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問題プロジェクトの未然防止と早期立て直しのノウハウ

目次
はじめに 〜昭和から続く“問題プロジェクト”とは何か
製造業のプロジェクト運営が難しくなったと感じている方は多いのではないでしょうか。
長年、調達購買や生産管理、品質管理といったポジションで数多くのプロジェクトに携わってきた経験からも「うまくいっているプロジェクトの裏には、未然防止・早期立て直しの見えざるノウハウが必ず存在する」と強く実感します。
しかし一方で、日本の製造業には昭和時代から続く“現場の勘と経験”に頼ったアナログな進め方や、トラブルが発生した時だけ上層部が騒ぎ出す“事後管理型”の習慣が根強く残っています。
本記事では、調達購買・生産管理・品質管理・工場自動化という現場の複数観点から、問題プロジェクトの「未然防止」と、もしつまずいてしまった時の「早期立て直し」について、真に現場が使える実践的ノウハウをお伝えします。
なぜ問題プロジェクトは発生するのか
人と仕組み、2つの構造的要因
問題プロジェクトは「誰かの失敗」や「運の悪さ」だけで発生するものではありません。
多くの場合、要因は「人」と「仕組み(プロセス)」の2つに分けて整理できます。
現場では下記のような現象が複合的に絡み合っています。
・チームメンバー間の情報共有不全
・上流工程(設計・調達)と下流工程(生産・品質)の分断
・見積もりや納期など不確定要素の過小評価
・承認プロセスの形骸化、Excel管理に頼る(責任の曖昧さ)
・トップのコミットメントが弱い(“誰が責任者か分からない”現象)
このような「人」と「仕組み」両方の弱点が積み重なることで、問題プロジェクトは発生します。
典型的な“問題”の具体例
・新規設備導入プロジェクトでの納期遅延
・コストダウン案件の品質トラブル多発
・設計仕様が二転三転し工程全体が混乱
・試作時と量産時で担当部門間の責任転嫁
実際には「気が付いたら大火事」というケースばかりではなく、”小さな兆し“があっても現場の慣習や雰囲気的に問題が“見逃され続けて”、結果として大きなトラブルになることが非常に多いのが業界共通の課題です。
未然防止の実践ノウハウ
業界がなぜ“昭和のまま”から脱却できないのか
製造業現場では「現場を知らない上層部による空中戦の指示」「“慣れ”で動く現場」という2つの流れが今なお強く残っています。
本質的な問題を“見て見ぬふり”できてしまう状態では、真の未然防止の仕組みをつくるのは困難です。
未然防止の実践的ノウハウには「意識」「仕組み」「データ」の3点がカギとなります。
“情報の見える化”で先手を打つ
最重要ポイントは「問題の早期発見」です。
事前に兆候を“数値”や“事実”として見える化し、関係者皆で課題共有します。
・日々のトラブル発生件数・内容を簡単な会議で(Excel,手書きでも)必ず一覧で共有
・購買であれば納期回答遅延や見積の不備数をデータとして集約
・生産管理ならばリードタイム遅れの傾向や在庫過多の推移をグラフで見える化
・品質部門はQC工程表だけでなく小さなクレーム流出件数も数値化
情報を可視化・集約し、上司部下問わず“数字で語れる”文化を作ることが、未然防止の最初の一歩です。
“形式的な会議”を捨て、現場主体のコミュニケーションを増やす
昭和風の“報連相”では、課題は簡単に隠れてしまいます。
私の体験上、最も効果的だったのは「フラットな現場の合同ミーティング」。
部門横断のメンバー同士が現場でホワイトボードを囲み、気付きを出し合う場を週1ペースで継続したことで、設計ミスや資材調達の遅れといった小さなトラブルが“水面下”で共有され、即座に対処できた例が多々あります。
“公式な帳票”よりも“生情報の共有”が圧倒的にポイントです。
「逃げ水化」する責任の明確化——不作為をなくすコツ
日本の製造業では、決裁ルートが入り組み「結局、誰が最終責任者か分からない」問題が蔓延しています。
