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機械図面作成と設計不良・手戻り防止のポイントおよび事例

目次
はじめに:機械図面作成の重要性と現場のリアル
製造業の根幹を支える技術のひとつに、「機械図面の作成」があります。
図面は、製品の構想を形づくり、現場へと落とし込むための共通言語です。
しかし、どれだけ3DCADやデジタルツールが発展しても、図面不備による設計不良や手戻りは後を絶ちません。
現場では、設計者―製造部門―品質管理―調達購買まで、多くのステークホルダーが図面を基にコミュニケーションを取ります。
一度の記載ミスや仕様のあいまいさが、生産中断や納期遅延、品質クレームへと直結します。
昭和時代から抜けきれないアナログな現場がある一方で、デジタル化とともに従来通りの「暗黙知」だけでは立ち行かなくなってきました。
本記事では、図面作成現場での失敗事例を交えつつ、設計段階での不良や手戻りをいかに防ぐか、バイヤーやサプライヤーの視点も踏まえて論じます。
図面作成の“落とし穴”―現場から見える失敗事例
曖昧な記載と伝わらない意図
設計図面に「公差」や「表面処理」の記載がなく、現場の作業者や仕入先が「多分こうだろう」と自己判断で製作した結果、寸法違いや処理不足が頻発した例は少なくありません。
例えば、シャフト部品で「面取りC1」と本来指示すべきところが単に「面取り」にされたため、業者によってサイズがバラバラで組立て不能に、納期遅れに発展しました。
この場合、設計者の頭の中には「常識」でも、現場や外注先では捉え方が異なる、といった“思い込み”が失敗要因となります。
改訂履歴の不備と最新図面の混乱
設計変更が頻繁に行われる製品で、図面の改訂番号や履歴記載が徹底されていなかったため、手元の図面がどの版か分からなくなり、旧仕様で生産してしまった事例もあります。
また、現場に紙図面とデータ図面が混在していたため、異なるバージョンで指示してしまい追加工や材料廃棄が発生しました。
これは、製造業に根強く残る「口頭指示」「現物合わせ中心」の文化が災いしやすい部分です。
設計“自己完結”と現場フィードバック不足
業界で起こる典型的なミスが、設計者が自席で形状や仕様を決定しても、実際の製造現場や加工設備の能力を考慮していない点です。
現場から「この加工方法ではコスト増になる」「治具が合わない」「部材手配が不可能」とフィードバックが返ってきて初めて“設計やり直し”となり、大きな手戻りになる場合があります。
このような失敗は、設計部門と現場の連携不足が根本にあります。
手戻りや設計不良を生まないための現場目線のポイント
1. 図面の“見える化”と徹底した情報明記
図面作成において最も基本でありながら守りきれないのが、「どこの誰が見ても正確に伝わる構成にする」ことです。
実践ポイントは以下の通りです。
– 各寸法にきちんと公差範囲を明確記載する
– 表面処理・熱処理など特殊指示も“追記忘れ”を防ぐ
– 部品ごとすべて「識別番号」と「改訂履歴管理」を徹底する
– 3D図では見えにくい部分については注釈や断面図も積極的に挿入
また、サプライヤーに外注する際は、材料記号やJIS、ASTM規格など“業界標準”もしっかり書き込むことで意思疎通がスムーズになります。
2. 現場レビュー・クロスチェックの組み込み
図面承認プロセスに「現場の目」を加えることが有効です。
設計者—製造現場(加工・製造・組立)—品質管理、それぞれの担当者によるレビュー会を定期的に開催し、現場から「実際に作れるか」「省力化の余地はないか」「誤読する箇所は無いか」をチェックします。
特に、生産管理や調達購買部門の人も図面レビューに参加してもらうと、材料手配や外注時のトラブル予防に直結します。
これにより、サプライヤー目線・現場目線の両方が加わり、設計不良や仕様不明確といった重大な手戻りの芽を初期で摘み取ることができます。
3. 最新図面の“統一管理”とITの活用
