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地方製造業同士の協業で“内製化と外注化”を両立する生産モデル

目次
はじめに:内製化か外注化か——岐路に立つ地方製造業
地方の製造業現場では、生産コストの削減、品質の安定、供給リスクの分散という永遠の課題に直面しています。
大手メーカーですら、コロナ禍や半導体不足など外部環境の激変により、内製化(自社生産)と外注化(外部委託)のバランス見直しを迫られたことは記憶に新しいでしょう。
ましてや、人的・設備的リソースが限られる地方の中小製造業にとって、この選択は経営と現場の命運を左右する重大なテーマです。
本記事では、20年以上の現場経験から、地方製造業同士が協業によって「内製化と外注化の最適なハイブリッド」を実現するための実践的な生産モデルについて考察します。
“内製化”と“外注化”、そのメリット・デメリットとは
内製化のメリット・デメリット
内製化の最大の魅力は、技術ノウハウの蓄積、市場変化への柔軟な対応、品質・納期のコントロールがしやすいことです。
独自技術を強みにし、目の届く範囲でモノづくりをしたいという現場のプライドも内製化に寄与します。
一方で、設備投資や人材確保の負担が重く、特注・変種変量対応には限界が出やすいのも事実です。
高齢化や労働力不足によって、若手の育成や技能承継に課題を抱える地方中小企業では特に深刻な問題です。
外注化のメリット・デメリット
外注化は、コア業務に経営資源を集中でき、専業サプライヤーによる技術力・効率性を活用できる点が強みです。
生産量の変動にも柔軟に対応でき、投資リスクも限定的となるため、経営の安定化には有効な戦略です。
しかし、外部に依存することで「品質のバラ付き」「情報漏洩リスク」「納期トラブル」など、管理面の難易度が格段に上がります。
また、現場のノウハウが失われてしまえば、外部環境変化への対応力は大きく低下するのです。
なぜ、内製化と外注化の“ハイブリッド”が必要なのか?
激変する経済状況、サプライチェーン分断リスク、そしてESGやカーボンニュートラル対応といった新潮流。
これら複雑な課題に対応するためにも、製造業現場は「全部自分でやる」「全部外に委託する」という従来型の発想から脱却する必要があります。
内製化と外注化、それぞれの強みを結集し「最適な分業体制」を敷く——すなわち“ハイブリッド型生産モデル”が、これからの時代の進むべき方向だと私は考えています。
地方製造業同士の協業モデルがもたらすもの
協業による“地産地消型サプライチェーン”の構築
日本の地方には、全国区では知られなくとも、高度な加工技術や独自ノウハウを有する匠企業が数多く点在しています。
大手メーカーの部品を支えてきた経験を持つ中小町工場や、試作・一品物に特化したファブ系企業など、地域には多様な“戦力”が眠っているのです。
この地域内でのネットワークを横断することで「ある工程はA社、次工程はB社、高難度品は共存共栄で」といった分担体制を敷ければ、
過去には“外注リスク”とされていた問題点も、信頼関係と物理的・心理的距離の近さでカバーできます。
「地産地消型サプライチェーン」の構築は、災害時や不測の事態におけるBCP(事業継続計画)対策としても有効です。
熟練技術の伝承・増幅装置としての協業
もうひとつ、現場目線ならではの協業の価値は「技術の伝承と増幅」にあります。
ベテラン技術者の引退が相次ぐ地方では、技能継承が会社単位ではもはや難しい局面にもあります。
協業によって現場どうしが接点を増やせば、「社をまたぐ現場の知恵・技術のクロスオーバー」が促進され、属人化回避や若手育成にも繋がります。
調達コスト・業界スタンダードの見直し
地方同士が連携し、自前で部品や材料を融通し合うことで、これまで都内や海外の大手サプライヤーに偏っていた購買チャネルにも変化が生まれます。
共同購買やシェアリングによるスケールメリット追求はもちろん、地元産業のボリューム拡大=価格競争力の向上や、共通フォーマットの整備(部品規格の標準化)も現実的に見えてきます。
具体的な協業推進の方法と課題
協業推進のための実践アクション
1. 地域業界団体(商工会、技術研究会等)を活用したワークショップやラウンドテーブルを設置
2. 各社の設備・技術レベル・品質基準・生産リードタイムのオープン化(守秘義務契約の範囲で)
3. 部品・工程ごとの“見える化”カタログ(デジタル化含む)の共同作成
4. 共通発注プラットフォームや在庫連携システムの導入(基幹業務のシステム投資も協力しあう)
5. トラブルが発生した際のフェアな利益分配・責任共有ルールの事前合意
6. 共通仕様・品質基準設定による「どこの企業間でも同じものが作れる」体制づくり
協業に潜む課題と対策
・技術漏洩や人材流出リスク:
守秘義務契約や特許出願など、法的ガードを固めるとともに「共存共栄」マインドの醸成が不可欠です。
・“手間”意識と現場の納得感:
「他社と組むのは面倒」「うちの生産性が他社に見られてしまう」といった人間心理は根強いものがあります。
現場への十分な説明と、経営層自らが取り組みの意味合いを発信し続けることが大切です。
・競争意識の調整:
協業は“共創”であっても競争がゼロになるわけではありません。
お互いの得意分野・棲み分けを尊重し、ウィンウィンを意識したオープンな関係をつくることが前提となります。
昭和的アナログ文化、業界慣習を打破するには
日本の製造業界では、長年の“親方日の丸”や“終身雇用”、“人脈による発注”が根強く残っています。
FAX・電話・紙伝票による情報伝達、現場ベテランの口伝・勘と経験…。
時に「アナログな仕組み」が協業やオープンイノベーションを阻む壁にもなっています。
この「昭和型文化」を打破する一手は“心理的安全性”の確立にあります。
互いが協業しやすい環境づくりのため、デジタルツールを積極活用しながら、「顔の見える交流」を重ねること。
特に、失敗を許容するカルチャーや、“できないことは言いやすくする”仕組みづくりが成功のカギです。
小さな一歩から始める協業のススメ
すべてを一気に変えようとすると、従業員の反発や混乱は避けられません。
まずは既存の取引先や、課題を共有できる企業同士でパイロットケースを走らせ、小さな協業の成功体験を重ねる。
その実績が“伝播力”となり、徐々に地域全体の協業機運を高めていくことが現実解です。
バイヤー・サプライヤー双方に求められる新しいマインドセット
バイヤーは従来の「価格だけ」「納期だけ」でなく、地域・協業体制を“競争力の源泉”と捉える視点を持つべきです。
サプライヤー側も単なる価格安売りでなく、地域内ネットワークを活かした危機対応力や共通ノウハウ提案といった“付加価値型”提案が求められます。
例えば、共同でBCP対策のプランを作成したり、複数社横断の生産ラインを各社で保守可能にしたりする提案が
バイヤーからは非常に評価される時代となっています。
まとめ:新たな地平で共に生き残る地方製造業モデルへ
時代は「一社完結」から「地域でつながるハイブリッド」へと確実にシフトしています。
日本の地方製造業が持続的に繁栄し、新たな価値創造の中心地となるためには、内製化・外注化という二項対立を超えて、地に足のついた“協業型生産モデル”が重要です。
足元のアナログ文化に根差しつつも、一歩先を見据えたデジタル活用・ネットワーキングを絶やさず、共に学び・共に伸びる。
これこそ、現場から切り開く新たな製造業の地平だと私は信じています。
今こそ、地域が一丸となって日本のものづくりを“次の時代”へ引き上げていきませんか。
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