーとしてバイアーの期待を知りたい方は、「標準化」「文書化」「フェアな情報共有」を意識し、昭和の良さも活かしつつ新時代のパートナーシップを築いていきましょう。
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