紙図面+データ図面+口頭指示の“三重管理”はミスの温床です。
できるだけPDM(製品データ管理)システム、図面管理クラウド、共有フォルダなどを活用し、「誰が見てもどれが最新か一目で分かる」運用ルールを設けましょう。
さらに、サプライヤーとの図面授受もオンラインで履歴・ログを残す、図面ファイル名や改定日付の付け方を定義するなど、デジタルの強みを最大活用します。
4. “図面だけで完結しない”伝達活動
いくら完璧な図面でも、それが現場や調達先、工程担当者に理解されていなければ意味がありません。
特に難易度の高い部品や初めて依頼する外注先には「設計説明資料」や「動画マニュアル」、一部現物サンプルの提供など、補足コミュニケーションを欠かさないことが重要です。
また、調達担当者がサプライヤーの現場責任者に直接設計意図を説明する「三者打ち合わせ」を実施すれば、思わぬ“思い違い”や“読み違い”を未然に防げます。
バイヤー・サプライヤーの視点でみる設計図面トラブル
バイヤー目線:購買部門の現実と課題
調達バイヤーの立場では、「設計図面が曖昧」な場合、見積もりが複数パターンになりコスト比較そのものが困難になります。
また、納期や品質トラブルの多くは「供給先の現場がきちんと仕様を理解できずに製作・納入」してから判明します。
バイヤーは仕入先との共通言語として「誤読しようのない図面=トラブル予防」「手戻りゼロ要求の源泉管理」が極めて重要と考えています。
サプライヤー目線:図面解釈の難しさとリスク
サプライヤー側から見ても設計図面が「業界標準とずれた用語用法」や「自社だけの暗黙知」で書かれている場合、解釈違い、製作不可、重大な納期・工程ロスが頻発します。
また、「足りない指示は問い合わせ」の手間だけでなく、「万一、自己判断で進めてしまうリスク」への恐れも大きくなり、良い取引が長続きしません。
サプライヤーの困りごと・設計意図の理解ギャップをなくす努力は、結果としてバイヤーにとっても品質トラブル・コスト増のリスクを減らすことに直結します。
時代の“変わり目”と製造現場―昭和アナログ“脱却”のために
デジタル技術やIoT導入が進んでも、製造現場には「現物合わせ」「長年の勘」「昭和的な職人の暗黙知」が色濃く残っています。
それが現場の強みでもありますが、設計図面に“気づき”“ノウハウ”を落とし込むことができなければ、属人的な技術伝承は次世代にはつながりません。
今こそ
– 図面を“現場・バイヤー・サプライヤー”みんなの共通言語と認識する
– 設計・現場レビューで“多様な目”の導入
– ITツール×アナログ現場のベストミックス
が必要です。
図面不備や設計ミスによるコスト増・納期遅延・商品クレームは、目立たないようでいて累積すればボディブローのように企業体力を削ります。
時代の変化に取り残されないためにも、図面作成力の底上げが製造業の屋台骨なのです。
まとめ:機械図面と現場力の“新しい地平”を目指して
製造業の最前線で見てきた失敗と成功の繰り返しの中で、「図面の精度」「現場との連携」「デジタルとアナログの共存」は永遠のテーマです。
新たな地平としては
– サプライヤーが安心して取組める“標準化図面”の推進
– 現場のリアルな知見を設計に反映する“双方向レビュー”
– デジタルツールで“最新情報”を一元共有
– バイヤー・サプライヤー・設計者の“共創的改善活動”
これらを融合していくことが、設計不良や手戻りによる“ムダ”を削減し、品質と納期・コストで圧倒的な競争力につながります。
製造現場で働く皆様や、これからバイヤーを目指す方、サプライヤーの立場から取引先を深く理解したい方には、ぜひ「図面」への向き合い方そのものを見直すきっかけにしていただきたいです。
地道な積み重ねが、現場での大きな成功と安心につながる――それが、日本の製造業をもう一度世界トップに押し上げる原動力になると信じています。
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