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製造設備のボイラーで使う軸受部材の潤滑設計と焼付き課題

目次
はじめに:製造業におけるボイラーの重要性と軸受部材への視点
製造業の現場において、ボイラーは単なる熱源ではありません。
生産ライン全体の安定稼働を支える「心臓部」ともいえる存在です。
特に近年、製造設備の効率化や自動化が進む中で、ボイラーの安定運転は品質・コスト・納期すべてのバランスを維持する上で非常に重要です。
ボイラーの運用における課題は多岐にわたり、その中でも軸受部材の焼付きは、突発停止を招くリスクの一つとして昔から現場を悩ませてきました。
この記事では軸受部材の潤滑設計と焼付き対策について、最新動向と現場目線の知見も交え、分かりやすく解説していきます。
ボイラーの軸受部材とは?
ボイラー動作を支える回転部や可動部。
これらの多くに「軸受部材(ベアリング)」が使用されています。
ボイラー軸受は、高温・高負荷に晒される過酷環境でありながら、定常運転でも常にムラのない回転を求められます。
主な軸受部材のタイプは以下の通りです。
すべり軸受
構造はシンプルですが、潤滑管理が難しく、高温環境下での焼付きリスクがつきまといます。
昔から多くのボイラーで使われています。
転がり軸受
玉やローラーで軸を支えるタイプです。
近年は高精度・高負荷用も増えていますが、潤滑不良や異物混入、振動の影響など弱点も顕在です。
カスタマイズ軸受
最近ではアプリケーションに合わせたカスタム材質や多素材複合型の軸受も増えています。
摩耗や熱変形に強い部材の選定が重要となります。
これらの軸受部材は現場状況や予算、メンテナンス体制ごとに最適解が変わります。
だからこそ、過去の経験や“勘ピュータ”だけでは安定稼働を維持しきれず、潤滑設計の見直しと焼付き対策が強く求められています。
現場がなかなか抜け出せない昭和的アナログ管理の実情
製造業の多くは「壊れるまで使う」「異音・振動が出てから対応する」といったアナログ管理が今なお主流です。
特にボイラーの軸受については、定期的なグリース補充や、経験豊富な保守員による“聴診器メンテナンス”が根強く残っています。
この背景には、次のような事情があると考えられます。
・“止めるな文化”による予防保全の軽視
・部品コストよりダウンタイムの損失を重視
・IoTやセンシングに対する“導入後の運用イメージ”の不足
・トラブル発生時のノウハウが個人に属人化
実際、私自身何度も「今月は急に温度が上がったな」「そろそろグリース交換すべきでは‥」など“体感メンテナンス”で大きなトラブルを回避してきた経験があります。
しかし近年は、グローバル競争や働き方改革、担当者の高齢化・退職など、こうした暗黙知による管理には限界が生じつつあります。
焼付きが発生する根本原因とは?
軸受部材の焼付きとは、潤滑不良などによって摩擦抵抗が異常増加し、金属どうしが溶着してしまう現象です。
焼付くと軸が完全にロックし、最悪の場合はボイラー自体の緊急停止や火災に繋がることもあります。
主な焼付き原因は以下の通りです。
・潤滑油(グリース)の劣化/不足
・部材表面の異常摩耗や微細な傷
・荷重過剰や取付ずれによる偏摩耗
・外部からの異物混入(粉じん、水、化学薬品など)
・温度の急激な上昇/過熱
ボイラーに特有の注意点として「装置立上げ時」の温度勾配や、「断続運転での結露・水分影響」も見逃せません。
私の現場経験では、“使い始めて10年以上経過”した古いベアリングでの焼付きトラブルが、過去10年で2回発生しています。
どれも潤滑油の定期交換を怠ったケースか、ラインの増設に伴う負荷オーバーが原因でした。
潤滑設計の現場最適化とは?