プロジェクト毎に「誰が何の責任を持つか」を必ずキックオフ時に一覧化して明文化し、チーム内外で共有—これだけで未然防止効果は飛躍的に上がります。
サプライヤー側も「この業務の質問はこの人に聞ける」と分かれば、言い出しづらさ・相談遅れを防げます。
問題発生後の早期立て直しノウハウ
“隠蔽・先送りの文化”を断ち切る初手
問題が発生したとき、「上司に報告するのはまだ様子見」という昭和的判断は傷口を広げます。
最初にやるべきは「課題情報の即時共有や棚卸し」です。
大切なのは「責任追及」よりも「事実ベースの課題抽出」。
・起きてしまった現象
・発生時の状況、どんなデータがあるか
・関係者は誰か
を、主観を排してまとめ上げることです。
私は、トラブル発生初動であえて“課長以上が外れた現場主体”で状況整理MTGを行い、無記名で全工程・関連部門に原因仮説と改善案を書き込んでもらう運用で、初期対応を格段に早くできる体制を築きました。
「小さな成功体験の共有」が回復のカギ
どんな大きなトラブルも、いきなり全てを解決することはできません。
全国規模の納期遅延プロジェクトで、現場の士気向上と関係部署への巻き込みを図った成功例を紹介します。
1. トラブルをリカバリーする課程で、まず“1つ目の小さな成果(例:重要部材の緊急納入)”を全員で強調して称賛
2. それによる下流工程の具体的なメリット(例:1ラインだけでも再稼働できた)も数値で“見える化”
3. 成功体験を部門横断で朝会等で回し、次の耐えどころへの心理的ハードルを下げる
この“小さな成功の可視化”が、問題プロジェクトの空気感を“回せるプロジェクト”へと反転させる原動力になります。
責任の押しつけ構造を変えるリーダーシップ
問題プロジェクトでは往々にして「A部門がB部門に、“例外処理を要求”」「設計が不備を現場に丸投げ」「現場が購買にクレーム」など、責任がたらい回しされがちです。
この構造を打破するには、プロジェクトリーダーや工場長が「全体最適」の観点で、「課題解決にコミットする姿勢」を実際の行動で示す必要があります。
“自分の領域を守る”のではなく“他部門の課題を引き受ける”ことで周囲の協力が得られ、混乱収束のスピードが何倍にも上がります。
昭和の問題プロジェクトを“令和の成功事例”に変えるために
自社文化・現場慣習の“見直し”を怖れない
未然防止・早期立て直しの最大の壁は、「これまでこうやってきたから」という思考停止です。
・“本音のしゃべり場”の設置
・管理帳票の簡素化とリアルタイム共有
・責任者明確化シートの導入
・“小さな成功体験”を見える化した掲示
このような「ちょっとした新習慣」を一つでも現場主導で実施することで、工場現場は確実にしなやかに進化します。
デジタルと人間力のベストミックスへ
DX(デジタルトランスフォーメーション)が進む今こそ、情報のリアルタイム連携や工場IoTでのデータ可視化の活用が未然防止に威力を発揮します。
一方で、データをいくら持っていても“現場で本音が言い合える風土”がなければ、小さな異常は見落とされてしまいます。
つまり「デジタル活用」と「人間力・巻き込み力」のバランスこそが、問題プロジェクトを“強いプロジェクト”に転換する王道です。
まとめ 〜製造業の現場から見た、これからのプロジェクト管理とは
製造業の現場には、何十年も変わらない「人と仕組み」の課題が存在します。
プロジェクトの未然防止、万一起きてしまった場合の早期立て直しには
・問題を数字・事実で見える化し全員で共有できる仕組み作り
・現場主導・部門横断のコミュニケーション環境の整備
・責任明確化と全体最適志向のリーダーシップ
・小さな成功事例の“全社共有”による前向きな士気の醸成
・デジタルデータと現場の人間力の両輪活用
これらを「自分たちでどう現場に根付かせるか」を真剣に考えることが、製造業のプロジェクト現場において重要な視点となります。
この知見や現場視点が、これから製造業を担うバイヤー、プロジェクトリーダー、サプライヤーの皆さま一人一人の実務に役立つことを願います。
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