設計段階から焼付きリスクを減らすため、“潤滑設計”の視点が不可欠です。
ここでは現場で実践されてきた最適化ポイントを紹介します。
潤滑油・グリースの選定
現場でありがちなのが「いつものやつを入れておけば大丈夫」という惰性運用です。
しかし運転温度域、負荷変動、耐水性、耐薬品性など軸受の実際環境に合わせた最適グレード選定が重要です。
特に高温対応のグリース(例:ポリウレア系、高性能シリコン系)や、食品工場ではH1対応グリースの選定も最近は増えています。
また、可視化のための潤滑油に蛍光剤を混ぜたり、油量センサーを併用したりと最新技術との融合もポイントです。
給脂/給油システムの自動化
「グリースニップルから手作業で注油する」のは昭和的ルーチンです。
近年は自動給脂システムや、IoT監視による潤滑状態の見える化が進んでいます。
トータル保全コストは一見上がるものの、突発停止のリスクや人為的ミスを減らし、工場全体の稼働率向上に大きく貢献します。
定期点検+CBM(状態基準保全)
摩耗状態や温度を常時監視・記録し、異常値を検知した段階で迅速なメンテを行うCBM(Condition based Maintenance)が主流になりつつあります。
特に遠隔監視やAI分析と連携させることで、部品交換時期の最適化や異常傾向の早期発見が現実となっています。
材質・表面処理のアップグレード
焼付きに強い、自己潤滑性の材料(例:二硫化モリブデン含有樹脂、焼結金属、コーティング鋼など)へのアップグレードは、想像以上の効果があります。
また、耐熱・耐摩耗性を強化したベアリングメーカー独自の新素材も選択肢に加わっています。
最近の業界動向と新しい“当たり前”
ここ数年、「焼付きゼロ」へ向けたトレンドが生まれています。
これまでの昭和的管理から抜け出し、以下のような先進的アプローチを取り入れる企業も増えています。
ベアリングのIoT化・見える化
温度・振動・潤滑状態などを“予知保全”データとして常時収集。
未然に異常サインを検知して交換やメンテナンスを促します。
分散拠点や夜間にもリアルタイムで状況把握でき、突発停止や火災リスクを大幅に低減します。
ワンストップメンテナンスパッケージ
潤滑設計~給脂システム~モニタリング~保守まで“丸ごと契約”で外部委託する動きが目立っています。
自社の工数削減と、部品寿命の延伸を両立する戦略です。
サプライヤーとの協業強化
ベアリングメーカーだけでなく、潤滑油メーカーやIoTベンダーと“現場の課題共有”を密に行い、総合的な焼付きゼロソリューションへ。
バイヤー目線だけでなく、サプライヤーとして「何に困っているのか」「どのタイミングで声をかけるべきか」を知ることも競争力となっています。
バイヤーやサプライヤーが知るべき現場のリアル
バイヤーを目指す方、あるいはサプライヤーとして現場対応を強化したい方は、軸受・潤滑にまつわる現場の“そのまま”を知ることが重要です。
・部品コストと、焼付きで止めるリスクどちらを重視?
・工場の運営予算サイクルや、期末決算を見越した投資判断
・現場担当者の“心理的コスト(慣習打破・新技術導入の抵抗感)”
・トラブル時の応急対応策と、恒久対策の線引き
・“目で見る・手で触れる”情報の重要性(データだけに頼らない)
このような視点は、現場で長年悩み苦しみ・工夫を重ねたからこそ得られる知見です。
現場の声を丁寧に拾い上げ、そこに技術・イノベーション・コスト競争力を組み合わせていくことが、これからの製造現場に強く求められています。
まとめ:今こそ「焼付きゼロ」への発想転換を
ボイラーの軸受焼付きは、小さな違和感から始まって重大トラブルへと発展します。
だからこそ、潤滑設計の最適化・自動化・見える化を軸に、「壊れたら直す」から「壊さない」工場運用へのシフトが求められます。
そして現場の声に耳を傾け、本質的な課題解決をバイヤー・サプライヤー双方の目線で追求していくこと。
これこそが、昭和的な慣習に留まらず、競争力ある日本の製造業の“新しい地平線”を切り拓く原動力となるのです。
これからの製造現場づくり・安定運転に向け、ぜひ一歩先の潤滑設計・焼付き対策に取り組んでみてください。